社会人・恋人編<26>

『あの、高彬・・』

瑠璃さんが何かを言い掛け、固唾をのんだところで、部屋に電話のベルが鳴り響いた。

「ごめん、瑠璃さん。電話だ。今の話は、また、今度ゆっくりと・・」

『あ、う、うん・・』

携帯の通話ボタンを押し、急いで受話器を取りあげる。

おそらく電話の主は───






─Up to you !Ⅱ─<第26話>






『あ、若君』

思ってた通り、電話は政文からのものだった。

『すみません、電話いただいていたみたいで。若君からぼくに電話なんて、何かありましたか?』

「何かありましたかって。おまえ、ぼくに言ってないことがあるだろう?」

「・・・」

「守弥はどうした。どこにいる」

『え。えぇっと・・・』

「おまえに言っておいたじゃないか。守弥の行動を逐一知らせろって」

『でも、ぼく、よくよく考えたらそう言う二重スパイみたいなこと、苦手って言うか、したくないって言うか』

「報酬は、東京の綺麗どころ集めての合コンだぞ。守弥より、レベルの高いのを揃えて・・」

『守弥さんは東京です』

「・・・・」

政文はあっさりと陥落した。

「いつからだ?目的はなんだ」

『行ったのはもう一週間も前のことです。目的は解りません。聞いたけど「おまえには関係ない」って言われちゃって』

一週間も前から守弥が東京に・・・

「どこに滞在してるんだろう・・・」

思わず呟くと

『あ、若君のすぐそばのマンションです。ほら、ぼく用に借りた』

政文はあっけらかんと答えた。

くっそー、守弥のやつ。何て近くにいやがるんだ。目と鼻の先じゃないか。

通りで最近、この辺りの空気が澱んでると思ったよ。

一体、目的は何だ。

東京にいながらにして、ぼくに会いに来ないと言う事は、ぼくには聞かせられない用事ということか・・・

あいつに限って東京観光なんてするわけがないし・・

あれこれ思いを巡らせていると

『若君。こうやって守弥さんを裏切ってまで若君に情報を提供してるんですから、絶対に合コンやってくださいよ』

政文が念を押してきた。

「判ってるよ。近いうちに・・。まぁ、おまえの働きぶり次第だけどな」

『そんなこと言わずに、前払いでお願いします』

「前払い・・・」

『彼女、欲しいです』

「・・・わかったよ、善処する」

ストレートで切実な政文の言葉にふと心を動かされてしまった。

そりゃあ、彼女、欲しいよな。

いたら楽しいし・・・

政文との電話を切り、考えるのはやっぱり瑠璃さんのことだった。

シャワーを浴びベッドに入っても瑠璃さんのことが頭から離れず・・・

と言うか、ますます思い出されてしまい困った。

昨日の今頃は、とか、色々な瑠璃さんの姿が思い出されてしまい、何度も寝返りを打つ羽目になってしまう。

この広いベッドはぼく独りで過ごすには、いかにも無用の長物なのだった。

翌朝は、寝不足な割には早くに目が覚めてしまい、支度を済ませるといつものカフェに向かった。

瑠璃さんは───

まだ来ていなかった。

コーヒーを飲んでいると、ドアの向こうに瑠璃さんの姿が現れた。

カウンターでカフェラテを受け取り、席に着いた瑠璃さんとちらりと目が合い───

やっぱり可愛いよなぁ・・

思わず頬が緩みそうになり、慌てて引き締めた。

ふぅふぅ、とカフェラテに息を吹きかけてる口元とか、カップを持つ指先とか。

爽やかな朝に似つかわしくない、不埒な想像が浮かんでしまい、打ち消すようにコーヒーを飲み干す。

先にカフェを出て、街路樹の下を歩いていると

「藤原くん」

肩を叩かれ、振り向くと水無瀬だった。

「あ、水無瀬」

「あらやだ。何よ、嬉しそうな声出しちゃって。ようやくわたしへの恋心に気付いたとか?」

「気付かないよ。そもそもないし」

「ふぅん。彼女さんしか目に入ってないってわけ」

「・・・」

黙って肩をすくめると、水無瀬は

「ま、今が一番いい時よねぇ」

なんてせせら笑っている。

「今日、水無瀬のとこに行こうと思ってたんだよ」

「あら、何かしら」

「前に頼んでおいた合コンあっただろう。あれ、そろそろ実現出来ないかと思ってるんだけど」

「やだ、藤原くん。もう浮気?彼女一人じゃ満足出来ないとか?」

道行く人が水無瀬の言葉に振り返り

「何言ってるんだよ、大声で。そんなことあるわけないじゃないか。ぼくは瑠璃さん一人で大満足だよ」

