社会人・恋人編<56>

玄関の引き戸の前で、着いたばかりだと言うのに、ぼくはもうこのまま東京に引き返したくなってしまった。

家の中からは、お袋が何事かを喚くキンキンとした声と、それにかぶせるような由良の興奮した声が聞こえてきて───






─Up to you !Ⅱ─<第56話>






「お帰りなさいませ、若君」

ガラガラと引き戸を引くと、いつからそこにいたのか守弥が膝を付き座っていた。

「・・・」

いきなり守弥がいたことに言葉を失っていると

「冷蔵庫にプリンがございます」

「はぁ?」

プリン?

「お召し上がりになりますか?」

「いや、・・・今はいい」

東京から来てすぐプリンとか、普通、食べないだろ。ぼくは小学生か。

しかも、楽しい予定で帰ってきたわけじゃないんだし。

2階の自室に入ったら、2度と出てきたくなくなる気がして、そのままリビングに向かうことにする。

下がろうとする守弥の背中に向かい

「守弥、後で話があるから部屋に来てくれ」

そう言うと、守弥は片眉を上げ

「私からもお話がございます。後程、お伺い致します」

そう言って下がって行った。

ぼくに内緒で瑠璃さんに連絡をつけていたこと、きっちり文句を言ってやる。

廊下を歩き、一つ曲がった突きあたりの角部屋がリビングだ。

「・・・ですからね、由良。相手は誰なのかと聞いているのです」

「言えません」

「母に言えないような人だと言うことなの?!」

「そんなんじゃありません!」

「まったく、結婚前の娘が男性と無断外泊するなんて、そんなふしだらな・・・」

「すぐにお母さまはそんな風におっしゃって!ふしだらなのはお母さまの方だわ!」

「由良!」

───やれやれ・・・・

ぼくがリビングに入ってきたことも気付かないでバトルを繰り広げる2人に、本格的にこのまま踵を返して東京に帰りたくなってしまう。

これさえなきゃ、もうちょっと瑠璃さんと過ごせたのになぁ。

「・・・あら、高彬さん」

ようやくお袋がぼくに気付き、その声に釣られたように由良もぼくを見た。

「いつ着いたのです?」

「たった今」

ソファに向かい合う形で2人は座っており、迷わず由良の隣に腰を下ろしながら言うと、お袋は少し口の端を歪めたようだった。

反対に、由良は嬉しそうな顔でぼくを見てくるのを横目で感じる。

「由良が東京に行ったのを、高彬さんはご存知だと言うではありませんか」

「知っていたも何もぼくが由良を呼び寄せたんだよ、お袋」

「高彬さんが?」

これにはお袋も由良も驚いたようにぼくを見て、ぼくは大きく頷いた。

「急ぎで持って来て欲しいものがあったんだ」

「そんなこと由良は一言も・・・」

「ぼくをかばってくれたんだろ。そうだよな、由良」

「え、あ、・・・はい」

目配せしながら言うと、由良も話を合わせてきた。

ふと気が付くと、下がった筈の守弥が部屋の隅に控えている。

「東京に行った理由は解りましたけど、外泊は・・・」

「日帰りで帰そうと思ってたんだけど、由良も東京観光したいって言うしぼくのマンションに泊まらせたんだよ。たまたま京都に住む友だちが東京に来ててさ、京都に帰るって言うから由良のボディーガードをお願いしたんだ」

「ボディーガードって、そんな・・。高彬さん。その方がおかしな人だったら却って危険じゃありませんか」

「よく知ってる奴だし、何より柔道の段所有者なんだ」

「段所有者・・、まぁ、そう言う方ならボディガードに打ってつけですけど・・・」

融、すまん、今からでも柔道を習ってくれ。

「まぁ、高彬さんがそう言うのなら仕方ありませんわね・・」

目に見えてお袋の態度が軟化し、隣の由良がホッと身体中で息をついた気配を感じたけれど、ぼくはそっとお袋を盗み見た。

まだまだ油断は出来ないんだよなぁ、これが。

「本当に由良はいつからこんな頑固な子になったのかしら。ねぇ、高彬さん、あなた、兄としてどうお思いかしら?」

案の定、お袋がグチグチと言いだした。

何というか、お袋はここからが長いのだ。

「高彬さん、きちんとお返事なさって・・」

ぼくはチラッと守弥をみた。

「奥さま」

守弥はついと前に出ると、渋い声で言った。

「冷蔵庫にプリンが冷えておりますが、皆さまでいかがですか?」

「プリン?そんなプリンだなんて・・、今、大切なお話を・・」

「若君もお召し上がりになりたいと思っておられます」

「高彬さんが?」

お袋がぼくを見て、いい年してプリンを食べいなんて思われるのは嫌だったけど、せっかくの話しの流れを変えるチャンス、ぼくは渋々頷いた。

守弥の奴。

もう少しまともな方法でお袋を追っ払ってくれよ・・・

女中が恭しく持ってきたプリンがテーブルに並び、皆でプリンを手に取った時、インターフォンが鳴った。

女中が応対する気配がして、少しするとリビングのドアがノックされた。

「奥様、春日さまがいらっしゃいました」

「まぁ、春日さんが?」

「・・・・」

───春日の兄貴が?






…To be continued…


どうしても高彬にプリンを食べてもらいたい守弥。
この際、守弥の買ってきたプリンでいいから、春の公園のベンチで高彬と並んで座ってプリンを食べて明日からの活力にしたいものだ、と思っていただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
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