新年SSです。
<新年SS>
瑠璃さんはさっきからキッチンに入り浸たっている。
何をしているかと言うと、昼間に二人でデパートのお総菜売り場を回って買った、おせち料理の品々を重箱に詰め直しているのだ。
わざわざ詰め替えることないだろうに───
と言うのがぼくの見解なんだけど
「こうする方が気分が出るじゃない」
と言うことらしい。
テレビでは年末恒例の歌番組をやっている。
そろそろ紅白の勝敗が決まるらしく、気になるのか瑠璃さんはチラチラとテレビを見ながら、おせち料理を重箱に詰める、と言う器用な作業をこなしていく。
つまり、瑠璃さんの頭には、今、テレビとおせちのことしかないわけで───
「・・・・・」
まったくもって面白くない。
「ねぇ、瑠璃さん」
話し掛けてもテレビに集中してる瑠璃さんから返事はなく
「瑠璃さーん」
少し大きな声で呼んでみたら
「え、あ、・・・呼んだ?」
ようやく瑠璃さんは気づいてくれた。
テレビではどうやら勝敗の結果が出たのか、歓声が沸き起こっている。
「そろそろ・・・寝ない?」
そう提案すると
「あ、高彬、もう眠くなっちゃった?」
壁の時計を振り返って
「もう12時になるものねぇ・・・。先に寝てていいわよ」
「・・・・」
いやいやいや。
12時で眠くなるとか小学生じゃないんだから、と、突っ込みを入れたいところだけど、とりあえずは
「そうじゃなくてさ」
と穏便に話を進める。
変に機嫌でも損ねられると、後々面倒なことになるから、どうしてもこういう場面で下手に出てしまうのは、これはもうオトコの本能とかサガみたいなものだろう。
「一緒に寝ないか、ってこと」
ストレートに言ってみると
「あ」
あ?
一瞬、固まった瑠璃さんは
「あ、あぁ・・・、そういうこと」
と深く頷いた。
「そう。そういうこと」
頷き返すと
「うーん、どうしよっかなぁ」
瑠璃さんの目がきらり、と光った。(ように見えた)
「あたし、紅白のあとは『ゆく年くる年』を見るって決めてるのよ。毎年恒例って言うか、マイルールって言うか」
「・・・」
最近、瑠璃さんはこういうイジワルを言うようになった。
ぼくを焦らして楽しんでいるのだ。
「ルールは破るためにある」
「継続は力なり、よ」
ふふん、と笑う。
「・・・・」
くっそー、楽しんでるな。
「あ、ほら、除夜の鐘よ」
テレビの中継先から除夜の鐘が聞こえてくる。
ゴーン、ゴーン・・・・
厳かな鐘の音に耳を傾けながら、瑠璃さんは
「ねぇ高彬、知ってる?除夜の鐘って、煩悩を祓うために突くんですってよ」
「ふぅん・・・」
知ってるけど。
「で?」
とぼけて言ってやると、瑠璃さんの眉が意地悪そうに吊り上がった。
「で?ってねぇ・・・高彬。煩悩を払うために鐘の音を聞きながら、そんな煩悩まみれなことして、どうするのよ」
「煩悩まみれ!」
瑠璃さんの口から出た、まさかの「煩悩まみれ」と言う言葉に思わず声を上げると、ぼくの反応に瑠璃さんはパパパっと顔を赤らめた。
変なことを言ったと自分でも気付いたのだろう。
「煩悩まみれねぇ・・・。瑠璃さんも案外、煩悩にまみれたいんじゃないの?」
ニヤニヤと言ってやると、ますます瑠璃さんの顔が赤くなり、しまいには首まで赤くなっている。
「さぁ、瑠璃さん。煩悩にまみれよう」
キャーキャー言う瑠璃さんを、半ば引きずるようにして寝室に連れ込み
「おせちがー」
「ゆく年くる年がー」
とわめくのを無視してベッドに引きずり込む。
ここまで来れば、勝負あり、だ。
「ここでも観れるよ」
勝者の余裕で寝室のテレビを付けてやると、暗い部屋の中でテレビの明るさがいい具合のライトになってくれている。
中継先からは相変わらず、除夜の鐘が鳴り響いていて───
ぼくは構わずに瑠璃さんの服を脱がしていく。
瑠璃さんを前に、そんな悟りを開いた僧侶みたいに取り澄ましていられるか、と言うのだ。
煩悩にまみれて何が悪い。
惚れたオンナを抱きながら新年を迎えるなんて、最高の正月じゃないか───
騒いでいた瑠璃さんも、ぼくの愛撫にだんだんとおとなしくなっていく。
こうしてぼくたちは、煩悩を祓うと言う百八つの除夜の鐘を聞きながら、この上なく煩悩にまみれていくのだった。
<終>
もう禁断症状が出てしまい、突発的に新年SSをアップです。
今年もまた「妄想まみれ」の一年になりそうです。
本年もよろしくお願いいたします。
新年SS、楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
↓↓
(←拍手お礼。時々更新してます)
