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***短編*** 秋は夕暮れ<高彬 ver.> ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)このお話は一話完結です。
               
             






***短編*** 秋は夕暮れ<高彬 ver.> ***










文月の終わり───

まだまだ照り付ける陽射しは強いし、少し身体を動かせば汗ばむほどの気温である。

今年の夏はどうやら残暑が厳しいようで、暦の上では秋だと言っても、実感として秋が来たとは思えない。

季節の移ろいを感じ、花鳥風月を歌に詠むことが宮廷人と思われがちだけど、こう仕事に忙殺されると、日々、季節を感じてる暇はないわけで、まぁ、それはぼくが人一倍、そう言うことに疎い朴念仁だからなのかも知れないけど。

でも、実際、仕事に追われていれば、季節どころか雨が降りだしたことさえ気が付かない生活を送っている、と言うのが本当のところなのだ。

今日も朝から休む間もなく仕事をこなし、午後になって大蔵省へ書類を届けるため、右近衛府を出て歩き出したところで、ふと足元に影が動き、反射的に空を見上げた。

頭上を鳶が横ぎったようで、それが作った影のようである。

鳶は悠々と回遊を続け、立ち止まりそれを見ていたぼくは

「あ」

と声を出してしまった。

空が高い───

この前、空を見上げたのがいつだったか覚えてないけど、その時よりも空が高くなっている。

そうか、やっぱり秋は来ていたんだ。

ぼくの体感はともかく、どうやら季節は確実に移ろっているようである。



*******



「で、それをあたしに言いに来たと、そう言うわけ?」

「うん」

「前見た時よりも、空が高かった、と」

「うん」

「・・・」

瑠璃さんは少し目を細めるようにしてぼくの顔をじっと見ていて、どうやら、ぼくの真意を計っているようである。

「何だかさ、どうしても瑠璃さんに言いたくなったんだよ。他に話せるような奴も・・、その、・・いないし・・」

「・・・」

じっと見られると居心地が悪くなってきてしまい、ぼくは語尾をあやふやに飲み込んだ。

空が高いと気付いた時、ものすごい大発見をした気持ちになり居ても立っても居られなくなって、今日ばかりは早々に仕事を切り上げて三条邸に駆け付けたんだけど・・・

でも、時間が経ってみたら、確かに

(それがどうした。だから何なんだ)

と言う感じで、どうでもいいことのように思えてくる。

何でこんなことを大発見と思ったんだろう。

勇み足だったかな・・・

夢から醒めたような気持ちで、気まずさや一抹の恥ずかしさを感じていたら

「それは大発見だったわね」

瑠璃さんがにっこりと笑いながら言い

「あたしも見てみよ」

なんて言いながら立ち上がると、スタスタと部屋を横切り、簀子縁に立った。

そうして、勾欄に両手を付き身を乗り出すようにして空を見上げると

「あー、本当ね。空が高くなってる。すっかり秋の空だわ。・・・高彬もこっち来て一緒に見ない?」

最後の言葉は、振り返って言う。

「う、うん・・」

気を遣ってもらった感は否めないけど、それでも瑠璃さんの隣に立ち、同じように空を見上げると

「あれ?」

不思議なことにさっき見た時よりもまた一段と空が高くなっているように見える。

「ね?高いわよね」

「うん」

夕刻になるに連れ、秋の空と言うのは益々空が高く見えるのだろうか───?

理由は判らないけど、薄い空色に刷毛で描いたような雲が流れる空は、清々しいほどの透明感を持っている。

「ほら、あたしってずっと室内にいるでしょ?だから、考えて見たら空を見ることってあんまりないのよ。こんなに空が高くなってるなんてこと気付かなかった」

空を見たままの姿勢で瑠璃さんが言い、その言い方からは、ぼくに気を遣って言っているのか、それとも本心からそう言っているのかは判らず、何となく探るような目で見ると、チラリと瑠璃さんの視線が動き

「やぁねえ、疑ってるんでしょ。本当にそう思ってるわよ。そんなことで高彬に気なんか遣わないわよ」

ぼくの気持ちなんか先刻承知とばかりに笑って見せた。

しばらくは2人、黙って空を見上げる。

何の物音もせず、ただ、時間だけが流れて行く。

慌ただしく仕事に追われる生活からは、考えられないくらいの穏やかな時間。

「・・・少しだけ空が染まってきたみたい」

内緒話をするように瑠璃さんが言い、確かに西の方が夕焼け空になりつつある。

秋の日はつるべ落とし───

見ている間に、どんどん空の色が変わって行き、やがて空全体が綺麗な夕焼け色に染まった。

「すごい・・、きれい・・」

見上げたまま、呆けたように瑠璃さんが言い

「うん」

ぼくも言葉少なに頷いた。

こんなにも空と言うものは綺麗なものだったのか・・・

じっと見ていると、吸い込まれそうにも、反対に夕焼け空が迫ってくるような気もしてくる。

「きれいね・・」

「うん。綺麗だ」

空を見たままそれだけ言い合って黙ると、また、何の物音もしなくなる。

明日から、また忙しい毎日が始まる。

きっと空なんか見上げる時間もないくらい、仕事に忙殺されるに違いないのだ。

瑠璃さんと見上げた、今日のこの秋の夕暮れを、目に焼き付けておこう。

多分、これでしばらくは頑張れる。

瑠璃さんがいてくれて良かった。

些細な<大発見>を伝えたいと思う人が、瑠璃さんで良かった。

チラリと隣に目をやる。

優しいぼくの妻は、その頬も髪も指先も、全てを夕焼け色に染めて、ぼくが見ていることにも気付かずに、秋の夕暮れに見入っているのだった。





<終>

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Secre

非公開さま(Kさま)

Kさん、こんにちは。

お久しぶりです。コメントありがとうございます!
お忙しい夏休みをお過ごしだったんですね。
私の勝手なイメージでは大学生になったら、すっかり手が離れると思っていたのですが、まだまだそう言うわけではなさそうなんですねぇ・・。
お疲れさまでした<m(__)m>
でも、また平穏が訪れたとのこと(笑)
夏の疲れも出る頃ですので、ゆっくりなさってくださいね!

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