***新婚編***第三十七話 夫婦の心得 ***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*新婚編』





このお話には「吉野君」が出てきます。
原作とは違う形で登場しますので、原作のイメージを壊したくない方はお読みになるのをお控え下さい。





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***新婚編***第三十七話 夫婦の心得 ***








夜が更けても、あたしたちは眠ることなく衾に包まっておしゃべりを続けた。

童の頃のことで覚えていること、楽しかったこと、怖かったこと、元服した時の気持ち、裳着を迎えた気落ち・・・・、そんな他愛のないことをとりとめもなく言い合った。

連日の宿直で疲れているはずの高彬の体調を心配する気持ちももちろんあったけど、でも、それよりも今は高彬とこうして話していたい。

前に聞いた話もあれば、初めて聞くような話もあって、何だか<高彬新発見!>と言う感じで面白かった。

それは高彬も同じみたいで、しきりに感心したり大げさに驚いて見せたりするので、あたしたちはその都度、声を潜めて笑い合ったりした。

ふと高彬が黙り込み、どうしたのかしらと思っていたら

「急に仕事、抜けてきてしまったけど、大丈夫だったかな・・・」

夫婦の心配事が消えた途端、仕事のことが急に気になりだしたらしく、それはいかにも高彬らしかった。

「今日は重行と宿直の当番だったんだけど、何も言わずに来ちゃったから・・」

「・・・・」

少し迷ってから、あたしは立ち上がると単を羽織って文箱に近づいた。

いいわよね。

『高彬に隠し事はしたくない』って言ってたし。

もう一度、衾に潜り込んで高彬に文を手渡すと、怪訝そうな顔でそれを開いた高彬は、見る見る奇妙な顔になっていった。

「あいつ・・・」

低く呻いたかと思うと

「また借りを作ってしまった・・・。あいつの借りは高く付くんだ」

お文をそのまま顔に乗せ黙り込んでいる。

「いい友だちじゃない」

「・・・・」

高彬からの返事はなく、ひぃふぅみぃ・・と三つ数えてから、そっとお文を外すと、高彬の目尻に光るものが見えたけど、それには触れずにおくことにする。

文を折りたたんでいると、どうやらその間に高彬は涙を拭ったみたいで、次に顔を見た時にはもういつもの高彬の顔だった。

「あいつは・・、すごい奴なんだ。仕事も出来るし、懐も深い。なんて言うか人望があるんだよ。同期で少将同士と言う事もあって、勝手にライバルみたいに言う奴らもいるけど、ぼくは重行には敵わないところがあるって言うか・・・」