瑠璃さんはさっきからキッチンに入り浸たっている。
何をしているかと言うと、昼間に二人でデパートのお総菜売り場を回って買った、おせち料理の品々を重箱に詰め直しているのだ。
わざわざ詰め替えることないだろうに───
と言うのがぼくの見解なんだけど
「こうする方が気分が出るじゃない」
と言うことらしい。
テレビでは年末恒例の歌番組をやっている。
そろそろ紅白の勝敗が決まるらしく、気になるのか瑠璃さんはチラチラとテレビを見ながら、おせち料理を重箱に詰める、と言う器用な作業をこなしていく。
つまり、瑠璃さんの頭には、今、テレビとおせちのことしかないわけで───
「・・・・・」
まったくもって面白くない。
「ねぇ、瑠璃さん」
話し掛けてもテレビに集中してる瑠璃さんから返事はなく
「瑠璃さーん」
少し大きな声で呼んでみたら
「え、あ、・・・呼んだ?」
ようやく瑠璃さんは気づいてくれた。
テレビではどうやら勝敗の結果が出たのか、歓声が沸き起こっている。
「そろそろ・・・寝ない?」
そう提案すると
「あ、高彬、もう眠くなっちゃった?」
壁の時計を振り返って
「もう12時になるものねぇ・・・。先に寝てていいわよ」
「・・・・」
いやいやいや。
12時で眠くなるとか小学生じゃないんだから、と、突っ込みを入れたいところだけど、とりあえずは
「そうじゃなくてさ」
と穏便に話を進める。
変に機嫌でも損ねられると、後々面倒なことになるから、どうしてもこういう場面で下手に出てしまうのは、これはもうオトコの本能とかサガみたいなものだろう。
「一緒に寝ないか、ってこと」
ストレートに言ってみると
「あ」
あ?
一瞬、固まった瑠璃さんは
「あ、あぁ・・・、そういうこと」
と深く頷いた。
「そう。そういうこと」
頷き返すと
「うーん、どうしよっかなぁ」
瑠璃さんの目がきらり、と光った。(ように見えた)
「あたし、紅白のあとは『ゆく年くる年』を見るって決めてるのよ。毎年恒例って言うか、マイルールって言うか」
「・・・」
最近、瑠璃さんはこういうイジワルを言うようになった。
ぼくを焦らして楽しんでいるのだ。
「ルールは破るためにある」
「継続は力なり、よ」
ふふん、と笑う。
「・・・・」
くっそー、楽しんでるな。
「あ、ほら、除夜の鐘よ」
テレビの中継先から除夜の鐘が聞こえてくる。
ゴーン、ゴーン・・・・
厳かな鐘の音に耳を傾けながら、瑠璃さんは
「ねぇ高彬、知ってる?除夜の鐘って、煩悩を祓うために突くんですってよ」
「ふぅん・・・」
知ってるけど。
「で?」
とぼけて言ってやると、瑠璃さんの眉が意地悪そうに吊り上がった。
「で?ってねぇ・・・高彬。煩悩を払うために鐘の音を聞きながら、そんな煩悩まみれなことして、どうするのよ」
「煩悩まみれ!」
瑠璃さんの口から出た、まさかの「煩悩まみれ」と言う言葉に思わず声を上げると、ぼくの反応に瑠璃さんはパパパっと顔を赤らめた。
変なことを言ったと自分でも気付いたのだろう。
「煩悩まみれねぇ・・・。瑠璃さんも案外、煩悩にまみれたいんじゃないの?」
ニヤニヤと言ってやると、ますます瑠璃さんの顔が赤くなり、しまいには首まで赤くなっている。
「さぁ、瑠璃さん。煩悩にまみれよう」
キャーキャー言う瑠璃さんを、半ば引きずるようにして寝室に連れ込み
「おせちがー」
「ゆく年くる年がー」
とわめくのを無視してベッドに引きずり込む。
ここまで来れば、勝負あり、だ。
「ここでも観れるよ」
勝者の余裕で寝室のテレビを付けてやると、暗い部屋の中でテレビの明るさがいい具合のライトになってくれている。
中継先からは相変わらず、除夜の鐘が鳴り響いていて───
ぼくは構わずに瑠璃さんの服を脱がしていく。
瑠璃さんを前に、そんな悟りを開いた僧侶みたいに取り澄ましていられるか、と言うのだ。
煩悩にまみれて何が悪い。
惚れたオンナを抱きながら新年を迎えるなんて、最高の正月じゃないか───
騒いでいた瑠璃さんも、ぼくの愛撫にだんだんとおとなしくなっていく。
こうしてぼくたちは、煩悩を祓うと言う百八つの除夜の鐘を聞きながら、この上なく煩悩にまみれていくのだった。
<終>
もう禁断症状が出てしまい、突発的に新年SSをアップです。
今年もまた「妄想まみれ」の一年になりそうです。
本年もよろしくお願いいたします。
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ありちゃんさま
ありちゃんさん、こんばんは。
> そして、明日から仕事なのでした。頑張るばい。
頑張ってくださいね!
