社会人・恋人編<28>

「藤原です」

内線のランプが付き、受話器を取りあげる高彬のことを、あたしは横目でそっと盗み見た。

嫌でもさっきの鷹男の言葉が甦る。

鷹男が言ってたこと、本当なのかしら・・・・?







─Up to you !Ⅱ─side R <第28話>






「藤原にまつわる色んな噂、瑠璃ちゃんは知ってるか?」

鷹男言うところの「打ち合わせ」は、こんな言葉で始まった。

「まぁ、少しは」

NY支店にいる頃に風の便りで聞いたってくらいだけど。

「例えば?」

「うーん、ものすごく有能な人だとか、どっかの御曹司だとか・・・」

モテる、うんぬんのことは何となく外して言うと

「他にもあるだろう?」

鷹男が意味ありげに顔を覗き込んでくるので、観念して

「とんでもなくモテるって言うのもあったわね。女子社員同士が取り合ってひと悶着起こしたとか」

しぶしぶ言うと、鷹男は満足そうに頷きつつも

「あとは?」

と聞いてきた。

「あと?他にもまだあるの?あたしが聞いたのはそれだけだけど」

「さすがに他のはNYまでには届かなかったのかな」

「・・・」

「とっかえひっかえ自分のマンションに女子社員を引きづり込んでるとか、孕ませた女に手切れ金だけ渡して堕ろさせたとか・・・」

まるであたしの反応を楽しむかのように、どこか楽しそうに言い、あたしの言葉を待つためなのか口をつぐんだ。

「・・ふぅん。で?」

そう言うと、鷹男はニヤリ、と笑い

「動じないんだな、瑠璃ちゃんは。それは藤原への信頼感?」

返事の代わりに肩をすくめる。

当たり前でしょ。

「高彬に限ってそんなのあり得ないわ。そんなのは根も葉もないウワサよ」

あたし、人を見る目だけはあるんだから。

きっぱり言うと、鷹男はニヤニヤと笑い

「残念だな。ここで瑠璃ちゃんが取り乱してくれたら、ここぞと俺への鞍替えを提案するんだけどな」

「・・・・」

「まぁ、俺は逆に障害がある方が燃えるタイプだから、どっちみちグイグイ行くけどね」

「あのねぇ」

何なのよ、これ。

こんな<打ち合わせ>なら、とっとと席を立ってやろうかしら?

そう思い掛けていると、ふいに鷹男が顔を引き締めた。

「まぁ、瑠璃ちゃんのヨミは当たってるよ」

「へ?」

「だから、そんなのは根も葉もないウワサだっていうこと」

「・・・・」

「瑠璃ちゃんから見て、藤原ってそういう男に見えるか?」

「見えないわ」

だから、そうだって言ってるじゃない。

鷹男は大きく頷くと

「有能って言うのは当たってるけどね。でも、オンナをとっかえひっかえ、なんてことはあいつに限ってない。俺じゃないんだし」

「・・・・」

それ、自分で言う?

「そこがあいつの良い所でもあり、面白味のないところでもあるけどな。・・・で、大切なのはここからだ。どうも藤原のことを快く思ってない一派が、どうやらこの会社にはいるってこと。おそらくはその噂は、藤原の評価を下げるために誰かが故意的に流したんだろう」

「快く思ってない・・?高彬が誰かに恨まれていると言う事?しかも一派ってことは、一人じゃなくて複数の人に?どうして?」

「まぁ、そう畳みかけるなよ、瑠璃ちゃん」

鷹男は(まぁまぁ)とあたしを手で制すると

「それは俺にも判らない。ただ、おかしな動きがあることも確かなんだ。だから、あの動画も・・」

「その一派の仕業だってこと?」

「そうだ」

「誰だか当てはあるの?」

「ある」

「誰よ」

「・・それは、次回の打ち合わせに教えよう」

盛大にずっこける。

もうっ、何なのよ、それ。

「何回も打ち合わせとか困るんだけど。暇じゃないんだし」

「藤原のためだぞ」

「・・・」

「2回目の打ち合わせについては、追って連絡する」

しぶしぶ頷き席を立ちながら、ふと思い付いて

「ねぇ。鷹男って本当は高彬のこと、好きなんでしょ。今日、話しててそれが判ったわ」

悔し紛れに言ってやると

「そういう趣味はない。俺は断然、女が好きだな」

「そう言う意味じゃなくて、よ」

鷹男は少し考えてから

「まぁ、そうだな。俺が会社を立ち上げたら、ああいう部下が欲しいかな」

「・・・・」

部下、ね。

当たり前のように、自分が社長で高彬が部下って設定がすごいわ・・・

何様なんだろ、この人。



*******



融と由良ちゃんが待つ東京駅に向かう電車の中で、高彬は辺りに会社の人がいないことを確認すると

「瑠璃さん。この間の鷹男チーフとの食事で、一体、どんな話をしたの?」

そっと聞いてきた。

「うーん・・・」

思わず言葉を濁してしまう。

どんなって言ってもねぇ。

前に親同士の間に上った結婚の話は、その気がないことはきっぱり伝えたんだけど、鷹男のあの<障害がある方が燃える>発言を聞くと、そんなの何の意味もないような気がするし。

高彬を快く思ってない一派がいる、なんて聞いちゃうと、ますます動画のこと、高彬に言いだしずらくなっちゃったな。

「特にこれと言って実のある話をしたわけじゃないのよ」

とにかく、高彬に話すんだったらもう少し状況を把握してからにしよう、と思っているうち、電車は東京駅に到着した。

人でごった返すコンコースを抜け、融たちの待つ喫茶店へと向かう。

融たちがいるのは東京駅の地下街で、店の前まで行ったところであたしは呆れ果ててしまった。

いかにも商談に使うような「ザ・喫茶店」みたいな店で、どう考えても若い女の子が喜びそうな店じゃない。

2軒隣には「カフェ」と呼んでいいような、いい雰囲気の店があるって言うのに、融ったら何でわざわざこんな店を選んだのかしら?

由良ちゃんを憎からず思ってるはずなのに・・・

まぁ、融なんて姉のあたしから見てもオクテだし、女の子をスマートにエスコートするなんて無理かもねぇ・・・

きっと、まだ女の子とまともに付き合ったこともないんだろうし。

───と、そこまで考えて

(そういえば、高彬におまかせでデートプランを立ててもらうって言うのはどうかしら?)

ふと閃いた。

考えてみたら今まで、そういうデートらしいデートってしたことなかったし、どんなプランを立てるかで、何となく高彬の恋愛偏差値と言うか、経験値みたいなものが見えてくるんじゃない?!

あんなウワサは信じないけど、モテる人なのは本当だろうし、やっぱり高彬の過去の恋愛遍歴は気になるし・・・

あのベッドだしねぇ・・・

「どうしたの?瑠璃さん。こんなところで立ち止まって」

「ううん、何でもないわ。さ、入りましょ」

先頭切って店に入って行くと

「姉さん!高彬!」

奥のテーブルで融が手を振って来た。






…To be continued…


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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、おはようございます。

自分で言っちゃう鷹男!
でも、何だかんだ言って高彬のことは大好きなんでしょうね、
好きな子に意地悪しちゃう小学生みたいです。(原作でもそんな感じありましたしね)

高彬ならどんなデートプラン立てるんでしょうね~。
せっかくだからベタなデートとかもして欲しいですよね。
手作りのお弁当持って芝生の上でシート広げて、食べ終わったら二人してゴロンと横になって空を見上げるとか!

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