「類は友を呼ぶ、よ」

「え」

「いい友だちがいるって言うのは、あんたがいい人だからよ。自信持っていいわ。あたしの見たところ、重行少将も高彬のこと<すごい奴>とか思ってそうよ」

「・・・・」

「高彬の不興を買う事、本気で心配してたもの。あたしと話したら、あんたにどやされるって」

あの衝立越しでの会話を思い出し笑いながら言うと、高彬は気まずさからなのかムッとした顔をしている。

その顔が面白くて

「ねぇねぇ、高彬。そんなにあたしが他の殿方と話すの、イヤなの?」

からかうように顔を覗き込んでやると、更にムゥッとした顔になったので、あたしは笑ってしまった。

あー、可愛いなぁ、高彬って。

あたしを好きなことを、隠しようもないくらいにこんな風に手放しで見せてくれて、いい友だちもいて、仕事も出来て優しくて、そのくせ肝心なところで臆病で・・・

高彬、あんたは本当にいい男よ。

臆病なとこがあるって、痛みを知ってるってことだもの。

「あたし・・・、これからは何でも高彬に話すわ。あたしが話すことで、高彬の心配事が減るのなら、何だって話すわ。だって隠すようなことなんてないもの」

しみじみ言うと、高彬は少しだけ目を見開いて、そうして

「うん。ぼくも」

と頷いた。

「じゃあ、瑠璃さん。夫婦としての心得を決めよう」

「えー、何よそれ」

高彬はあたしを引き寄せると、手を取り、指を広げて見せた。

「まずは・・・何だろう・・・」

張り切ってる割には言葉に詰まっているので、代わりに

「嘘は付かない、は?」

言ってあげると

「うん、そうだね。まずは嘘は付かない、だ」

そう言ってあたしの親指を曲げる。

「次は・・・」

「楽しいことがあったら報告する」

「うん」

人差し指を曲げる。

「嬉しいことがあった時も話す」

「そうね」

次いで中指も。

「悲しいことも話す」

「うん」

薬指。

「辛いことはすぐに相談する」

「これは一番大事ね」

小指。

5本の指が全部折られて、高彬はそれを手の平で包み込んだ。

「ぼくたち夫婦の心得だ」

「うん」

指切りするみたいに、握った手を振る。

しばらく振った後

「でも・・・、何でもかんでも話せばいいってもんじゃないよな・・・」

高彬が呟くので、思わず吹き出してしまった。

「うん、そうよね。あたしもそう思う」

「例えば、だ。瑠璃さんが団喜を食べ過ぎたとして、それを正直に<5個食べた>とかは話してくれなくてもいい気がする」

「ひどいわ。5個も食べないわよ」

頬を膨らませると

「でも、4個くらいはあるだろ」

「それは、まぁ・・・」

もごもごと言うと、高彬は吹きだしている。

悔しいから

「まぁ、あたしもね、例えば、よ。あんたが女官や女房を見て<綺麗な人だなぁ>とか思ったことは、わざわざ話してくれなくてもいい気がするわ」

イジワルく言ってやると

「いや、そんなこと思ったことは一度も・・・」

しどろもどろになるので

「うそおっしゃい。後宮の女官や、招かれた先の女房を見て、綺麗だな、くらいは思ったことあるはずよ」

ぴしゃりと言ってやると

「ま、まぁ、1回くらいは・・・」

「1回だけ?」

「い、いや、2回、・・・3回・・・、5回くらいはあったかな」

「ほら、見なさい」

怒った振りをしてみせると

「でも、綺麗だな、と思っても、別にそう思うだけで」

なんて必死に弁解するのもおかしく、あたしは笑わずにはいられなかった。

高彬も笑いだし、ひとしきり二人で笑った後、高彬はあたしの髪を撫ぜながら

「・・5日後、左大弁どのの見送りに行ってあげたらいいよ、瑠璃さん」

静かな口調で言われ、あたしは高彬の顔を見返した。

「きっと左大弁どのもお喜びになるだろう」

「・・・・・」

高彬の顔はどこまでも穏やかで優しくて

「・・うん」

あたしはコクンと頷いた。






<続く>


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Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんばんは。

> やっぱり2人は仲良しがいいですね。

本当に(*^_^*)
書いててホッとします。二人は前よりも夫婦としての絆が強くなりましたよね。

> 幼馴染の相手だから、わかってる様でわかってないところもあったんでしょうね。新発見!

そうなんですよね。
二人は幼馴染だとは言え、途中からは高彬の片思いだったわけですし、そんなに密な付き合いがあったわけじゃないですもんね。
結婚して、お互いを発見して行くことってたくさんあると思うんです。

> 長い連載お疲れ様でした。とても楽しくドキドキして毎日育児の間に読んでは、楽しみにしていました。

こちらこそ、いつも応援のコメントをありがとうございました。
とても励みになりました(*^_^*)
そして!
ベリーさんの書かれた「高彬フェア」で、あさぎさんとひとつ前の記事のコメ欄で楽しく盛り上がらせてもらっています!(笑)
ベリーさんに感謝です(#^.^#)

非公開さま(Sさま)

Sさん、こんばんは。

はい、二人、きちんと理解し合って仲直り出来ました。
ぶつかりあってしまったけれど、でも、その分、お互いの絆も深まったんじゃないかと思います。
そうなんです、ずっと笑う場面がなくて、私も書きながら(あー、早くこの場面が終わて欲しい)と思っていました。
いずれ仲直りすることが判っているとは言え、二人のすれ違う気持ちがせつなかったです。
好きだからこそ、瑠璃に臆病にもなる高彬は、私も最高にいい男だと思います。
いつもいつも自信に溢れてなんかいられないですよね。

