社会人・恋人編<80>

振り返った曽茅野氏が、こちらに向かい歩き出す。

数歩、歩いたところでぼくに気付いたのか立ち止まり、その顔にほんの少し驚きの色が浮かんた。

だけど、それは一瞬のことで、すぐに微笑みに変えると、また歩き出し近づいてくる。

出方を決めかねていたぼくの方が、ふいを突かれた感じでその場を動けなくなってしまい───





─Up to you !Ⅱ─<第80話>






「失礼」

目の前に来たところで曽茅野氏に言われ、反射的に身体をずらすと、曽茅野氏は軽く会釈をして前を通り過ぎて行く。

しばらくその後ろ姿を見ていたぼくは、ドアの向こうに背中が消えたところで、慌てて後を追った。

「曽茅野さん」

呼びかけに曽茅野氏は止まり、ゆっくりと振り返る。

「何でしょう、藤原くん」

「・・・瑠璃さんから聞きました」

曽茅野氏の目がわずかに細まった。

「ほぅ、何をですか?」

「曽茅野氏から電話があり、会おうと言われた、と」

しばらくの間、じっとぼくを見ていた曽茅野氏は、ふっと表情を和らげると

「知らなかったのですよ。藤原くんとあのお嬢さんがお付き合いをしていると言う事を。後から鷹男くんに聞いて驚きました。まぁ、どちらにしろ直ぐに振られてしまいましたがね」

「・・・」

「それにしても、あのお嬢さんも人が悪い。最初から断るつもりなら、わざわざ出向いて来なければいいものを。お陰で変な望みを抱いてしまった」

「瑠璃さんが言ってましたよ。あなたは、とてものこと自分を好いているようには見えなかったと」

そう言うと、曽茅野氏はふいに笑いだした。

「・・それは藤原くん。普段、君があまりに、あのお嬢さんに対して好きだと言う感情を露わにしているからではないですか?人により愛情表現はさまざまですからね。私のように、表に出ないような男もいるのですよ」

「・・・」

「では、これで失礼しますよ」

踵を返し歩き始めた曽茅野氏に向かい

「いつまで日本にいらっしゃるのですか」

そう聞くと

「直にシンガポールに帰りますよ。仕事が終わったら」

振り返ることなく曽茅野氏は言い、そのまま角を曲がり見えなくなった。



******



「あ、藤原くん」

経理での用を済ませたところで、隣の総務課の方から声を掛けられ、見ると水無瀬だった。

「ちょうど良かった。この書類、マーケティング部に配りに行こうかと思ってたのよ。悪いけど、持って行ってくれない?」

机の上にはA4サイズの茶封筒が積み重ねられており、表には社員の名前の判が押されている。

「一応、50音順に並んでるから」

「わかった」

「藤原くんと瑠璃のは、は行だから多分、この辺りよ」

指で真ん中辺りを指し、回りに人がいないことを確認すると

「苗字が同じって何かと便利そうね。・・・結婚とか」

ニヤニヤと言ってきた。

「何だよ、それ」

「人事部にいるから良く分かるんだけど、結婚して苗字が変わるってほんと大変なのよ。ハンコも作り直さなきゃいけないし、色んな書類を直さなくちゃならないんだから。その点、瑠璃は楽でいいわ」

「そりゃ、どうも」

「まぁ、今どきは女の人に限らないけどね。婿養子に入る人だって増えてるしね」

「まぁね」

「うちの会社にもいたのよ、お婿さんだった人が離婚して苗字が変わったって人。書類の申請とか本当に大変だったんだから。その点、藤原くんは安心ね。もし婿養子に入って瑠璃に捨てられてもテマがないわ。はい、これ、よろしく」

言いたいことだけズケズケ言うと、水無瀬は封筒をぼくの両手に乗せ、そのまま仕事に戻ろうとするので

「水無瀬、ちょっといいかな」

「何よ」

「いつか水無瀬が言ってた、ぼくがモテるってことなんだけどさ」

「・・・」

「ちょっと、その話を具体的に教えてもらえないかな?時間のある時でいいから」

水無瀬が驚いたような顔でぼくを見返してきた。

瑠璃さんもぼくに向かい「自分で思ってるよりモテている」と言った。

もしも、この一連の出来事が本当にそのことに関係があるのなら、きちんと知っておかなければならない───

それがぼくの考えた「次の一手」だった。






…To be continued…


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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

『高彬モテ伝説』(笑)
多分、遡れば幼稚園時代から、いや、生まれた病院のナースたちをも虜にしていたに違いありません。

春日兄は、きっと真の悪者ではないんですよ。ちょっと出来が悪くて、顔がのしたお餅みたいだけなんだと思います!

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