***短編*** One spring day ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




注)このお話は一話完結です。


『らぶらぶ万歳サークル』さまに出品した作品の再録です。
今回のお題は「たんぽぽ」でした。

<おまけの話>下にあります。
          
           





***短編*** One spring day ***








「若君、もうじき到着致します」

開けた物見窓から聞こえてきた従者の声に、ぼくは言葉もなく頷いた。

───少し眠るから近くに来たら声を掛けてくれ。

従者にそう告げ目を瞑ってみたものの、窓から見える景色の移り変わりに気を取られ、結局眠れず仕舞いだった。

吉野には何度も来ているけど、騎馬で来ることも多かったから、こうしてのんびりと景色を見ると言うのはなかなか新鮮でいい。

まして季節は春真っ盛り。

進む毎に大きくなっていく木々の葉のこすれ合う音や、揺らぐ木漏れ日に、日頃の仕事の疲れも吹き飛ぶ思いがする。

桜の花びらが数枚目の前を横切り、桜の木を探そうと窓の外に気持ち顔を出すと、瑠璃さんのいる吉野山荘が目に入ってきた。



**********



「あぁ、少将さま!良いところにおいで下さいましたわ!」

門をくぐり、車から降りるやいなや、山荘から小萩が飛び出してきた。

息を整えるように、ぼくの前で胸に手を当て、何度も深呼吸をしている。

尋常でない小萩の様子に、にわかにぼくの胸は騒ぎだし───

と言いたいところだけど、こう言う小萩の出迎え方は、ぼくの中では恒例行事となっているんだよなぁ・・・

これしきのことでいちいち胸を騒がせていたら瑠璃さんの夫が務まるか、と言うのだ。

これまで何度、瑠璃さんの突拍子もない予測不能な行動に、胸を騒がせてきたことか。

ま、自慢にも何もならないけど。

「どうしたんだい、小萩」

余裕のあるところを見せながら落ち着いた声で聞いてみると

「少将さま、怒らないで聞いてくださいましね」

上目づかいに小萩が言ってきた。

「うん」

「実は姫さまは・・・散歩に出掛けてしまわれたのです」

「まぁ、そうだろうね」

京にいたって放っておいたらフラフラと出掛けてしまう人なのだ。

ここ吉野で、大人しく山荘の中にいるとは思えない。

瑠璃さんが散歩に出ていることなど、ぼくの中では想定内である。

それにしても───

ぼくはチラッと小萩を見た。

長いこと瑠璃さんに仕え、散々瑠璃さんに振り回されてきた小萩が、どうして散歩ごときでここまで動揺しているのだろう・・

言うなれば、ぼくと小萩は「胸を騒がせてきた同士」である。

その小萩がここまで慌てふためているとなると───

「瑠璃さんの身に何かあったのかい?」

今度こそ本当に胸が騒ぎだし聞いてみると

「実は姫さまはお怪我を・・・」

「どうしてそれを先に・・・!いや、・・・いい。瑠璃さんはどこにいる。何があったんだ。順を追って話してくれないか」

思わず大声を上げかけ、小萩がビクリと身を震わせたことに気が付いて慌てて声のトーンを落とす。

小萩を叱りつけるよりも、まずは状況把握だ。

何度か唾を飲み込んだ小萩は

「姫さまは・・・半刻程前に、お付きの女房を一人付けて散歩に出掛けられたのです」

「うん」

「それが、少し前にお付きの女房だけが小走りに帰ってきて、姫さまが脚に怪我をされてしまったと・・・」

「どんな怪我なんだ」

「そんなにひどくはないと言うことでしたが、ただ、ご自身で歩かれるのはご無理なようで・・・」

「それで、女房だけ伝えに帰って来たということか・・・」

「はい」

ちらりと見ると、今まで気が付かなかったけれど、女房が一人簀子縁で平伏しているのが見え、どうやらあれが瑠璃さんと同行した女房らしい。

怪我をさせたのがあの女房ではないだろうに、責任を感じて縮こまっているのだろう。

「わかった。あの女房を呼んで、瑠璃さんがいる場所を聞かせてもらえないか。すぐにぼくが向かう」

「はい」

小萩に呼び付けられた女房は、転がるようにしてやってきた。



************




瑠璃さんのいる場所は、思っていた通り、ぼくも何度も行ったことのあるいつもの広い野原だった。

山荘からの一本道を足早に進む。

本来なら、道の両端に咲く花や、萌え出ずる緑を愛でながらのんびりと歩を進めたいところだけど、瑠璃さんが怪我をしてると思うと気が急いてしまい、むしろ生い茂る木々の葉に行く手を遮られている気がしてうっとおしく感じてしまう。