初夜編、新婚編と続いたこのシリーズは私も愛着があるので、(まだ何の構想もないのですが)何かシリーズとして続けられないかなぁ、と考えています(*^_^*)
次回の最終回もぜひお付き合いくださいませ。

非公開さま(Mさま)

Mさん、Kんばんは。

はい、次回で最終回なんです~。
Mさんも年末のお忙しい中、インフルエンザで辛い中、お付き合い&応援のコメントをありがとうございました(^^)/
もっと激しいイチャつきですか!(笑)
そうなったら、お若い高彬は、またお睦み遊ばしたくなってしまうではありませんか?!
高彬の「おはよう」から「おやすみ」まで逐一報告・・・(笑)
これはもう次回の連載は「ミーハー大江の高彬さま日記in白梅院」に決定ですね!(笑)

~某月某日~

高彬さま、お目覚めになられてすぐに白湯をご所望になられる。
寝所までお持ちすると、何だか随分とまだお疲れのようで、もう少し寝ていたらいいのに、と思う。
宿直が続いた後に三条邸に連泊されたので、寝不足気味なのかしら・・・?
きゃー、イヤだわ。高彬さまったら!
寝起きの少将さまの単衣がはだけていて、思わず目が行ってしまったわ。
だって、昨夜、女房部屋で讃岐さんが「最近の高彬さまは逞しくなられたわ」なんて言うんですもの。
ついつい気になって見てしまうわよ・・・

(以下、割愛)

ありちゃんさま

ありちゃんさん、こんばんは。

> 無事に仲直りできた今となっては、ちと寂しさを感じます。

ありがとうございます(#^^#)
私も名残惜しい気もするのですが、当初の予定通り、これにて終わりにしようと思っています。

> それにしても、高彬は優しいと言うか…いい男ですね〜。
> 吉野君 もとい、左大弁のお見送りをって、懐が深いですね。

うんうん、そうなんですよ
夫としても自信も芽生えてきたのかな?とも思います。

それとですね、実は私、重行のことを「懐が広い」って書いているんですよ。
それで、ありちゃんさんのコメント読んで(あ、そうか、懐は「広い」じゃなくて、正しくは「深い」か・・)と思って、念のために調べてみたんです。
そしたら、やっぱり「深い」が正しくて、『今は「広い」と使う人も増えてきて市民権を得てきてはいるが、本来は「深い」が正解』と書いてありました。
なので「深い」に直しました。
ありちゃんさんのコメントのおかげで気が付きました(#^^#)
ありがとうございます(^^)/

やっぱり2人は仲良しがいいですね。
大きな試練を乗り越えて、また2人の絆、強くなりましたね(^ ^) 本当に良かった!
幼馴染の相手だから、わかってる様でわかってないところもあったんでしょうね。新発見!
かつての恋敵に「会ってもいいよ」なんて、おや、高彬、男が上がりましたね。愛されてると確信出来て、自信がついた様ですね。
吉野君も寂しいでしょうが、遠くから瑠璃を見守ってくれるといいですよね。

長い連載お疲れ様でした。とても楽しくドキドキして毎日育児の間に読んでは、楽しみにしていました。
年の瀬で慌ただしいとは思いますが、一休みなさってくださいませ。
ああ、最終回、嬉しい様な、寂しい様なでございます。
温石を密封。。。やってそう、守弥なら。汗


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寂しいような…

瑞月さん こんにちは。

ついに最終話ですかぁ。
無事に仲直りできた今となっては、ちと寂しさを感じます。

それにしても、高彬は優しいと言うか…いい男ですね〜。
吉野君 もとい、左大弁のお見送りをって、懐が深いですね。
それも、お互いが理解し合って絆を深めることができたからですよね。
夫としての余裕が出てきた証でもあるでしょう。
良かった、良かった。
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Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

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