社会人・恋人編<78>

秘書課を後にし席に戻ると、すでに瑠璃さんは午後の仕事に取り掛かっていて、一心不乱にキーボードを叩いている。

イスを引いて座るぼくを横目でチラリと見ると、何事かをサラサラと書き、メモを回してきた。

メモには一言

<怪しい>

と書かれてあり───





─Up to you !Ⅱ─<第78話>






怪しい?

<何が>

そう書いてメモを戻すと

<何か隠してるでしょ>

またメモが回ってきた。

目が合って、頭を横に振ると、瑠璃さんも振り返してきた。

信じない、と言う事だろうか。

「・・・」

勘の良い瑠璃さんのことだ、ぼくが動き出してることに気が付いてるに違いなく、それで変に対抗心でも燃やされて勝手に行動を起こされるよりは、瑠璃さんの身の安全を確保しつつ一緒に動いた方がいい───

そう判断し、またメモを回す。

<今晩、捜査会議だ>

メモを読むと、瑠璃さんは頷き、納得したのかまたキーボードに向かいだした。

仕事を終え、時間差で退社したぼくたちは、ぼくのマンションの最寄り駅で落ち合った。

政文には、今日の見張りはここまでで良いと伝えてある。

リビングのテーブルに向かい合って座った途端、瑠璃さんは身を乗り出してきた。

「ごまかしても無駄よ。何か進展があったんでしょ」

「え」

「今日の高彬は何だかずっと考えてる風だったもの」

「・・・」

心中、舌を巻く。

やっぱり瑠璃さん言うところの「武士の勘」は伊達じゃないんだな・・・

少し考えて口を開いた。

「瑠璃さんは、総務の権野を知ってるかい?」

「権野さん?・・あぁ、何となく・・・、うん、分かるわ」

「実は権野が、曽茅野氏に頼まれて、瑠璃さんの個人情報を抜き取っていたと言う事がわかったんだ」

「え、何よそれ。抜き取ったって、どうやって」

「曽茅野氏はパスワードを、甥である鷹男チーフから教えてもらっていたんだ。それで権野に命じて、本来なら極秘情報であるはずの社員情報台帳にアクセスさせていた」

「どうしてそんなことを」

「目的は解らない。まだ情報が細切れなんだ。いくつか解ってきてることもあるけど、繋がって来ない。でも、今回のことに曽茅野氏が噛んでることはほぼ間違いないことだと思ってる」

「・・・」

鷹男チーフに瑠璃さんの番号を教えたのは藤宮先輩ではないことを伝えると、察しの良い瑠璃さんは意味ありげに頷き、だけどそれ以上のことは聞いてこなかった。

少しの間、何事かを考えていた瑠璃さんは

「実はね、あたしも思い付いたことがあるのよ。ひとつの可能性として聞いてくれる?」

「もちろん」

「今回のこと、女の人の仕業ってことはないしら?」

「女の人?」

「そう。うちの社の女性社員の誰か」

「・・・」

「あたし、どこかで、はなっから男の人の仕業だと思いこんでたのよ」

それはぼくもそうなので頷く。

「だけどね、難しく考えないで、すごくシンプルな理由として、高彬に恨みを持った女の人の仕業って言う風には考えられないかしら」

「ぼくに恨み」

「そう。振られたとか、もしくは熱烈に片思いしてる人が報われないことに思いあまって、とか」

「いや、ぼくは誰のことも振ったことなんかないし、ぼくに片思いなんて・・」

言い掛けるぼくの言葉を、瑠璃さんは制した。

「高彬。まずはそこの認識を改めてよ。あんたは自分が思ってるより、モテてるの」

「・・・」

「前も言ったかも知れないけど、あたし、NY支店にいる頃から、東京支店のあんたの噂は聞いてたのよ。すごくモテるって。秘書課の誰それと広報担当の誰それがあんたを巡って壮絶なバトルを繰り広げたとか、それと・・・」

