<原作オマージュ>14~原作一巻より 

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




注)このお話は原作のあるシーンを高彬目線で書いていますのでネタバレとなっています。
原作未読の方はご注意ください。
今までのお話は<オマージュリスト>からどうぞ。
          
          





***<原作オマージュ>14~原作一巻より***








文机の前で、ぼくは(うーむ)と首を捻った。

二の姫に歌の指導をお願いしてから一か月とちょっと、ほぼ毎日のようにぼくは歌を作り送っているのだけど、上達したのかどうか、今一つ判らないでいる。

文を介しての添削じゃ、どうしたって限界があるのだ。

やはり、これは直にお伺いさせていただくしかないか・・・

服喪中で褒められたことじゃないし、気は進まないんだけど、背に腹は代えられない。

扇を鳴らすとすぐに鈍色の装束を身に着けた女房が現れ

「兼助を呼んでくれないか」

命じると、頭を下げ、音もなく退出して行った。



*********



やがて現れた兼助に

「今夜、お忍びでちょっと出掛ようかと思う。あまり目立たない牛車を準備してくれないか」

そう告げると、兼助はハッとしたように顔を上げた。

「お忍びと言いますと・・。若君」

「うん。兵部卿家だ」

「・・・・・」

二の姫への文は、全て兼助に頼んでいる。

喪中に文を出すことは普通は控えなければならないことだし、ましてや相手が姫君である。

守弥に知られれば口やかましいことを言うに決まっているし、政文に頼むには、どうにも政文の口の軽さが気にかかる。

もの静かで万事控えめな兼助が打ってつけのように思われ、こと、二の姫とのやり取りに関しては、ぼくと兼助だけの秘密となっているのだ。

もちろん兼助だって、まさかぼくが二の姫に歌の指導を仰いでいるとは思っていない。

歌の指導のことを口外すれば、いずれどこからともなく広がって、やがては瑠璃さんの耳に入ってしまう可能性もあるわけで、それはどうしても避けたい。

喪が明けてから、瑠璃さんを(あっ)と驚かせたいのだ。

敵を欺くにはまず味方から、じゃないけど、ぼくはこの計画を二の姫以外には誰にも話していないのだった。

「お祖母さまが二の姫にと、ご遺品を残されていてね、蓋に天ノ川を模した螺鈿細工の文箱なんだ。明日は七夕だし、その前に二の姫にお渡ししておこうと思ってさ」

前々から考えていた口実を口にすると

「・・・承知いたしました。ご用意いたします」

兼助は深々と頭を下げ、車の手配をすべく、部屋から出て行った。



*******



車が兵部卿家に門をくぐった途端、後悔の気持ちが湧いてくる。

客人の車は多いし、人の出入りの数やお邸中を包む喧噪からして、どうやら今日は宮様が宴でも開催されておられるようなのだ。

そうと判っていればご遠慮申し上げたのに・・・と思いつつ、でも、逆にお忍びで来るには、こういう日の方が紛れていいのかもな、とも思い直す。

忍びやかに来訪を告げると、これまた忍びやかな先導を受け、お忍びはどこまでも忍びやかなのである。

女房の案内で部屋の真ん中に設えられている席に腰を下ろした。

目の前には御簾が掛かっており、まだ中には誰もいないようだった。

寝殿の方から管弦の音が聞こえ、その音がちょうど途切れた頃に、しずしずと言う衣擦れの音がして二の姫が入室してきた。

「こたびの急のご訪問、申し訳もございません。祖母から仰せつかった文箱がございまして・・・」

まずは型通りのご挨拶を、と口を開くと(おほほ・・・)と言う忍び笑いが御簾の中から聞こえた。

瑠璃さんの「あはは」とも「えへへ」とも違う、何とも上品そうな笑い声である。

「高彬さま。ご安心なさって。女房は皆、下がらせておりますわ」

初めて聞く二の姫の声は、柔らかい中にも利発さを感じさせる伸びやかな声で、さすが才媛と呼ばれるだけのことはある。

「この間のお歌で、何かわからないことがございましたの?」

歌の指導の件をズバリと聞いてきた。

「はい。やはり文での添削ですと、どうしても理解出来ないことがありまして」

「まぁ、添削だなどと。そんな大層なものではありませんわ。お恥ずかしゅうございます」

「いえいえ、私も朝堂でたくさんの詩歌に触れておりますが、二の姫のような素晴らしい歌才の持ち主は見たことがありません。お年を召した方は技巧に走られ心を打つものがなく、かと言って若い者の歌はまだまだ荒削りで。もちろん、私などはその最たるもので、こうして恥を忍んで歌の指導をお願いしているわけですが・・・」

