社会人・恋人編<73>

「ぼくだけこんな格好ですみません・・」

政文が首をすくめながら言い、何のことかと思ったら、ぼくも守弥もスーツ姿なのだった。

その中で政文だけはシャツにGパンで、確かに政文だけカジュアルと言えばカジュアルなのだけど、でも、わざわざ京都から来るのにスーツを着てくる守弥の方がおかしいのだ。

「いいさ、別に。ぼくだって仕事帰りのまま着替えなかっただけなんだから。それにわざわざスーツを着てくる守弥がおかしいんだよ」

そう言うと、守弥は薄っすらと笑い───





─Up to you !Ⅱ─<第72話>






「若君直々のご用命は私の本業ですからね、スーツと決めているのです」

「・・・」

「先日のプリンも、若君の御ために買うのだからとスーツを着て並びました」

「・・・」

「並んでる最中、犬に後ろ足で砂を掛けられましたが」

「・・・」

「でも、クリーニングに出したので・・」

「わかった、もういい。・・・さっそくだけど、本題に入る。実は・・」

「お待ちください、若君」

守弥はシっと人差し指を口の前に立てると、カバンを開け中から何やら黒い小型の機械を取りだした。

スイッチを入れ、立ち上がり部屋中を歩き回っている。

(盗聴器ですかね?)

目が合った政文の口が動き、ぼくも頷いた。

やがて席に戻ってきた守弥は

「大丈夫です。安心してお話ください」

「守弥さん、よくそんなの持ってきましたね」

政文は感嘆とも驚愕とも取れる声を上げた。

「若君の急のお召とあれば、何かしらの緊急事態に違いありませんからね。これくらいの準備は当然です」

澄ました顔で言う守弥に、内心、舌を巻く。

何だかんだ言って、すごい奴だよな、やっぱり・・・

「若君。お話と言うのは」

「うん」

ぼくが話す体勢を作ると、守弥も政文も身を乗り出してきた。

まずはことのあらましを伝える。

政文はもちろんのこと、守弥にとっても初耳なことも多く、2人は真剣な顔で聞いている。

大江がホテルに連れ込まれそうになったところでは、政文は「えっ」と声を上げ、守弥はわずかだったけど片眉を上げた。

「・・以上が起きた出来事だ。・・守弥」

「はい」

「あの動画をアップしたのが瑠璃さんだと言う疑いは晴らして欲しいんだ。まずはそこから始めたい」

「・・・はい。今の話を伺った限りではそのようですね。ただ、動画、写真、ホテルの連れ込みが同一人物の仕業であるならば、ですが」

「そうだな」

ひとつの可能性としてそれは認めないわけにはいかないだろう。

「若君。私に頼みたいこととは?」

「うん、それなんだが・・」

ぼくは慎重に口を開いた。

「春日の兄貴を少し見張ってて欲しいんだ」

「春日さま?」

守弥の眉が跳ね上がる。

「はっきりしないんだが、ひょっとしたら今回の一連のことに兄貴が絡んでいると言う可能性もあるんだ」

「・・・あ!あの電話・・」

「そうだ。曽茅野氏と兄貴がこのタイミングで連絡を取り合っていると言うのが、偶然にしては出来すぎている」

「確かにおっしゃる通りですね。会社に若君を良く思ってない一派がいると言うお話と、春日どのがずっと若君を邪険にしている事実も、これまた不思議と繋がっています。こちらも偶然としては出来すぎていますね」

