社会人・恋人編<32>

左大臣、ねぇ・・・

(お内裏さ~まと、お雛さま~、ふ~たり並んですまし顔~・・・・)

何となく心の中で口ずさみながら、教えてもらった席に近づき

「すみません、藤原ですけど」

声を掛けると

「はい?」

パソコンを打つ手を止め、左大臣───

じゃなかった、定井仁が振り返った。






─Up to you !Ⅱ─side R <第32話>






「書類を取りに来るように言われて・・・」

「あぁ、第1マーケティング部の藤原さんね」

「はい」

定井氏は50に手が届きそうなベテラン風の男で、自分の引き出しを開けゴソゴソと中を探った後、どうやらお目当ての書類がなかったのか

「権野。あの書類、こちらのお嬢さんに渡して」

少し離れた席に向かい声を掛けると、<こちら>と言いながら、あたしのことを親指でくいっと指してみせた。

「・・・・」

イマドキ、女性社員のこと<お嬢さん>なんて呼ぶ人、いるんだ。

親指くいっの仕草と言い、その女性差別的な対応に面食らってしまう。

まぁ、別にいいけど。

権野と呼ばれた人は立ち上がり、キャビネットから書類の束をとりだすと、そのうちの一枚をあたしに差し出してきた。

頭のてっぺんから足元まで、あたしのことをじろじろと見ると

「記入して明後日までに提出して下さい。その時はこちらまで」

おもむろに胸ポケットから名刺を取り出し、書類の上に置いた。

名刺には『総務部 人事課 権野将』とある。

「・・・・・」

<ごんのまさる>だか<まさし>だか知らないけど、普通、社内で名刺って配るもんかしらね。

「ごんのしょう、です。以後、お見知りおきを」

にやにやと笑いながら、まるで騎士がするみたいな大げさな仕草で頭を下げて見せた。

「・・・・・」

何この人、気持ち悪い。

「失礼します」

ひったくるように書類を受け取り、あたしは総務部を後にした。



******



「瑠璃さん、5分遅刻。会議、もう始まってるよ。早く行こう」

席に戻ると、高彬がすぐに声を掛けてきた。

そうだった。今日は午後からマーケティング部合同の会議があるんだった・・・

「ごめん、総務に寄ってたのよ。すぐ用意するわ」

必要な資料やファイルを持ち、2人して部屋を飛び出した。

会議室に急ぎ足で向かう途中、回りに人がいないことを確認すると

「瑠璃さん、今日、うちに寄らない?例の物、開けようと思ってるんだけど」

例の物とは仁菜子さんからの荷物に違いなく、どうやら<先方と取引がない>と言う身の潔白を証明するために、あたしに立ち会わせようと思っているみたいだった。

別にいいのに・・・

なんて言うのは建前で、やっぱり何が入っているか知りたくて

「うん」

あたしは素直に頷いた。

2人揃って会議室にそっと入って行き、並んでテーブルに付く。

順番に発表が回ってきて、あたしたちの番になり、高彬が前に出て行った。

スライドを操作しながらプロジェクターを使って説明する高彬の姿は、どこからどう見ても「仕事の出来るオトコ」と言う感じで、ついつい見惚れてしまう。

ちらりと回りを見ると、気のせいか女子社員たちは高彬のことを凝視してるみたいで

(見て欲しくない)

と言う気持ちと

(見て見てー)

と言う気持ちの半々で、いつの世も、恋する乙女の心境は複雑なのよねぇ、うふふ。

会議が終わり、部屋に戻る途中

「瑠璃さん、ちゃんとぼくの発表、聞いてた?何か心ここにあらずって感じだったけど」

高彬がこっそりと耳打ちしてきた。

「き、聞いてたわよ、もちろん」

まさか

(高彬に見惚れてました)

とも言えずにごまかすと

「ふぅん。最近、瑠璃さん、姿をくらますことが多いし、何だか怪しいな。昨日も午後からいなくなったし、今日の昼もどこか行ってただろ」

「・・・・」

小声で言われ、ギクっとしてしまう。

でも、あたしのこと見てくれてるんだ、なんて嬉しくもあったりして・・・

「瑠璃さん、何、にやにやしてるんだよ」

高彬が言い、慌てて頬を引き締める。

高彬はまだ何か言いたそうにしてたけど、部屋に着いてしまい、そのまま仕事に突入となった。

何とか仕事を終わらせタイムカードを押し会社を出ると、もう外はすっかり暗くなっている。

高彬のマンションの最寄り駅で下りると、もうすでに高彬はいて、あたしの姿を認めると手を上げた。

並んで歩きながら、さすがにどこで見られてるか判らないから手は繋がないけど、でも気付かれないように指先だけ触れ合わせたりして、そんなことをしてるうち、だんだんとお仕事モードから恋人モードに切り替わっていく。

会話はなくても、何となく甘やかな空気が流れだした時

「あ」

「何よ」

ふいに高彬が立ち止まったので、びっくりしていると

「ワイン買うの忘れた」

「はぁ?・・・ワイン?」

「スパークリングワイン」

「・・・・・」

「今度、瑠璃さんが家に来るまでに買っておこうと思ってたんだ・・・」

痛恨のミス、みたいな口調に呆れてしまう。

「あ・の・ねぇ、高彬。あたしは今日は荷物を見るだけよ。そしたらすぐに帰るんだから。まだ火曜だし」

「わかってるよ」

「ほんとに?」

「ほんとに。・・でも、一応、買っておこう」

タイミング良くお酒の専門店みたいな店が現れて、高彬は店に一人で入っていってしまった。

「・・・・」

もうっ!

ほんとにわかってるのかしら・・・・?







…To be continued…


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Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> ネーミングにバカ受けです。

ありがとうございます!この先もいい名前があったら、いろんな人を出すつもりです。

> 高彬なんてすぐばれそうです。高彬の過去の恋愛に興味津々です。

案外、ばれてないと思ってるのは二人だけで、回りにはバレバレなのかも知れませんよね。
高彬の過去の恋愛も、徐々にわかって行く予定です!

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

左馬頭も考えたのですが、いい当て字が浮かばなくて(^-^;←それだけの理由。
どっちにしろ、左大臣も権少将も安心して悪人扱いできるので安心です。
スパークリングワイン、瑠璃は飲んじゃうんですかね??
高彬、ちゃんと冷えてるの買ってくるのでしょうか?
それによりますよね。
高彬、どこか抜けてそうだから、常温のを買ってきそうですし。
家帰って「あ、冷えてない」なんてことになったりして?!

ネーミングにバカ受けです。ごんんしょうって、まんまでいやらしい奴っぷりが凄くでてます。
社内恋愛はやったことありませんが大変なんだろうなあ!でも、わかる人には分かっちゃってるんですよね!当人たちは気づかれてないと思っていても。高彬なんてすぐばれそうです。高彬の過去の恋愛に興味津々です。

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