<原作オマージュ>11~原作一巻より 

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




注)このお話は原作のあるシーンを高彬目線で書いていますのでネタバレとなっています。
原作未読の方はご注意ください。
今までのお話は<オマージュリスト>からどうぞ。
          
          





***<原作オマージュ>11~原作一巻より***








「では、首尾よくな、高彬どの」

大納言さまはぼくに耳打ちをすると、そのまま融を急き立てて部屋を出て行かれてしまった。

女房たちもぞろぞろとそれに続き、部屋には瑠璃さんとぼくの2人きりになる。

「・・・・・」

そっぽを向いたまま、瑠璃さんはぼくと目すら合わせてくれようとはせず

「ごめん、瑠璃さん・・・」

ぼくは頭を下げた。

「こんなつもりじゃなかったんだけど、大納言さまにこれしか方法がないと言われて・・・」

人のせいにするのは男らしくないと思いつつ、それでも気が付けば大納言さまのせいにしているとしか思えない事を言っていて、そんな自分が情けなくなる。

「あんたがしっかりしてないばっかりに。こんな慌ただしい結婚をする姫なんて都中探したっていないわよ」

瑠璃さんはますますそっぽを向き、悔しそうに唇を噛んだ。

「・・・・」

何か言おうと考えているうちに、小萩が部屋に入ってきて、手には見るからに新品と解る単を持っている。

何事かを瑠璃さんに耳打ちし、そうしてぼくに目配せをすると、瑠璃さんの手を取り隣の部屋へと連れて行った。

いよいよ、なのだろうか。

ぼくは密かにごくり、と唾を飲み込んだ。

大納言さまは遠回しに<一夜を共にする>などとおっしゃっていたが、とどのつまりは初夜を迎える、いや、瑠璃さんの言葉を借りるとするならば「ぶっちぎる」と言う事なのだ。

今となっては、瑠璃さんが権少将に向かい「ぶっちぎりの仲よ!」と叫んだあの夜がしみじみと懐かしい。

わけもなく気持ちが高揚し、瑠璃さんとの仲が進展したことが嬉しくて、それがまさかこんな形でいきなり初夜を迎えることになるとは、これっぽっちも思っていなかった。

それもこれも、ぼくがしっかりしていなかったからかと思うと・・・・

回想やら、悔恨やら、様々な思いが渦巻いていると

「わぁぁ・・・」

と言う、何とも派手な泣き声が隣の部屋から聞こえてきて、飛び上るほどにびっくりしてしまった。

「ど、どうしたんだ、瑠璃さん」

慌てて隣室に飛び込むと、泣き伏す瑠璃さんと、その隣で瑠璃さんの背中をさする小萩の姿が目に飛び込んできた。

「瑠璃さん・・・」

具合でも悪いのかと、おろおろと声を掛けると

「ご心配なさいますな、高彬さま。こう言う時、女性は必ず泣くものですから」

小萩はぼくを制するように手を上げると、したり顔で頷いて見せた。

「そ、そうか・・・」

と納得しかけると

「何言ってんのよ、小萩は!そんなんじゃないわよ!」

瑠璃さんが、ぎっと小萩を睨み付け

「あ、あたしが泣いてるのは悔しいからよ。結婚支度のための調度が何もないじゃない。大和絵の屏風も、蒔絵の櫛箱も、螺鈿の鏡台も、真新しい黒塗りの髪箱も・・。こんなはげちょろけの髪箱で初夜を迎えるなんて、情けないったら!」

しゃくりあげながら瑠璃さんは言い───

ぼくはポカンとして、そうして吹き出してしまった。

何だ、そんなことか。

瑠璃さんも案外、可愛いことを言うんだな。

やっぱりお転婆に見えて、ここぞというところではさすがに女の子なんだ・・・

微笑ましい気持ちも手伝って

「そんなの後からいくらでも揃えることができるじゃないか。ぼくも後でいくつか届けさせるから」

笑いながらそう言うと

「そういう問題じゃないでしょ!」

今度はぼくを睨み付け、と思ったら

「わぁぁぁ」

とさっきよりも更に大音量で泣きながら突っ伏してしまった。

「え・・・」

そういう問題じゃないって、じゃあ、どういう問題なんだろう・・?