「ただ、問題はそもそもの目的が分からないということなんだ。ぼくなのか、瑠璃さんなのか、はたまた全く違うことなのか・・」

3人とも黙り込み、リビングにはしばらく沈黙が流れ、沈黙を破ったのは守弥だった。

「思ったのですが・・・」

「何だ、言ってみろよ」

「そのデートクラブの方から当たってみるのもいいかも知れません」

「当たるってどうやって。もうその時の男とは連絡が取れないんだぞ」

「日時、待ち合わせ場所、美女と蛮獣コース、3万と言う値段。ネットからの申し込みをして決済をしてるなら、必ずどこかにデータログが残っているはずです」

「それはそうですけど、守弥さん。でも、その男を例え探し出したって・・」

「探すのはそっちの男の方ではありません」

「なるほど、そうか。デートが成立したと言う事は、その条件でデートに登録した女性がいるということか」

「おっしゃる通りです、若君。瑠璃さまがそこに登録していないのであれば、代わりに誰かが登録したと言うことです。そこがわかれば・・・」

「そんなことが分かるんですか?」

政文が身を乗りだし、ぼくも同感だった。

「私のハッキングスキルをもってすれば、国家機密だって盗めます」

口の端を上げ、不敵に笑うと

「その件はお任せください。ぜひやらせて下さい」

やけにきっぱり言う。

やっぱり妹の大江が危ない目にあったとなると、兄としては心中穏やかじゃないのだろうな、と、密かに守弥の兄妹愛に感動していると

「春日さまは前々から若君に辛く当たるので、一度、こらしめてやろうと思っていたのです。いい機会ですから徹底的に洗い出し、鼻を明かしてやりましょう」

フン、と鼻で笑い、鼻を明かしたことでも想像しているのか、ニヤニヤと笑っている。

「・・・わかった。だけど、あまりおかしいことはするなよ」

一抹の不安を感じなくはなかったけど、デートクラブから当たると言うのは良い考えで、ぼくは頷いた。

「政文、おまえは瑠璃さんを見張りながら、周辺の人物に注意してくれ。隠し撮りをしてるってことは、常に近くにいる可能性がある」

「わかりました」

「ぼくは社内を少し探ってみる」

3人で頷き合い、とりあえず今日のところは休むことにした。

ソファで眠ると言う2人をリビングに残し、寝室に向かいポケットから携帯を取りだす。

11時半を回っている。

瑠璃さん、もう寝てるかな。

コール5回で出なかったら切ろうと決めて番号を押してると、その途中で急に着信画面に切り替わり───

水無瀬からの電話だった。





…To be continued…


社会人編を楽しみにして下さっている方、ありがとうございます。

古典シリーズと同時並行で更新していく予定です。

話しの流れで、どっちかに更新が集中してしまうこともあるかも知れませんが、どちらも完結させますので、お付き合いいただければと思います。


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(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

あさぎさま

あさぎさま、こんにちは。

> 守弥のスーツは三つ揃えでしたか~!

噂ではコナカで買ったらしいですよ。

> そりゃあ若君の御ためですもんね、失礼があってはいけません(笑)

当然ですよね。
何でも幼少の頃の高彬のプールのお供の時も着てったらしいですよ。
プールサイドで三つ揃え着て、危うく熱中症になりかけて、それで医務室に運び込まれたとか。
迷惑なお供ですよね。

> そして若君への偏愛は、ご町内では有名な話なんですね(>_<)

えぇ、かなり有名みたいで、お年寄りたちは寄ると触るとその話ばかりなんですって。

> でも大丈夫、高彬は礼儀正しい好青年に育ってくれたので、ひとくくりに変態枠(?)に、入れられてはいないはずです!

もちろんですよ、あさぎさん。そこはご安心下さい。
変態枠の定員は1名こっきりです。

> 瑞月さんの影響か、私も守弥にはオチが前提になってしまっているのですが、「どこまでも渋い守弥」、それ自体がもうお笑いって感じです(笑)

いえいえ、これは「公式設定」ですよ。
ミステリーでの渋い守弥は、オチへの壮大な前振りなんですよ、きっと。
このまま「オチの守弥」を楽しみましょうね!

> それにしても『ぐず』って・・・(爆)
> まとめ役のいない、どこまでもグダグダしそうなユニットですねぇ・・・。

そもそもハモれるのかが、甚だ疑問です。
2人して主旋律歌ってそうです。
ギターも弾けなくてエアギター。MCもグダグダしそうですしねぇ・・・

> 高彬にマネージメントでもしてもらいましょうか。
> でも癒される事間違いなし!の、握手会とか参加したいです~(笑)

また高彬の気苦労を増やしてしまうだけですが、でも、握手会あったら参加したいですね~。
CDは買いませんけど!(笑)

茜さま

茜さん、こんにちは。

> もう、守弥のプリンネタが出る度に笑ってしまいます~守弥とプリンが絶妙に合わなくて(笑)しかも犬に砂をかけられてたなんて!

守弥がプリン食べてるラインスタンプあったら買ってしまいそうです。
あ、もちろん、犬に砂を掛けられてる姿もね!

> それにしても高彬のためなら準備万端な守弥すごいです。「若君のためになるから…」と言っていろいろやってもらいたいです。家事とか(笑)

あ、いいですね~。
高彬のために、って大義名分でお願いすれば、ドブ掃除でもしてくれそうですもんね。
何とかと守弥は使いよう、かも知れません。

> 政文の恋の行方も気になります(^^)

政文と小萩なら、政文は尻に敷かれそうですが、なかなかお似合いなんじゃないかな~と思います。
がんばれ、政文!

> 次回の社会人編も古典シリーズも楽しみにしてます♪

ありがとうございます。

スペシャルユニット「ぐず」!

瑞月さん、こんにちは~。

守弥のスーツは三つ揃えでしたか~!
そりゃあ若君の御ためですもんね、失礼があってはいけません(笑)

そして若君への偏愛は、ご町内では有名な話なんですね(>_<)
でも大丈夫、高彬は礼儀正しい好青年に育ってくれたので、ひとくくりに変態枠(?)に、入れられてはいないはずです!

