***短編*** <続>受難の日々 ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)このお話は
「初恋物語」
「小さな恋のメロディ -続・初恋物語-」
「受難の日々 -続々・初恋物語-」
の続きものです。
               
               
               
              






***短編*** <続>受難の日々 ***










「・・・え?百合姫からのお文は、友輔の気を惹くためだった・・?」

友輔を白梅院に呼んだ次の日、さっそく瑠璃さんにそのことを伝えると、瑠璃さんはポカンと口を開けた。

多分、ぼくも昨日はこんな顔をしてたんじゃないだろうか。

「うん、友輔がそうじゃないかって言うんだ。百合姫が急にぼくに恋心を募らせると言うのもおかしな話だし、まぁ、言われて見ればそうかも知れないなぁ、なんてぼくも思ってさ」

「・・・ふぅん、なるほどねぇ」

瑠璃さんは唇を尖らせながら言い

「気を惹くために、他の殿方にお文をねぇ。へぇ・・」

と、これまた昨日、ぼくが思ったのと同じことに感心している。

「すごいわね、イマドキの童は。百合姫が本当にそう言うつもりで高彬に文を送ったのかどうかはわからないけど、そういう考えに行く友輔がすごいわよ」

「うん。まぁ、友輔には、そう思うのが普通だって言われたけど」

「ふぅん。普通ねぇ・・」

「最後には友輔に、何か瑠璃さんとの間で困ったことがあったら相談してくれ、なんて言われたよ」

そう言うと

「6歳の童に相談するなんて、右近少将も形無しね」

瑠璃さんは吹き出した。

だけど、すぐに真面目な顔に戻って

「でも、あたしはイヤだわ、気を惹くために違う人に文を書くとか、そういう、駆け引きみたいなことって・・」

なんて独り言ちている。

「・・うん」

言葉少なに返事しながら、ぼくはそっと瑠璃さんを盗み見た。

何て言うか───

こういう瑠璃さんだから、ぼくは瑠璃さんが好きなんだろうな、なんて思う。

お転婆で、ズケズケ物を言うようでいて、そのくせ、誰よりもウブで恋愛に堅気なんだ。

恋の駆け引きを華麗にこなすのが風流人で、それこそが美学、と言う現代に置いて「恋愛に堅気」なんて野暮の代名詞でしかないのかも知れないけど。

でも、野暮で何が悪い、恋愛に堅気で何が悪いと言うのだ。

幸か不幸か、ぼくたちは駆け引きと一番遠い所で過ごして、そのまま結婚をした。

誰でもがバランスよく色んな経験をして大人になるわけじゃないだろうし、そういう意味ではぼくと瑠璃さんは「恋の駆け引き」の未経験者で、確かに野暮と言えば野暮なのかも知れない。

だけど、ぼくと瑠璃さんが、丁々発止と恋の駆け引きをしてるところなんて、まったくもってイメージ出来ないし、もちろんしたいとも思わない。

瑠璃さんは、ぼくが百合姫から文をもらったと、ぼくにむくれることはあっても、代わりにじゃあ自分も誰か他の殿方に当てつけに文を書いてやろうとは思わない人なのだ。

やっぱり、ぼくたちは似た者同士なのかな、なんて思うと嬉しくなる───

「だから、その・・・瑠璃さんには機嫌を直してもらいたいと言うか、百合姫に何かしてたんじゃないか、何て言う誤解を解いて欲しいんだけど・・」

顔を覗き込んでみると

「まぁねぇ、別に本気でそう疑ってるわけではないんだけど」

瑠璃さんは小さくため息を付き

「でも、後宮の女官たちにモテてるのは本当でしょ?」

反対にぼくの顔を覗き込んできた。

こういう瑠璃さんの顔が可愛いく見えてしまうのは、やっぱり惚れた弱みだろうか。

「あれは・・・、多分、あれも駆け引きなんだよ、きっと。誰かの気を惹くためにぼくに気のある素振りをしてるだけなんじゃないかな」

「・・・そうかしら?」

「うん。第一、ぼくはまったく興味がないんだしさ」

瑠璃さん以外にはね、と心の中で付けたし

(こういうセリフを口に出せれば、ぼくも少しは違うんだろうけどな)

なんて思う。

そうねぇ、うーん、・・・なんて顎に指を当ててぶつぶつ言う瑠璃さんは、少し頬のラインがすっきりしたこと以外は、やっぱり童のままのまっすぐな目をした瑠璃さんだった。

「ところでさ、瑠璃さん。一応、・・・本当に一応、聞いておくんだけどさ、もしもぼくが浮気でもしたら、瑠璃さんはどうする気なの」

結婚前から瑠璃さんは「妻は一生、自分一人でなくてはダメだ」と言っていたし、ぼくもその申し出を当然のこととして受け入れていたけれど、だけど、もしその約束が反故になった時、瑠璃さんは一体、どう出るつもりなのだろう。

妻を他に持つ気も、浮気をする気もさらさらないとは言え、気にならないと言えばウソになる。

瑠璃さんのことだから、むくれるくらいで済むわけないだろうし、となると枕箱が飛んで来るなんて言うのはまだましな方で、やっぱり出家かさもなくば・・・

あれこれ思い浮かべていたら

「うーん」

と考え込んでいた瑠璃さんは、ふいに顔を上げると

「やっぱり、悲しいかしらね。何をするってわけではなく・・・ただただ悲しいかも」

真面目な顔で言ってきた。

「・・・・」

瑠璃さんが悲しむだなんて───

それは、一番、堪えるな。

枕箱を投げつけられるより、痛い。

瑠璃さんを悲しませるなんてことは絶対にしないから。

命に代えても、約束は守る。

瑠璃さんを幸せにするから───

だけど、そんな甘い言葉が堅物のぼくから出るはずもなく

「大丈夫だよ」

そんな陳腐なセリフしか出てこないのだった。

それでも、似た者同士の瑠璃さんには全てがお見通しなのか、それは定かではないけれど

「ありがと」

これまた陳腐なセリフを言いながら、そっとぼくに抱き付いてきた。

駆け引きの出来ないぼくたちは、こんな率直な言葉で思いを伝え合う。

きっと回りの風流人からみたらぼくたちは、さぞ野暮で無粋に映るんだろうけど。

だけど、それのどこが悪いと言うのだ。

野暮で無粋な奴と後ろ指を指される受難くらい、喜んで受けるさ。

ぼくたちは駆け引きと一番遠い所で過ごし、そのまま結婚をし、そうして今も恋をしあっているのだから。






<終>


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