瑠璃さんはいったん言葉を濁らせると

「これはこっちに来てから聞いた話だけど、とっかえひっかえ自分のマンションに女子社員を引きづり込んでるとか、妊娠させた女性を堕胎させて捨てたとか・・」

「何だよ、それ」

思わずムッとして言うと

「そう言う噂があるって聞いたのよ」

「・・・」

「あたしは信じてないけど」

「当たり前だ」

「だけどね、高彬。あんたはこんな噂が流れてることなんて知らなかったんでしょ?」

渋々、頷くと

「噂ってそんなもんなのよ。絶対に本人の耳には届かないの。だけどね、これだけの噂が流れるってことは、誰かに恨まれてるって可能性は十分に考えられるわ」

「・・・」

「それが『高彬を良く思わない一派』ってことと繋がってるんじゃないかしら」

瑠璃さんの言う事はそれなりに筋が通っていて、ぼくは(ふむ)と腕を組んだ。

今回の一連のことが、ぼくに恨みを持った女性の仕業だとする。

動画をアップして、隠し撮りした瑠璃さんの写真を投函して、そして瑠璃さんを装ってデートクラブに申し込みをして・・・

「やっぱりそれは少し無理があるよ、瑠璃さん。渋谷でのことは、明らかに瑠璃さんを狙ったことだろう」

「だけどホラ、高彬の恋人であるあたしを傷物にしてやろうって考えたとか」

「もちろん、その可能性は否定しないけど。だけど瑠璃さんは曽茅野氏と直接話した時、敵意を感じたって言ってたじゃないか」

前回の捜査会議でそう言ってたことを思い出して言うと

「うーん、まぁ、そうなんだけどねぇ。だけど例えば、元々そう言う人だったってことはないかしら。感じ悪い人って言うか」

「合コンでのあの感じからしたら、まずそれはありえないな。むしろかなり如才ない人だと思うよ」

そうよねぇ、と瑠璃さんは考え込み、結局、まだぼくたちの捜査は想像の域を出ないのだった。

「もしシンプルに考えるとしたら、むしろターゲットは瑠璃さんだと考える方が自然なんじゃないかな。瑠璃さんこそ、どこかで男を泣かせたとか、そう言うことはないの?」

好奇心もあり聞いて見ると、瑠璃さんは考える風に黙り混み

「ひとつ思い付くことがあると言ったら・・・」

(何だよ、本当にあるのかよ)

と焦っていると

「うんと小さい頃は、よく男の子のこと泣かせてたって母さまに聞いたことがあるわ」

「・・・」

「時効だと思うけど」

「・・・だな」

情報交換もあらかた終え、帰ろうとする瑠璃さんを寝室に誘い込んだ。

「この間、絆は深めたばっかりだと思うけど」

と言う瑠璃さんの言葉は、この際、無視して構わないだろう。

絆を確固たるものにしたところで送って行き、マンションの中に瑠璃さんが消えて行くのを見届けた。

帰宅し玄関を開けると、タイミングよく携帯が鳴り

「若君」

守弥からの電話だった。





…To be continued…


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社会人・恋人編<77>

「──ふぅん。で、仮にだ。俺が瑠璃ちゃんの携帯番号をPCの社員情報から得たとしたら、おまえはどうしようって言うんだ」

ソファに深々と座り直すと、鷹男チーフは唇の端を上げて笑ってみせた。

口調は強かったけど、その裏にこっちの出方を窺うような色合いがあるのをぼくは見逃さなかった。

ぼくは正面からに鷹男チーフの目を見ると───






─Up to you !Ⅱ─<第77話>






「単刀直入にお聞きします。あなたは曽茅野氏にパスワードを教えましたね?」

「・・・」

「なぜそんなことをしたのか、その理由を・・」

「おいおい、待てよ。せっかちな奴だな。おまえはベッドの中でもそうなのか。そんなんじゃ直に瑠璃ちゃんに振られるぞ」

「理由をお聞かせください」

完全に無視して話を続けると、鷹男チーフは鼻白んだように口の端を歪めた。

───まったく。

よくこんな状況で軽口を叩くもんだよ。

いっそ、感心するくらいだ。

社員の個人情報を私的に流用することが、どれほど悪いことなのかわかってないんじゃないのか?

