社会人・恋人編<25>

『昨日の、と言うか、さっきのことなんだけどさ』

「・・・・」

さっきのこと、と言ったら、やっぱりアレよね・・

『本当に大丈夫だった?』

「何が」

『だから、その・・つけなくてさ』

「・・・・」

電話の向こうの高彬には見られない事を幸い、あたしはソファに突っ伏した。





─Up to you !Ⅱ─side R <第25話>






『もしもし?瑠璃さん?聞こえてる?』

「聞こえてる・・」

『つけないで、何度もしちゃったけど』

かぁ~っと耳が熱くなる。

嗚呼!もうっ、高彬のバカ!

つけないで、とか、何度も、とか、そんな具体的なこと言わないでよ。

イヤでもイロイロ思い出しちゃうじゃない。

べ、別、思い出すのがイヤなわけじゃないんだけど・・・

と言うか、鷹男から電話くる前は、むしろイロイロ思い出してたりしてたんだけど。

「だから大丈夫だってば。それに・・、もし、何かあっても、高彬に迷惑掛けるようなことはしないから安心して」

一応、年上のたしなみとして毅然と言うと

『え』

電話の向こうで、高彬は驚いたような声をあげた。

「え、って何よ」

『いや、瑠璃さん、何か勘違いしてるんじゃないかと思って』

「勘違い?」

『うん。ぼくが言いたいのはさ、何かあったら、いいきっかけって言うか、機会って言うか』

「・・・・」

『その・・・、前向きに検討するって言うのはどうだろうか』

「どうだろうかって、それって・・・」

『うん。結婚するってこと』

「・・・・」

『もしもし?瑠璃さん?聞こえてる?』

「聞こえてる・・・」

『返事ないから聞こえてないのかと思った』

「・・・・」

すぐに返事できないでしょ、普通。そんなこと突然言われたら。

「あの、高彬・・」

口を開いたところで、高彬の後ろから電話の呼び出し音が聞こえた。

『あ、ごめん、瑠璃さん。電話だ。今の話は、また、今度ゆっくりと・・』

「あ、う、うん・・」

『じゃあ、切るよ。明日、会社で』

慌ただしく電話が切られ、あたしは携帯を手にしばらくぼんやりとしてしまった。

結婚とか、高彬は本気で言ってるのかしら?

ふと、守弥に言われた言葉を思い出してしまう。

───こうして外堀から埋めて、若君との結婚を画策した。違いますか?

万が一、これがきっかけで高彬と結婚なんてことになったら、外堀埋めるどころか、いきなり本丸じゃないのさ。

高彬と結婚とか、そんなこと全く考えてなかったし・・・

ううん、考えないわけではなかったような気はするんだけど、でも、あんまりにも突然過ぎて、すぐには考えがまとまらないって言うか・・

それに、あの守弥が高彬とあたしが結婚することに、すんなり「はい、そうですか」なんて言うとは思えないし。

あれこれ思っていたら、また着信音がして、画面を見ると小萩からだった。

何だか今日は電話が多い日だわ。

通話ボタンを押すと

『瑠璃さま?』

弾んだ小萩の声が聞こえてきた。

「小萩。どしたの」

『瑠璃さま。東京に行く手筈か整いましたわ』

「あ、ほんと?いつ来れそうなの?」

『私の方はいつでも』

「じゃあ、小萩の都合の良い日に来ていいわよ。あたしはいつでも大丈夫。使ってない部屋、2つあるし」

『では、来週末にでも上京しますわ。いざ、東京!ですわね、うふふ』

「うん。じゃあね」

携帯を置き、伸びをする。

来週から久々、小萩と同居だわ。何年ぶりかしら?

そういえば、小萩に、ちゃんと高彬のこと紹介した方がいいのかしら・・・

でも、何て紹介したらいいんだろう?

同僚?友だち?それとも・・・恋人・・・?

『こちら、恋人の藤原高彬さんよ』

なんて、小萩に紹介してる場面を想像し

「やだーーー。照れるーーー」

またしてもあたしは、ソファに突っ伏したのだった。



******



翌朝、いつものカフェに寄ると、高彬は先に来てすでにコーヒーを飲んでいた。

店に入った瞬間に見えた高彬の姿に、ドキっとしてしまう。

やっぱり、かっこいいかも・・・

程近い空いてる席に座ると、高彬が目配せしてきて、またしてもドキっとする。

会社に着いてからもそんな感じで、仕事中

「ねぇ、瑠璃さん。ちょっといいかな。この書類なんだけど・・・」

なんて声を掛けられて覗き込むと、高彬の指が書類を指していて、その指を見たら、何て言うか、その・・・

昨日、この指で・・、なんて思ってしまって───

あぁ、こう言うのは心臓に悪いわ。

「どうしたの?瑠璃さん、顔が赤いみたいだけど、熱でもあるの?」

顔を覗き込まれ

「な、ないわよ」

慌てて答えながら、もう本当に驚いてしまう。

昨日の今日で、よくあんたは平気な顔していられるわねぇ・・・と言う感じ。

昨夜のことなんてオクビにも出さず、なーんにもない顔して普通に仕事してるんだもん。

こういう姿見ると、やっぱり有能の噂は伊達じゃないのかなぁ、なんて思う。

午後2時になり、高彬が他の同僚と打ち合わせをしてるのを横目に、第3ミーティングルームに向かった。

悪いことしてるわけじゃないんだけど、何となくドアを開ける時(見られてないかな)なんて回りを気にしてしまう。

部屋にはすでに鷹男がいて、あたしが入ると立ち上がり、そうしてイスを引いてくれた。

「・・・・」

レストランじゃあるまいし、ミーティングルームでイスとか引いてくれなくていいんだけど。

それでも一応、頭を下げて座ると

「さて、瑠璃ちゃん。第1回目の打ち合わせを始めようか」

楽しそうに鷹男は言い

「え、そんなに打ち合わせって何回も続くの?」

「それは瑠璃ちゃん次第だよ。場所もミーティングルームだけとは限らない」

何とも意味ありげに笑っている。

「・・・」

何かねー。

この人のこの性格、何とかならないものかしら・・・

密かに心の中で溜息をついていると

「ここからが本題だ。藤原にまつわる色んな噂、瑠璃ちゃんは知ってるか?」

そう前置きして始まった鷹男の話は、なかなかに興味深いものだった。






 …To be continued…



ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
↓↓




(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

Mさんからの高彬への突っ込み、本当におっしゃる通りですよね。気が早い、早い(笑)
大丈夫ですよ、小萩と同居が始まったって。
瑠璃のことだから無断外泊なんのその。
平安でも現代でも、基本、小萩は(ああ、瑠璃さまったらどこへ・・)と気を揉む星回りなんでしょうねぇ。

「高彬を取り巻く噂」の真相。
徐々に明かされていきますので~。またお付き合いくださいませ!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

ランキングバナー

にほんブログ村

ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたら
クリックで応援をお願い致します。
1日1クリック有効です。
初めにお読みください
**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
カテゴリ
別館
乳姉妹ブログ
日記ブログ
掲示板
なんて素敵にサイト様 
最新記事
ご訪問ありがとう(H23.11.28-)
**オンラインカウンター**
現在の閲覧者数:
コメントありがとうございます
お礼SSや「他己紹介」があります。
web拍手 by FC2
** あれこれ投票所 **
お好きなジャンルをお選びください。 投票は何度でも可能です。
*** あれこれ投票所2 ***
メールフォーム(ご用の方はこちらから)

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
月別アーカイブ