かなりのスピードで歩いたので、すぐに野原に出た。

立ち止まり、辺りを見回しても瑠璃さんの姿はなく───

忙しく視線を動かしていると、ふと、動くものを目が捉え、よく目を凝らしてみたら瑠璃さんだった。

野原の隅っこ、ぼくからは一番遠いところにいて、恐らくだけど座り込んでいるのだろう。

手だけを盛んに振り、ぼくに合図を送ってきている。

野原の中央を突っ切るように、瑠璃さんへの最短距離を歩き出す。

ぼくに向かい瑠璃さんが大きく手を振り、何かを言っているようなんだけど、折からの春風で良く聞こえない。

瑠璃さんが何を言っているかは気になる所だけど、とにもかくにもまずは瑠璃さんのところに行くことが先で、どんどん近づいて行くと

「・・・しちゃ、だめ!・・・気を付けて!」

途切れ途切れに瑠璃さんの言葉が聞こえてきた。

・・・ダメ?

・・・気を付けろ?

一体、何に───

そう思いながらも、歩くのを止めずに瑠璃さんの目の前に辿り着くと

「もうっ!」

ぼくの顔を見るやいなや、瑠璃さんはぷぅっと頬を膨らませてみせた。

何だ、何だ、と思っていると

「たんぽぽ踏まないでって言ってるでしょ!聞こえなかったの?」

「たん・・ぽぽ・・?」

「言ってるそばから、ほら、足元!」

狩衣の下の草履の辺りを指さされ、思わず下を向くと、瑠璃さんの指摘通り、ぼくの草履はしっかりとたんぽぽを踏みしめており、慌てて足を外す。

「もう、高彬ったら。ここに来るまでにたくさんたんぽぽを踏んできたでしょ」

今度はぼくの後方を指さされ、振り返ると、これまた瑠璃さんの指摘通り、ぼくが今歩いてきたところは一面のたんぽぽで埋め尽くされている。

道理で・・・

内心、納得する。

さっき、すぐに瑠璃さんを見つけられなかったのは、このたんぽぽのせいだったのか。

瑠璃さんの着てる衣裳は山吹色。

たんぽぽの色と同化してたからなのか。

瑠璃さんの身が心配で、正直、足元なんか見ていなかった。

「向こう側から回り込んでくれたら、たんぽぽ踏まずに済んだのに」

頬を膨らませたまま、瑠璃さんはぶつぶつ言っている。

「本当に高彬って風情がないって言うか、気が利かないって言うか・・」

「いや、しかしね、瑠璃さん。瑠璃さんが怪我したって言うから、ぼくは駆け付けてきたわけで・・・」

とにかく少しでも早く瑠璃さんの元に駆け付けることが最優先だったわけで、まぁ、ぼくなりには瑠璃さんの身を案じてのことだったんだけどなぁ・・

「怪我なんて大したことないもの。皆、大げさなのよ」

「そりゃあ仕えてる姫が怪我したとなったら大騒ぎするよ。いや、世間一般の姫は、そもそも散歩なんかしないから、その辺り、ぼくは女房たちに大いに同情するくらいだけどね」