「お聞かせいただけないのでしたら、ぼくにも考えがあります」

一瞬、目を大きくした後、鷹男チーフは突然、大声で笑いだした。

「俺を脅すなんておまえが初めてだぞ、藤原。ますます俺はおまえが気に入ったよ」

「はぐらかさないで下さい。ことと場合によっては本当に内部告発しますよ」

ぼくの声音に何かを感じ取ったのか、ふと、鷹男チーフの表情が変化した。

「何かあったのか?」

探るようにぼくを見てくる。

「ノーコメントです」

ぼくはきっぱりと言った。

こちらの手のうちを見せるわけには行かない。

渋谷でのことを思えば、曽茅野氏がクロであることはほぼ間違いないと思う。

動機が分からないことはひとまずおいて置くとして、協力者がいたのかどうかも分からない。

鷹男チーフに取って曽茅野氏は叔父貴だから、パスワードを曽茅野氏に教えたのは鷹男チーフだろう。

だけど、それだけで鷹男チーフもクロだと断定するわけには行かず、だからこうして様子を探りにきたのだ。

「その理由の内容いかんと、今後は個人情報を閲覧し私的に利用しないというのであれば、今回のことはぼく一人の胸に収めます」

鷹男チーフはしばらく黙ってぼくの顔をみていたが、やがて

「競争だよ。俺と叔父貴は競争をしていたんだ」

「競争?何のですか」

「何人の女性を落とすか、だ」

「・・・」

「だからパスワードを教えた。俺だけが女性社員全員の連絡先を知ってるのは不公平だろう」

「・・そう言うのを不公平と言うとは思えませんけどね」

苦々しい気持ちで舌打ち交じりに言いながらも、でも、それはいかにもありそうなことだとは思えた。

断定は出来ないけど、あそらく鷹男チーフは本当のことを言っているのだろう。

案外、話がそう言う方向になるように曽茅野氏から巧みに誘導されたのかも知れない。

瑠璃さんは

「曽茅野氏は鷹男からあたしの番号を聞いたと言って、電話を掛けてきた」

と言っていた。

多分、その時は本当に鷹男チーフが教えたんだろう。

それで落とした女性の数を競っていた鷹男チーフは

「女性社員の番号を知りたかったらいつでも俺に聞いてくれ。俺は立場上、社員の個人情報にアクセスできるパスワードを知っているんだ」

とでも言い

「それは不公平ですね。ぜひ私にもパスワードを教えて下さい」

曽茅野氏が答える。

大体、こんな感じじゃないだろうか───

「俺は理由を話した。内部告発なんて物騒なことはしてくれるなよ」

「──失礼します」

その問いには答えずに立ち上がると、秘書室を後にした。

何が、何人の女性を落とすかの競争だ。

少しはそうやって気を揉んでいろ。

いいクスリだ。





…To be continued…


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社会人・恋人編<76>

秘書課のドアを開け入っていくと、鷹男チーフは袖付きのイスに深く座り本を読んでいた。

まだ昼休み中なので、回りに人はいない。

ぼくに気が付くと、鷹男チーフは(おやおや)とでも言うように眉を上げ───






─Up to you !Ⅱ─<第76話>






「珍しいな、藤原。おまえが秘書課にくるなんて。ひょっとして俺の秘書でもやりたくなったのか。・・・良かったら読むか?貸すぞ」

パタンと閉じると本をデスクに放る。

───『帝王学』

その言葉と本は無視して

「今、ちょっとお時間いただけますか」

「いいぞ」

斜め前のイスの座るように促され、ぼくは首を振った。

「出来れば別室で」

「・・・」

少しの間、ぼくの目をじっと見ると

「いいだろう」

立ち上がると、秘書室からドア続きになっている応接室のドアを開けた。

向かい合って座り、ぼくは短刀直入に切り出した。

「今上先輩。あなたは会社のパスワードを使い、社員の個人情報を私的に入手している。・・・違いますか?」

「・・・」

鷹男チーフの表情には何の変化も見られない。

「だとしたら職権乱用で、場合によってはぼくはあなたを内部告発しますよ」

「・・・どうしてそう思うんだ。言って見ろよ、藤原」

声に僅かに怒気が含み始め、ぼくの目をはったと見据えてくる。

正面からその視線を受けとめ、ぼくはゆっくりと切り出した。

「あなたは、瑠璃さんの携帯番号やアドレスを藤宮先輩から聞いたと言った。だけどそれは違う」

昨夜、今までの経緯を全て洗いだしてみた。

その中でどうにも引っ掛かることがあり、それは、藤宮先輩が鷹男チーフに瑠璃さんの連絡先を教えた、と言う事だった。

遠縁と言う理由だけで、藤宮先輩がそんなことをするだろうか?

藤宮先輩だったら、瑠璃さんに確認を入れてくるんじゃないだろうか───

それを知った時からわずかに感じていた違和感であり、じっくりと考えた時に浮き彫りとなったぼくの疑問点だった。

水無瀬は、ぼくの番号を千円で売った。

だけどそれは、裏返せば、そう易々と、つまりはタダでは個人情報を人に教えないと言うことにもなる。

実際、地域の住民名簿や会社の社員名簿から、昔は当たり前のように存在していた電話番号や住所の記載がなくなってきている。

皆の意識がそう言う方向に流れている中で、一番、個人情報に気をつけたいであろう若い女性である藤宮先輩が、いとも簡単に瑠璃さんの情報を鷹男チーフに教えるとはどうしても思えない。

