***高彬のジャパネスク・ブルース の巻<前編>***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』



        注)このお話は番外編ですので一話完結です。
           
          他のお話と合わせてお読みいただくと、よりわかりやすいと思います。
          カテゴリー「二次小説」よりお入りください。
          

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*** 高彬のジャパネスク・ブルース の巻 <前編>***






思えば、結婚前から不穏な兆候はあったのだ。

瑠璃さんが後宮に現れたあの日ー。すべての発端は、あの日だ。





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ぼくには瑠璃さんという妻がいる。

結婚を一月後に控えた頃、当時はまだ婚約者だった瑠璃さんから吉野に行って来たいと言われた。

吉野は瑠璃さんが幼い頃に過ごした地だし、そこで初恋の君と出会ったとも聞いている。

その初恋の君は亡くなっているし、瑠璃さんにも色々と思うところもあるのだろうから、好きに行って来たら良いと思い、ぼくは瑠璃さんを吉野に送りだした。

そこで瑠璃さんは崖から滑り落ちて大怪我をし、記憶を失ってしまったのだ。

なぜ、崖から滑り落ちたかと言うと、ひとりで歩いている童をかばって落ちてしまったのだか、なんと、その童と言うのが、御年三歳の今東宮さまだったのだ。

今東宮さまのご生母は、畏れ多くも我が姉上、承香殿女御であられる。

承香殿女御は瑠璃さんを見舞い、その時に瑠璃さんを大変、気に入り、後宮に遊びに来るようにお誘いしたのだ。

それで後日、記憶の戻った瑠璃さんは、瑠璃さんいわく「高彬に感動的な知らせ方をしたかった」らしく、その場所に後宮を選んだと言うのだ。

後宮にお誘いする女御も女御なら、遊びに行く瑠璃さんも瑠璃さん。

ふたりとも後宮を何だと思っているのだろう。

ぼくの考え方は、女御がおっしゃるには「堅苦しくていけない」らしいし、瑠璃さんにいたっては「堅物の朴念仁」と言う事だが、そんなことはどうでもいい。

すべてがなぁなぁになってしまったら、内裏の、いや都の秩序など、もろくも崩れ去ってしまうではないか。

都の秩序が崩れれば、ひいては国の乱れにもつながる。

だから、我々、貴族は・・・・

いや、やめておこう。瑠璃さんの話だ。

それで瑠璃さんは、ある日、ぼくに内緒で後宮を訪れた。

そこで、あろうことか、帝の御前に転がり出てしまったのだ。

すべてが偶然の産物とはいえ、帝の御前に転がり出た姫などというのは、瑠璃さんが初めてなのではないだろうか。

帝も驚愕されていたが、ぼくだって腰がぬけるほど驚いた。

いるはずのない人がいたもんだから、最初は生霊かと思ったほどだった。

だけど、生霊にしては元気過ぎるし、何よりもくっきりと見えていたから、すぐに、これは本物の瑠璃さんだろうと思った。

もちろんぼくは、その後にこってりとお説教をした・・・かったのだが、あまりにしょんぼりとしている瑠璃さんを見ていたら、叱れなくなってしまったし、久しぶりに瑠璃さんとふたりきりになったら、なんというか、その・・・ついついあらぬ方に気が向いてしまい、お説教らしいお説教もせずに終わってしまったのだ。

