*** 筒井筒のお約束をもう一度 <again and again -3/3->

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』

 

※このお話は初夜編(完結済み)のパラレルです。3話完結。
                        







***  筒井筒のお約束をもう一度<again and again -3/3-> ***  







「高彬・・・」

突然の高彬の登場にびっくりして立ち尽くしていると

「夜分に申し訳ない───」

少し掠れ気味の声で言い、そうして頭を下げた。

「無体なことをするつもりはないから」

あたしの驚きを別の意味に捉えたのか

「帰れと言うなら帰るから、そう言ってもらえたら・・・」

続けてそう言うので、あたしは慌てて

「帰れなんて言わないわ。急に現れたからびっくりしただけよ。とにかく・・・、中に入って」

妻戸の前に立ったままの高彬を部屋に招き入れた。

向かい合って座ると、高彬は幾分緊張したような面持ちで居住まいをただし、何かを言い掛けて唇を引き結び、その動作を何度か繰り返している。

何から言おうか思いあぐねているみたいだった。

「今日は二の姫との婚礼の日ではなかったの?」

あたしから切り出すと、高彬ははっとしたように顔を上げ小さく頷いた。

「大丈夫なの?こんなところにいて──」

「あの日から」

あたしの言葉を遮り、唐突に高彬は話し始めた。

「あの日から、どうしてだかあなたのことばかりを考えていた」

「・・・」

「全ての記憶を失くしてしまったから、ぼくにとっては全員が初対面の人なんだけど、でも、あなただけはそうは思わなかったんだ」

「・・・」

「初めて会ったようにはどうしても思えなくて・・・。婚約者だと言うし、もちろん初めて会ったわけじゃないのはわかってはいるんだけど」

「・・・」

「でも、いつの間にか兵部卿宮家の二の姫との結婚が決まっていて、それがぼくにとって最良の結婚であると母上に言われた。記憶を失くしたぼくに判断なんて出来なかったけど、でもずっと迷いがあったんだ」

「・・・」

「今夜、もうじき兵部卿宮家に出発すると言うギリギリの時も、ぼくは迷っていた。そうしたら家の者が『心に迷いがあるのなら、瑠璃姫のところに行かれて見たらいかがですか』と言ってきたんだ。ぼくは一言だってあなたのことは口にしてないのに、まるでぼくの心の中を見透かしてるかのようにね」

「・・・」

「『若君の思うとおりになさればいい』と」

「・・・」

「だから、こうして来た。どうしても、もう一度、あなたに会いたくて」

「・・・」

「・・どうして、泣いているの?何か失礼なことを言ったのなら・・・」

「ううん」

あたしは慌てて頭を横に振った。

「失礼なことなんか言ってないわ」

「記憶を失くしたぼくに向かい<自信を持っていい><笑って過ごせばいいことがある>なんて言ってくれたのは、あなただけだった」

「・・・・」

「もう少し、こうして・・・話をしていてもいいだろうか」

「・・・もちろんよ」

笑顔で答えたかったのに、涙で声が震える。

あたしたちは少しの間、見つめ合っていた。

「ぼくたちは童の頃から遊んでいたと言うけれど・・・」

高彬が口を開いたその時だった。

遠くから人の足音が聞こえ、どうやらこちらに近づいてくる。

ハッと目が合い

「こっちへ」

几帳を指さすと高彬は素早く几帳の後ろに回り込んだ。

誰かしら、こんな時間に・・。

足音はどんどん近づいてきたかと思ったら、バタン、とドアが開き、ズカズカと男が入って来て

(あ!)

と思った時には、男はあたしの目の前にいた。

「瑠璃姫」

男は憎々しげにあたしを睨み

「あなたは・・・、権少将!」

「右近少将が記憶喪失になったのなら怖いものはない。いつぞやの恨み、晴らしてやる・・!」

権少将があたしに飛びかかってきたのと、几帳の裏から高彬が飛び出してきたのが同時だった。

2人は揉みあいながら一発二発と殴り合って、吹き飛ばされた権少将が几帳にぶつかり、ものすごい音を立てて几帳が倒れた。

起き上がりしな高灯台をむんずと掴むと、怒り狂ったように権少将は高彬に突進し

「やめて!」

とっさに権少将の足にしがみつくと、権少将はたたらを踏む形で前のめりになり、あたし諸共、一緒に倒れ込んだ。

何かが倒れる大きな音と、呻き声が聞こえ、気が付いたら

「覚えてろよ!」

捨て台詞を残して権少将は妻戸を開け退散していくところだった。

ゆっくりと身体を起こし、辺りを見回すと───

部屋の隅に高彬が座り込み、こめかみの辺りを押さえている。

「高彬!大丈夫?!」

慌てて駆け寄ると

「あぁ・・、大丈夫だよ。───瑠璃さん」

「良かった・・」

何ともなくて・・・

──え?

瑠璃さん?

え?

えぇぇ?!

