***新婚編***第十二話 瑠璃の心配***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説*新婚編』




          


***新婚編***第十二話 瑠璃の心配***









この中に、あたしに求愛の文を送った男がいる・・・・?

にわかに動悸がしてきて、あたしは片手で胸元を押さえながら、身を乗り出して御簾越しに部屋の中を見回した。

匂いに集中してみたんだけど、でも、風に漂ってくるあるかなきかの匂いだけじゃ、その匂いの元を特定することはできなかった。

ま、もし匂いの元を特定できたとしても、それでその公達の身元まで判るわけじゃないんだし、後で高彬にそれとなく聞いてみるしかないわね・・・。

小さくため息をついて、座りなおす。

何の気なしに高彬を見ていると、なんだか変な気配を感じて、あたしは改めて目をこらした。

女房が数人、簀子縁に控えているのだけど、その中の一人がじっと高彬を見ているのだ。

見ているというか、見つめているというか。

高彬を見る目が、妙に熱っぽいのが御簾越しにも見て取れる。

あれは、流し目というか、色目というやつじゃないかしら。

女房の視線に気が付いているのかいないのか、さっき、帝にからかわれたことからはすっかり立ち直ったみたいで、高彬は平然と座り続けている。

その顔は完全なるポーカーフェイスで、女房の視線に全く気が付いてないようにも見えるし、見ようによっては、気が付いてて敢えて無視を決めこんでる風にも見える。

帝や女御にからかわれて狼狽してる高彬は、あたしの良く知っている高彬で、いかにも高彬らしいけど、でも、こういうポーカーフェイスの高彬を見ると、やっぱり有能公達といわれていると言うのも頷けるという感じ。

宮中での高彬の姿なんて、滅多に見れるものじゃないし、ついつい見惚れてしまう。うふふ。

いやいや、そんなこと言ってる場合じゃないんだわ。

何なのかしら、あの女房。

宮中の女房の中には、殿方との色恋にお盛んな人もいると聞くし、まさか高彬に限って・・・とは思うけど気になっちゃうじゃない・・・・。








           **********************************************








「姫さま、どうされましたの?先ほどから浮かないお顔をなさって・・・」

白湯を持ってきた小萩に声をかけられた。

「浮かないって・・・。そんな風に見える?」

「はい。後宮に向かわれる前とではお人が変わったように、沈んでいらっしゃるようにお見受けいたしますわ」

ふうむ。

さすがに小萩だわ。あたしは、心中、舌を巻く。

だてにあたし付きの女房を長くやってるわけじゃないのね。主人の心の動きをよく判ってるじゃない。

うきうきして後宮には出かけたし、事実、後宮では女御さまと楽しい時間を過ごしたのだけど、例の女房の存在が気になってしまって、こうして三条邸に戻ってきてからも、どうも落ち着かないのよ。

おまけに急の宿直が入ったとかで、結局、高彬に送ってもらえずに独りで帰ってきたしさ。

あたしと高彬は筒井筒で、高彬のことなら、それこそ何でも知ってる気でいた。

でも、内裏や後宮って、ほんと、外からでは窺い知れない世界なんだわ。

高彬も仕事の話はあまりしたがらないし、あたしも敢えて聞こうとはしなかったんだけど、今日という今日は、内裏での高彬の普段の様子が気になってしまった。

考えてみたら、内裏は高彬が一番、長い時間を過ごす場所なわけだしさぁ。

誘惑の多そうな内裏で、高彬はどうしているのかしら・・。

美人の女官とかも多そうだし。

「ねぇ、小萩」

「何ですの、姫さま」

「おまえ、高彬んとこの女房の大江と、仲良いんでしょ。ちょっと、高彬のことで聞いてもらいたいことがあるんだけど」

「はぁ・・高彬さまのことで・・・・。何をでございますの」

「その・・・内裏で変な女房に・・・ひっかっかってないか・・とか。そんな感じのことよ」

んもう、言いづらいなぁ。

恥ずかしくて、つっかえつっかえ言うと、小萩はぷっと吹き出した。

「姫さまったら、何をおっしゃるかと思えば。高彬さまに限って、そのようなことはあるはずがございませんわよ。あれほど、まめにお通いがあるのですもの」

目を細めてあたしを見ながら、小萩が意味ありげに言う。

知らずに頬が火照ってしまうじゃない。

口を開きかけると、それよりも先に小萩が

「わかりましたわ、姫さま。大江さんに文を書いてみますわ。しばらくのお時間をくださいませ」

言うなり立ち上がり

「本当に姫さまったら、高彬さまにご執心ですこと。結婚はこうも女を変えるのであれば、わたくしも少し考えなければ・・・」

なんてぶつぶつ言いながら、部屋を出て行った。

もう、小萩ったら。

ご執心だなんて、そんなんじゃないわよ。

ただ、ちょっと・・・・気になるだけよ。

なんたって、最初にあたしを好きになったのは高彬の方なんだしさ。

幼い頃からあたし一筋だったって言うし、まぁ、その純情にほだされたところも大きかったわけで、第一、高彬なんて年下のガキくらいにしか思ってなかったし・・・思ってなかったはずなんだけど・・・・なぁ。

この間の夏のことと言い、今日の女房の様子と言い、高彬の回りに見え隠れする女の陰が気になるのは、やっぱり妬きもち・・・なのかしら。

何だか面白くないわ。

誰に対してかわからないけど、敗北感を感じる・・・わ。

あ〜あ、高彬がいてくれたら、こんな気持ちにはならなかったのかも知れないのに。

急の宿直だなんて、つまんないの。

脇息を倒して、あたしはごろんと横になった。





      