ぼくに心を込めて作れ、とか、そういうことを言っているのだろうか。

いや、しかし、古今東西、結婚のための調度品を婿が手作りして妻に贈ったと言う話は聞いたことがない。

だけど、ぼくが知らないだけで、案外、有職故実にはそんな風習が残されているのかも知れず・・・

わぁわぁと泣きわめく瑠璃さんを見ながら、あれこれと考えていると

「高彬さま、こちらへ」

小萩に手招きをされた。

部屋の隅に行くと

「それでは、わたくしはこれで下がらせていただきますので」

「えっ?!下がる?」

ぎょっとして言うと

「えぇ。わたくしがここにいても、やることはございませんし」

「あ、あぁ・・、確かに」

「では、明日の朝、御格子を上げに参りますので・・・」

何とも意味ありげな視線でぼくを見たかと思ったら

「高彬さま。どうか姫さまのこと、よろしくお願いいたします」

手を付き、丁寧に口上を述べ、そのまま静かに部屋を出て行った。


*******


小萩によろしくお願いされたところで、結局のところぼくに出来ることは瑠璃さんが泣き止むのを待つことくらいで、ぼくは所在なく部屋の隅に腰を下ろした。

瑠璃さんはさっきよりはトーンダウンしたとはいえ、相変わらず、ぐずぐずと鼻をすすっているし、ここは気が済むまで泣かせるしかないと言うか・・

いや、本当のことを言ったら、どうやったら泣き止ますことが出来るかがわからないのだ。

瑠璃さんが、初夜のことで泣いているのは確からしいし、その張本人であるぼくとしては、ほんと、もうどうしたらいいのか・・・

泣きたいのはぼくだって一緒だよ、と言う気持ちになってくる。

しばらくぼんやりと過ごすうち、何となく気持ちが落ち着いてきて、ふと、そうだ狩衣を脱いでおくか、と思い付いた。

瑠璃さんだって単だし、ぼくだけ狩衣を着ていると言うのは、何だか不釣り合いと言うか不公平だ。

そっと脱ぐのもおかしいし、シュっと盛大に衣擦れの音を立てながら脱いだのに、気付かなかったのか、瑠璃さんは顔を上げなかった。

どれくらい時間がたったのか、部屋が一段、ふっと暗くなった頃

「小萩はどこっ」

ハッとしたように瑠璃さんは顔を上げ、そうして小袖姿のぼくを見ると、夜目にもわかる程に見る見る顔を赤くしたのだった。





<続>


久しぶりのオマージュです。
少し<オマージュ>を進めたいと思っていますので、よろしかっったらお付き合いください。

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Secre

非公開さま(Uさま)

Uさん、こんばんは。

オマージュ、更新いたしました!
楽しみにして下さりありがとうございます。
今日の更新はオマージュではないのですが(すみません。予定ではオマージュだったのですが、急に違う話を書きたくなって書いてしまいました)また次回からはオマージュを更新しますので、お付き合いいただけたら嬉しいです。

オマージュは相当の長丁場になりそうな気がするので、社会人編や短編を交えながら、のんびりと、丁寧に書いて行きたいと思っています。

高彬、ぜひぜひ応援してあげてください!
この頃の、2人(特に高彬)可愛いですよね。
Uさんもお身体、ご自愛下さい。

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ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> 当時このシーンでは瑠璃さんが可哀想だなと思ってました。

私もそう思ってました。いきなりなんて、そりゃあ瑠璃じゃなくたって「心の準備が」って思いますよね。

> 大納言が既成事実を押してましたが初夜した「フリ」なんてできなかったんでしょうか?その選択ナシ?とも思ったんですが、フリだけでは「高彬の初夜お預けシリーズ」無くなりますんで、やはり少女小説ですからね(笑)

「フリ」。
ほんとそうですよね。
今日、プラスの方でその辺りのことを書こうかと思ってるんです。良かったら読んでくださいね。

> 瑠璃は泣いてましたが、その100倍も高彬は緊張してたに違いないですね

ほんと、ほんと・・
瑠璃じゃないけど、やっぱりああいうことは殿方がリードしなきゃって言うプレッシャーだってあったでしょうしねぇ。

この中で一番嬉しくて冷静だったのは小萩だったんですねえ。
当時このシーンでは瑠璃さんが可哀想だなと思ってました。
大納言が既成事実を押してましたが初夜した「フリ」なんてできなかったんでしょうか?その選択ナシ?とも思ったんですが、フリだけでは「高彬の初夜お預けシリーズ」無くなりますんで、やはり少女小説ですからね(笑)
瑠璃は泣いてましたが、その100倍も高彬は緊張してたに違いないですね
ここでも高彬、自分で調度品を作ってとかなんとかボケてますが、、、汗
兄がいて乳兄弟がいても初夜のイロハは教えてくれなかったんですねえ。。。

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