***短編*** <続々>三条、夏の陣~前編~ ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)このお話は「<続>三条、夏の陣」のさらに続編です。
               
        






***短編*** <続々>三条、夏の陣~前編~ ***







高彬が部屋に入って来たのは、もうじ子の刻になろうかと言う夜中だった。

今夜は来ないと聞いていたので、すでに横になっていたあたしは、びっくりして飛び起きてしまった。

「どうしたのよ、こんな時間に。今日は来ないって・・・」

先導の女房もいなくなり、2人きりになったところで聞くと

「うん、ちょっとね」

高彬は腰を下ろしながら、意味ありげに言葉を濁している。

「何よ。あんた、もしかしたら、・・・また我慢出来なくなったの?」

2人きりとは言え、大きな声で言うのは憚られて小声で聞いてみると

「え」

一瞬、ポカンとした後、あたしの言わんとしてることが分かったのか

「違うよ」

と吹きだした。

「じゃあ、何」

「これだよ」

言いながら高彬は袖をまさぐると、中からシャリ感のある布の塊を取りだした。

「あ。これって・・・」

「そう。単だ」

高彬は何でもないもののように片手であたしに差出し、両手で受け取りながらも、あたしは

(物のあげ方にも性格って出るものなのねぇ)

なんて変なところで感心していた。

母上は桐の衣裳盆に恭しく載せてきたのに対して、高彬は袖からポン、だもの。

まぁ、もちろん、お衣裳に対しての思い入れは、どうしたって女の人の方が強いから、その辺りの違いもあるのかも知れないけど。

でも、高彬は女の人を嬉しがらせるような、ドラマチィックな贈り物の仕方をするような人じゃないし、そう言うのって一歩間違えたらキザになるし、更に言うなら、贈り物をしてる自分に酔ってるって感じも仄見えるしで、あたしは高彬の「ポン」が好ましくはあるんだけどね。

それはともかく、手渡された単の素敵なことと言ったら!

広げて見ると、質感の良さもさることながら、その色合いが素晴らしかった。

「綺麗ねぇ・・・」

いつかの時、高彬がそうしてくれたように、自分の手の甲にあてがいながら言うと

「うん」

高彬は嬉しそうに頷いた。

母上からもらった単も綺麗だったけど、この単には敵わないような気がする。

やわやわとした灯台の火を受けて、動かすたびに微妙に違った色味を作っている。

「・・・羽織ってみようかしら」

「うん」

寝間用として着ていた単衣の上から羽織ってみる。

羽織ってみたんだけど───

単衣の上からだと、やっぱりその魅力が半減しているような気がして・・・

「・・・」

少し考えて、あたしはスクッと立ち上がった。

「ちょっと待ってて」

高彬にそれだけ言って、几帳を回り込む。

着ていた単衣を脱ぎ、衣桁に掛けてあった袴を身に付ける。

その上から、薄衣の単を羽織ると───

その肌触りの良さに、思わずため息が出た。

吸い付いてくるのに張りがあって、だけど、少しも暑さを感じさせずに、極上の布だと言う事が分かる。

薄衣の下に透けて見える自分の腕が、いつもより艶めいて見えるのは気にせいかしら?

「素敵・・」

吐息交じりの言葉が漏れ、それが高彬にも聞こえたのか

「どうだい?着心地は」

几帳の向こうから声が聞こえてきた。

「とてもいいわ」

薄衣の袖を灯にかざして見ながら、呟くように答えると

「そうか」

嬉しそうに高彬が言い、あたしは、ふと我に返った。

今の今まで、単のあまりの着心地の良さに心を奪われて気が回らなかったけど、高彬に見てもらった方がいいんじゃないかしら・・

ううん。

心の中で頭を振る。

正直に言えば、見てもらいたい。

高彬が誂えてくれたものだし、光を纏った薄衣はこんなに綺麗なんだもの。

「高彬」

「うん」

「見てくれる?」

「え」

身じろぎするような気配があり

「いいのかい?そんな無理に・・・」

「ううん、無理じゃないのよ。すごく素敵だから・・・。あ、単がよ。あたしじゃなくてね」

合わせをきちんと整えて、几帳に近づき、だけど、ちょっとそこで怖気づいてしまった。

こう言うのって一回、意識しちゃうとダメね。

うーん・・・、どうしようかしら。

一計を案じ、几帳の際に立ち

「ジャーン」

なんてふざけて言いながら腕だけ出してみると

「それじゃあ判らないよ」

笑いを含んだ声で高彬が言い

「あ、やっぱり?」

へへへ、と几帳から顔だけ覗かせると、その姿が可笑しかったのか、高彬は声を上げて笑った。

いったん顔を引っ込め、小さく息を整える。

よし、出て行こう。

恥ずかしいけど、高彬に見てもらおう。

高彬だものね。

それでも、やっぱり恥ずかしさは拭えず、あたしは髪をふたつに大きく分けると、両方を前に持ってきた。

こうすれば、かなりキワドいけど一応、胸は隠せるし。

髪が流れないように静かに高彬の前に出て行くと、高彬は何も言わずに立ち上がった。






<後編へ続く>


後編は「別館」に掲載します。
(それほどR度が高くならないと思いますが、別館に広告が出てるのがずっと気になっていて、それを消したいのです。1か月更新しないと、また出てきてしまうのですが)
別館更新は、明日か明後日になりそうです。
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ベリーさま

ベリーさん、おはようございます。

> お互いにこんなに想ってるし、駆け引きなんて必要ないというか、いらない二人ですからね。夏の陣、高彬の勝ちの気配ですが、心で(^^)「瑠璃さんにはかなわない」と思ってますから、どっちが「勝って」もやっぱり「相手を思いやる好き」が勝っちゃうから、勝負になりませんよねえ!

うんうん、その通りですよね。
単を着たか着ないか、だけで言ったら「着た」瑠璃の負けですが、そう言うことじゃないですもんね!

> 立ち尽くした高彬、さあてスイッチ入りました。手加減できるんでしょうか。
> いずれにしろ二人がイチャイチャすることは読者冥利に尽きますね〜

別館でお待ちしておりま~す(*^^)v

非公開さま(Sさま)

Sさん、おはようございます。

> 東雲色って素敵な色ですね。ネットで色をチェックしてしまいました。

素敵な色ですよね!
名前も綺麗ですし。
日本古来の色の名称って綺麗なのがいっぱいありますよね~。
萌黄色とか浅葱色とか。

続きはまた別館でお付き合いいただけると嬉しいです!

非公開さま(Kさま)

Kさん、おはようございます。

はい、続きは別館です!
よろしくお願いします<m(__)m>

非公開さま(Mさま)

Mさん、おはようございます。

瑠璃の「へへへ」、可愛いですよね~。
あぁ、北の方・・。ありえそうです(笑)
今回は、高彬の誂えた単が発端ですので!

お互いにこんなに想ってるし、駆け引きなんて必要ないというか、いらない二人ですからね。夏の陣、高彬の勝ちの気配ですが、心で(^^)「瑠璃さんにはかなわない」と思ってますから、どっちが「勝って」もやっぱり「相手を思いやる好き」が勝っちゃうから、勝負になりませんよねえ!
立ち尽くした高彬、さあてスイッチ入りました。手加減できるんでしょうか。
いずれにしろ二人がイチャイチャすることは読者冥利に尽きますね〜


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