言わずもがな、なことまで口走ってしまい、ハッと口を押さえたけど、後の祭りだった。

水無瀬は身体を二つに折って笑いだし、散々笑った後に

「あー、もう最高ね、藤原くん」

ようやく笑いを収めた。

「それでも合コンをご所望と言う事は、何か理由があるってことね」

目尻の涙を拭いながらいい、ぼくは渋々頷いた。

「わかったわ。取りあえず早急に段取りは付けてあげる。ただ・・・」

「ただ?」

水無瀬の目が、キラリ、と光った。

「この貸しは高くつくわよ」

「・・・・・」

水無瀬が言うと、本当に怖いんだよな・・



*******



午後の打ち合わせを済ませ、自分の席に戻ったぼくは、ふとさっきから瑠璃さんの姿を見ていないことに気が付いた。

いくら仕事でパートナーを組んでるとは言え、一日中、行動を共にしてるわけじゃないし、だからぼくが瑠璃さんの予定を全て把握してるわけではないんだけど・・・

コーヒーを取りに行く素振りで、オフィスの端に設置されているドリンクバー辺りでさりげなく目だけで瑠璃さんを探していると、向こうからやってきた先輩の女子社員が

「藤原くん、お客さまよ」

と告げてきた。

「ぼくにですか?」

来客の予定なんかなかったんだけどな・・

そう思いながら、ロビーに下りて行くと、来客用のソファにはスーツ姿の男が向こうをむいて座っていた。

あの人が来訪者だろうか?

「藤原だけど」

受け付けに声を掛けると、顔見知りの秘書課の女子社員はにっこりと微笑み

「お客さまはこちらです」

案の定、さっきのスーツ姿の男の元に案内してくれた。

その声に、立ち上がった男が振り返り───

「高彬」

驚いたことに、そこに立っていたのは瑠璃さんの弟、藤原融だった。






…To be continued…


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融が驚いてどうするの。


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ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> 融は、藤原イメージ、ないですねえ。
> 融はお家柄に恵まれて、その後、平安なりの出世を遂げたと思います。笑

そうですよねぇ(笑)
よっぽどの大失態をしない限りは、あの家柄ならそこそこの出世をしましたよね。

> 優しくて家族思いではあると思いますが、でもやっぱり私は由良とうまく行くかどうか決めかねてるんですよ〜(由良x融ももちろん好きですよ)けれど、あれだけ激しい由良なので。もっともっと同じくらいポワーンとした、大人しい姫の方が向いてると思うんだけどなあ。。。

そもそも融は惚れっぽいですしね。
多分、ちょっと可愛い人だとぽわ~んと好きになっちゃう人なのではないでしょうか。
由良と一緒になったら、間違いなく尻に敷かれるでしょうね!
でも、なんとな~く融は浮気してしまいそうな気が(^-^;

融のお相手。

融は、藤原イメージ、ないですねえ。
融はお家柄に恵まれて、その後、平安なりの出世を遂げたと思います。笑
優しくて家族思いではあると思いますが、でもやっぱり私は由良とうまく行くかどうか決めかねてるんですよ〜(由良x融ももちろん好きですよ)けれど、あれだけ激しい由良なので。もっともっと同じくらいポワーンとした、大人しい姫の方が向いてると思うんだけどなあ。。。

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> イエーイ 融クン登場ですね^_^

はい、可愛い愚弟の登場です!
融、可愛いですよね~。融、もっと出したいです。
書いてて癒されます(笑)

> 私も興味深い「藤原クン」の事が知りたいですう〜!

これって高彬ですよね?融ではなく(笑)
そう言えば融も藤原なんだと言うことに、改めて気が付きました(^_^;)
平安でも、融って藤原ってイメージがないと思いません?!

イエーイ 融クン登場ですね^_^
私も興味深い「藤原クン」の事が知りたいですう〜!しかし守弥、コソコソなにやってんだか。苦笑
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