一気に言うと、少しの沈黙が流れ

「意中の姫さまとは、何かご連絡を取りましたの?」

笑いを含んだ声で二の姫が聞いてきた。

「いえ、まだ、あれっきりです」

答えながら、首筋がかぁっと熱くなる。

歌の指導をお願いする代わり、二の姫には瑠璃さんとの顛末を話してあるのだ。

いや、聞きだされた、と言うべきか。

いくら才媛であろうが、本朝三美人であろうが、やはり人の恋路には興味があられるらしく、案外、楽しそうに根掘り葉掘りと聞かれてしまった。

さすがに後朝の歌のことで揉めて初夜が流れたとは言わなかったけど、「恋人が気難しくて・・」とかなんとかそんな感じのことを言ったら、すっかり同情して応援してくれているのである。

「こんなにも高彬さまに思い込まれる瑠璃姫さまと言うお方は、さぞ素晴らしい姫君さまなのでしょうね」

「いえ、そんな・・・」

枕箱を投げられ、あわや命中しそうだったことを思い出して言葉を濁すと、ぼくの言葉を謙遜と受け取ったのか、二の姫は

「ふふ・・」

と意味ありげに笑った。

「でも、こんな風に直接伺うのは、文とは比べ物になりませんよ。これからもご迷惑でなければ、たびたび来させていただいてご指導を仰ぎたいですね」

「まぁ。わたくしはお文をいただくのが楽しみでなりませんのに、たびたび来られては楽しみがなくなってしまいますわ」

「意地悪だなぁ、あなたは。そんな風に言われるとからかわれてるみたいですよ。下手くそな歌ばかりなのに」

「あら、わたくし、誉めておりますのよ。これだけまめまめしく文をお書きになる殿方は都中に2人とおりませんわ」

「・・・・・」

お世辞だとは判っていても、誉められれば悪い気がしなくて、何だかこれなら瑠璃さんとの仲もうまくいくのではないか・・・と良い気分でいたところに

(シュッ)

と襖障子の開く音がして

───曲者闖入か?!

反射的に腰刀に手をやると、ぼくは素早く振り返った。







<続>


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ありちゃんさま

ありちゃんさん、こんにちは。

> 更新ラッシュに嬉しい悲鳴です。w

更新にお付き合いいただき、感謝感謝です。
さらにはコメントまでありがとうございます!(貴重なお時間を使っていただきありがとうございます)

> 二の姫も驚いたでしょうが、高彬の慌てぶりが、楽しみでなりません。(笑)

腰抜かすほど驚くでしょうねぇ。

> にしても、よもや秘密のはずのこの計画が瑠璃自身にバレちゃってて、あらぬ誤解の上に乗り込まれるなんて思いもよりませんよね〜。

プラスの方にもありましたが、でも、これ普通は誤解されますよね(笑)

> 高彬が不憫です。(笑)←笑うところ?

笑うところです。

> (現代編でも二の姫絡んでて、つくづく不憫な高彬...笑←だから、笑うところ?)

笑うところです!!(笑)

瑠璃姫 見参!

瑞月さん こんにちは〜。
更新ラッシュに嬉しい悲鳴です。w

遂に瑠璃が登場ですね〜。
二の姫も驚いたでしょうが、高彬の慌てぶりが、楽しみでなりません。(笑)
にしても、よもや秘密のはずのこの計画が瑠璃自身にバレちゃってて、あらぬ誤解の上に乗り込まれるなんて思いもよりませんよね〜。
高彬が不憫です。(笑)←笑うところ?
ああ、続きをワクワクと待ってます。
(現代編でも二の姫絡んでて、つくづく不憫な高彬...笑←だから、笑うところ?)
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