「・・・」

ぴしゃりと言ってやると、瑠璃さんはマズイ話の流れになったと見て取ったのか

「あー、それにしても本当に綺麗な景色!」

わざとらしく伸びなんかしながら、両手を大きく広げ

「ほら、高彬も座って」

ぽんぽん、と地面を叩いて見せた。

数秒、瑠璃さんと目が合って、大人しく瑠璃さんの隣に腰を下ろす。

ま、ここで喧嘩したって始まらないしな。

「ね、ここからみると更に綺麗でしょ?」

「うん」

立ちながら見るのと、座って見るのだと、地面に近くなった分だけ景色が広がりを持ち、たんぽぽがぐっと迫ってくる感じがする。

「ほら、こうするともっとよ」

言いながら瑠璃さんは上体を大きく曲げ、顔を地面すれすれにまで下ろしている。

瑠璃さんに倣って同じポーズを取って見ると、迫るなんてもんじゃない、一気に視界がたんぽぽで埋め尽くされてしまった。

そのままどちらからともなくごろんと横になると、桜の花と春の青空が視界いっぱいに広がる。

「たんぽぽっていつもこんな景色を見てるのかしらね」

「多分ね」

「綺麗・・・」

「うん・・・」

鳥の囀りと、風に舞う花びら、うららかな陽射し───

瑠璃さんの怪我が大したことないと分かった安堵感やら仕事の疲れやらが一気に来て、急激な睡魔に襲われてしまった。

スーッと眠りに落ち、次にふと目が覚めたのは、瑠璃さんの声でだった。

「・・・たんぽぽ踏んじゃだめ!気を付けて!」

一旦は一緒に横になったのに、いつから身を起こしたのか、瑠璃さんは座り込んでいる。

薄目を開けて瑠璃さんを見ると、さっきと同じように手を大きく振って遠くに向かい声を張り上げている。

「もうっ!小萩ったら!」

焦れたように言い

「こらー、たんぽぽに気を付けてよー!」

一人で身体を揺らしている。

いつまでも帰ってこないぼくたちを心配して、小萩が探しに来たのだろうと合点がいく。

「あぁ、姫さま、ご無事でしたのね。あ、・・・少将さま!姫さま、少将さまは・・・」

やがて目の前にやってきた小萩は、横になっているぼくを見てぎょっとしたのか、動転したような声をあげ

「寝てるだけよ」

「あぁ、ようございました。わたくし、てっきり少将さまの身に何かあったのかと・・・」

「そう簡単に身に何かなんて起きないわよ。ねぇ、それよか小萩。たんぽぽ踏まないでって何度も言ったでしょ!聞こえなかったの?」

「たん・・ぽぽ・・でございますか?」

「言ってるそばから、ほら、足元!」

「え、え?・・・きゃっ」

「きゃっ、じゃないわよ。もう、小萩ったら。ここに来るまでにたくさんたんぽぽを踏んできたでしょ」

「はぁ、たんぽぽ・・」

まったく理解出来ていないようなあやふやな声で小萩が言い

「そうよ、ほら、こんなに咲いてるのよ」

得意気な瑠璃さんの声がする。

目を瞑ったままだから見えてないけど、恐らく、さっきと同じような仕草なんだろうな、と想像する。

「まぁ!綺麗でございますわねぇ」

「しーっ!小萩、高彬寝てるんだから」

つい今しがた、小萩に向かい大声を上げていたくせに、小声で瑠璃さんが言うのがおかしく、あやうく吹きだしそうになる。

「でも、こんなところで寝ていたらお風邪を召されてしまいますわ」

「大丈夫よ、疲れてるんだから少し寝かせてあげましょ」

「ずいぶんとお仕事もお忙しいようでございますしね」

「手を抜けない人なのよ。仕事熱心って言うか真面目って言うか。・・・身体、壊さなきゃいいんだけど・・・」

「・・ふふふ」

「何よ、小萩」

「いいえ。姫さまもしっかりと北の方になられたんだなぁ、と小萩は感服しているのですわ。少将さまのお身体を案じたりして」

「・・そりゃあね、心配するわよ。だからこうして吉野にも無理やり呼んだんだし」

「え。わたくしてっきり、また姫さまのわがままでお忙しい少将さまにご無理言って吉野に来させたのかと・・・」

「まぁ、それが全くないとは言えないけど、これくらい強硬手段に出ないと、長期休暇なんか取らない人だもの。少しのんびりしたらいいのよ」

───参ったな。

寝たふりをしていたぼくは、心の中でため息をついた。

目を開けるタイミングを完全に逸してしまったようだ。

「小萩、戻っていいわよ。高彬ももうじき目を覚ますでしょうから、そうしたら2人で帰るから」

小萩の立ち去る気配があり、また鳥の囀りだけが聞こえる。

目を開けるか少し悩んで、結局、そのまま寝たふりを続ける。

お言葉に甘えて、もう少しだけこのまま眠らせてもらおうか───

指先に何かが当たるのを感じ、それが瑠璃さんの指先だと気付き、ぼくはしっかりと指を絡め取った。

寝たふりしてたってバレたかな?

そんな思いが一瞬、頭を掠めたけど、そんなことはこの際、どうだっていい。

春の陽射しとたんぽぽと、瑠璃さんに見守られて寝るなんて、なかなか出来る経験じゃない。

仕事に追われる毎日なんだ。

ここ吉野でのんびりして、英気を養って、願わくば少しだけ瑠璃さんに甘えさせてもらって───

耳元に何かが触れ、それが風に揺れるたんぽぽだと気付いた頃、ぼくはまた眠りに落ちたのだった。





<終>






<おまけの話>






(───賊だ!政文!将人!)

