***新婚編***第五話 春の夜の出来事***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説*新婚編』




          

***新婚編***第五話 春の夜の出来事***








「瑠璃さん、何、ぶつぶつ言ってるの」

そう言ったかと思うと、くすりと笑って、ふいに近づいてきた。

「何のことだと思ったの」

「べ、別に」

そっぽを向くと

「言ってごらんよ」

ますます顔を近づけてきた。

「だから、別に」

「聞きたいな」

「・・・高彬、最近、いじわるよ。いじわるする人は嫌いよ」

ぷいと横を向いて言うと

「もう、遊んでくれない?」

「え?」

「童の頃、瑠璃さん、そう言ったじゃないか。石蹴りでぼくがわざと負けてあげたら『あんた、今、ズルしたわね。ズルする子、嫌いよ。もう、遊んであげない』って」

ふぅん・・・・そんなこと言ったかしら。

「瑠璃さんに遊んでもらえなくなったら困るから、いじわるはこれくらいにしておくかな」

そう言ってにっこりと笑った。

「早く仕事を終わらせるから、瑠璃さん、少し待っててね」

「だから、誰も待ってないってば!」

真っ赤になって言うと、高彬は聞いているのかいないのか、足を挫いてるあたしを抱き上げて寝所まで運び、夜具の上にそっと下ろした。

そうして文机に向かうと、何事かを書き始める。

几帳越しに見る高彬の横顔が、ほんのちょっとだけ凛々しく見えてしまう。

ぼんやりと高彬を見ていたら、視線を感じた高彬が振り向いたので、あわてて目をそらした。

何ドキドキしてるのかしら、あたし。

カタンと筆を置く音がしたかと思ったら、高彬が回りこんできて、ごろんと横になった。

「し、仕事は?もう終わったの」

内心の動揺を悟られないように言うと、高彬は肩肘をついて

「いや、まだだよ。でも・・・瑠璃さんに遊んでもらいたくなった」

そう言って、あたしの頬をつつく。

「それに瑠璃さんは横になるとすぐに寝ちゃうからね。前にもあったろ」

「え、いつ」

「ほら、白梅院でさ・・」

あー、そういえば・・・。そんなこともあったわね。

あたしが女房として白梅院にお忍びでいき、そこで高彬といい雰囲気になっちゃって、これからって時に守弥とかいう側近が高彬を呼びに来て、高彬が戻ってくる間に、あたしは寝ちゃったんだ・・・。

そういえば翌朝には、今度は大江に声をかけられたんだっけ。

ほんと、いろいろあったわねぇ。今となっては、どれも楽しい思い出だけどさ。

高彬も同じことを思い出していたのか

「本当に何度、邪魔されたことか。兄妹揃って、あいつら・・・」

とぶつぶつと呟いている。

「時々、あの時のことを夢にみることがあるんだ」

「夢・・・」

あっけにとられて言うと、高彬は真面目な顔で頷き

「ここぞ、と言うところで、鬼の面をつけた守弥が現われてさ、いつもそこで目が覚めるんだ」

夢の中のこととは言え、本当に悔しいのか、心底、無念そうに唸って言う。

鬼の面って・・・・やだわ、変なトラウマにでもなってるんじゃないかしら。

「大丈夫よ。もう邪魔されることはないわよ。こうして夫婦になったんだもの」

別にあたしがなぐさめる筋合いでもないんだけど、辛そうな高彬の顔見てたら、つい言っちゃった。

だけど高彬は笑いもせずに頷いて、安心したような顔であたしを見ている。

この様子だと、婚約時代に何度もお預けくらったこと、相当、堪えていたに違いないわ。

女のあたしにはよくわからないんだけど、殿方って色々大変なのね。ふふふ。

「なに笑ってるんだよ」

「男の人って色々大変なんだなぁ、と思って」

「そうだよ。瑠璃さんにも少しはこの苦労をわかって欲しいね」

高彬は少しだけ膨れてみせて、でも、すぐに笑って接吻をしてきた。

最初はついばむように笑いながらの接吻が、やがて高彬の顔から笑顔が消えて、深く長い接吻へと変わっていく。

高彬の手があたしの身体を伝い、ぐいと背中を抱き寄せられた。

その拍子に高彬の足があたしの足首に触り、じんじんと痛んだんだけど、でも、文句は言わないでおこう。

いろいろあったあげくにやっと結ばれて、そして恋のヨロコビを知ったばかりの十八歳の人妻としては、足の痛みなんかより、もっと大切な心が疼くような一瞬があるのよ。うふふ。

