社会人・番外編<守弥の場合>

(いつもにもまして)くだらなさ満載のお話です。時間を無駄にしたくない方は閲覧ご注意ください。
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*******


私の名は守弥と言う。

ヤモリではない。タモリでもない。モ・リ・ヤ、である。

若君と出会ったのは、私が10歳、若君が5歳のことであった。

若君は今年24歳なので、かれこれ、えーと、えーと、24引く5だから・・・、電卓、電卓・・

コホン、19年も前のことである。

若君との出会い、それは私にとって、人生最良の日であった───






─Up to you !─ <守弥の場合>






私の母は長年、藤原家の女中として働いていたのだが、ある日、母に「女中頭にならないか」と言う打診があった。

長いこと務めていた女中頭が『自分探しの旅に出る』と言う理由で退職することになったと言うのだ。

母はその昇進とも呼べそうな話に大いに心をくすぐられたようであったが、ひとつ気掛かりがあるとしたら、今までの<通い>ではなく<住み込み>になると言う事であったと言う。

その頃、我が家は、父、母、私、妹の4人家族であったのだが、全員揃っての住み込みは難かしそうだった。

もちろん、望めば家族4人で藤原家に移り住むことは可能であったのだが、そうは出来ない事情があった。

父は博士号を持つ大学教授だったのだが、昆虫採集が趣味と言う変わった人物で、家の中には虫と言う虫の標本があり、更には一室を「虫ルーム」と名付けて、虫の飼育をしていたのだ。

一歩、足を踏み入れれば、薄暗い部屋の中、羽音は聞こえてくるわ、「ジー、ジー」「チッ、チッ、チッ」と言うわけのわからない言う鳴き声は聞こえてくるわ、湿った土や葉の匂いは鼻を付くわ・・・と言う、奇怪な部屋ではあった。

妹は「キモオタ部屋」と呼び、近づきもしなかった。

藤原家に一家で移り住むとしたら、標本やら生きてる虫やらまで一緒に「住み込み」出来るはずもなく、つまりは捨てなければならないわけで、父は

「虫と別れるくらいなら、虫と心中する」

と言い放ち、母は

「ご自由に」

と答えただけだった。

母の中で、職業婦人として生きる決意が芽生えた瞬間だったのではないかと思う。

さて、そんなわけで、正月も開けたある日、母、私、妹の3人で藤原家に住むことになったのだが、当時、私の心は非常に冷ややかであった。

冬だったから冷ややかだったわけではない。

私は、人生に飽き飽きしていたのだ。

いや、飽き飽きと言うのは、少し違うかも知れない。

人生に何の楽しみも目標も持てずにいたのだ。

当時、私は小学4年生。

成績は抜群に良かったのだが、いかんせん、運動神経がなかった。

小学校の時、モテたり、クラスの中心メンバーとなるのは、足が速い奴か面白い奴と相場が決まっており、そのどちらにも属さない私は、女子に「ダサい奴」と言うレッテルを貼られていた。

別にそれはいいのだ。

私だって、ドテかぼちゃみたいな面相の女子にモテたかったわけではない。

だが、385÷22の余りも出せないような奴が、ただ足が速いと言うだけでキャーキャー言われると言うのが面白くなかった。

足が速いのがそんなに偉いか。

ギャグで人を笑わせるのが、そんなに凄いか。

もちろん、オリンピック選手になるとか、お笑い芸人として身を立てるとか、そこまで極めるのであれば、私も賞賛の言葉を惜しまない。

だが現実はどうだ。

大体の人は、「昔は足が速かった人」で終わって行く。

いいとこ、子どもの幼稚園の運動会の保護者リレーで

「ケンちゃんのパパは足が速いねぇ」

と拍手喝采を送られるくらいである。

ギャグで人を笑わせるのが好きだった少年は、かなりの高確率で「おやじギャグ」を連発して、回りを凍らせるような中年になっていく。

そんな真理を知りもしない、クラスメイト・・・

私はニヒルな笑いを浮かべて彼らを見ていたのである。

いつか知るがいい、人生の真理を。

そして思い知ればいいのだ。

「あぁ、あの頃の俺はただ足が速いと言うだけで天下を取った気になっていた愚かな少年であったのだな」と。

そんなペシミストであった私の前に現れたのである。

天使が───

そう。

最初に若君を見た時、私は

「天使がいる」

と思ったものだった。

それくらい、5歳の若君はお可愛いらしかった。

「さぁ、こちらへどうぞ」

通された応接間のソファに、どういうわけだかチョコンと若君は座っており

「まぁまぁ、高彬さま。いかがなされましたの」

案内した女中が蕩けるような笑顔で言い、若君は

「ぼく、見に来たの。どんな人が来るのかなって」

足をぶらぶらさせながらおっしゃり、小首を傾げている。

か、可愛い!

この、光輝くほどの可愛いらしさはなんだろう・・・

若君は女中が持ってきたプリンを食べ始めた。

(天使がプリンを食べている!)

この最強の組み合わせに、私の胸は轟いた。

この世に、これほど完璧な絵面があるだろうか・・・!

私は若君を凝視した。

「なぁに?おにいちゃん」

私の視線に気が付いた若君は、私を見て言い

(・・・おにいちゃん!)