そこに持って来ての、昨日の権野の振る舞いである。

もし鷹男チーフが、誰か他の人から聞いたのなら、何も藤宮先輩の名前を出す必要はないわけで、つまり、人には言えないような入手方法をしたからなんじゃないか───

鷹男チーフはパスワードを知っていて、それを私的に使っているに違いない。

そう疑いを持ったぼくは、午前中に藤宮先輩に声を掛け、世間話をする振りをしながら

「最近、妹がイタズラメールや無言電話で困っている」

とカマを掛けてみた。

「どこにも登録した覚えもないし、身に覚えがないことで、妹は『もしかしたら誰か友だちから流れたのかも知れない』とまで言いだし、とても憔悴している」

と。

そして

「女の人って勝手に友だちの番号を誰かに教えるとかあるんですかね?」

と畳みかけたら、藤宮先輩は

「それはないと思うわ。皆、ことに女性は個人情報には気を付けているから、ましてや友だちの番号を本人の許可なく教えるなんてことはしないはずよ」

「じゃあ、藤宮先輩もしたことがない?」

「もちろんよ。必ず本人に確認を取るわ。今は妹さんも疑心暗鬼になって辛いでしょうから、藤原くんも兄として支えてあげて」

その様子からは嘘を言ってるとは思えなかった。

鷹男チーフがパスワードを使って不正な方法で瑠璃さんの携帯番号を入手したと確信したぼくは、次に権野のところに行った。

権野はパスワードを書かれた紙を曽茅野氏から渡されたと言った。

なぜシンガポール支店に席を置く曽茅野氏が、本社の限られた人間しか知らないパスワードを知っているのか。

鷹男チーフが教えたに違いない。

──それがぼくのヨミだった。





…To be continued…


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社会人・恋人編<75>

「な、何だよ、聞きたいことって」

権野は落ち着かない素振りで二度三度瞬きをすると、紙コップのものを飲もうとし、中が空だったことに気が付くと

「ちょ、ちょっと飲み物、買って・・」

「まぁ、いいから座れよ」

立ち上がろうとしたところを、イスに引き戻した。

権野の目がせわしなく泳ぎ───






─Up to you !Ⅱ─<第75話>






「権野。あんまり言いたくはないけどさ、あの時のこと、忘れたりしてないよな?」

権野の真正面にイスを引き、腕を組む。

「あの時のこと・・・」

「新人研修の日のことだよ」

権野の顔色が変わり、何度も唾を飲み込んでいる。

「まぁ、特に誰にも言うつもりはないけどな」

「・・・頼む、そうしてもらえると・・」

「ただし、ぼくの気持ちひとつだ」

「えっ・・」

「おまえ、昨日、ぼくの部の藤原さんの個人情報を見てただろ」

「・・・」

「いくら総務部だって誰でもパスワードを知らされてるわけじゃないはずだ」

「・・・」

「どうやってパスワードを入手したんだ?」

「・・・」