「高彬!」

「瑠璃さん!」

同時に目を見開いて叫んでしまった。

「思い出したよ!ぼくは藤原高彬で・・・、瑠璃さんだ。瑠璃さんだ!」

あたしの両手を取るとグッと握りしめ、そのまま自分の胸に引き寄せギュウギュウと絞めつけてくる。

「く、苦しい・・。高彬」

「あ、ごめん」

取りあえず手は緩めてくれたけど、高彬は感極まった感じであたしの背を撫ぜたり叩いたりした。

「良かった・・・、記憶が戻って」

少しすると、しみじみと言い、あたしも黙って大きく頷いた。

もし、あのまま記憶が戻らなかったら・・・

2人して夢から醒めたみたいに、しばらくはぼぅっとそのままでいたのだけど

「あれ」

ふいに高彬が声を上げた。

「瑠璃さん。今って何月だっけ」

「今?えぇと・・、卯月よ」

「卯月の何日?」

「朔日よ」

「卯月の朔日と言う事は・・・」

「4月1日よ」

「・・・」

「・・・」

え?

えぇぇ?

まさか!

「あんた、まさか今日が卯月の朔日だと知って、あたしを担いだんじゃ・・」

「とんでもないよ、瑠璃さん」

高彬は大きく頭を振った。

「こんな、タチの悪い嘘なんかつかないよ」

「・・そうよね」

「ただ・・」

「ただ?」

「ぼくはもう少しで自分で自分に嘘をつくところだったんだなと思って」

「・・・」

「記憶を失くしたとは言え、瑠璃さん以外の人と結婚するなんて、これ以上の嘘はないよ。そんなのに騙されるなんて馬鹿も馬鹿、大馬鹿者だよ」

「・・・」

「あのまま結婚してたら、ぼくは歴史に残る『4月馬鹿』になっていたんだな」

そう言って笑い、そんな高彬を見てるうち、ふつふつと笑いがこみあげてくる。

「ほんとよ、自分で自分の嘘に騙されるなんて」

「おかしいよな」

「そっか、今日は嘘ついて良い日だったわよね」

あたしは笑いながら高彬の手を取った。

「あたし、高彬のことが大嫌いよ」

「ぼくもだ。ぼくも瑠璃さんのことなんか大嫌いだ」

「顔も見たくないわ」

「あぁ、一生ね」

「もう二度と・・・会いたくない」

笑って言ってるはずが、だんだんと涙声になっていく。

「高彬のことなんか、本当に大嫌いよ・・・」

頬を伝った涙を高彬の指が拭い、あたしはまた高彬に抱きしめられたのだった。




~終~


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Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんばんは。

> おおお!なんとM弥の錯乱!策に溺れる男!

はい、今回は守弥に一肌脱いでもらいました。

> 記憶をなくしても本質は変わらないもんですね キチンと礼儀正しいところがまたなんとも、いいですね。(もちろん二の腕も。だからしつこいってば) でもやっぱり大胆に姫の部屋にこっそり?来るとは、何かの直感に従って思わず来るところが高彬らしいというか。

「初めて会った気がしない」って思う相手っていると思うんですよ。
頭では忘れていても魂が覚えていると言うのか。
2人は運命の相手ですもんね!

> 権少将みたいに意味のわからない運命のコマを握ってるやつっていますよね。笑

確かに!(笑)
本人、無自覚なんでしょうけど、原作でもある意味、かなりのキーパーソンでしたもんね。
ほんと、ゴンちゃんがいたからこそ瑠璃は思い出したわけですし、あの名言(ぶっちぎりの仲よ!)も飛び出たわけですもんね。
(余談ですが、「ぶっちぎり~」、名(迷)言集にまだ出ていませんでしたね。)

> まさかまた現れるとは!

権少将、不老不死説!

>ハッピーエンドでめでたしめでたしです!

お付き合いくださりありがとうございました。

おおお!なんとM弥の錯乱!策に溺れる男!

さ、それは置いといて。高彬、記憶喪失でもかっくいー(^з^)-☆
記憶をなくしても本質は変わらないもんですね キチンと礼儀正しいところがまたなんとも、いいですね。(もちろん二の腕も。だからしつこいってば) でもやっぱり大胆に姫の部屋にこっそり?来るとは、何かの直感に従って思わず来るところが高彬らしいというか。

権少将みたいに意味のわからない運命のコマを握ってるやつっていますよね。笑
まさかまた現れるとは!

ハッピーエンドでめでたしめでたしです!

みそさま

みそさん、こんばんは。

> やっぱり高彬は記憶を失なっても瑠璃を求めるんですね~。
> それでこそ高彬!!ですよ。

そうですよね。
2人はどんな風に出会っても惹かれあうんですよね。

> しかし、今回のファインプレーはM弥と権少将ですかね。
> 珍しく良い仕事をしました!!(*^ー゚)b

権少将って何気に(私の話では)活躍してるんですよ!(笑)
守弥、もしかしたら今になって「あんなこといわなければ良かった~~」なんて地団太踏んでるかもしれませんよね。
不思議とそう言うのが似合う人です。

3話お付き合いくださりありがとうございました。

瑞月さん、こんにちは。

いや~、してやられました。
まさかの4月馬鹿とは。( 〃▽〃)

やっぱり高彬は記憶を失なっても瑠璃を求めるんですね~。
それでこそ高彬!!ですよ。
殴り合う高彬も、貴公子然として瑠璃と対する高彬もカッコ良い♪(((*≧艸≦)
しかし、今回のファインプレーはM弥と権少将ですかね。
珍しく良い仕事をしました!!(*^ー゚)b
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