           **************************************************









翌日、ぼんやりと庭をながめていると、文を手にした小萩が部屋に入ってきた。

「姫さま、大江さんから文が来ましたわ」

そういいながら、あたしの近くに座ると

「やはり姫さまの心配なさるようなことはなさそうですわ。高彬さまは、大江さんの目から見ても姫さま一筋だそうですわよ」

小萩の目は笑いを含んでいる。

「姫さま以外にお通いになっている場所もなければ、内裏で女房とどうにかなってるようなこともなさそうとのことですわ。高彬さまは正直なお方だから、何かあったら、絶対にわかるはずだって大江さんが言うんです」

「ふうん」

さすがに乳兄弟だけあって、大江も高彬の性格をよく掴んでいるみたい。

一番、身近にいる大江がそういうんなら、信じてもいいのかも知れないわね。

少し気をよくしていると、小萩がとんでもないことを言い出した。

「大江さんも、高彬さまの熱心さには驚いているようですわよ。いつぞや、忌み月にもかかわらすに高彬さまがお越しになったことがございましたでしょう?」

「あぁ・・・そういえば、そんなことあったわね」

「あの真面目な高彬さまが、忌み月の禁を破ってまで姫さまのところにお通いになったのですもの。あれには小萩も驚きましたわ」

「まあ、確かにね」

「それに・・・」

小萩はますます目を細めると

「高彬さまは、その日、お召し物に紅をつけてお帰りになったそうですわ」

袖元で口を押さえながら、あたしを見た。

「え、紅って何よ・・・」

「紅は紅ですわ。もう、いやですわ。姫さまったら、しらばっくれて」

「だって、あの日はあたしは・・・月の障りで・・・。ただ寝ただけよ」

「はいはい。そうでございますわね。ふふふ。そういうことにしておきますわ」

「しておきますわって、おまえ・・。だから、本当に・・・」

ふいに足音が聞こえてきたかと思ったら、早苗が現われ手を付き、しきりに小萩に目配せをしている。

小萩に急用があるみたい。まだまだ早苗は女房としては未熟だから、何か粗相でもしてしまったのかもしれない。

「姫さま、ちょっと失礼いたしますわ」

小萩はきりりと先輩の顔になり、早苗とともに退出していった。

ひとりになり、しばらくは呆然としていたんだけど、そのうち、無性に腹がたってきた。

紅って何よ、紅って。

あの日、あたしたちはそんなこと、ひとっつもしちゃいないわよ。

そりゃ、抱き合ったりとかはしたけど、紅がつくようなことは断じてしてないわよっ。

どういうことなのよっ、高彬。

あたしは文机に向かうと、筆をへし折らんばかりの勢いで文をなぐり書きした。

『高彬。

話したいことがあるから、すぐ来て。

来なかったら鴨川に飛び込むわよっ。 瑠璃 』





<第十三話に続く>



〜あとがき〜

こんにちは。瑞月です。

なかなか書く時間が取れないのですが、妄想だけはしっかりしている毎日です。

妄想はどんなときでも出来ますからね(笑)

まったく話は変わるのですが、最近、大人気の「あ・し・だ・ま・な・ちゃん」。

あの子のニコ〜〜って笑顔を見ると、氷室先生に似ているなぁ・・・と思ってしまいます。

笑ったときの目元とか、どこかが似ている気がするのですが。

ゆっくりの更新となっておりますが、よろしかったらお付き合いくださいませ。

読んでいただき、ありがとうございました。



(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

Unknown

待ってました♪
続きも気になるし楽しみにしていますね☆

>masaさん

楽しみにしていただいて、ありがとうございます!
気長にお付き合いいただけると嬉しいです☆

次回が楽しみ!

私も毎日妄想しまくってます!
仲のよいところ思い浮かべるのって楽しいですよね。私には、瑞月さんのように素敵な文章にする能力がないのが残念です。
次回、高彬は、どんな弁解をするのでしょうか?
焦っている姿が目に浮かびます。
楽しみにしていますねー。

>mayumayuさん

ほんと、仲の良いところを考えるのって楽しいですよねぇ。
妄想バンザ~イ(笑)
次回の話は、もうだいぶ書き進めているので、そんなにお待たせすることなくアップできると思います~!

更新楽しみにしています。

初めてコメント書かせていただきます。以前からちょくちょくお邪魔していました。私も学生の頃から氷室先生のお話読んでいましたし、ジャパネスクも初版の頃から・・・(年がばれますね♪)瑞月様のお話は楽しくって!今後も更新楽しみにしてます!

>harukiさん

始めまして!
コメントありがとうございます。
わたしも当然、初版です~(笑)

これからもよろしくお付き合いくださいませ。

ビバ☆妄想!!

瑠璃さん、高彬は被害者なの。怒らないであげてね。。。
…と、瑠璃さんに伝えたいところです(笑)

次回、どうなるのか???
ドキドキ。。。楽しみにしてます(^^)

私も、毎日のジャパネスク☆妄想は欠かしてません!
ビバ☆妄想~!!

>くろこまさん

そうそう、高彬は被害者なんですよねぇ・・・。

お互い、楽しい妄想ライフを満喫しましょうね~(笑)
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