そっと高彬の背中に手を回すと、高彬の腕にさらに力が加わって・・・

次の瞬間、ぱたぱたと簀子縁を歩く足音が聞こえてきて、それが格子の外で止まった。

今まさに接吻をしようとしていたあたしと高彬は、びっくりして顔を見合わせた。

しばらくして

「・・・ご無礼致します。少将さま、お聞きでいらっしゃいますか」

遠慮がちな小萩の声が聞こえる。

なによ、この、懐かしすぎる展開は・・・・。

「あぁ、聞いてるよ。なんだい」

あたしに目で合図しながら高彬が答えると、小萩が膝を進める気配がした。

「ただいま、宮中より至急の使いが参られました」

「宮中から?」

なんだって、またこんな時に。もうじき亥の刻にもなろうっていうのに。

また帝が譲位したとか言うんじゃないでしょうね。

譲位するんなら、昼にでもしてくれないかしら。

「蔵人頭さまのご名代、兵衛佐さまが参られております。内々のお知らせがあるとのことで・・・」

「兵衛佐どのが?わかった、すぐに参る」

表情を改めた高彬が立ち上がり、すばやく直衣を身に付けると、足早に部屋を出て行った。








           *****************************************








灯台の油を足すために部屋に入った小萩は、ちらりと寝所に目をやるとうっすらと赤くなり、用事が済んだら転がるように退出していった。

何ひとりで想像してんのかしら、あの子。

小萩が想像するようなことは、まだ何もしちゃいないわよぉ。

抱き合って接吻はしたけどさ。

まぁ、少し前のあたしは、それだけのことを高彬にされただけであわあわしてたんだから、あんまり小萩のこととやかく言えないんだけど。

ほんと、人間、何事も経験が大事よね。

そうこうするうちに高彬が戻ってきた。

「なんだったの。なにか事件でも起きたの」

朝廷のことなんて聞いてもわからないことが多いんだけど、一応、心配なので聞いてみると、高彬は苦笑いの表情を浮かべた。

「いや、事件とかそういうことではないよ。ただ・・・」

「ただ?」

「早く書類を提出するようにと、今上が仰せられたらしいんだ」

「書類って、今、書こうと思ってたもの?」

「うん。提出は明日でいいと言われていたんだけど、早く仕上げてお持ちするよ」

「お持ちするよって・・・今から?」

高彬は、すでに文机に向かい、筆を走らせている。

「明日じゃだめなの」

ついつい不満が口をついてしまう。

「今上じきじきのお指図の仕事だからね、そういうわけにはいかないんだ。だから・・・ごめんよ、瑠璃さん」

やがて小半刻ほどで書類を仕上げた高彬は、しきりに謝りながらも、それでもそそくさと部屋を出て行ってしまった。

ひとり残された状態のあたしは、しばらく呆然としていたんだけど、ふと閃くことがあり、二階厨子の文箱に飛びついた。

確か、まだ捨ててなかったはず。

片っ端から文を広げて行くと、お目当ての文が出てきた・・・。




<第六話へ続く>


〜あとがき〜

こんにちは、瑞月です。

鷹男、可愛い義弟になんてことを・・・。

そして、やっぱり逆らわない高彬。

『なんて素敵にジャパネスク』じゃなくて『なんて素直なタカアキラ』ですね。

読んでいただきありがとうございました。


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Secre

ほんとうに

「なんて素敵にタカアキラ」がぴったりです。
こんなにお上に忠実な旦那さまだったら、やきもち妬いちゃうな~ 瑠璃さんが、「譲位するなら昼間にしてくれ」って言っちゃうのもわかりますよ~!
毎日更新されるのを楽しみにしています。

>mayumayuさん

こんにちは。
高彬は、本当に仕事熱心ですよね!
浮気の心配はない人だけど、やっぱり瑠璃もちょっとはやきもち妬いちゃいますよね~。
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瑞月(みずき)です。

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