社会人・恋人編<37>

瑠璃さんをマンションの前まで送り届けたあと、一人帰宅したリビングのソファに座り、ぼくは仁菜子さんが送ってくれた本を手に取った。

仁菜子さんかぁ・・・

こうして本を探してわざわざ送ってきたところをみると、やっぱりきちんと断ってないと言う事なんだろう。

まったく、守弥の奴───






─Up to you !Ⅱ─<第37話>






『ともかくこの話はきちんと終わらせておいてくれ』

ぼくは間違いなく、あの時守弥にこう言ったんだ。

まぁ、確かに守弥は「はい」とは明言してなかったかも知れないけど・・

だけど仮にも見合いなんだから、ぼくが直接断るなんてことはしないのが普通じゃないか。

まったく本当に守弥には困ったもんだよ。

今さら言っても仕方ないけど、ベッドだってこのザマだ。

やっぱり瑠璃さんも、ベッドのこと、おかしいと思ってたんだ・・・

<過保護だ>なんて思われたんじゃないかと思うと、ほんとやりきれない。

しゃしゃり出るんなら、まともにしゃしゃり出て欲しいもんだよ。

サイズ確認なんて基本中の基本じゃないか。

あーあ、どうしてぼくには守弥みたいなのがいるんだろう。

今まで、何百回、何千回思ったか知れないことを、また思ってしまう。

物心ついた時には、家には守弥がいて

「若君、若君」

と背後霊のようにまとわりつかれ、子どもの頃からどれだけ迷惑を被ってきたことか。

それに、どういうわけだかお袋も「高彬さん、高彬さん」とやけにぼくに肩入れしてて、それが元で兄貴たちには妬まれるわ、姉貴たちにはからかわれるわで、本当に実家に良い思い出なんかない。

我ながら、良くグレずに育ったと思うくらいだ。

はぁ───

実家のこと考えると、出るのは溜め息ばかりなり、だよ、ほんとに。

まぁ、嘆いていてもしょうがない。

せっかくだから本でも読もうと手に取ったところで、携帯の着信音がした。

出て見ると融からで

「あ、高彬」

やけに楽しそうな声が聞こえてきた。

「融か。もうそっち着いたのか」

「うん。夕方の新幹線でね。あ、由良ちゃんと一緒に帰ってきたよ」

「悪かったな、由良のお守を押し付けて」

わざとそう言ってみると

「そ、そんなことないよ、お、押し付けられたなんて、やだなぁ、ぼく、そんな風に思ってないよ」

ムキになって言い返してきた。

うん、わかってるよ。

「あのさ、高彬。由良ちゃんの好きな食べ物って何かな」

「由良の好物?」

「うん、あと、好きな音楽とか映画とか。教えてよ」

「うーん・・・」

ぼくは首を捻った。

改めてそう聞かれると、何も出てこないのだ。

「知ってたら教えてやりたいけど、ぼくも早くに東京に出てきてるし、由良の好物って聞かれてもなぁ・・・」

ぼくなんかより、姉貴の方が詳しいんだろうけどな。

「こっちに来てる姉貴が一人いるから、今度、聞いておくよ」

「うん。じゃあね、高彬」

「またな」

電話を切り、さて本でも・・と思ったら、また着信音がした。

「もしもし、あ、高彬?」

またしても融で

「泊めてもらってありがとね!お礼、ちゃんと言ったよ」

それだけ言うと、切られてしまい

「・・・・」

ぼくは携帯を耳に当てたまま、ポカンとしてしまった。

何なんだ、あいつ・・。



******




結局、かなり遅くまで本を読んでしまったせいで目覚ましの音に気付かず、目が覚めたのは家を出る30分前だった。

急いでシャワーを浴び、朝食はカフェで摂ることにして家を飛び出した。

面白い本と言うのも考え物だよな、生活が乱される。

同じには瑠璃さんに乱されて欲しいものだけど、案外、瑠璃さんと言う人はテリトリーがしっかりしてると言うか、わきまえていると言うか、二言目には「沽券に関わる」とか言いだす人だし。

マンションのロビーを横切ったところで、ふと、昨夜は郵便受けを覗いてないことに気が付いた。

瑠璃さんと一緒だったから、素通りしてしまったのだ。

フタを開けてみると、チラシやハガキが何枚かあり、その中に白い封筒が混ざっている。

宛名も差出人もなくダイレクトメールと言う感じでもない。

開封してみると、中から写真と白い紙が出てきた。

白い紙には赤いインクで

「藤原瑠璃の男関係に気を付けろ」

と印字されている。

瑠璃さんの男関係───?

次いで写真を見ると、どこかの喫茶店のようで、明らかに隠し撮りしたとわかる写真で、良く見ると───

良く見ると、瑠璃さんが映っている。

瑠璃さんはこちらを向いて座っており、前にはスーツ姿の男が座ってるようで、肩と背中半分くらいしか映っていない。

右下には日付と時間が打刻されていて、どうやら昨日の昼過ぎのようである。

そういえば、昨日の昼時、瑠璃さんの姿が見えなかっことを思い出す。

「・・・・」

写真をじっと見てるうち、あることに気が付いた。

これ、駅の向こうにある喫茶店じゃないだろうか・・・

前に何かで一度だけ入ったことがある。

「・・・・」

誰だよ、この男。

瑠璃さんは、何をしているんだ。






…To be continued…


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