大声で呼び付けてから賊に向き合おうと体勢を整えると、間髪入れずに飛び掛かられた。

ふいを喰らって後ろに身体が大きく傾き、賊諸共に倒れ込む。

賊は好機と見たのか、ぼくの胸にのしかかり、ぐいぐいと首を絞めつけてくる。

(くそっ・・)

何とか賊の手を弛めようと試みるも、いかんせん胸の苦しさがあって思うように身体が動かない。

胸さえ苦しくなければ・・・

胸さえ・・・

(───胸?)

ハッと我に返り、同時に目が覚めた。

「・・・」

夢、か────

目の前には、先ほどよりも幾分か色を薄くした春の空がある。

目だけ横に動かせばたんぽぽが咲いてるし、相変わらず鳥の囀りが聞こえてきて───

これ以上はないと言う牧歌的な状況で、どうしてこんな夢をみたんだろう。

解せない気持ちで起き上がろうとした途端、その理由が判った。

瑠璃さんがぼくの胸に身体を預けて眠っているのだ。

どれくらいい寝てたのかわからないけど、眠るぼくを見るうち、瑠璃さんも眠くなってしまったのだろう。

起こしかけた身体をまた元に戻し、ばくはため息を吐いた。

瑠璃さんの重みを、寄りによって賊と取り違えるなんて・・・

夢の中とは言え、こんなことが瑠璃さんに知られたら懲罰ものだな。

目だけ下に動かすと、気持ちよさそうに眠る瑠璃さんの顔が見えた。

春風が瑠璃さんの髪を軽く揺らしている。

起こしちゃ可哀想かな。

でも、少し日も翳ってきてるし、軽いとは言え怪我もしてるわけだし、そろそろ起こさないと───

そう思って手を瑠璃さんの肩に置こうとした瞬間、パチリ、と瑠璃さんの目が開いた。

少しの間、微動だにせず、やがて状況を思いだしたのか、顔だけ上に向けてきた。

下を向いていたぼくと、当然、目が合い

「あ」

瑠璃さんの口が開き

「おはよう」

律儀に挨拶をしてくる。

「おはよう」

肩に置こうと思っていた手を、頭に置き、ぼくも挨拶を返す。

「そろそろ戻ろうか」

「そうね。小萩も待ってるだろうし」

上体を起こし、2人で伸びをする。

瑠璃さんを抱き上げ歩き出すと

「こっちから回ってね」

たんぽぽの咲いてない迂回するルートを示され、素直に従う。

吉野に来るまでの道中の出来事や、昨日の夕餉のことなど、取りとめもなく続く瑠璃さんの話に相槌を打ちながら歩く。

どれも大した話じゃないと言えばそれまでだけど、でも、こんな風に話してくれる瑠璃さんをいいなと思う。

それに不思議と瑠璃さんが話すと、大した話じゃなくてもどこか面白味のある話になっていて、それは瑠璃さんの持つカラリと陽気な性質と、そして恐らくはサービス精神からなんだろうと思う。

ぼくは進んで面白い話が出来るようなクチじゃないし、その辺り、瑠璃さんがカバーしてくれてるって言うか。

山荘に戻ると、今か今かと待ち構える小萩に迎えられた。

「なかなかお戻りにならないから・・」

恨みがましい目を向けられ

「悪かったね」

軽くいなして部屋に入ろうとすると

「何をなさっているのかと思いましたわ」

後ろから言われ、カッと耳が熱くなった。

何をって・・・

いや、動揺するな。

小萩はそう言う意味で言ったわけじゃないはずだ。

額面通りの意味しか含まれていないに違いない。

帰りが遅いから、一体、何をしているんだ、と。

そう言う意味だけだ。

「高彬、どうしたの。顔が赤いけど」

抱きかかえたままの瑠璃さんに下から言われ、さらにかぁっと熱くなる。

「やだ、やっぱり風邪ひいたのかしら・・、あんなところで寝たから」

言いながら額に手を置かれ、次いで両手で頬を挟まれ、瑠璃さんは熱を計ってるだけなんだろうけど、ひやりとしてそれでいて柔らかい瑠璃さんの手の平の感触に、それこそ体温がグッと上がってしまう。

