***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>11

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。閲覧は自己責任でお願いいたします。
               
        






***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>11 ***






「若君」

出仕の準備をしているぼくに向かい、緊張した面持ちで守弥が声を掛けてきた。

普段は水干姿の守弥だが、今日は参内すると言う事で文官用の束帯姿である。

だけど、守弥が緊張しているのは、着慣れない束帯装束のせいではないだろう。

今日───

と言うか、今夜これから、いよいよ<秘策>が決行されるからなのだ。

「それでは、どうか打ち合わせ通りに」

瞬きもせず、ぼくの目を真正面から見ながら言う守弥に、黙って頷くと、車宿りに向かう。

今日のぼくのいでたちはと言うと、浅緋色の礼服である。

礼服はいわば貴族の正装で、なぜ礼服を着用しているかと言うと、これから宮中にて大婚の儀が執り行われるからだ。

大婚の儀とは、帝の婚儀のことであり、すなわち新しく後宮に妃が誕生すると言う事である。

そう。

今日は瑠璃さんが女御として入内する日なのだ。

宮廷から回された、ハレの日のための特別な御所車に乗り込み、簾が下ろされたところで、ぼくは目を瞑った。

背筋を正し、軽く息を吸い込む。

長いような、短いような、一月だった。

あの日────

吉野に帝から瑠璃さん宛てに文が届いた日、ぼくはあの後、夜明けを待って馬を駆り、すぐに京に戻って来た。

思っていた通り、三日後の次の十五夜に宣旨が下ろされた。

宣下された日、帝からお召があり、伺候すると

「近衛少将として、大婚の儀の新女御の警護を命ずる」

とのお達しがあた。

警護、つまりは輿入れする瑠璃さんの道程に付き従え、と言う命である。

黙って平伏し、御前を後にした。

瑠璃さんたち一行が帰京したのは、その日の夜のことだった。

帰京した瑠璃さんを、ひとまずは右大臣邸に匿うと、そこで守弥から<秘策>の詳細が語られた。

実は、ぼくはこの場には居合わせていない。

守弥が

「これは私の一存で行うことですから、若君のお耳にお入れする必要はありません」

と言って譲らず、どうしても立ち合わせてくれず、また、瑠璃さんも守弥の意見を支持し、ぼくはすっかり蚊帳の外に追いやられてしまったのだ。

守弥は

「大婚の儀の最中に、瑠璃姫が月からやってきた使者に攫われて行くので、ただ若君は驚いていてくれればよろしいのです」

と繰り返すばかりで、ぼくには<秘策>の手順などは一切知らされていない。

ただ、ぼくの従者や、他にも守弥の手足となって動ける人材を集めたらしく、それらの人物は、すでに宮廷に潜り込んでいるようである。

御所車はカラカラと音を立てながら、夕闇迫る都大路を三条邸へと向かう。

宣下からちょうど一月、今日も望月で、欠けることのない見事な月が東の空のまだ低い位置に上り初めている。

時間の共に、じき望月は中天にかかるだろう。

ふと、人のざわめきを感じ、物見窓を開けると、三条邸の前には、輿入れする姫君を一目見ようと人だかりが出来ていた。

普段、使われることのない勅使門が開かれており、早いうちから篝火が焚かれている。

宮中からの護衛と言う事で正門から通され、客間で待っていると、やがて瑠璃さんが現れた。

髪は金銀珠玉の髪飾りを刺した宝髻とし、正装をしている。

ぼくの後ろに控える女官以下、皆で平伏し瑠璃さんが座位するのを待つ。

入内し「女御宣下」が下されると、瑠璃さんには従三位が与えられることになり、今はまだその位階は与えられていないとはいえ、帝の妃と言う事で、不敬があってはならないのだ。

瑠璃さんが座る気配があり

「ご苦労さまに存じます」

やがて少し強ばった口調の瑠璃さんの声が聞こえた。

ほんの少し顔をあげたところで、瑠璃さんと目が合い、お互い、さりげなく視線を外す。

回りに何も悟らせてはいけない。

ぼくと瑠璃さんは、警護する者と、警護される者の関係───

月の位置が少し高くなる頃、瑠璃姫の輿入れ一行は、ゆるゆると内裏を目指して行く。






<続>

いよいよクライマックス。<秘策>の行方は───?楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
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コメントの投稿

Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

あーー、そう言えば、そんなこともありましたっけね(笑)
ああ言う「細かい」秘策は得意なのかも知れませんね。
あまりに大がかりだとコケると言うか・・(笑)
ますます、実践向きじゃない守弥・・・

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ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> ドキドキします!秘策がうまく成功しますように!

ベリーさんのせっかくのドキドキが無駄にならないようにがんばります(*^^)v

非公開さま(nさま)

nさん、こんにちは。

nさんのせっかくの願いが届くかどうか・・(笑)
ドキドキでございます。

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

>どこからか水漏れしてそうな守弥

いえいえ、Mさん。「どこからか」ではなく「どこもかしこも」です(笑)
守弥の秘策が成功した試しってありましたっけ・・?
あ、瑠璃の言い付けで、使用人を潜り込ませたとかはありましたっけ。
「秘策」
どうなることか、見守っていて下さい<m(__)m>

非公開さま(Kさま)

Kさん、こんにちは。

もうじきクライマックスを迎えますので、お付き合いください~。

ドキドキします!秘策がうまく成功しますように!

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