***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>3

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。閲覧は自己責任でお願いいたします。
               
        






***古典シリーズ*** 今は昔。<新釈・竹取物語>3 ***







ぼくは一度だけ、瑠璃さんに文を送ったことがあった。

瑠璃さんが簾中から出てこなくなり、少したってからのことだったと思う。

その時にはぼくは瑠璃さんへの恋心を自覚していたし、それに段々と宮廷でも瑠璃さんのことが噂され始めてきて、我こそはと名乗りを上げる公達が増えてきていたから、早めに何とか気持ちを伝えておきたいと言う焦りもあった。

それで無い歌才を捻って歌を詠み、瑠璃さんに送ったのだけど、一向に瑠璃さんからの返事はなかった。

まさかと思うけど、届いていないのではと思い、融に会いに行くのを口実に三条邸に寄り、それとなく小萩に聞いてみたら、間違いなく文は瑠璃さんに届いていると言う。

「そうか、届いているのか」

それならもう少し、待ってみようかな。

もしかしたら瑠璃さんも返歌を吟味してくれてるのかも知れないし・・・

なんて都合の良いことを考えていたら、どうやらそれが顔に出たのか、小萩が何とも気まづそうな顔をぼくに向けてきた。

何かを言いたくて、でも、言いだせないでいる、と言った表情である。

「小萩、何か・・?」

「それが、そのぅ・・」

上目づかいでチラチラとぼくを見ると

「実は姫さまは、高彬さまからのお文を見た途端、泣きだしてしまわれたのでございます」

「瑠璃さんが泣いた?ぼくの文を見て?」

「・・はい」

「それは・・・、嬉しかったから、とかではなくて?」

自分で言うのは恥ずかしかったけど、一応、その可能性もないわけだから聞いてみると

「いいえ」

小萩は首を横に振った。

「『ひどい!』と叫ばれて、そのまま突っ伏してしまい、それでお文をこう、ギュッと」

小萩は手を絞り、どうやら瑠璃さんはぼくの文を握りつぶしてしまったということらしい。

「・・・」

『ひどい』?

そんな失礼なことを書いた覚えもないし、なのに瑠璃さんはぼくの文を握りつぶした・・・

それ以来、瑠璃さんに文を書いていない。

書けないじゃないか。

また泣かれて、文を握り潰されてしまうと思ったら・・

結局、その文のことはそのままで、どうして泣いたのかもわからないまま今に至っている。

こうして御簾越しでも会えば瑠璃さんは気軽に話してくれるわけだから、ぼくを嫌ってると言うわけではなさそうで、だけどそれはある意味、辛いことだった。

はっきり嫌いと言ってくれたらまだ諦めもつくのに───

いや、諦めないかも知れないけど。

「姉さんさ、一人一人にちゃんと返事書いてるの?」

ぼくが聞きたいことを融がズバリと聞いてくれた。

「書いちゃないわよ。ろくに読んですらないもの」

「父さまが嘆いてたよ。今上はもちろんのこと、皆さん、将来は宮廷の重鎮になられる方ばかりなのに、こうも無下な振舞いばかりしていたら、いつかお咎めがあるって」

「ふん、だったら父さまが結婚すればいいのよ」

瑠璃さんはどこまでもサバサバと言い、ぼくは安心していいんだか、落ち込んでいいんだか、わからない気持ちになった。

今上始め、名だたる公達に求婚されても全く靡く気配のない瑠璃さんは、やっぱり本当に結婚するつもりがないと言うことなのだろうか。

だとしたら、ぼくとも結婚しないわけで───

「でも・・・」

少し黙っていた瑠璃さんが、もの思う風情で口を開いた。

「一回くらい、返事を書いてみようかしら」

「え」

思わず腰が浮きかけると

「それってOKって意味で?」

またしても融がぼくの気持ちを代弁してくれた。

だけど瑠璃さんはそれには返事をせずに

「<仏の御石の鉢><火鼠の裘><龍の首の珠><燕の産んだ子安貝>を持って来て下さいって書くの」

簾中で小さく笑う気配があった。

「それを持って来てくれたら結婚します、って。どうかしら」

瑠璃さんが言ったものは、いずれも「竹取物語」の中でかぐや姫が公達に言い付けたもので、どれも話にしか聞かない珍しい宝ばかり、手に入れるのは困難・・・と言うか無理なものばかりだった。

小萩に用意をさせると、瑠璃さんはサラサラと文を書き始めた。





<続>




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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

今回の融は「ミラクル融」です!
凄い、ではなく、たまたま・・(笑)
今後の展開、またお付き合いくださいません~。

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> 鷹男が俺が全部って持って来ちゃうんじゃ?苦笑

そうですよねぇ、鷹男の権力を持ってすれば!

> さあ、高彬がどう出るか、楽しみです!

短期集中連載となる予定ですので、またお付き合いください~(*^^)v

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いよいよ瑠璃さんから課題が出ましたね。皆がどうやってどのようにかき集めてくるんでしょう?
鷹男が俺が全部って持って来ちゃうんじゃ?苦笑
さあ、高彬がどう出るか、楽しみです!
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