「いや、大丈夫だよ・・」

隣で様子を見てる小萩の目が気になって適当にかわしたのに、瑠璃さんはすっかりぼくが風邪をひいたと思い込んだようで、ぼくの腕から下りると

「小萩、早く寝床をこしらえて。高彬、横になるのよ」

「大丈夫だって、瑠璃さん」

「かしこまりましたわ、姫さま。すぐに寝所をご用意致しましわ」

「だめよ、高彬、あたしの言うことを聞きなさいよね」

三人の声が飛び交い、やけに「寝所」が強調されてるように聞こえたのは気のせいかな・・・

その後、あれよあれよと言う間に寝所が用意され、ぼくはあっと言う間に寝床に臥せられてしまっていた。

やれ薬湯だ、お医師だ、と瑠璃さんと小萩がバタバタと去って行き、一人になったところでぼくは

(あーあ)

と盛大にため息を吐きながら、両腕を頭に回した。

病気でもないのに寝かされるなんて、なんでこうなるかなぁ。

どうしてぼくはいつも瑠璃さんのペースに巻き込まれてしまうんだろう。

ふと外に目をやれば、まだ外は十分に明るい。

せっかくの吉野だし、久しぶりに瑠璃さんと遠乗りでもして、京では出来ないことを満喫しようと思ったのに。

まぁ、でも───。

少し空を見てるうちに気が変わってくる。

ずっと仕事が忙しくて瑠璃さんと会うのは久しぶりだし、「京でも出来ること」を吉野でしちゃいけないわけじゃないしな。

指図なく、こうして早い時分から寝所まで用意してもらえたわけだし。

願ったり叶ったりの状況───

と言えないこともない、かな。

もうじき瑠璃さんと小萩が、薬湯なんか持ってやってくるだろう。

そうして瑠璃さんはぼくに向かい年上風を吹かせて

「さ、飲むのよ」

とか何とか言うに違いない。

薬湯くらいいくらだって飲んでやるさ。

飲み干したら眠くなった振りをして小萩を追い払い、そうして大人しく横になったと見せかけて、安心してる瑠璃さんを寝所に引きずり込み───

そうなったらぼくのペースだ。

(オトコをなめるなよ、瑠璃さん)

やがて遠くからパタパタと言う二つの足音が聞こえ、思ってた通りの展開に、ぼくは少々の自惚れを感じながら静かに目を閉じたのだった。





<おしまい>

ありちゃんさん、みっちさん、コメントありがとうございました。
みっちさん、お久しぶりです!


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「京でも出来ること」って、一体何でしょうね。


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乳姉妹ブログ「続・後宮物語<最終話>」更新しました!

瑞月です。

いつもご訪問いただきありがとうございます。

乳姉妹ブログ「あれこれプラス」に「続・後宮物語<最終話>」をアップしました。

前回の更新からかなり時間が空いてしまった上での、いきなりの最終回となりましたが、よろしかったらお付き合い下さい。

nenicaさん、元管理人さん、ぺんぺんさん、鈴夏さん、ベリーさん、コメントありがとうございました!

鈴夏さん、「あれこれ掲示板」に私が上野動物園で撮ったシャンシャンの写真をアップしています。もう、最高に可愛かったですよ。

ベリーさん、最新のサークルのページに更新する方法をメール差し上げましたが、でも、近いうちに「おまけの話」を付けてアップ致しますね。



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近況&中傷行為についての心境など

瑞月です。

いつもご訪問いただきありがとうございます。

先日、サークルに投稿した作品をお読みいただきありがとうございました。

久しぶりの創作はとても楽しかったです。

私事となりますが、最近の近況や心境などを少し書こうと思います。

更新をお休みしていた半年の間で、お仕事を始めました。

近所のベーカリーカフェです。

少しずつ勤務時間が増えて行き、今は週4、一回6時間です。

バイトの子は私以外はほぼ20代、殆どが大学生で、一人20代半ばの新婚主婦と、27歳のフリーターの男の子。

今までは話をすると言ったら、同年代かうんと若くて小・中学生でしたので、20代の子と話す機会が出来てとても楽しいです。

話しながら

(おぉ、これは自分が書いてる現代編や社会人編の瑠璃と高彬の年代じゃないか!)