権野は押し黙ったまま瞬きを繰り返している。

「言いたくないんなら仕方ないな。あの事を・・・」

立ち上がりかけると

「ま、待ってくれ」

権野は慌てたようにぼくの腕を掴んだ。

「話す。話すから、あの事だけは・・・、頼む」

「・・・」

イスに座り直し、もったい付けて頷く。

「あれは・・・頼まれてしたことなんだ。パスワードと名前を書いた紙を渡されて、それで個人情報のページをコピーしろって」

「誰に」

「・・・」

「言えよ。誰にだよ」

「そ、それは・・・」

「なら、あの話を上に上げるまでだな」

今度こそ立ち上がり歩き出すと

「わ、分かった、言う。言うから待ってくれ!」

後ろから悲痛とも言える声が聞こえてきて、ぼくはゆっくりと振り向くと、権野の目を正面から見据えた。

「・・・曽茅野さんからなんだ」

「・・・・」

やっぱり・・・。

思ってた通りの言葉に心の中で頷く。

「どうして曽茅野氏に頼まれたからってそんなことを引き受けたんだ。個人情報見たなんてバレたら、それこそクビだぞ」

「・・・あの人に弱み握られてて・・」

「はぁ?おまえ、あっちでもこっちでも弱み握られてるんだな。一体、曽茅野氏にはどんな弱み、握られてるんだよ」

思わず好奇心で聞いてみると

「人妻に手を出してる現場を押さえられちゃて・・・」

「・・・」

「ダンナにばらすぞって脅されて」

「・・・・」

全く、本当に浅はかな奴だよ。

泊まりでの新人研修の日、権野は下手したら懲戒免職、いや、犯罪者になるほどのとんでもないことをやらかし、それをぼくがどうにか阻止したことがあった。

とんでもないことと言うのは、その研修に外部からの講師として来ていた女性の部屋に、夜、忍びこんでいったのだ。

たまたま通りかかったぼくが、物音と言い争う声に気が付いて駆け付けると、権野は禁止されていると言うのに酒を飲んでいたらしく、赤ら顔で嫌がる女性に抱き付こうとしていた。

結局、未遂だったこともあり、その女性講師も「酔っていたし何もなかったから」と言う事でその場は丸く収まったのだけど、その話には後日談がある。

その講師は、実はうちの会社の大得意先の親戚の娘だと言うことは判明したのだ。

そして、どういうわけだか、その講師の女性がぼくを気に入ってくれて、いわば、ぼくの顔を立てる形で黙秘を続けてくれているらしい。

ぼくとしては、権野をクビにしたいわけでもなかったから、今までそれには触れてこなかったけど、瑠璃さんの個人情報を盗んでいたとなれば話は別である。

総務部を後にし秘書課に向かう。

ぼくはある確信をしていた。

権野には昼に行くと予め伝えておいたけど、今度はそんなことはしない。

奇襲攻撃を掛けてやる。

狙うは───

鷹男チーフ。





…To be continued…


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社会人・恋人編<74>

水無瀬から・・・?

