***第三十三話 後宮にて<Part2>***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




          注)このお話は連続ものです。
            カテゴリー「二次小説」よりお入りいただき
            第一話からお読みくださいませ。



          ***********************************************




*** 第三十三話 後宮にて<Part2>***





ひとり盛りあがっていたあたしは、ふいに肩を叩かれた。

なに?と振り返ると、黒いかたまりが目に入った。

なんだろう・・・あたしの目の前でそれはゆらゆらと揺れて・・・・

「ひゃあぁぁぁぁぁ!」

それが何かがわかった瞬間、あたしは大声で叫びながら、飛びのいていた。

それは、なんと野ネズミで、童がネズミのしっぽを持って、あたしの目の前にかざしていたのだ。

水干姿の童は、ネズミを庭に放り投げると

「おたあさま!」

と言いながら、たったと駆けていき、女御さまの膝にとびついていった。

おたあさま・・・?

ってことは、今の童は御歳三歳の東宮さま・・・

そう、東宮さまだったの・・・

ぼんやりとしていたんだけど、異様な雰囲気と痛いほどの視線を感じて、ふと我に返った。

部屋を見回すと、帝のそばには脇息がすっ転がっており、その帝はと言えば、瞬きもせずに呆然としているし、高彬にいたっては、簀子縁で腰を抜かしたようにすわりこみ、目を見開きぽかんと口をあけて、あたしを眺めている。

その中で女御さまだけは落ち着かれていたのだけど、あたしの突然の出現にさすがにびっくりされたようで

「瑠璃姫さまは本当に楽しい方ですのねぇ・・・」

と、しみじみとつぶやかれている。

帝は女御さまがおっしゃった「瑠璃姫」という言葉をまるで復唱するかのように

「瑠璃姫・・・?」

と呻くように言った。

「・・・少将・・・、あの姫はまことに瑠璃姫なのか・・・内大臣家の・・・」

呆然とつぶやき、すると、それまでフヌケたように腰を抜かしていた高彬は我に返ったのか

「恐れ入ります。面目もございません」

がば、とひれ伏した。

帝はまだ信じられないと言った顔つきであたしをまじまじと見ていたかと思ったら

「このような姫を妻にとは、右近少将も奇特な・・・」

とぶつぶつ呟いた。





         ******************************************





「えーと、あのね、高彬・・・・」

局でふたりきりになったところで、あたしは切りだした。

切りだしたんだけど、高彬に睨まれて口をつぐんじゃった。

高彬が怒っているのは、火を見るよりも明らかで、さすがにあたしもシュンとなってしまう。

「えーと、その・・・」

「瑠璃さん、ここがどこだがわかっているの」

高彬は厳しい声で言った。

「後宮・・・です」

「そうだ、後宮だ。遊びにくるようなところじゃないって前に言ったろ」

「・・・だって、記憶が戻ったことを早く高彬に知らせたかったんだもん・・・」

「それは女御さまから伺ったよ。ぼくをびっくりさせるために、瑠璃さんが後宮に来たいと言って、女御さまもそれをご承知したと」

「そうなのよ、ただ、それだけの気持ちで、つい・・・」

「つい、後宮にきたってわけだね」

「白梅院に行こうかとも思ったんだけど、いつも同じじゃ芸がないかな、なんてさ。あは、は・・・」

「芸、がね」

高彬はにこりともせずに言い、相変わらずあたしを睨んでいる。

「まさか・・その・・帝に、会うなんて・・・思ってもいなくて、まして、あんな風に転がり出るなんて・・・その・・・・」

言葉がつながらなくなり、あたしはしょんぼりと下を向いた。

あぁ、情けなくって涙が出そう。

本当にちょっとだけ高彬を驚ろかして、ふたりで笑いたかっただけなのに・・。

「高彬に、恥かかせちゃって・・・ほんとう、ごめんな・・・さい」

しばらくすると、ふぅ、と小さなため息が聞こえ、そっと顔を上げると、困ったような、笑いをこらえているような複雑な表情を浮かべる高彬の顔があった。

「高彬・・・?」

「記憶が戻ってよかったね、瑠璃さん」

いつもの高彬の声になっている。

「・・・怒ってないの?」

おそるおそる聞くと

「もういいさ。帝が承香殿に来られたのは、本当に偶然だったんだろうし」

高彬は肩をすくめた。

「ほんとにほんとに、もう怒ってない?」

「怒ってないさ。考えてみたら、瑠璃さんらしいと言えば、こんなに瑠璃さんらしいことはないからね。女御が瑠璃さんを後宮に誘ったときに、こうなることまで想像しておけばよかったんだ。それが出来なかったぼくの判断ミスだね」