> 「もぐれ」は、どちらかというと「だらけ」という意味でした。(汗)
なるほど~。「だらけ」ですか。
と言う事は私の頭の中は「高彬もぐれ」なわけですね(^^)/
> (って、意識せんでもできるじゃん。)
確かに。
抱負にする必要は、私たちにはないかも・・・(笑)
> そして、明日から仕事なのでした。頑張るばい。
頑張ってくださいね!
> 「もぐれ」は、どちらかというと「だらけ」という意味でした。(汗)
なるほど~。「だらけ」ですか。
と言う事は私の頭の中は「高彬もぐれ」なわけですね(^^)/
> (って、意識せんでもできるじゃん。)
確かに。
抱負にする必要は、私たちにはないかも・・・(笑)
私としたことが…
瑞月さん こんばんは〜。
年末は、忙しいっちゃ忙しかったです。そして、明日から仕事なのでした。頑張るばい。
「もぐれ」は、どちらかというと「だらけ」という意味でした。(汗)
シワもぐれ、ホコリもぐれ、などと使います。
「妄想まみれ」は、まんま「妄想まみれ」でしたわ。(汗)
「妄想まみれ」で「妄想もぐれ」の生活を送ることを今年の抱負にします!
(って、意識せんでもできるじゃん。)
年末は、忙しいっちゃ忙しかったです。そして、明日から仕事なのでした。頑張るばい。
「もぐれ」は、どちらかというと「だらけ」という意味でした。(汗)
シワもぐれ、ホコリもぐれ、などと使います。
「妄想まみれ」は、まんま「妄想まみれ」でしたわ。(汗)
「妄想まみれ」で「妄想もぐれ」の生活を送ることを今年の抱負にします!
(って、意識せんでもできるじゃん。)
ありちゃんさま
ありちゃんさん、明けましておめでとうございます。
ありちゃんさんも年末はお忙しかったのではないですか?お疲れさまでした。
> 私も、今年も「妄想まみれ」にちがいありません。(笑)
一緒に妄想にまみれましょう!
皆でまみれれば(もぐれれば?)怖くない!(笑)
今年もよろしくお願いいたします。ありちゃんさんにとっても素敵な一年でありますように(*^_^*)
ありちゃんさんも年末はお忙しかったのではないですか?お疲れさまでした。
> 私も、今年も「妄想まみれ」にちがいありません。(笑)
一緒に妄想にまみれましょう!
皆でまみれれば(もぐれれば?)怖くない!(笑)
今年もよろしくお願いいたします。ありちゃんさんにとっても素敵な一年でありますように(*^_^*)
非公開さま(Mさま)
Mさん、明けましておめでとうございます。
ぜひぜひ今年も「妄想まみれ」「高彬まみれ」に一年を一緒に過ごしましょう!
「高彬に添い寝してもらう」・・・
もう高彬ファン垂涎の夢ですよね。
しかも後ろからの牛、じゃなかったギュウって!最高です。
一体、高彬はどんな話をしてくれるんでしょうね。あー、夢に出てきそうです(笑)
こちらこそ今年もよろしくお願いいたします。
ぜひぜひ今年も「妄想まみれ」「高彬まみれ」に一年を一緒に過ごしましょう!
「高彬に添い寝してもらう」・・・
もう高彬ファン垂涎の夢ですよね。
しかも後ろからの牛、じゃなかったギュウって!最高です。
一体、高彬はどんな話をしてくれるんでしょうね。あー、夢に出てきそうです(笑)
こちらこそ今年もよろしくお願いいたします。
あけましておめでとうございます。
瑞月さん 新年 おめでとうございます!今年もよろしくお願いします。m(_ _)m
「煩悩まみれ」いいなあ〜。
私も、今年も「妄想まみれ」にちがいありません。(笑)
(広島弁なら「妄想もぐれ」と言います。だから、どうした…。)
新しい年が瑞月さんにとって素敵な1年となりますように。
「煩悩まみれ」いいなあ〜。
私も、今年も「妄想まみれ」にちがいありません。(笑)
(広島弁なら「妄想もぐれ」と言います。だから、どうした…。)
新しい年が瑞月さんにとって素敵な1年となりますように。
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