と密かに思ったりしています。

そして更に、今まで自分は

(もうすっかり瑠璃母の年代だなぁ)

と思っていたのですが、リアルな20代の子と接すると

(これはもう完璧に私は「大皇の宮」ポジションだな)

と思いました。いや、絵式部かも。

後は、上野動物園のシャンシャンが可愛過ぎて、年間パスポートを購入しました。

元々、パンダは子どもの頃から好きだったのですが、シャンシャンで更にボルテージが上がりました。

抽選にはことごとく外れてしまったのですが、2月からの一般公開で見てきました。

まだ2回しか行けていませんが、せめて月一くらいは見に行きたいと思っています。

中傷コメントを受けていたことに関しては、たくさんの励ましの言葉をありがとうございました。

今の率直な気持ちを一言で言うと「無関心」と言うのが一番ぴったりくるかもしれません。

もちろん忘れたわけではありません。

でも、今は心の底から「何を言ったって通じる相手じゃないんだ」と思っています。

同じジャパネスクファン、高彬ファンとして、ずっと一抹の期待を持っていました。

いつかは判って反省して、それなりの対応をしてくれるんじゃないか、と。

でも、そう言う相手ではなかったということが判明し、それが徐々に私の中で「無関心」と言う形になりました。

人を傷つけ、嘘に嘘を重ね、そんなことまでして書く二次創作に何の意味があるのか、そこまでして続けるブログにどんな未来が待っているのか。

悪事は必ず自分に戻ってくると言うのに、そんな生き方をしていて本当にいいのか…

ずっとグルグルと思っていた思いですが、でも、それは私が考えることではないと気付きました。

私の人生じゃない。彼女の人生ですから。

私は、自分がそう言う人間じゃなくて良かった。心からそう思います。

同じように中傷コメントを送りつけてやろうか。

正直に言えば、そう言う思いが頭を掠めたことはありますが、私はやりませんでした。踏みとどまりました。

踏みとどまれる人間で良かったと思います。

「無関心」となったことにより、本当に気持ちが楽になりました。

こんな心境になれたのも、応援して下さった皆さんのお蔭です。

言葉では言い表せないほどの感謝の思いでいっぱいです。

ずっと胸の奥にあった固い石の重しがなくなりました。

でも、最初にも書きましたが、決して忘れたわけではありません。

今まで夫には中傷コメントのことを話していたのですが、今回、子どもたちにも話しました。

中学3年の双子の子どもたちは、どっぷりネットの世界になじんでいます。

ツイッターもラインも、ブログの閲覧もしています。

被害者にも、もちろん加害者にもならないために「お母さんが実際に体験した中傷コメントの被害」として、書き込みもIPアドレスも全てを見せました。

書き込めば必ず足跡が残ること、管理者が削除しない限り一生残ること。

書き込まれた人間がどれだけ苦しむか。

中傷コメントの文言を読み、娘は私のために泣いてくれました。息子も憤ってくれました。

私の住む地域の行政では「インターネットトラブル相談窓口」や無料で弁護士に相談に乗ってもらえるシステムがあります。

中傷コメントを書き込むと言う悪事に時効があるかどうかわかりませんが、後学のために今度、プリントアウトしたコメントを持って話を聞いてもらってこようかと思います。

どの程度(頻度・内容・期間)からが「犯罪」として事件となるのか。

実際、私はその時期、原因不明の蕁麻疹が出て、病院にもかかったので、その診断書をもらってこればそれも有効なのか、など。

中傷行為の被害など、もう二度とはしたくない経験ですが、せっかくなので、色々、勉強しておこうと思います。

コメントを下さった皆さんもありがとうございます。まとめてのお礼となりますが、とても嬉しかったです。

仕事に時間を取られ、思うように創作時間が作れず更新はかなりゆっくりとなりそうですが、また瑠璃と高彬の物語を書いて行きたいです。

よろしければまたお付き合いのほど、お願いいたします。


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春の競作大会@らぶらぶ万歳サークル

お久しぶりです、瑞月です。