わざと厳めしい顔で言って、片目をつむってみせた。

「高彬」

嬉しくなって、高彬の手を取ると、ふいに抱き寄せられてしまった。

「記憶が戻って、本当によかった」

あたしの髪をなぜながらつぶやく。

「うん」

高彬の胸に頭をつけながら頷くと、高彬が接吻しようと顔を近づけてきた。

「だめよ、人が来るわ」

阻止しながら言うと

「大丈夫だよ」

さらに腕に力をこめてきた。

「高彬の『大丈夫』は信じないんだから!この前だって・・・」

怒ってみせると、高彬も思い出したのか、ぽっと赤くなった。

それでも諦めきれないのか、あたしの手を取り、局の奥に引っ張っていくと

「ここなら大丈夫・・・」

なんていって、腕を回してくる。

「もう、高彬ったら!ここがどこだかわかっているの」

厳しい声で言ってやると

「後宮・・・です」

しおらしい声で高彬が答え、あたしたちはふたり、声をひそめて笑いあった。




     

         ***************************************






数日後、三条邸に戻ると小萩はやきもきしながら待っていた。

よほど、あたしが後宮で何かをしでかすかと心配していたみたい。

「帝に瑠璃姫だってばれちゃった」

と言うと、目をむいて驚き

「あぁ、高彬さまにお叱りを・・・あぁ、どうしたら・・・」

とうわ言のようにつぶやいて、部屋を出て行ってしまった。

「瑠璃さんを自由にさせてはいけない」と頼まれていたことを、重く受け止めていたみたいで、高彬に叱られることを心配しているんだ。

高彬も真面目だけど、小萩も妙に真面目なことろがあるもんね。

高彬は確かに真面目だけど、でも、ふたりの時は・・・・

とそこまで考えて、あたしは頬がかぁ〜と熱くなるのがわかった。

あの日、承香殿の局の奥で話していた時、あの後、高彬はすぅと笑うのをやめ、と思ったら、強引に接吻をしてきたのだ。

「もう!」

何とか唇を離して睨むと、高彬はいたずらっ子のように顔で笑って見せた。

その笑顔がなんだか色っぽくて、ちょっとどきどきしちゃった。

高彬ってば、いつのまにこんな色気がでてきたのかしら・・・

「早く・・・結婚したいね」

なんて耳元でささやいて、あたしの髪をかきあげるようにとく。

「・・・うん」

恥ずかしくって小声で頷くと

「あと一月で、瑠璃さんと・・・」

そう言って、ぎゅっとあたしを抱きしめてきたのだ。

帝にも女御さまにも「堅物」の太鼓判を押されてる人だけど、でも、ふたりのときには優しいの。

こういうのって、悪かないのよねぇ、うふふ。

でも、人にはこういう気持ちって説明しずらい。

当事者にしかわからないと言うか、これこそが恋の醍醐味なのかもしれないから。

あと一月で高彬と結婚かぁ・・・。

あたしは頬を両手で押さえ、目を閉じ、高彬の面影を想い浮かべたのだった。


         

             <第三十四話に続く>


〜あとがき〜

こんにちは、瑞月です。

次回はいよいよ、ズバリ、「初夜」です(笑)

男・高彬が決めてくれます!

今日も読んでいただきありがとうございました。

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Secre

たのしみです

はじめまして。

毎日楽しみに読ませていただいてます♪

小学生の頃、小説でジャパネスクと出会い、はまりました~。年齢がバレるかしら(笑)

瑠璃と高彬のラブラブが大好きです。

次回、とうとう…
めちゃ楽しみです~♪

>michelleさん

はじめまして!
コメントありがとうございます。
瑠璃と高彬のラブラブ、よいですよねぇ~♪

ただいま、「初夜」を書き中です(笑)
次回、更新をお楽しみに~!

楽しみです

毎回、瑠璃と高彬のラブラブには癒されてます〓
日常のストレス解消に役に立ています。

次回は待ちに待ったシーンですね(笑)
すごく楽しみにしてますが、このまま終わるのも寂しいので、秘密の関係で逢瀬を重ねる二人も見てみたいなあと思ってます。

>まこさん

こんにちは。

ストレス解消に一役かえて、嬉しい限りです(笑)

>秘密の関係で逢瀬を重ねる二人も

これは誰と誰の・・・でしょうか?
守弥と煌姫?(笑)

Unknown

乱読ですが、お気に入りシリーズは、結構繰り返し読んでいます(美男ですね系の読者なんですが、ちょっと前に一月かけてイタキスの方の二年分の過去記事読破しました)
瑞月さんの人物評価楽しいですね。古い記憶がしっかり、思い起こせて懐かしいです。自分では一切書けないのですが、読むのは大好きです
新規更新と、過去記事の、二本立てでゆっくり読みます。

>kaoruさん

ジャパネスクは人物設定がしっかり確立されているので、分析するのは楽しいです♪
お時間のあるときに、いろいろ読んでみてくださいね。
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瑞月(みずき)です。

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