こんな時間になんだろう。

携帯の画面を見ながら、考えること数秒。

不審に思いながらも通話ボタンを押すと───






─Up to you !Ⅱ─<第74話>






『あ、藤原くん?寝てた?・・隣に瑠璃がいたりして』

「・・・」
 
何、言ってるんだよ。バカか、こいつ。

・・まぁ、いてくれたら嬉しいけど。

「用がないなら切るぞ」

『冗談よ、冗談。相変わらず冗談が通じないんだから。実はね、ちょっと藤原くんの耳に入れたいことがあって電話したの』

「何」

『総務に権野さんっているでしょ?ほら、あのニヤけ男。彼が今日、瑠璃の個人情報を調べてたわよ』

「瑠璃さんの個人情報?」

『住所やら履歴書やら、よ』

「そんなのおいそれと見れるもんじゃないだろう」

『当然よ、社員の情報は総務部のコンピュータで一括管理してるし、それに厳重にパスワードもかかってるもの。きっと、どこかからパスワードを入手したのよ。昼休み、たまたま後ろを通りかかったら、履歴書をスキャンして取り込んだページを見ててね、それが・・』

「瑠璃さんのだったってわけか」

『そういう事。ねぇ、大丈夫なの?この間は渋谷であんなことがあって、今日は権野さんが個人情報見てるし』

「・・・」

『動画アップした人捜すよりも、いっそ結婚でもして京都に2人で戻って呉服屋でも始めたら?』

「はぁ?」

『何だか気味が悪いわ。大丈夫なの?瑠璃』

「・・うん」

何だかんだ言って瑠璃さんを心配してる気持ちが伝わってきて、ぼくは言葉少なに返事をした。

水無瀬との電話を終え、ベッドにゴロンと横になった。

ここに来て、権野が瑠璃さんの個人情報か。

曽茅野氏、鷹男チーフ、権野、そして兄貴───

何だってこうも次々と不審な動きをする人物が現れるんだ。

リビングに行き、政文に明日は朝一で瑠璃さんのマンションに行き、朝の通勤から見張るように言い付けると、ぼくはまたベッドに横になった。



******



翌朝、いつものカフェに行くと瑠璃さんはもう来ていた。

合図をしようとして、ふと思い留まった。

政文が見張ってることを思えば、迂闊なことは出来ない。

目だけ合わせて少し離れた席に座りコーヒーを飲んでいると、何やら瑠璃さんが目配せしてきてる気配があり、だけど、気が付かない振りを続けた。

政文の尾行は自分で指図したこととは言え、やりにくくって仕方がない。

この分じゃしばらく瑠璃さんとデートも出来ないじゃないか・・・

午前の仕事を終え、同僚と外でランチをすると言う瑠璃さんを、無理やり社員食堂に誘った。

今はなるべく出歩かない方がいい。

「あたしねぇ、何だか誰かに見張られてる気がするの」

窓際に並んで座り、食後のドリンクを飲みながら瑠璃さんが言い、ぼくは危うく飲んでいたアイスコーヒーを吹きだしそうになってしまった。

何やってんだよ、政文の奴。バレバレじゃないか。

「・・何か変な兆候でもあったとか?」

慎重に聞いてみると

「うーん、兆候って言うか・・、気配なのよねぇ」

「・・・」

「どこかから見られてる気配って言うか。ほら、あたし武士だから。武士の血が騒ぐって言うの?」

前を見たまま瑠璃さんが言い

「騒ぐのは血だけにしといてくれよ」

「何よ、それ」

「瑠璃さんは騒ぐなってこと」

釘を刺すと、一瞬、瑠璃さんはむぅとした顔になり、だけど

「わかってるわよ」

ストローでアイスティーを吸い上げた。



******



食堂で瑠璃さんと別れ、総務部に向かう。

昼時のオフィスは人もまばらで、その中に背を向けて座る人影があった。

「権野」

近づいて声を掛けると

「ふ、藤原・・。早いな・・」

権野は持っていた紙コップに入った飲み物を落としそうになった。

午前中、権野には昼休みに行くと伝えてあったのだ。

隣の空いているイスを引き寄せ、権野のそばに座る。

「権野。おまえに聞きたいことがある」

「聞きたいこと・・・」

権野はゴクリ、と唾を飲み込んだ。





…To be continued…


いきなりの「おまえ」呼ばわりで始まった「権野vs高彬」の平成の少将対決。
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