***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>1

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。閲覧は自己責任でお願いいたします。
               
        






***古典シリーズ*** 《続》今は昔。<新釈・竹取物語>1 ***






薄らと開いた目に飛び込んできた見慣れぬ天井に、一瞬(ここはどこだろう・・・)とぼんやりした頭で考える。

鳥の囀りと同時に、すぐに吉野の山荘であったことを思い出したぼくは、隣を見て、慌てて飛び起きた。

瑠璃さんがいない。

部屋には強くなった陽射しが入り込んできており、どうやら、あの後、すっかり眠り込んでしまったらしい。

あの後、と言うのは、明け方、二度目に瑠璃さんに手を出してしまった後、と言うことなんだけど。

邸内に人の気配はあるのだけど、ウロウロと出て行くのも失礼だし、さてどうしたものか・・と思っていると、衣擦れの音がして瑠璃さんが現れた。

すっかり着替えを済ませている。

「あ、起きたのね、高彬。・・・何よ、変な顔して」

夜具のそばに座りながら言い、ぼくの顔を訝しそうに覗き込んできた。

「いや、目が覚めたら瑠璃さんがいなかったから、てっきり本当に狐に化かされたんじゃないかと思ってたんだ」

「ひどい」

瑠璃さんは唇を尖らせ、目を細めてぼくを睨みつける振りをして───

そうして2人で吹きだしてしまう。

「すっかり寝過ごしてしまって面目ないよ」

「ううん、疲れてたのよ、きっと。京から休まずに吉野入りしたんだもの」

「うん」

「小萩がね、朝餉の用意ができたから持ってくるって。着替えられる?」

「うん」

瑠璃さんに手伝ってもらいながら、簡単に着替えを済ませると、ほどなくして小萩を先頭に数人の女房らが部屋にぞろぞろと入って来た。

皆、手に高杯を掲げ持っている。

ぼくと瑠璃さんの前に置き、その中に見慣れない杯を見つけて、ぼくと瑠璃さんは顔を見合わせた。

銀の杯の上に、丸い餅がある。

「小萩、これは・・」

「三日夜の餅でございます」

瑠璃さんの問いに小萩は顔を上げないままに言い

「ほんの気持ちばかりの真似事ですが・・、急いでご用意いたしました」

さらに頭を下げた。

「小萩・・・」

呟く瑠璃さんの顔が見る見る真っ赤になっていき、それを見ているぼくも、身体中がかぁっと熱くなる思いがする。

良く見ると、平伏している小萩も耳が赤いようで、この分だときっと顔も赤いに違いない。

小萩たちが退がって行った部屋で、ぼくたちはしばらく銀杯を前に黙り込み

「小萩にはバレてたのねぇ・・」

しみじみと瑠璃さんが言い

「・・うん」

ぼくも頷いた。

「三日夜の餅は、三日通った後の正式な露顕で食べるものなのに・・・」

「うん・・」

「小萩ったら本当に気が早いんだから、イヤになっちゃう」

「・・うん」

言ってる内容とは裏腹に、瑠璃さんの口調は湿りがちで、少し涙ぐんでいるようにも見える。

「せっかくだからいただこうよ。ぼくはどうしたらいいんだっけ?」

「三つを食べるのよ。一口で」

「そうか」

ぼくは銀杯から小さな餅を指で摘むと、口に放り込み三つを平らげた。

その間、瑠璃さんは真面目な顔でじっとぼくの顔を見ていた。

「瑠璃さんはどうするの?何個食べるの?瑠璃さんも三つ?」

「ううん、女の人は何個でもいいの。一個でも二個でも」

「じゃあ全部、どうぞ」

「そんなに食べないわよ。やぁねぇ、人を食いしん坊みたいに言って」

また瑠璃さんは頬を膨らませ、でも、すぐに真面目な顔に戻ると、餅に手を伸ばした。

小さな桜色の指先が餅を摘み、そのまま口に運ぶ。

真面目な顔で咀嚼していた瑠璃さんの口元が一瞬、歪んだと思ったら、ぽろりと涙が頬を伝った。

思わず流れた涙を、恥じるように瑠璃さんはごしごしと手で涙を拭き

「美味しい」

真っ赤な目で笑う。

「うん」

ぼくも笑って頷き返しながら、瑠璃さんを抱き寄せる。

抱きしめずにはいられなかった。





<続>


「《続》今は昔。<新釈・竹取物語>」、楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
↓↓



(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

小萩もピンときたんでしょうね。2人の様子から。
瑠璃母みたいに「宿直」の真似事をしていたとは、思いたくないですけどね(笑)
ベリーーさん、高彬を描いたんですよ!掲示板に貼ってあるので見てくださいね~。
(下手だけど描くの面白かったです(^^))

No title

高彬を庭先に見かけ、瞬時にもうその気だという覚悟が伝わってきたんですよねー!小萩も照れたでしょうね〜 この時代の貴族プライバシー全くないですね!
プロフィール

瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

ランキングバナー

にほんブログ村

ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたら
クリックで応援をお願い致します。
1日1クリック有効です。
初めにお読みください
**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
カテゴリ
別館
乳姉妹ブログ
日記ブログ
掲示板
なんて素敵にサイト様 
最新記事
ご訪問ありがとう(H23.11.28-)
**オンラインカウンター**
現在の閲覧者数:
コメントありがとうございます
お礼SSや「他己紹介」があります。
web拍手 by FC2
** あれこれ投票所 **
お好きなジャンルをお選びください。 投票は何度でも可能です。
*** あれこれ投票所2 ***
メールフォーム(ご用の方はこちらから)

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
月別アーカイブ