社会人・恋人編<96>

「瑠璃さん!水無瀬・・」

2人の登場は、ぼく同様、曽茅野氏にとっても驚きだったようで、瞬きもせずに凝視している。

瑠璃さんは断りもなくぼくの隣に座り───






─Up to you !Ⅱ─<第96話>






曽茅野氏の隣の席が空いていたけど、座る気はないのか、水無瀬は瑠璃さんの後ろに立ったままでいる。

「間に合ってよかったわ」

瑠璃さんはにっこり笑って言い、ぼくと曽茅野氏の顔を順番に見た。

その笑顔にどこか含みがあるように見える。

「どちらかしか選べないとしたら、大馬鹿者───。ねぇ、曽茅野さん。これってあなたのことよ」

瑠璃さんは前に座る曽茅野氏を真っ直ぐ見ながら言うと、ぼくに向かって肩をすくめてみせると

「・・色々、分かっちゃった」

舌を出した。

「分かったって・・」

「曽茅野さんの動機も、勘違いも」

「・・・」

「曽茅野氏さん、あなた、大きな勘違いをしてるのよ」

微動だにせず座ったままの曽茅野氏は、ポーカーフェイスを装いながらもやはり瑠璃さんの言葉に反応しているように見える。

「阿矢さんと話したの」

今度ははっきりと曽茅野氏の顔に変化があった。

「阿矢さんと?」

聞き返したぼくに向かい瑠璃さんは頷き

「今朝、政文の怪我を診てもらった病院で見かけたのよ、阿矢さんを」

「病院・・」

「奇遇よねぇ」

たっぷりと間合いをとって、瑠璃さんはぼくから曽茅野氏に視線を移した。

「あたしはね、曽茅野さん。色々とあなたに腹は立てているのよ。大江・・、友だちを危険な目に合わせたし、色々、あたしや高彬にに失礼なことをしたしね」

「・・・」

「だから、とっちめてやりたい気持ちはあるの」

「・・・」

「でも、病院で阿矢さんと話して気が変わったわ。煌からも話の裏を取ったしね」

「水無瀬から裏を取った?」

後ろで水無瀬が頷く気配がある。

瑠璃さんは視線を曽茅野氏に当てたまま、そうして

「では、これからあなたの勘違いのからくりを解いていくことにしましょう」

背筋を伸ばし、名探偵の決め台詞よろしくおごそかに言うと、コホンとひとつ咳払いをした。

「曽茅野さん、あなたは以前、阿矢さんと交際があった───わよね?」

まだ、瑠璃さんに手の内を見せる気はないのか、曽茅野氏は微動だにしない。

「まぁ、いいわ」

瑠璃さんは肩をすくめると

「こう言う場面で、独り語りをするのは、謎解きをする時の定番だものね。勝手に話を進めさせてもらうわ」

ぼくの前に置かれていたコップの水を一口、口に含むと、瑠璃さんはゆっくりと話始めた。






…To be continued…


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