**特別編***ジャパネスク雛祭り~Sleeping Beauty~***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*特別編』




注)このお話は特別編『ジャパネスク・ガールズ・フェスティバル!~桃の節句~』の<番外編>です。
時は平安、今日は雛祭り・・・・
はちゃめちゃな設定がお好きでない方は読むのをお控えください。
どんな妄想もウェルカム!の方は、どうぞご覧くださいませ。





          ***********************************************




ジャパネスク雛祭り~Sleeping Beauty~










「松乃や、明日はわたくしは温子さまとお食事会で出かけますけどね、忘れずにお雛人形を仕舞うのですよ。いいこと?忘れずに、ですよ」

右大臣邸の母屋で盛大に開催された「雛祭り会」も終わり、招かれた客が三々五々帰って行き始めた頃、母上が古参女房の松乃に言い付ける声が聞こえてきた。

「かしこまりました、北の方さま」

母上が部屋を出て行き、テーブルの片付けを始めた松乃にぼくは話しかけた。

「どうしてそんなに急いで人形を仕舞わなけばいけないの?こんなに綺麗な人形なんだから、もう少し飾っておけばいいのに」

松乃はちょっと驚いたような顔になって、それから(ふふふ)と笑いだした。

「賢い高彬さまにも、ご存知ないことがあるんですのねぇ」

「え、何」

「お雛人形は雛祭りが終わったらすぐに片付けないと、その家の女の子がお嫁に行き遅れてしまうと言われているのですよ」

「へぇ・・」

「だから、大抵のおうちではすぐに仕舞うものなんです」

「・・・・」

「将来、お嫁さんになれなかったら困りますでしょう?・・・あ、高彬さま、どちらへ」

急いで車宿りに向かうと

「三条邸に行って」

ぼくは牛車に乗り込んだ。

「若君、どちらへ」

ぼくの後を追ってきた守弥の声が聞こえたので

「融と約束があったことを思い出したんだ。三条邸に行ってくる」

簾を巻き上げて言い、そのまま(ふぅ)と息を吐きながら座り込んだ。

───人形が片付けられる前に瑠璃さんのとこに行かないと。

逸る気持ちを抑えるため、外の景色でも見て少し落ち着こうと物見窓を開けると、暮れかかる赤みのある陽が車内に入ってきた。

風はまだ冷たかったけど、でも、少しだけ春の匂いがする。



******



「あれ、高彬、どうしたの?」

突然のぼくの来訪に、驚いたような声を融は上げ、それでもニコニコと出迎えてくれた。

「う、うん・・。えぇと、急に融と遊びたくなってさ」

「うん」

融の部屋への向かう渡殿を歩きながら、ぼくは気付かれないようにキョロキョロと辺りを見回した。

瑠璃さんはどこにいるんだろう?

瑠璃さんも「雛祭り会」をやったのかな?

雛人形はどこに飾ってあるんだろう?

気になることはたくさんあったけど、融の部屋に着くまでの間に、それに関する情報は何も得られなかった。

「融んちでは『雛祭り会』やったの?誰か呼んだりして」

「雛祭り会?あぁ、今日は雛祭りだもんね。うちは特別なことはやらなかったよ。姉さんがめんどくさいからいいって」

「ふぅん。・・・でも、ちらし寿司とかケーキくらいは食べたよね」

ほっとしつつも、少し瑠璃さんが可哀想な気持ちがあってそう聞くと

「昼にステーキ食べたよ」

「ステーキ?」

雛祭りにステーキ?

「うん、姉さんがさ、ちらし寿司なんかよりどうせならお肉がいいって言いだしてさ。近江牛のA5ランクのステーキだよ。姉さんらしいよね」

融が笑い、ぼくもちょっとだけ笑った。

「融んちはさ、どこに雛人形飾ってあるの?うちは母屋だよ」

変なこと聞くと思われないようにさりげなさを装って聞いてみると、融は怪しむ様子もなく

「姉さんの部屋だよ」

ぼくが一番知りたかった情報をあっさりと話してくれた。

融の部屋であれこれ遊ぶうちにすぐ夜になり

「こんな時間に帰るのは危ないから」

と言う理由で、首尾よく泊まらせてもらえることになる。

よし!第一関門突破だ。

布団を並べて横になり

(後は融が早く寝てくれることを祈るだけだな)

と思っていたら、祈る間もなく融はすぐに寝てしまった。

規則正しい寝息をしばらく聞いてから、そっと布団を抜け出す。

目指すは瑠璃さんの部屋だ。

誰にも会わないように細心の注意を払って渡殿を進み、東の対屋の瑠璃さんの部屋の前に辿り着く。

──ふぅ・・

ひとつ大きく息を吐いてから、そっと妻戸を押してみると───

開いた!

