社会人・恋人編<30>

翌朝、いつものカフェに行くと、高彬はまだ来ておらず、もしかしたら朝に滅法弱い融の相手に手こずっているのかも知れない。

カフェラテを飲み終えても高彬は来なくて

(もう行こうかな・・)

そう思い始めた時、ドアが開いて高彬が入って来た。






─Up to you !Ⅱ─side R <第30話>






遠くからあたしの姿を認めると目配せをよこし、コーヒーを片手に程近い席に付く。

何となくネクタイが撚れているようで、朝のドタバタぶりが窺える。

あの子、本当に朝が苦手だから、高彬、起こすのに苦労したに違いないわ・・・

何となくそのやり取りを想像して緩みそうになる頬を、あたしは慌てて引き締めた。

いけない、いけない。

今日は厳しい態度で臨まなきゃ。

携帯が短く振動し、確認すると高彬からのメールだった。

【ごめん、遅くなって。もしかして待っててくれた?】

すぐに打ち返す。

【うん。ちょっと見せたい顔があって】

【顔?】

いくつかのテーブルを挟んで、高彬と目が合った。

べぇ、と小さく舌を出し、ツンと顎をあげると、そのまま席を立つ。

横目にポカンと口を開けた高彬の間抜け面が見え、満足感が広がっていく。

───ふんっ、何なのさ、あの荷物。

街路樹の下をずんずんと歩いていると、またしても携帯が振動した。

さては高彬からかと思って見ると、画面には『不明の連絡先』と表示されている。

「・・・・」

最近、多いイタズラ電話かも知れない。

ちょうどいいわ。むしゃくしゃしてるし、怒鳴りつけてやろう・・・

そう思い通話ボタンを押し

「ちょっと!誰よ!」

開口一番、大声を出すと

『・・・守弥です』

電話の向こうから、あたしの怒鳴り声なんかものともしない、静かな声が聞こえてきた。



*******



あたしより遅れること、たったの3分で高彬は出社してきた。

あたしの様子が気になって、熱々のコーヒーを頑張って飲み干してきたのかも知れない。

「おはよう、瑠璃さん」

席に着きながら、社内向けの同僚らしい挨拶をしてきた高彬に

「おはよう」

同じく社内向けの笑顔を返す。

そうして、おもむろに立ち上がり

「はい。藤原クンに荷物のお届けでーす」

バックから取り出した例の小包みを高彬のデスクの上にドンと置くと、高彬は

「うっ・・・」

と呻き声をあげた。

「おかしいわねぇ、藤原クン。その商談は先方にお断りをしたと聞いていたんだけど。あたしの思い違いだったかしら?」

「いや、これは・・・」

「それともあたしの知らない所で、お取引が続いていたと、そう言うことなのかしら?」

腕組みをしたまま、ジロリと高彬を見下ろすと

「ち、違うんだ・・・、瑠璃さん」

狼狽えた様子の高彬は、素早く辺りを見回すと、パーテンションで仕切られた簡易的な打ち合わせスペースにあたしを引っ張りこんだ。

「違うんだ、瑠璃さん。兵部・・・いや、先方と取引なんかしてないんだ。あれはきちんとお断りした」

パーテンション越しの耳を気にしてなのか、言葉を選んで言う。

「じゃあ、なんで荷物なんか来るの」

「それがぼくにも判らないんだよ」

高彬は困ったように眉根を寄せた。

「守弥に聞こうにも、あいつ、今、東京に来てるらしくてさ、何度携帯に掛けても掴まらないんだ」

「守弥なら」

・・ついさっき、電話で話したわよ。

危うくそう言いそうになり、あたしは慌てて言葉を飲み込んだ。

──はずだったんだけど、高彬は聞き逃さなかったみたいで

「守弥なら?ならって何さ、瑠璃さん」

するどく突っ込みを入れてきた。

「え、えぇーと、その・・・、ほら、あのぅ、なら、なら・・・奈良県っていい所よねぇ、なんて思ってさ。あはは・・」

「はぁ?奈良県?何をわけの判らない事を言ってるんだよ、瑠璃さんは」

「・・・・」

「奈良なら京都の隣なんだし、今度、戻った時に行けばいいじゃないか」

「う、うん、そうよね・・、そうするわ」

「ともかくさ、どうして荷物が届いたかはぼくも確認してみるから、そのぅ・・取引が続いてるとか疑わないでよ」

「・・・・・」

「荷物、瑠璃さんが開けてもらっても構わないよ。ほんと、何が入ってるかぼくも見当がつかないんだ」

「・・・・」

そうして声を潜めると

「お願いだから機嫌直して」

「・・・」

「ね、瑠璃さん」

なんて困ったような顔で言われ

(あーあ)

と心の中で溜息をつく。

そんな顔されたら怒れないじゃない。

コクン、と頷いたところで

「ちょっと失礼。藤原、いるか?」

パーテンションから同僚の顔がふいに現れ

「・・というわけで、瑠璃さん、資料の方よろしく」

「わかったわ」

あたしたちは、さも仕事の話をしていたと言う振りをしてキビキビと立ち上がった。

午前中は仕事に忙殺され、昼休みが近くなったところで、高彬が電話中なのをいいことにあたしはそっと席を離れた。

そのままエレベーターに乗り、会社を出ると駅の反対側にある喫茶店を目指す。

5分ほど歩いて到着し、店の中に入って行くと、すでに守弥が待っていた。







…To be continued…


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