どうもぼくは瑠璃さんを甘やかし過ぎている気がするんだよな。

でも、まぁ何かお咎めがあったわけじゃないし、女御も瑠璃さんに会えてお喜びだったし、瑠璃さんが後宮にやってきたことも、結局はそれだけのこととして終わったのだった。

だけど、それだけのこと、と思っていたのはぼくの甘い考えだったということが、あとになって分かった。

数日後、帝からお召しがあったのだ。

御前に伺うと、帝は

「内大臣家の瑠璃姫は、元気か」

と仰せられた。

てっきり政務のことでお呼びが掛かったと思っていたぼくは、突然の御下問に恐れ多いことながら、内心あっけに取られてしまった。

「は。恐れ入ります」

平伏し、そう答えながらも、ぼくは心中、穏やかではなかった。

なにゆえ帝は瑠璃さんのことなどを聞かれるのだろう。

ぼくの思いを知ってか知らずか、帝は続けられる。

「今まで艶な噂ひとつなかった高彬が結婚するとは夢にも思わなかった。瑠璃姫との仲は長いのか」

「・・・・は。恐れ入ります」

「長いのかと聞いている」

「・・・・・・」

「高彬」

「その・・・姫とは・・・筒井筒でございまして・・・」

「ほう。そんなに古くからか」

「・・・・・」

「しかし、なかなか活発で楽しい姫だそうじゃないか。わたしもゆっくりと話してみたかった」

「・・・恐れ入ります」

「入内してもらっても良かったものを・・・・。どうやら高彬に先を越されてしまったらしい」

「・・・面目ございません」

平伏しながらも、ぼくは気が気ではなかった。

確かに瑠璃さんは、望めば女御として入内できる身分なのだ。

帝は、何人もの妃を持つことを許されているし、こういう下々の言い方は失礼だが、たくさん御子を作られることが、いわば仕事のようなお立場の方である。

つまり、帝が瑠璃さんの入内を望み、瑠璃さんにもその気があれば、いつでもそれが可能であるのだ。

もちろん、瑠璃さんが結婚していれば、そうはならないわけで、その時のぼくの気持ちは、もう今すぐにでも瑠璃さんと結婚しておきたくなったくらいだ。

よっぽど結婚の日取りを前倒しで変更しようかとも思い、もう一度、陰陽道で占ってもらったが、やはり同じ日が吉日と出てしまった。

帝も右大臣家のことは重んじてるし、まさか、そんなこともなさらないだろう・・・と心をなだめ、御前を辞したのだが、その後も、何かのおりにお召しが掛かり、瑠璃さんのことを色々と御下問なさる日が続き、結婚して二月たった今も、それは続いているのだ。

どうやら帝は、瑠璃さんのことを、気に入ってしまわれたらしい。

瑠璃さんは、すごい美人というわけではないのだが、不思議と人をひきつけるのだ。

何か話しかけたいような、かまいたくなるようなところがある。

ぼくなどよりもよっぽどたくさんの女性をお知りの帝は、もしかしたら、瑠璃さんが転がり出たあの一瞬だけで、それに気が付かれたのかも知れない。

結婚した今、瑠璃さんが入内するようなことはないのだが、妻のことを帝にあれこれ御下問されるのは、正直、辛い。心臓に良くない。

もちろん、瑠璃さんには言っていないのだが・・・。






         **********************************************






東門をくぐり抜け、牛車が車宿りにつくと、小萩が待ち構えたようにぼくを出迎えた。

「少将さま、ようこそおいで下さいました。姫さまがお待ちでございますわ。ご案内申し上げます」

そう言って、すっと立ちあがると、裾さばきも鮮やかに歩き出す。

渡殿を歩いていると、東の対屋のあたりから、笑いさざめくような声が聞こえてきた。

近付いていくと、それはまぎれもない瑠璃さんの声で、どうやら女房相手に何かで笑い興じているらしい。

「瑠璃さんはご機嫌のようだね」

小萩に声をかけると

「はい。それはもう。今日も、雀を見るのだと言われ、お止めしたのですが端近にまで立たれて。もう北の方でいらっしゃると言うのに、困ったものですわ」

ほとほと困った、と言う感じで言う。

「少将さまからも、少しおっしゃってくださいまし。小萩が言ってもだめなのですわ」

「小萩が言ってもだめなら、ぼくが言ってもきっとだめだろうな。いつだったか瑠璃さんが言ってたよ。最近の小萩は貫禄が出てきて、怒ると怖いって」

「まぁ!少将さまったら。姫さまとおふたりで、そんな風に小萩のことを話しておりましたの。もし小萩に貫禄が付いたのなら、それは姫さまのせいですわ。今まで姫さまに、どれだけ鍛えられたことか」

「まったくその通りだね」

笑いながら瑠璃さんの部屋に入ると

「高彬」

すぐに瑠璃さんが気が付いて声をかけてきた。

「今日は早いのね」

「うん。宿直明けだからね。早く上がらせていただいたんだよ」

用意してあった場所に座り、脇息をひきよせた。

「それより、ずいぶんと楽しそうだね。笑い声が渡殿のあたりまで聞こえていたよ」

そう言うと、瑠璃さんはうっすらと赤くなった。

「何を話していたのさ」

「何でもないわ、たいしたことじゃないのよ」

「気になるな」

隠されれば知りたくなるのが人情と言うもので、思わずぼくは身を乗り出した。

すると、側に控えていた女房のひとりが、くすくすと袖で口元を隠しながら

「少将さまのことなのですわ」

笑いを含んだ声で言った・・・。



                      <後編へ続く>
  

〜あとがき〜

こんにちは!瑞月です。

今回は新夫・高彬が主役です。

相変わらず、帝にからかわれているようで・・・(笑)

今日も読んでいただきありがとうございました。

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Secre

Unknown

はじめまして、こんにちは。
私、高彬が大好きなんです。
もう、もう、嬉しくておもわず書いてしまいました。これからも楽しみにしていますね。
また、お邪魔させてくださいね。

>るるみさん

はじめまして!
コメントありがとうございます。

このブログはどこを読んでも高彬だらけですよ(笑)
またぜひ遊びにきてくださいね。
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瑞月(みずき)です。

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