社会人・恋人編<27>

「融・・」

突然過ぎる融の来訪にびっくりしていると

「ごめん、高彬。忙しかったよね」

へへへ、と融は笑い、上目づかいでぼくを見てきた。

「・・・・」

こういう仕草、似てるんだよなぁ、・・・この姉弟。






─Up to you !Ⅱ─<第27話>






「どうしたんだよ、急に」

取りあえず向かいのソファに腰を下ろしながら聞くと

「うん。急の仕事が東京支店で入ってね。朝一番の新幹線でこっちに来たんだけど、思いがけず仕事が早くに終わってさ、それでどうせだったら姉さんに会っていこうと思ったんだけど、携帯掛けても出ないし。で、会社に来ちゃったってわけなんだよ。受付で・・」

融は受付の方にチラッと視線を投げると

「姉さん、呼び出してもらったんだけど、つかまらないらしくてさ。それで、そうだ、高彬ならいるんじゃないかと思って」

「そうか」

そういえば瑠璃さんはいつも携帯をカバンの中にしまったままなことを思い出しつつ、融が会社にやってきた経緯はわかったものの、受付でも瑠璃さんを探し出せなかったことが、ふと気になった。

一体、瑠璃さんはどこにいるんだろう・・

「で、どうするんだ、これから」

ロビーの時計の針は、まだ3時前を指している。

「終業時間までにはまだ間があるし、どこかで・・」

時間でも潰してもらえれば、と言い掛けたところで、ポケットの携帯が振動した。

画面表示は『不明な連絡先』となっていて、どうやら登録してないところからのようだった。

普段なら放っておくところだけど、瑠璃さんの姿が見えないことが頭にあったのて通話ボタンを押す。

取りあえず黙って携帯を耳に当てると

『・・・もし。・・おに・・いさま』

途切れ途切れの声と、周りの喧騒が聞こえてきた。

その声に聞き覚えがあり

「由良か?」

と聞くと

『はい。お兄さま』

弾んだ声が返ってきた。

前の融がハッと顔を上げ、見る見る顔を赤くしている。

───判りやす過ぎなんだよ。

心の中で融に突っ込みを入れつつ

「どうした。どこから掛けてる。随分、周りが騒がしいみたいだけど」

『東京駅です』

「東京駅!?」

びっくりして思わず大声が出てしまう。

「どうしてまた・・」

『お兄さまにお届けする荷物の送り方がどうしても解らなくて、直接お渡しした方が早いと思ったんです』

「荷物って、あれか」

『はい、兵部仁菜子さんからのです』

「・・・」

ぼくは由良に見えてないのをいいことに、空を仰ぎ、盛大に眉間を揉んだ。

前では融が不思議そうな顔でぼくを見ている。

いや、そんな、わざわざ届けに来るとか普通しないだろうし、東京・京都間で直接渡した方が早いと思うのもおかしいし、それを何の相談も連絡もなしにいきなり実行に移すと言うのもこれまた何と言うか・・・

「・・・」

いやはや、本当に由良も相変わらず変わっていると言うか、過激と言うか・・・

『お兄さま?聞いていらっしゃいますか?』

「あぁ、聞いてるよ」

『会社にお届けに行きたいのですが、場所が分からなくて』

「いいよ。仕事が終わったらぼくが受け取りに行くから、それまで由良はどこかで時間を・・・」

と、そこまで言ったところで、目の前の融の姿が目に入った。

───そうだ、融がいるじゃないか。

「由良、おまえ、携帯はどうした」

『忘れてきてしまったんです、家に。それで、公衆電話から』

「わかった。由良はそこを動かなくていい。迎えを回すから」

『迎え?どなたかがいらっしゃるの?』

「あぁ、由良も会ったことがある奴だよ」

由良の居場所を聞き電話を切ると、大体の事情は察しているらしい融が顔を蒸気させぼくの言葉を待っている。

「──と、言うわけで、由良の迎えを頼みたいんだけど、どうかな」

「うん!解った!」

二つ返事とは良く言ったもので、融はぴょんとソファから立ち上がった。

「仕事終わったら連絡入れるから。それまで適当に時間を潰しててくれないか」

「うん!」

「融」

今にも飛び出して行きそうな融を呼び止める。

「解ってるとは思うけど、由良はぼくの妹だからな。変なコトするんじゃないぞ」

念のため、重々しい口調で釘を刺すと

「や、やだなぁ、高彬。そ、そんな、ぼくは・・・」

真っ赤な顔で、猫が顔を洗うような仕草をしたかと思ったら

「あ、もうぼく行かなきゃ。由良ちゃんが待ってる!高彬のせいで、印象悪くなっちゃうよ」

慌てて言い、そのまま走り去って行った。

やれやれ、落ち着きのない奴だな・・・

融を見送り、回れ右したところで

(そういや、由良がぼくの妹なら、瑠璃さんは融の姉貴なんだよな)

なんてことを思い出す。

とっくに瑠璃さんに<変なコト>をしてるぼくが言うにしては、ずいぶんと説得力のない言葉だったかもしれないなぁ・・・

そんな風に思ったぼくは、コホン、と小さく咳払いをしたのだった。



*******



席に戻ると、果たして瑠璃さんも席に戻っていた。

仕事をするでもなく、文字通りイスに座っているだけである。

どことなくぼんやりしてるようにも見え、ぼくが隣に座ったのにも気が付かないようなので

「瑠璃さん」

声を掛けると

「あ、高彬」

まるで、今、目が覚めたみたいな顔で瑠璃さんは振り返った。

「どこ行ってた?探したんだけど」

「あ、あぁ・・・、えーと、ちょっと他の部署に・・」

「・・・そう」

何となく煮え切らない言い方が気にはなったけど、取りあえず融と由良のことを伝えると、瑠璃さんの表情がパっと輝いた。

「皆で食事しましょうよ」

「そのつもりだよ」

「じゃあ、定時で上がれるように仕事、頑張らなきゃ」

力こぶを作る振りをして瑠璃さんが言い、笑い合ったところで、内線電話がなった。

「藤原です」

出てみると

「水無瀬よ」

電話は水無瀬からだった。






…To be continued…


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