社会人・恋人編<71>

「ど、どうして瑠璃さんはそんな大事なことをすぐに言わないんだよ!」

思わず声を荒げると

「何言ってるのよ。すぐにでも捜査会議を始めようと思ってたのに、4時からにしようって言ってきたのは高彬じゃない」

瑠璃さんはムゥッとした顔になり───






─Up to you !Ⅱ─<第71話>






「・・そ、それはそうだけど・・」

テーブル越しに睨まれて、思わず口ごもる。

瑠璃さんは勝ち誇った顔でぼくを見ると、持っていたタオルで首筋を押さえた。

シャワーを浴びたばかりの瑠璃さんはほんのりと赤い顔をしており、濡れた毛先の色っぽさは、ついさっきまでの「恋人の時間」を思い起こさせるのに十分ではあったけど───

だけど、今は色っぽい瑠璃さんの姿を楽しんでいる場合ではない。

「ホテルに連れ込まれそうになったって、一体、どう言うことなんだよ」

たった今、瑠璃さんの口から語られた昨日の顛末に、ぼくは顔をしかめた。

「だから今、説明したじゃない。曽茅野氏から電話があって・・・」

「それは聞いたよ。ぼくが言ってるのはそう言うことじゃない。一体、どうして曽茅野氏と会おうとなんかしたんだってことだよ」

「だから、それも言ったわ。2人じゃなかったんだもの。煌も小萩も・・」

「だからそう言うことじゃないよ」

ぼくはイライラと瑠璃さんの言葉を遮った。

「あれほど単独行動はするなと言ったじゃないか」

「・・・」

「単独行動をするなと言うのは、何も複数人がいれば良いというわけじゃあない。ぼくに相談しろ、と言う事だ。女の身で何が出来ると言うんだ」

今回はたまたま、「中年男」を瑠璃さんの一喝で撃退出来たから良かったようなものの、男が本気になれば、女の2人くらいどうとでも出来るはずで、今回、瑠璃さんも大江も無事だったのは、ラッキだったの一言に尽きるのだ。

「・・・」

何事かを考えるように黙り込む瑠璃さんに

(ちょっと強く言い過ぎたかな)

と思わないでもなかったけれど、でも、ぼくは心を鬼にして怖い表情を作り続けた。

瑠璃さんにはこれくらい言っておいてちょうどいいんだ。

俯いたまましばらく黙っていた瑠璃さんは、ふと顔を上げると

「そう言えば、高彬の方は何があったの?」

「え」

「さっき言ってたじゃない。進展があったって」

「あぁ、それは・・・」

曽茅野氏と融、さらにはぼくの兄貴の出身校が一緒だったことが分かった、と言い掛けたところで言葉を飲み込んだ。

言わない方がいい気がしたのだ。

瑠璃さんのことだ、新情報が入ればきっとすぐに動き出すだろう。

融に連絡入れるくらいならいいけど、曽茅野氏にコンタクトでと取られたらたまったもんじゃない。

「ぼくの方の進展と言うのは、融と由良のことなんだ」

「え?ほんと?何かあったの?」

思い付きを言うと、思ってた通り、瑠璃さんはすぐに身を乗り出してきた。

「何かあったってわけじゃないけど、まぁ、何となくね、由良がいい感じではあるんだ」

言いながら、これは本腰入れて、由良に融を売り込むしかないかもな、なんて考える。

「へぇ、そうなの。ふぅん。それは楽しみだわねぇ」

しきりに瑠璃さんは感心し

「お母さまの誤解は解けたの?由良ちゃんが融と東京に来てたって言う」

「あぁ、それはね、大丈夫だ」

「そう」

「とにかくさ、瑠璃さん。これからは単独行動は本当に慎んでくれ」

「わかったわ。あたし一人じゃなく、誰かを巻き込むことにもなるんだものね」

「そういうことだ」

瑠璃さんにはしばらく身の回りに気を付けるように言い、取りあえず捜査会議はお開きにした。

瑠璃さんを家まで車で送り届けた後、一人きりのリビングでぼくは腕を組んだ。

───ここからが、本当の捜査会議だ。

一連の出来事を、ぼくは少し軽く見ていたのかも知れない。

瑠璃さんには悪いけど、瑠璃さんには<事件>から手を引いてもらう。

危険すぎる。

目を瞑り考える。

発端は動画投稿だった。

次いで隠し撮りした瑠璃さんの写真。

そして昨日の、ホテル未遂事件。

目的は何だ。

ぼくか?瑠璃さんか?

いや、そもそも、全て同じ人間の仕業なのか?

それとも、たまたま重なっただけで、別の人間がやったことなのか?

だとしたら、誰が、何の目的で───?

ぼくは目まぐるしく頭を働かせた。






…To be continued…


思いがけずに「古典シリーズ」が長引いてしまい、久しぶりの社会人編です。
本格的に始動する高彬、楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
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Secre

ベリーさま

ベリーさん、おはようございます。

>なんだか「お仕事モード」?!ですね。楽しみにしています〜!

ありがとうございます!
有能でカッコいい高彬を書けたらいいなと思っています。
またお付き合いくださいませ~。

なんだか「お仕事モード」?!ですね。楽しみにしています〜!
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