社会人・恋人編<58>

「どうしてお袋にわざわざ言ったりしたんだよ」

睨み付けてやると

「私の望みは若君が家督を継ぐことです。そうして、由良さまには由緒ある家柄のご子息と結婚していただき、その方に若君の有能な補佐になっていただくことです。そのためには由良さまが好き勝手に他の方とお付き合いするようなことがあっては困るのです」

淡々と守弥は言い───






─Up to you !Ⅱ─<第58話>






「ぼくはこの家を継ぎたいとは思ってないし、ましてやそれに由良を巻き込むなんてしたくない。兄貴が継ぎたいと思ってるならそれでいいと思ってるさ」

いつからだったか、年の離れた3人の兄貴たちがぼくに冷たく当たるようになっていた。

その原因が家督問題だと知ったのは随分と後になってからだったけど、やっぱり兄貴たちの態度に最初は傷付きもした。

だから早く家を出たくて全寮制の高校も探したりしたんだけど、祖母に泣き付かれて断念せざるを得なかった。

大学からは東京に出ていたし、それからはなるべく実家には寄り付かないし、だから本当に家督問題に勝手に巻き込んでは欲しくないと思ってるんだけど・・・

どういうわけだかお袋も親父も、守弥までもがぼくに継いで欲しいと思ってて、正直、迷惑している。

そう言えば───

「守弥、もうひとつ聞きたいことがあったんだ」

「はい」

「兵部仁菜子さんに、ちゃんと断ってくれたよな」

「・・・」

守弥は微動だにせず、その態度からはっきりと断っていないことが察せられ、一瞬、頭に血が上った。

怒鳴りつけてやりたくなったけど、でも、それよりもどういうわけだか無力感がやってきた。

うんざりした、と言ってもいいかも知れない。

どうしてぼくの意向を無視するんだ。

ぼくは家なんか継ぎたくないし、好きでもない人と言いなりに結婚なんかしたくない───

「守弥」

ぼくは静かに守弥に向き直ると

「これだけは本当にきちんとお断りしておいてくれ。ぼくだけのことじゃなく、仁菜子さんにも失礼だ」

何か言いたそうにしてる守弥を残し、部屋を出た。

一階のリビングでは、どうやらお袋と兄貴がいるようで、そのまま家を出る。

行くあてがあったわけじゃなかったけど、足は自然と鴨川に向かっていて、ふと融のことを思い出した。

家にいるかな、電話してみようか・・・

『もしもし。高彬?』

「うん」

『どうしたの?珍しいね。高彬から電話くれるなんて。あ、もしかしたら由良ちゃん情報?』

「・・・いや、そういうわけじゃないんだけど。今、こっちに帰って来てるんだよ。会わないか?」

『いいよ!あ、良かったらさ、うち来ない?』

「いいのか?」

『うん、今日、誰もいなくてさ、ぼく、部屋の片付けをしてたんだよ。散らかってるけど、ぼくの部屋で良かったら』

場所を聞いて、20分後には呼び鈴を押していた。

「早かったね」

すぐに融が玄関から顔を出し、招き入れられる。

融の家と言うことは、つまりは瑠璃さんの家と言うわけで、密かに緊張してしまった。

今日は誰もいないと言う事で、良かったよ・・・

親がいたら、どんな挨拶していいかわからないしな。

融の家はものすごい豪邸で、純和風のぼくの家とはまた違った趣きがあった。

「何か飲み物お願いね」

お手伝いさんに声を掛けた融の後に付いて2階に上がり、廊下を歩いていると

「あ、ここ、姉さんの部屋だよ。中、見てく?」

融がドアノブに手を掛けるので、慌てて首を横に振る。

「い、いいよ」

勝手に部屋を見たなんてことが瑠璃さんにばれたら殴られそうだ。

瑠璃さんの部屋の斜め前が融の部屋みたいで、中に入ると、片付け中と言う事で確かに部屋の中は随分と散らかっていた。

それでも20畳近くはありそうな大きな部屋なので、そんなに乱雑な感じはしなかった。

「いらないものは処分しようかと思ってさ。ぼくみたいに引っ越しもしないでずっと同じところに住んでると荷物がどんどん増えちゃうんだよ」

「うん。そうだろうね」

「この間、由良ちゃんがさ、綺麗好きな人が好き、なんて言ってたしさ。へへ」

「・・そうか」

「片付け続けちゃってもいい?」

「もちろん」

「いつこっちに来たの?」

「今日だよ。と言うか、ついさっき」

片付けを始めた融の邪魔にならないように、本棚の前で何となく本を手に取りながら話す。

「そう言えばさ、融」

「何?」

「柔道とかやってないよな」

「柔道?やってないよ。なんで」

「いや、別に・・・。何かスポーツはやってたのか?」

「高校時代はラグビーをやってたよ」

「へぇ」

「今度、OB会があるんだ。・・ほら」

手渡された封筒には、学校名とラグビー部OB会の署名があり、京都でも名門の私立高校だった。

あれ?ここって春日の兄貴の出身校だ・・・

許可をもらい中を確認すると、招待状とOBの名簿が入っていた。

何の気なしに名簿に目を通し、その中に「藤原春日」の名前があってびっくりしてしまった。

兄貴、ラグビー部だったんだ・・・

兄弟らしい会話なんてほとんどなかったし、兄貴が高校生の頃、ぼくはまだ子どもだったから全然知らなかった。

名簿は卒業年度別に別れており、さして興味があったわけじゃないけど、最後まで目を通したぼくはまたしてもびっくりしてしまった。

「曽茅野美弥」

名簿には曽茅野氏の名前があったのだ。

「・・・」

兄貴と曽茅野氏、同じ高校だったんだ・・






…To be continued…


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