ギギギ・・と木のこすれる音がして、慌てて「しぃ」と指を立てる。

静かに身体を滑り込ませると、格子から入る月明かりで室内は案外に明るく、すぐに立派な7段飾りの雛人形が目に入った。

「・・ごめんなさい」

謝りながら一体の人形を手に取り、部屋を出ようとしたところで、ふいにあらぬ思いが頭に浮かぶ。

「・・・・」

奥で瑠璃さんが寝てるんだ・・・

静かな部屋の中、ごくり、と唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえ、ぼくは慌てて頭を振った。

だめだ、だめだ。

───いや、ちょっとくらいなら・・・

ぎゅっと目を瞑り

(ごめんなさい)

心の中で謝りながら、ぼくはそっと几帳の向こうに足を踏み入れた。

瑠璃さんの部屋に通してもらったことはある。

だけど、奥の部屋まで入れてもらったことはなくて、ぼくはそっとレースのカーテンで区切られた寝室スペースを覗き込んだ。

瑠璃さんは───

いた。

白い天蓋付きベッドの上、胸元で指を組みスヤスヤと眠っている。

白い木枠の大きな姿見があったり猫脚のイスがあったりで、そのあまりに女の子らしいインテリアに、いつもお転婆で勇ましい瑠璃さんの違う一面を見た気がしてドキドキしてしまった。

息を殺して瑠璃さんを覗き込む。

眠る瑠璃さんは、いつだったか由良にせがまれて一緒に見た、ディズニー映画の主人公みたいだった。

「・・・・ん・・」

瑠璃さんが寝返りを打ち、ぼくは慌てて部屋を後にした。



******



「高彬、来てるんですって?」

翌朝、融の部屋で朝ごはんを食べのんびりしていると、ひょっこりと瑠璃さんが現れた。

「ちょうど良かったわ、一緒に観ない?」

瑠璃さんの手にはビデオケースが握られており、それを見た融は

「えー、また『眠れる森の美女』?もう何度も観たからぼく飽きちゃったよ。姉さん、一人で観てよ」

「いいから、いいから。名作は何度見ても心洗われるものなのよ」

融の抗議もむなしく、数分後にはぼくと融は、大納言さまご自慢のシアタールームに座っていた。

「やっぱり映画鑑賞にはこれよね」

とのことで瑠璃さんの手にはポップコーンがあり、瑠璃さんを挟んでぼくと融は座った。

「さぁ、始まるわよ」

映画の上映が始まって少しすると融のいびきが聞こえてきて、瑠璃さんは融の脚を蹴っ飛ばしつつも、夢中になって見ている。

映画はまさに最高潮、眠るプリンセスに王子がキスをする場面になると、隣から(スン)と鼻をすする音が聞こえてきた。

そっと横目で様子を窺うと、前のめりで口を薄く開いたまま、瑠璃さんは泣いていた。

瑠璃さんの顔にはスクリーンの動きに合わせたライトが当たり、手の平で涙なんか拭っている。

(あのさ、瑠璃さん・・)

ぼくは心の中で瑠璃さんに話しかけた。

スクリーンの中のプリンセスたちのハッピーエンドに感動してる暇があったら、ぼくとの約束を思い出してよ。

ぼくとの結婚の約束を忘れてるなんて、ぼくからしてみたら、まさしく瑠璃さんは<眠るプリンセス>だ。

約束を思い出せないのなら、誰かと結婚してしまうのなら、だったら思い出すその時まで───

ずっと眠り姫でいてよ。

そうして、ぼくが瑠璃さんをキスで起こすから。

ぼくのキスで思い出してよ。

スクリーンには幸せそうに微笑みあうプリンセスと王子が映っており、隣に座るぼくのプリンセスは、またしても感動の涙を流したのではあった。





<Fin>


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Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。


> 思いついたらの行動は瑠璃にも負けませんね!

基本、似たものカップルです。

>だけど瑠璃の前だと臆病になってしまうんだから。この〜、片思いの騎士!(なんじゃそら)

好きな女の子には臆病になってしまうものなんでしょうね!
そんな気持ち、私はとうの昔にどこかに置いて来てしまいましたが~(笑)

> 実はスリーピングビューティ 見たことないんですよ。娘がいるのに。苦笑 動物系が好きなのでそこまでたどり着けてません(まだ)

プリンセス系ってハマる子とハマらない子がいますよね。
うちも動物系は好きでした。

> しかし瑠璃は眠ってなかったのに横に王子いるの、気がつかなったんですねー。

コロッと忘れてましたからねぇ(笑)

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

そりゃあ寝顔くらい見たくなりますよね。
それだけで耐えた高彬、えらい!
(瑠璃が寝返り打たなかったらしてたのかも?!うーん、でも、やっぱり高彬はしなかったような気がします)

高彬少年、可愛いですよね!

思いついたらの行動は瑠璃にも負けませんね!だけど瑠璃の前だと臆病になってしまうんだから。この〜、片思いの騎士!(なんじゃそら)
しかしディズニーとジャパネスクが合体でー出て来るとは!面白すぎです。
実はスリーピングビューティ 見たことないんですよ。娘がいるのに。苦笑 動物系が好きなのでそこまでたどり着けてません(まだ)
やっと美女と野獣見ましたよ〜
しかし瑠璃は眠ってなかったのに横に王子いるの、気がつかなったんですねー。



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