ずっと更新をお休みしていましたが、今回、「らぶらぶ万歳サークル」さまの春の競作大会に参加させていただきました。

更新がない間もご訪問いただいたり、応援のコメントや拍手をありがとうございました。

本当に励まされました。

すっかり元気になりました。

生活も少し変わり、その辺りの近況や今の心境などは、また改めて記事に致しますが、まずは久しぶりのお話を読んで頂きたいと思います。

今回のお題は「たんぽぽ」でした。

「One spring day」のタイトルで参加させてもらっています。

発表日は明日(20日)です。

久しぶりの二次創作で満足の行く作品ではないのですが、何とか書き上げることが出来ました。

まだ4月だと言うのに夏日になったり、かと思うと急に寒くなったりで不安定な気候が続いていますが、皆さん、体調に気を付けてお過ごしくださいね。

近いうちに改めて皆さんへのお礼や近況報告の記事を上げますので、またお立ち寄りいただければと思います。

それでは明日「らぶらぶ万歳サークル」さまへ、よろしかったらどうぞ。


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お知らせ

瑞月です。

いつもご訪問いただきありがとうございます。

私が受けた中傷行為について何度か吐き出させてもらっていますが、また、吐き出させて下さい。

その人は元々は私の読者の方でした。個人的なメールのやりとりもしていました。

その方は現在、私と同じジャパネスクのブログを運営していますが、だから「管理人」と呼ばず、あえて「彼女」と呼びます。

彼女は私に様々な中傷行為を行ってきました。

私がブログ上でそのことに触れても、謝罪はおろか、中傷行為を認めもせず、平然と更新を続けています。

やったことは本人が一番良く分かっているはずです。

私はいつも心のどこかで、いつかは彼女は自分のしたことを認めてくれるんじゃないかと思っていました。

でも、そんなことはありませんでした。

嘘に嘘を重ね、平然と更新を続けています。

彼女が更新を続けるたびに、私は傷付き続けています。

ここまでして続ける、二次小説と言うのは、一体何なのでしょうか。

私はわからなくなってきました。

人の心を傷つけ踏みにじる中傷行為は、私は犯罪だと思います。

凄惨な殺人事件が起きれば、ニュースで取りあげますが、殆どの人にとっては、その事件は過去の出来事になって行きます。

でも、犯罪に合われた方はそうではありません。

被害者も、そのご遺族も、ずっと悲しみと苦しみの中にいます。

殺人事件と私のことを同等に語るのは失礼なことですが、でも私には、その悲しみと苦しみが少し分かる気がします。

人を傷つけるのは、何も刃物だけじゃないはずです。

誠意のかけらもない、人を人とも思わない振る舞いで、彼女は私をずっと傷付け続けています。

目には見えないし、血も流れていませんが、私の心には大きな傷や小さな傷がたくさんあります。

私は、中傷行為になんか負けたくない、犯罪になんか負けたくない、その一心で、ずっと気を張って頑張ってきました。

だけど、少し疲れてしまいました。

きっと、彼女は、私のこの記事を読んだって、また更新を続けることでしょう。

怒りよりも、悲しさ、虚しさを感じます。

少しだけお休みさせて下さい。少し疲れました。

社会人編も後宮物語も、なんとかラストまで書きたかったのですが、今は書けそうにありません。

せっかく瑠璃の返歌も考えていただいたのに、本当にすみません。

でも、大切なラストだからこそ、心から楽しい気持ちで書きたいです。

閉鎖はしません。お休みです。

静香ちゃんの二次小説は投稿を続けます。

書き切ったら、また違う気持ちになれるかも知れません。

皆さんには、いつも応援していただき支えていただきました。

いつも感謝していて、私はその感謝の気持ちを「お話」と言う形でお返ししてきているつもりでした。

その「お返し」も出来なくなってしまい、本当にごめんなさい。

元気になったら、また更新を始めます。

寒くなってきましたので、皆さんも体調をくずされないように気を付けてお過ごしください。




瑞月


(←お礼画像&SS付きです)