なるほど渋い守弥ですかあ・・・。
そんな守弥は「ミステリー」だけでしたもんねぇ(←ほんの一瞬)
それ以降は、どこまでも崩れる一方(笑)

瑞月さんの影響か、私も守弥にはオチが前提になってしまっているのですが、「どこまでも渋い守弥」、それ自体がもうお笑いって感じです(笑)

癒し系のスペシャルユニットも発足ですね!
それにしても『ぐず』って・・・(爆)
まとめ役のいない、どこまでもグダグダしそうなユニットですねぇ・・・。高彬にマネージメントでもしてもらいましょうか。
でも癒される事間違いなし!の、握手会とか参加したいです~(笑)

若君のためならプリンから国家機密まで(笑)

瑞月さん、こんにちは!

もう、守弥のプリンネタが出る度に笑ってしまいます~守弥とプリンが絶妙に合わなくて(笑)しかも犬に砂をかけられてたなんて!

それにしても高彬のためなら準備万端な守弥すごいです。「若君のためになるから…」と言っていろいろやってもらいたいです。家事とか(笑)

国家機密ってハイスペックなのはいいですがやっぱり危ないヤツですね。高彬の不安が当たらないことを願います。

政文の恋の行方も気になります(^^)

次回の社会人編も古典シリーズも楽しみにしてます♪

あさぎさま

あさぎさん、こんばんは。

> 何といっても、守弥の「スーツでプリン」に爆笑です!!

ふふふ、しかも三つ揃えですよ(笑)正装。

> きっと、しかつめらしい顔で、特命だとでもいうように並んでいたんでしょうねぇ。

えぇえぇ、もちろんです。
でも、前後に並んでるのはちびっことか、犬連れたおじいちゃんです。

> どこまでも残念なイケメン・・・それが守弥なんですね(爆)

えぇ、それが守弥なんです。
私ねぇ、あさぎさん。一度でいいから守弥を真面目に書いてみたいと言う野望を持っているんですが、どうしても書いてるとオチがついちゃうんですよ。
守弥とオチが、私の中でワンセットになってるみたいなんです(笑)
どこまでも渋い守弥とか、書いてみたいなぁ。

> お店のスタッフさんに、「若君の御為だ」という事だけは、バレていないように祈ります(笑)

あ~、残念ながら町内でも有名な話なんですって!

> 少しは大江の心配もしてあげて欲しいところですが、ようやく真に、若君のお役に立てるかもしれない雰囲気なのかも?

だといいですよね~!
案外、ハッキングがバレて逮捕されちゃったりして。
高彬が身元引受人で迎えに行くとか?(迷惑千万)

> そして政文の、この憎めない天然感が、どこぞの弟君を思い起こさせるのですが(笑)
> 結構二人、似た者同志で気が合うかもしれませんね~。

思い起こされますよね~。
ほのぼの癒し系な2人、ユニット組んでほしいです。
ユニット名『ぐず』(注・「ゆず」のぱくり)

> 掛け持ち連載、どうぞご無理のないようにご自分のペースで続けて下さいね!

ありがとうございます。

ベリーさま

ベリーさん、こんばんは。

> キレる頭脳と若君への濃いすぎる愛情と、どこか抜けてる部分を併せ持つ男。危なさに笑ってしまいます!

私も書きながら(何か危ないな)と思ってました。

>51%信頼されてますが残り疑問ですね!笑

かろうじて50は超えてるんですね(笑)

>平気で国家機密を探り当てるなんて、確実に宮中では大出世したのに、その力が全部高彬に行ったわけですから、これはうっとおしいに決まってますね。

守弥もかなりのハイスペックなんでしょうけど、能力の使い方がおかしいんだと思います。

> 一家に一台、いえ一人だとうざいですが、でも味方に欲しいタイプの守弥ですね!

確かに家にいたらうざいでしょうね(笑)

藤原さん家の男子達

瑞月さん、こんばんは~。

何といっても、守弥の「スーツでプリン」に爆笑です!!
きっと、しかつめらしい顔で、特命だとでもいうように並んでいたんでしょうねぇ。
どこまでも残念なイケメン・・・それが守弥なんですね(爆)

お店のスタッフさんに、「若君の御為だ」という事だけは、バレていないように祈ります(笑)
(高彬が恥ずかし過ぎる・・・)
少しは大江の心配もしてあげて欲しいところですが、ようやく真に、若君のお役に立てるかもしれない雰囲気なのかも?

そして政文の、この憎めない天然感が、どこぞの弟君を思い起こさせるのですが(笑)
結構二人、似た者同志で気が合うかもしれませんね~。

掛け持ち連載、どうぞご無理のないようにご自分のペースで続けて下さいね!

キレる頭脳と若君への濃いすぎる愛情と、どこか抜けてる部分を併せ持つ男。危なさに笑ってしまいます!51%信頼されてますが残り疑問ですね!笑 平気で国家機密を探り当てるなんて、確実に宮中では大出世したのに、その力が全部高彬に行ったわけですから、これはうっとおしいに決まってますね。
一家に一台、いえ一人だとうざいですが、でも味方に欲しいタイプの守弥ですね!
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