社会人・恋人編<34>

『藤原高彬様』

おそらくは仁菜子さん本人が書いたであろう宛名は、それはそれは見事な文字だった。

思い入れもないような仕草で高彬は包みを解くと、中から出てきたものは───






─Up to you !Ⅱ─side R <第34話>






中には更に薄い紙に巻かれたものがあり、開いてみると数冊の本が出てきた。

「・・・・本?」

呟きながら一冊一冊の表裏を確認した高彬は

「あぁ、あの時の・・・」

と、どこかぼんやりした口調で言った。

隣で見ていたあたしにも本だと言う事はもちろんわかったけど、どうやら新品の本ではないようで、それどころか随分と読み込まれたとわかるような古びた本に見える。

ぱらぱらとページをめくりながら

「いつだったか、ほら、お見合いしたことがあっただろ。守弥に嵌められてさ」

本に目をやったまま高彬が話し出した。

「その時にこれと言って話題もないし、本の話をしたんだ。仁菜子さんは瑠璃さんみたいに色々しゃべてくれる人じゃなかったから、結局、ぼくが話す方に回らざるを得なくてね、好きな作家や本の話をしたんだよ。で、廃版で入手困難な本をずっと探してるって話しをしてさ・・・・・、そしたら、タイトルを聞かれて・・・何冊か挙げたんだけど・・・しかし・・・良く見つけたなぁ」

最後は独り言のように言うとそのまま黙り込み、あたしも一緒に黙り込んでしまった。

「・・・・」

すごーく複雑な気持ちだわ。

これがもし、デパートの包み紙で包装された高価なものだったりしたら、こんな気持ちにはならなかったかも知れない。

さらりと言ったであろう本のタイトルをしっかり覚えてさ、それをもとに入手困難な本を探すだなんて、ずいぶんと心がこもっているような気がする。

仁菜子さん、もしかしたら高彬のこと・・・

「ちゃんと断ったはずなんだけどな・・」

高彬がぼそりと呟き

「まさか、ぼくに内緒であいつ・・・」

なんてしきりに首を捻っていたけれど、あたしはもう何だか「仁菜子さんが高彬を好きなのかも知れない」ってことの方が重要なことに思われてしまった。

「高彬ってやっぱりモテるのよ」

何となく面白くない気持ちがあって、つい言ってしまうと

「はぁ?ぼくがモテるだって?そんなことあるわけないじゃないか」

「自分で気付いてないだけよ。会社の子たち、高彬のこと熱い視線で見てるもの。きっと高彬ならより取り見取りよ。いいわねぇ、モテるって」

いけないなー、突っかかってるだけだなー、と思いつつ、止まらなくなってしまう。

「やめてくれよ、そんな言い方」

さすがに気分を害したのか、低い声で高彬が言い、あたしもそこで止めておけば良かったのに、何だかむしゃくしゃしてきて

「仁菜子さんにだって案外、調子のいいことを言ったんじゃないの?だから仁菜子さんはこんな・・」

「瑠璃さん」

怒りを抑えたような高彬の声にあたしは言葉を飲み込んだ。

もしかしたら怒鳴りつけられるんじゃないかと思ったからだった。

それくらい高彬は真顔で、本気で怒りかけてるように見えた。

だけど、高彬はひとつ大きく息を吐き出すと

「瑠璃さん、本気でそう思ってるの?」

穏やかな声で言ってきた。

「・・・・」

思ってないわよ・・・

ただ・・・、仁菜子さんがもしかしたら高彬を好きかも知れないってことと・・・

ううん───

遡れば前に噂で聞いた、社内で高彬を取り合った人がいるとか、それに・・・、それに、前にどんな人と付き合ってたんだろう、とか・・・・

そんなモヤモヤがずっとあったんだもん・・・

「瑠璃さん」

取った手をポンポンと軽く叩かれ

「ぼくが今、好きなのは瑠璃さんなんだから」

「・・・・」

それは、今、でしょ。

じゃあ、昔は?

昔は誰が好きだったの?

「瑠璃さん。黙ってないでさ、何か言いたいことがあるなら何でも言ってよ。ぼくは仁菜子さんのことは・・」

「ベッド!」

「は?」

「何であんなにベッドが大きいの?!」

「ベ、ベッド?いや、なんで、いきなりここでベッドが・・」

高彬に取ってはいきなりの話題転換だったみたいだけど、あたしにとっては陸続きの話しなのよ!

「何だよ、瑠璃さん。ベッドの買い替えでも検討中なの?」

とんちんかんなことを聞いてくる高彬に、あたしはぶんぶんと頭を振った。

今日と言う今日は聞いてやる!

「ベッドよ、ベッド!どうしてあんなに大きいの!」

ソファァから立ち上がると、あたしは両手の拳を握りしめ叫んだ。






…To be continued…


ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
↓↓
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ



(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> えええ、って事は私は守弥と思考がシンクロしてしまったんですねー!(正直、嬉しくない 苦笑)

いえいえ、そんなことはございません!
守弥めが失礼なこと・・(平伏)

> 瑠璃の脱力感、わかる気がする〜

脱力しますよね~
(え?それが理由・・?)ポカーン・・状態だと思われます。

> この高彬が何気にいった「一緒にお礼を選ぼうって」一言、嬉しくないですか?私もお供します!ってなりますよ 笑

嬉しいですよね!
お店とか一緒に行って、瑠璃が選ぶんですかね?それに付いて回る高彬。
可愛い~!

いえいえ、謝らないでくださーい!
お話を書いたり、コメントも大変なのにいつもお返事頂いてこちらこそありがとうございます😊
えええ、って事は私は守弥と思考がシンクロしてしまったんですねー!(正直、嬉しくない 苦笑)
やっぱり、とでも言いましょうか、私は高彬がミスったと思ってましたが守弥だったんですね〜
瑠璃の脱力感、わかる気がする〜
この高彬が何気にいった「一緒にお礼を選ぼうって」一言、嬉しくないですか?私もお供します!ってなりますよ 笑

ベリーさま

ベリーさーん、返信遅くなってごめんなさい。

ベリーさんからいただいたコメントが、ベッドが大きい理由ドンピシャだったので、35話をアップするまで公開できませんでした。
高彬は原作でも、絶対にもててるはずですよね!

モテる男が自覚がないっていいのか悪いのか。でも自覚あったら鷹男みたいになっちゃうんでしょうね〜
でも高彬自覚ないからモテるんだ(๑˃̵ᴗ˂̵)
ベッドも彼女歴も、気になる、瑠璃じゃなくてもここに固唾を飲んで待ってる読者が!笑
ベッド、サイズ間違ってオーダーしちゃったんだよ、なんて言うなよ高彬!苦笑

プロフィール

瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

ランキングバナー

にほんブログ村

ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたら
クリックで応援をお願い致します。
1日1クリック有効です。
初めにお読みください
**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
カテゴリ
別館
乳姉妹ブログ
日記ブログ
掲示板
なんて素敵にサイト様 
最新記事
ご訪問ありがとう(H23.11.28-)
**オンラインカウンター**
現在の閲覧者数:
コメントありがとうございます
お礼SSや「他己紹介」があります。
web拍手 by FC2
** あれこれ投票所 **
お好きなジャンルをお選びください。 投票は何度でも可能です。
*** あれこれ投票所2 ***
メールフォーム(ご用の方はこちらから)

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
月別アーカイブ