社会人・恋人編<96>

「瑠璃さん!水無瀬・・」

2人の登場は、ぼく同様、曽茅野氏にとっても驚きだったようで、瞬きもせずに凝視している。

瑠璃さんは断りもなくぼくの隣に座り───






─Up to you !Ⅱ─<第96話>






曽茅野氏の隣の席が空いていたけど、座る気はないのか、水無瀬は瑠璃さんの後ろに立ったままでいる。

「間に合ってよかったわ」

瑠璃さんはにっこり笑って言い、ぼくと曽茅野氏の顔を順番に見た。

その笑顔にどこか含みがあるように見える。

「どちらかしか選べないとしたら、大馬鹿者───。ねぇ、曽茅野さん。これってあなたのことよ」

瑠璃さんは前に座る曽茅野氏を真っ直ぐ見ながら言うと、ぼくに向かって肩をすくめてみせると

「・・色々、分かっちゃった」

舌を出した。

「分かったって・・」

「曽茅野さんの動機も、勘違いも」

「・・・」

「曽茅野氏さん、あなた、大きな勘違いをしてるのよ」

微動だにせず座ったままの曽茅野氏は、ポーカーフェイスを装いながらもやはり瑠璃さんの言葉に反応しているように見える。

「阿矢さんと話したの」

今度ははっきりと曽茅野氏の顔に変化があった。

「阿矢さんと?」

聞き返したぼくに向かい瑠璃さんは頷き

「今朝、政文の怪我を診てもらった病院で見かけたのよ、阿矢さんを」

「病院・・」

「奇遇よねぇ」

たっぷりと間合いをとって、瑠璃さんはぼくから曽茅野氏に視線を移した。

「あたしはね、曽茅野さん。色々とあなたに腹は立てているのよ。大江・・、友だちを危険な目に合わせたし、色々、あたしや高彬にに失礼なことをしたしね」

「・・・」

「だから、とっちめてやりたい気持ちはあるの」

「・・・」

「でも、病院で阿矢さんと話して気が変わったわ。煌からも話の裏を取ったしね」

「水無瀬から裏を取った?」

後ろで水無瀬が頷く気配がある。

瑠璃さんは視線を曽茅野氏に当てたまま、そうして

「では、これからあなたの勘違いのからくりを解いていくことにしましょう」

背筋を伸ばし、名探偵の決め台詞よろしくおごそかに言うと、コホンとひとつ咳払いをした。

「曽茅野さん、あなたは以前、阿矢さんと交際があった───わよね?」

まだ、瑠璃さんに手の内を見せる気はないのか、曽茅野氏は微動だにしない。

「まぁ、いいわ」

瑠璃さんは肩をすくめると

「こう言う場面で、独り語りをするのは、謎解きをする時の定番だものね。勝手に話を進めさせてもらうわ」

ぼくの前に置かれていたコップの水を一口、口に含むと、瑠璃さんはゆっくりと話始めた。






…To be continued…


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社会人・恋人編<95>

「だとしたら、それが何だと言うのですか」

「・・・」

悪びれもしない曽茅野氏の言葉にぼくは黙り込み、改めて曽茅野氏を見てしまい───






─Up to you !Ⅱ─<第95話>






「いかにも、私は君に恨みを抱いている。動画のアップも写真の盗撮も、そして渋谷での出来事も全て私の仕組んだことです。もちろん、人に依頼をしてやったことですがね」

「・・・・」

「どうしますか?私を警察に突き出しますか?もっとも、仮に君が被害届けを出し、よしんばそれが受理されたとして、一体どれほどの刑罰に当たるのかは定かではありませんし、私もそれなりに知恵を絞ってすり抜けるつもりではおりますが」

「別に・・・」

淀みなく出てくる曽茅野氏の言葉に若干押され気味ながらも、ぼくは言葉を発した。

「今すぐ警察に突き出すつもりなどはありません。ただ、渋谷での出来事は一歩間違えれば大変なことになっていたわけですから、簡単に許すわけには行きません。事と次第によっては告訴も辞しません」

「・・・」

「あんなこと、あってはいけないことです。瑠璃さんの身にも、もちろん他の女性の身にも」

「なるほど、ね。藤原くんも、そう言う一般常識は持ち合わせているわけですね」

「・・・・」

含みのある言い方に引っ掛かりを感じる。

「もちろん持っています。だけど、今、ここに駆け付けたのは、告訴うんぬんの話をするためではありません。どうして、あなたがそこまでぼくに恨みを抱いているのか、それを知りたいのです」

「・・・」

「あなたがぼくに恨みを抱いていることは判っても、その理由が判らない。それが正直なところです。だけど、このままにしておくわけには行かない。だから、誤解があるならそれを解きたいし、もしぼくに非があるのでしたら、謝罪したいと思っています」

曽茅野氏は黙ったままぼくを見ている。

冷ややかな目のようにも見えるし、ぼくの真意を計っているようにも見える。

ややしばらくの沈黙のあと、曽茅野氏はわざとらしいほど大きなため息を付いた。

「もしも君が本心でそう言っているのだとしたら、私は虚無感に襲われますよ」

「虚無感?」

「えぇ」

虚無感に襲われるほどのこと・・・

一体、何だと言うのだろう。

「君は大馬鹿者か、大嘘付きか、どちらかのようだ」

「・・・」

どちらに転んでも喜ばしからぬことで、さすがに言葉につまっていると

「どちらかしか選べないとしたら、大馬鹿者でしょうね」

後ろから声が聞こえ、驚いて振り向くと───

瑠璃さんと、水無瀬が立っていた。






…To be continued…


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