***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>最終話

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。閲覧は自己責任でお願いいたします。
               
        






***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>最終話 ***






月が傾いても、ぼくたちは褥の中で寄り添ったまま色々な話をした。

東の空が白々と明るくなる頃、段々と瑠璃さんの口数が少なくなって行き、ついに黙り込んだと思ったら、案の上、瑠璃さんは夢の中だった。

肩に衾を掛け直してやりながら、瑠璃さんの顔を改めて見る。

思えば、明るい中で瑠璃さんを見るのは本当に久しぶりで、例え月の光を纏っていなくても、やはり瑠璃さんは「かぐや姫もかくやあらん」と言えるほどの美しさだった。

ぼくも少し眠ろう、と目を閉じては見たものの、眠れるはずもなく、頭の中で今後の算段を目まぐるしく考えていく。

まずは内大臣さまに結婚のお許しを得て、実家にも話し、陰陽道で吉日を選んでもらい・・・

その辺りは実務的なことと言えるけど、でも、実は一番、頭の痛い問題と言ったら、帝を初めとする例の4人なのだった。

実際、恋の手管にはこの上なく長けている方たちだし、色恋への嗅覚の鋭さは半端がない。

ぼくと瑠璃さんが結婚するなんてことがバレたらどんな妨害工作をしてくるかわからず、とにかく秘密裏に、かつ迅速にコトを運ぶ必要があって───

あれこれ思いを巡らせていたら、身じろぎをして瑠璃さんが目を覚ましたようだった。

「あ、高彬・・」

至近距離のぼくの顔を見ながら、少し驚いたような声で瑠璃さんが言い、目が合うと恥ずかしそうに首をすくめ

「良かった、夢じゃなかったんだ・・」

と呟いた。

「うん。夢じゃないよ」

抱き寄せて言いながら

(本当に、これを夢で終わらせないように、早く結婚話を進めておかないとな)

と思う。

それくらい宮廷と言うのは、いや、もっとはっきり言うと、宮廷人の方々と言うのは信用ならない一面を持ちあわせているのだ。

瑠璃さんの肌はどこもかしこもすべすべと気持ち良く、これを他の奴らに触らせてなるものか、と言う気がされる。

密着し肩を抱いていると、またしても妖しい気持ちになってきてしまい、ぼくは慌てて回していた腕を弛めた。

いくら気持ちが通じ合ったちは言え、ぼくと瑠璃さんはまだ公には認められていない仲なわけで、それなのに、一度ならず二度までもと言うのはさすがに・・・

「どうしたの?ぶつぶつ、言って」

「い、いや、別に」

顔を覗き込まれて、慌てて首を振った。

「何よぅ、気になるじゃない」

更に顔を近づけられ、観念した。

「いや、だからさ。正式に結婚する前なのに、何度も瑠璃さんに、・・そのぅ、手を出すのは、どうかな、と思ってさ」

言ってる内容が内容だけにしどろもどろに言うと、ややしばらく、じぃーっとぼくの顔を見ていた瑠璃さんは、やがて

「はぁ・・」

と大きなため息を吐いた。

「たった今、分かったわ。あたしたちがロマンティックになりきれない原因って、ずばり、高彬、あなたのせいなんだわ」

「え、ぼく?」

「そうよ。普通、どんな物語読んでも殿方ってこういう場面では募る恋情に見境なくなるもんなのに、あなたと来たら、理屈っぽく考えて、なんて言うか・・・理性的なんだもの」

「・・・」

断言する瑠璃さんを、ぼくはまじまじと見返してしまった。

ぼくがどれだけ苦労して理性的であろうとしてたか、分かってるのかな?

理性を捨てていいと言うんなら、いつでもかなぐり捨ててやるけど。

瑠璃さんは童の頃のままの丸い目でぼくを見ており、その目には

(やれやれ、高彬ったら)

とでも言いたげな色合いが漂っている。

だけど

(やれやれ)

と言いたいのはぼくの方だと言うのだ。

もしもぼくが理性をかなぐり捨てて、欲望のままに瑠璃さんを抱いていたらどうなっていたか───

瑠璃さんはぼくの───、男の情欲の本当の怖さを何も知らないでいるのだ。

物語の中で、ロマンティックな言葉を重ねて女性をかきくどく、あの姿だけを男の姿と思っている節がある。

だけど、物語には書かれないその先に、本当の男の姿が、そして、本当のロマンティックがあるはずなのだ。

ぼくたちはまだ、多分、物語の表紙をめくっただけの場所にいるはずで、だからこれから2人でそこに辿り着ければいいわけで───

「高彬」

黙り込んだぼくを何と思ったのか、瑠璃さんはツンツンとぼくの頬を指先で突いてきた。

「怒った?」

「ううん」

ぼくは瑠璃さんを抱きしめた。

「怒ってはいないさ。ロマンティックなことが苦手なのは確かだからね」

そう言うと瑠璃さんは、ぼくの胸の中でくすくすと笑い

「正式な結婚はしていないと言うけど、蓬莱の玉の枝をくれたじゃない。それでは正式な結婚にはならないの?あれは物語の中だけのお話?」

イタズラっぽく言ってきた。

「・・・」

「やっぱりあたしじゃ『かぐや姫』になれない?」

「そんなことはないよ。いや、むしろ、伝説のかぐや姫より、現実の瑠璃姫の方が綺麗だよ」

思わずのように言ってしまうと、瑠璃さんが顔を上げ、パパパっと顔を赤らめた。

「今の、ちょっとロマンティックだったかも・・」

「そうか。じゃあ、ぼくもまだ捨てたもんじゃないかな」

「そうね」

笑いながら接吻をし、額を付けて見つめ合い、抱き締め合って───

気が付いたら、格子の隙間から流れ込んだ朝もやが部屋に満ちていた。

幻想的な部屋の中、不慣れなぼくたちは、ロマンティックの片隅をほんの少し齧るような、そんな朝のひとときを過ごしたのだった。





<終>


続編への含みをどことなく匂わせつつ「今は昔。<新釈・竹取物語>」これにて完結です。
長らくのお付き合いありがとうございました。

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コメントの投稿

Secre

非公開さま(Bさま)

Bさん、こんばんは。
お気遣いいただきありがとうございます。
大丈夫です!!(^^)!

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは。

お付き合いいただきありがとうございました。

> この後の続きが気になります!

ありがとうございます!

> 早く奴らの羨ましがる顔が見たい~!

地団太くらい踏んでほしいですよね!先を越された~、とか言って。

少し考えますので、また連載のあかつきにはよろしくお願いしますね!

非公開さま(Mさま)

まさん、こんばんは。

> 「続編はあるもの」、と都合の良い解釈をしております。(笑)

↑これ、何だか枕草子の一文にありそうですね!
「春はあけぼの」「続編はあるもの」(笑)
他の方にも続編を楽しみにして下さっていると言うお言葉をいただいていますし、色々と考えてみますね~。

どっちの高彬も素敵なんですよね!
そして、どっちも高彬らしいと言う、この不思議。
ほんと、多角的な魅力を持ってますよねぇ。

> 他の求婚者たちは、もう放っておきましょう……じゃダメですかね?(笑)

いいような気がします(笑)
そもそも勝ち目なんか、これっぽちもないわけですしね!

非公開さま(Eさま)

Eさん、こんばんは。

他の求婚者たち(今、キュウコンと入れたら「球根」と出てきて脱力しました…)どう出てくるんでしょうね?!
早いとこしっかりと結婚出来たらいいんですけどね。
続編の構想も考えて行きますので、またお付き合いくださいませ~。

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