私の心は震えた。

もしかしたら、実際に身体も震えたかも知れない。

プリンを食べ終え、ピョンとソファを下りた若君はトコトコと部屋を横切り部屋を出て行ってしまった。

「・・・・」

行ってしまったか・・

若君のいなくなった応接間は一気に色褪せたように見え、途端にいつもの冷めた気持ちになっていたら、ドアが開き、またしても若君が入ってきた。

真っ直ぐに私の所に来ると

「はい」

と何かを差しだしてきた。

「・・・これは?」

「これね、ホッカイロ、ね」

「・・・」

「今、おにいちゃん、ブルブルってしたでしょ。これがあれば寒くないよ」

「・・・・」

なんて・・・

なんて優しいお子なのだ。

私の震えを寒さのためだと思い、寒くないようにと使い捨てホッカイロを・・・!

「・・・」

私は───

私は若君のために生きよう。

「若君」

私は応接間の一隅で若君に向かい合った。

「この家に住むことになりました守弥です。これから身を尽くして若君にお仕えいたします。どんなことからもお守りします」

「おにいちゃん、守弥って言うの?」

「そうですよ」

「もーりや」

若君はニコニコと笑い、私の胸はまた打ち震えたのであった───。



*******



あれから19年、若君は立派にご成長され、頭脳、スポーツ、容姿、ご性格、何の不足もない稀に見る好青年となられた。

後は私の見つけてきた兵部家のご令嬢、仁菜子さまとご結婚をし家庭を持たれれば───

と、思っていたところに、思っても見ない邪魔が入った。

若君の会社のNY支店にいたと言う藤原瑠璃と言う女が、東京支店に異動してきたのである。

何やら若君も憎からず思っているようで・・・

ここまま2人が行くところまで行ってしまったら、私の「若君ハッピーライフ計画」が崩れてしまうではないか!

おのれ、藤原瑠璃めぇぇ!





…Fin…


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Secre

非公開さま(Sさま)

Sさん、こんにちは。

楽しんでいただきありがとうございます!
ホッカイロに罪はないんですけどねぇ(笑)
守弥、きっとそのホッカイロ、使わずに取ってますよね。ジップロックとか入れて、誰も触らないようにして。

そうなんですよ、藍さんの画がイメージなんです(*^^)v(イチゴ、食べてる高彬!最高に可愛いですよね)

本当に真っ直ぐに育ってくれましたよね、高彬。
変人が近くに(複数)いると、案外、反面教師になってまともに育つもんなんですかねぇ??(笑)

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> あのー、そこのアブナイ人!!

お呼びですか?(By守弥)

返事するとこみると、自覚はあるんですかね?

> 若君ハッピーライフじゃなくて、守弥ハッピーライフ計画じゃない?苦笑

確かに。
高彬はハッピーと思ってなさそうですもんね。

> 学者肌って1つの事に夢中になると、とまらないですよね。お父さんは虫で、息子は高彬。汗

対象が虫か人かの違い(笑)

> アブナイぞー 高彬の老後の積立も株もしっかり操作してそうです!

やってそうです!
何かちゃっかり自分の分も一緒に積立ててそう・・(一緒に暮らしてるの前提で)
お願いだから、高彬を自由にしてあげて欲しいです(笑)

藍さま

藍さん、こんにちは。

守弥、危ないやつですよねぇ。

> 私も幼い高彬と出会ったら可愛くて可愛くて思わず抱きしめたくなるでしょうが、男性で(この時は男子か)これはマズイでしょ、と思いました(笑)

私も書きながら、本気で(高彬、気を付けて)と思いましたよ。
そういえば、プリンを食べてる高彬、イチゴにしようかと思ったんですよ~。
藍さんの描かれたイチゴ食べてる童の高彬がイメージです!
あまりに可愛くて、勝手にイメージ映像に使わせていただきました(*^^)v

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

はい、クレーム受付、間に合いましたよ~。
確かに「通い」だったら、守弥は犯罪者になっていたかも知れませんねぇ。
高彬を誘拐し、そして軟禁・・。
確かに電話の取次ぎは面倒くさそうですね!(笑)
特に「高彬との関係」にはうるさそうですよ。
少しでも不審に思ったら、取り次がないとか平気でしてそうですもんね。
守弥の妹は、気の毒だけどやっぱり大江ちゃんです。確かに大江的にはうんざりでしょうねぇ。

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あのー、そこのアブナイ人!!
若君ハッピーライフじゃなくて、守弥ハッピーライフ計画じゃない?苦笑
学者肌って1つの事に夢中になると、とまらないですよね。お父さんは虫で、息子は高彬。汗
アブナイぞー 高彬の老後の積立も株もしっかり操作してそうです!

時間を返せぇぇぇ!

なーんて(笑)
ウソです。冗談ですよ〜!

先日の感動ものの作品から一転、いや〜笑わせてもらいました!
タモリ…いえ、モリヤの平安でも現代でも相変わらずのアブノーマルぶり。
私も幼い高彬と出会ったら可愛くて可愛くて思わず抱きしめたくなるでしょうが、男性で(この時は男子か)これはマズイでしょ、と思いました(笑)
大人になってますますアブノーマルさに磨きがかかっていると思われるモリヤのこれからの活躍に期待してま〜す!

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