***新婚編***第十六話 恋の胸騒ぎ***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*新婚編』







***新婚編***第十六話 恋の胸騒ぎ***








まずい、まずいわ、この展開は。

このまま行ったら、高彬に押し切られてしまう。

年下だ年下だ、と内心、甘く見ていたのに、いつの間にこんな殿方になっていたのかしら。

いったい、どこでそんな情報を仕入れてくるのかしら・・・。

ま、おそらくは宮中で、それも宿直の時とか、その辺りなんだろうけど。

宮中と思ったとたん、ふと、思い出したことがあった。

御簾越しに漂ってきたあの匂い。

あたし宛ての文からもほのかに立ち上った、あの匂い。

そうよ、高彬に、あの場に同席していた公達のことを聞こうと思っていたんだわ。

女房の流し目や、紅付きの直衣のことで、すっかり忘れていたけれど。

「ねぇ、高彬。あの日・・・あたしが後宮に行った日、帝と一緒に女御さまの局に来た公達は誰がいたの」

「え、なんだい、急に」

面食らいながらも、帝や後宮の言葉が効いたのか、高彬は考える顔つきになった。

「確か、あの日は・・・頭弁どの、左大弁どの、帥の宮どの、それに涼中将どの・・・」

帥の宮?

帥の宮と言えば、いつだったか煌姫の話に出てきた、懐妊しないことでお悩みになっている絢姫さまの夫じゃなかったかしら?

