社会人・恋人編<20>

※多少、性的な描写があります、苦手な方は閲覧ご注意ください。




「あら?」

一緒にシャワーを浴びることになり、先にバスルームに入ろうとしたところで、後ろから瑠璃さんの声が聞こえてきた。

振り返ると、瑠璃さんが猫脚のデスクの前で何かを手に立ち尽くしている。

瑠璃さんの背後には朝の光に溢れた東京の街並みの大パノラマが広がり、逆光により、まるで瑠璃さんは光の中に佇んでいるように見え───





─Up to you !Ⅱ─<第20話>






そういえば、以前にもこんな光景があったことを思い出す。

まだ、瑠璃さんが東京に赴任して間もない頃のことだった。

25階のオフィスビルの廊下、窓ガラスを背に立つ瑠璃さんを、その時も逆光が縁取るように身体を照らしていて、まるで女神のように見えたのだ。

思えば、その頃にぼくは瑠璃さんへの恋心を自覚したわけで、それから色々あって、今、こうして恋人になれたことは奇跡のようにも思えてくる。

朝のカフェで見て

(可愛いな)

と密かに思っていた、まさしく手の届かない人だったのに・・・

それが今は、こうして隅々まで瑠璃さんのことを知ることになっているなんて、本当に人生なんて何が起こるか判らない。

「・・・ねぇ、高彬。ちょっと来て」

ぼんやりと瑠璃さんとの出会いを回想していると、瑠璃さんがぼくに向かい「おいでおいで」と手を振って来た。

何だろう、と近づいて行くと、瑠璃さんは手にしていたものを指先でトントンと突いて見せた。

「・・・何?」

覗き込んでみると、それはホテルの利用規約の冊子だった。

革張りの重厚なもので、ホテルには当然、置いてあるものだけど、いちいち目にするものではないし、だから、ぼくも読んではいなかったんだけど・・・

第一、部屋に入ってから、それどころじゃなかったわけだし。

「チェックアウトは11時って書いてあるわ」

「・・・え」

瑠璃さんの指さす先には、確かにそう書かれており

「そうか、・・・11時だったか。いや、普通は10時だから、てっきり・・」

何となくもごもごと言い訳がましく言うと

「確認不足ね。初歩的なミスよ、気をつけなさい。藤原クン」

パタンと冊子を閉じながら芝居がかって言い、どうやら急に先輩ぶりたくなったらしい。

まぁ、実際、社歴では先輩なんだけど。

「・・はい。以後、気を付けます。瑠璃センパイ」

後輩らしく、しおらしい返事をすると、瑠璃さんは

「わかればよろしい」

なんて言いながら(ふむふむ)ともっともらしく頷いて見せ、そうして目が合って2人して吹きだした。

そうだよなぁ、瑠璃さんって先輩なんだよなぁ・・



*******



だけど、バスルームに入った途端、さっきまで先輩風を吹かせていた人とは思えないくらいに、瑠璃さんは急に小さくなってしまった。

明らかに怖じ気づいているのが見て取れ、何となく笑ってしまう。

「大丈夫?瑠璃センパイ」

「だ、大丈夫よ」

「スパークリングワイン、もらって来る?」

からかうように言うと、瑠璃さんは大真面目に首を振り

「ううん。平気よ。これから毎回、ワインの力を借りるわけにはいかないんだし」

なんて、今にも握り拳を作りそうな勢いで言う。

放っておいたら「エイエイオー」なんて鬨の声でも上げそうな雰囲気で、そんな瑠璃さんを見て声を出さずに笑いながら、幸せな気持ちが広がっていく。

<これから>とか<毎回>とか、瑠璃さんの中で、当たり前のようにぼくとの仲が続く前提となっていることが嬉しい。

やっぱり瑠璃さんは、特別に努力なんかしなくても、十分にぼくを幸せにしてくれてるんだけどな・・・

そう思う半面、瑠璃さんの<お返し>もしっかり楽しみにしてる気持ちもあったりで、まぁ、オトコ心は複雑なのだ。

「えぇと、まずは・・・ジャグジーに入ってもらおうかしら?」

浴槽には昨夜のまま、温かいお湯が張ってある。

「いいよ」

言われるがままにジャグジーに身を沈めると、後から、いかにも<おずおず>と言う感じで瑠璃さんも入って来て、隣に並んだ。

そっと横顔を見ると、恥ずかしさやら緊張やらが入り混じっているのか、何とも神妙な顔をしている。

「えぇと、じゃあ・・・、高彬、あたしの脚に乗ってもらえる?」

そう言われて、堪えられずに今度こそは吹きだしてしまった。

「乗れないよ、瑠璃さんの細い脚になんか」

ひとしきり笑ったあと、何とか笑いを収めて

「ねぇ、瑠璃さん、何から何まで同じことをしてくれなくてもいいんだよ」

そう言うと、瑠璃さんの顔が見る見る赤くなった。

ぼくに笑われたのが恥ずかしいのか、口元までお湯に沈めると

「だって、何をどうしたらいいかわからないんだもん・・・」

ぶくぶくと泡の音を立てながら、そう呟いている。

あぁ、もう、どうしてこんなに可愛いんだろう、瑠璃さんは。





…To be continued…


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瑞月


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Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> 私の中ではバスタオルもチラッと浮かんだんですが、高級ホテルプラス御曹子坊っちゃんなんで、ふわふわ質のいいバスローブ着慣れてるかなーと妄想し、頭の中で高彬バスローブ着てました。