煌姫は宮さまってだけで、肩持ってたけど、あたしに言わせれば、妻ひとりを悩ませている甲斐性なしの男よ。

ふぅん、あの場にいたの。

そうとわかっていたら、顔でも見てやったのにな。

「帥の宮ってどこに座っていたのかしら」

ふと呟くと

「帥の宮どの?」

驚くほどの速さで高彬が反応を示した。

「何で瑠璃さん、帥の宮どのなんか気にするの」

「何でって別に・・・その、この間、女房たちが・・・話題にしてたのよ。それで、ちょっと気になっただけ」

高彬の言葉の鋭さに内心、どきまぎしながら何とか言い繕うと

「ふうん」

面白くなさそうに高彬は鼻を鳴らした。

絢姫のお悩みを、いくら夫といえども高彬に言うわけにはいかないものね。

内密にってことだったし、それに、御やや云々、懐妊云々…の話なんて、恥ずかしいじゃないの。

今の今まで・・・ナニしてたって言うのにさ。

それにしても、他の殿方の名前を出すだけで、するどく突っ込んでくるなんて。

妬きもち焼いてるのかしら。ふふふ、高彬ったら可愛ゆいの。

でも、妻をもっと信じてもらいたいもんだわね。

浮気を疑って、文箱を夫に投げつけたあたしが言うことじゃないけどさ。

何事かを考えるように黙り込んでいる高彬に、あたしは身を寄せた。

そういえば、まだふたりとも小袖すら着ていないのよね。まぁ、いいけど。

「高彬」

つんつんと頬を突いてみる。

「どうしたの。何、考えてるの」

「別に」

そういうと、ごろんと寝返りを打って、向こうをむいてしまった。

あらら。

「高彬」

ぴとっと背中にくっついて、腕を回す。

「こっち向いてよ」

あたしはね、あんたの妻なのよ、他の殿方に心動かされるわけないじゃない・・・

そう言おうと口を開けかけると、少し早く高彬の声がした。

「瑠璃さん。文とか・・・もらったことある?」

その声があまりに真剣で、あたしはぎょっとしてしまった。

「文?そりゃあ、文くらいあるわよ。高彬だってくれるじゃない」

「ぼく以外に、だよ」

相変わらず向こうをむいたまま、言いにくそうに、そのくせ語気だけは鋭く言う。

「ぼく以外って・・・。つまりは殿方からってこと?」

「うん」

そりゃ、あたしだっていっぱし、貴族の姫だもの。

求愛のお文は何通かはもらったことはあるわよ。ろくに見もしないで、捨ててたけど。

「少しは・・・あるわよ。ほら、結婚しろ、結婚しろって父さまにうるさく言われてた頃・・・」

高彬は、なんだって急にこんなことを言いだしたのかしら。

わけがわからずに、しどろもどろになって答えると、高彬は大きく頭を振って、こちらを向き直った。

「違うよ、瑠璃さん。ぼくが言ってるのは、結婚前のことなんかじゃないよ。結婚後、だ」

「結婚後?結婚後は・・・」

ないわよ、と言おうとした瞬間、あの匂い付きの文を思い出してしまい、言葉に詰まってしまった。

高彬がひどく真面目な顔で、じぃっとあたしを見ている。

正確にいえば<ある>だけど、あんな名無しの文、取るに足らないわ。

わざわざ話して、高彬を心配させるようなことはない・・・。

というのは建前で、なんだか女の直感で、ここで<ある>なんて言ったら、大変なことが起こりそうな、そんな予感がしたあたしは、きっぱりと言った。

「結婚後はないわ」

「ほんとに?」

「ほんとよ。第一、あたしはあんたの妻なのよ。妻相手に文送ったって、しょうがないでしょう」

「いや、中にはそういう相手をあえて選ぶ方だって・・・・いるかも・・・しれないだろ」

高彬ははっきり言わないけど、つまり、人妻相手のアバンチュールってわけよね。

いやだわ、まるで、あの文のことを言われているみたいで、気もそぞろになってしまう。

だけど、目の前の高彬は、別に疑ったり問い詰めたりする風でもなく、ただただ心配している様子だった。

どうしてここまで高彬が心配するのか分からないけれど、案外、そういう話を耳にすることが多いのかも知れないわね。

あの文の真意は分からないけれど、あたしにその気がない限り、絶対に発展することはないわ。

「大丈夫よ、高彬。あたしはそういう恋愛には興味ないの」

手を取りきっぱりと言うと、高彬は少し目を開いて、やがて安心したのか、にっこりと笑った。

その顔がだんだん近づいてきて、唇が触れた。

ついばむように何度か接吻をした後、どちらからとも深い接吻をする。

ふたりとも何も身にまとっていないから、やけに接吻が生々しくなってしまう・・・。

や、やだわー、このまま、本日、二回目のムムム・・・なんてことになっちゃうのかしら。

さっき、高彬が囁いた言葉を思い出してしまう。

無理よ、無理。そんなこと・・・・。

「瑠璃さん・・・」

「無理よっ」

「は?」

「絶対にいやよ。そんな恥ずかしいこと」

「ぼくは何も言ってないけど・・・」

ポカンと言ったあと、高彬がからかうように眉を上げた。

「なんだよ、瑠璃さん。本当はやっぱり興味あるんじゃないの。ぼくはすっかり忘れていたよ」

すまして言う。

「今の瑠璃さんの言葉で思い出してしまったな」

どうやら墓穴を掘ってしまったみたい・・・。あぁ、もう、あたしの馬鹿。

「ねぇ、瑠璃さん。一回、試してみようよ」

高彬が耳元で囁く。

「あ、あ、あたし、何だか、ものすごぉく眠くなっちゃったから、今日はもう寝るわ。お休みっ」

近くにあった小袖を引き寄せ、頭からすっぽりかぶる。

「瑠璃さん」

「あんたも早く寝なさいよ。明日も早いんでしょ」

「いや、明日は休みなんだ」

「行きなさいよ、仕事に。さぼっちゃだめ」

「さぼるわけじゃないよ。明日は公休なんだ」

高彬が小袖を引っ張るのを、あたしも負けじと引っ張り返す。

しばらく無言の攻防を続けてたんだけど、急に高彬が笑いだした。

「瑠璃さん、安心してよ。別に無理強いなんかしないから」

「ほんとに?」

「本当だよ。信用ないなぁ」

「こと、この件に関しては、あたしは高彬を信用しないことにしてるの」

「なんで」

「いつだったか、あんたが『大丈夫』なんて言って強引に始めようとした時に、小萩が現れたことがあったじゃない」

あのあと、どれだけ小萩と気まずかったか・・・思い出しただけで、顔が赤らんでしまう。

「ああ、そういえば・・。そんなこと、あったよね」

高彬はさほど気にもしてないように、あっけらかんと返事をして

「瑠璃さんが眠いって言うんなら、今日はもう寝ようか」

あたしの肩を抱く。

「このまま寝たら、風邪をひいてしまうよ。さ、これを着けて」

小袖や単を着せかけてくれる。

男と女が逆だわ、これじゃ。

ほんと、あたしって幸せものだなー。

高彬の胸に頭を乗せて、うとうとと眠りかけるあたしの耳元に、高彬が囁いた。

「無理強いはしないけど、いつかは、ね」

「うん・・・」

ぼんやりと返事をしてしまい、ハッと気付いて、あたしは目を開けた。

高彬はと見ると、本当に寝ているのか、はたまた寝たふりなのか、目を閉じている。

「もうっ。高彬のスケベ!」

小声で言っても寝たふりを決め込んでいる。

あきらめて目を閉じると、高彬が小さく笑う気配があった。

なんだか、すっかり高彬のペースだわ・・・

そんなことを考えながら、あたしは眠りに落ちていったのだった。





<第十七話に続く>



こんにちは、瑞月です。

高彬がやたらと帥の宮を気にしていますが、その理由は「高彬のジャパネスク・ブルースの巻<前・後篇>」に書いてありますので、未読の方はお読みになっていただくと、分かりやすいかと思います。

カテゴリーの「番外編」からお入りください。

時々、書いていても忘れてしまうのですが、お話上の今の季節は夏の終わりです。

裸でいても寒くない季節ですので、ご安心ください。

まぁ、瑠璃と高彬なら、たとえ寒い季節でも抱き合って寝るから寒くないのでしょうけどねぇ。

読んでいただき、ありがとうございました。


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

プロフィール

瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

ランキングバナー

にほんブログ村

ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたら
クリックで応援をお願い致します。
1日1クリック有効です。
初めにお読みください
**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
カテゴリ
別館
乳姉妹ブログ
日記ブログ
掲示板
なんて素敵にサイト様 
最新記事
ご訪問ありがとう(H23.11.28-)
**オンラインカウンター**
現在の閲覧者数:
コメントありがとうございます
お礼SSや「他己紹介」があります。
web拍手 by FC2
** あれこれ投票所 **
お好きなジャンルをお選びください。 投票は何度でも可能です。
*** あれこれ投票所2 ***
メールフォーム(ご用の方はこちらから)

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
月別アーカイブ