あぁぁぁ!バスローブもいいですね。ある意味、「単衣」風ですもんね。
しかもはらり、と。
しかも、「程よく筋肉ついた胸板見えてはだけて!」!
あーー、どっちがいいですかね。どっちもいいですよねーー。

私の中ではバスタオルもチラッと浮かんだんですが、高級ホテルプラス御曹子坊っちゃんなんで、ふわふわ質のいいバスローブ着慣れてるかなーと妄想し、頭の中で高彬バスローブ着てました。
しかもきっちりでなくてね、ちょっとはらり感がある感じで程よく筋肉ついた胸板見えてはだけて!すいません ちょっとのぼせてますね(笑)
瑠璃ガンバレー💪

ありちゃんさま

ありちゃんさん、こんにちは。

> チェックアウトが1時間延びた!

伸びましたー!

> 女神(瑞月さん)は高彬に微笑みましたねえ。(笑)

12時にまでにしようか考えて、結局11時までにした、中途半端な女神です。

> 高彬は何を望んじゃうのかなぁ。

何を望むか・・・
そこは彼の理性によるところが大きいでしょうねぇ・・(笑)

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> 私読者どものほうが「エイエイオー!!」です。

もう瑠璃にありったけの応援を送りたいですよね!
悔いなくやり遂げてきなさい、と(笑)

> なさぬ仲の母上の言葉をお借りすれば、「たっぷりお睦あそばせ!」でございます。笑

そうですよねぇ、私なんか「なさぬ仲」どことか、「全くの他人」ですけど「たっぷりお睦あそばして」なんて思ってます!

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

<社会人·お風呂編>お楽しみいただきありがとうございます。(いつから改題?←笑)

Mさんが「気になっていること」を読んで、私、密かに膝を打ってしまいました!
私とMさんの「妄想のしどころ」は絶対に一緒です(笑)
そこ、気になりますよね?!
私も書きながら、一体、どうなのよ、と・・・。
で、色々考えて、私の中では「バスタオルを巻いてる」なんですよ。
高彬がシーツを巻くにはおかしいし、かと言って下着を付けると言うのも変、かと言って何もつけないと言うのは、どうも高彬らしくない・・・
というわけで、そうだ、ホテルの白いバスタオルならどうだろう、と思って。
高彬目線なので、その説明は入れなかったんですけど。
もしこれ、瑠璃目線なら

-------------

「ホテルを出て、朝ごはんでも食べようか。・・・瑠璃さん、シャワーは?いい?じゃあ、ちょっと浴びてくるよ」

そう言うと、高彬はベッドから下りバスルームに向かい歩いて行った。

高彬の腰にはバスタオルが巻かれてあり、そう言えば、昨夜、ベッドの上で高彬に身体を拭いてもらったことを何となく思い出す。

何だか身体がクタクタで良く覚えてはいないのだけど・・・

でも、すごくすごく優しくしてもらったことだけは覚えている。

「・・・・・」

何だかいてもたってもいられない気持ちになって、あたしは手早くシーツを巻いて身体を起こすと

「高彬・・・」

小さな声で、高彬を呼んだ。


---------------------

こんな感じになるのはどうでしょうか?!
ベッドの中には、瑠璃を拭いてあげたバスタオルがあったんです。
何なら、裸の瑠璃をお姫さま抱っこしてベッドまで運んで、そこで拭いてあげたって言うのでもいいです!
そのタオルを翌朝、腰に巻く・・・
どうですか、我々、高彬ファン読者のロマンではないですか?!(え?私だけですか?)

高彬の過去の恋愛遍歴も、追々、明らかになっていきますので~。

そうこなくっちゃ!

チェックアウトが1時間延びた!
女神(瑞月さん)は高彬に微笑みましたねえ。(笑)
されたのと同じことをしようとするのも、どうしたらいいかも分からないのも、可愛い!
高彬でなくてもきゅんとしますって。
高彬は何を望んじゃうのかなぁ。
瑠璃、武士の沽券に掛けて(←違う!)頑張れぇ。

私読者どものほうが「エイエイオー!!」です。
なさぬ仲の母上の言葉をお借りすれば、「たっぷりお睦あそばせ!」でございます。笑

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