拍手お礼SS<11>

*** 拍手お礼SSの寄せ集めです ***





*******


草木も眠る丑三つ時・・・

などとおどろおどろしく書くほどのことでもございませんが、 夜半、わたくしはふと目を覚ましました。

目を覚ました理由はすぐに判りました。

叩きつけるような雨が降っているのです。

雨だけではございません。

閃光が走ったと思った次の瞬間、雷鳴が響き渡りました。

まっさきに頭に浮かんだのは姫さまのことでした。

幼い頃から姫さまは雷が大の苦手で、 遠くの空でゴロゴロと鳴りだすだけで顔面蒼白となり、 部屋の隅で縮こまるのです。

そんな姫さまを見ては、 姫さまにも怖いものがあったのか、やはり姫さまも人の子か・・・、とどこかホッとする気持ちになったものでした。

この雷でさぞや怖がっているに違いない・・・ と引き戸に手を掛け、ふと思い直しました。

今夜は少将さまがお越しなのでございます。

それならばわたくしの出る幕などないだろうと思い、また身体を横たえると、 閃光と共にバリバリバリっと大きな音が鳴り、 次いで何か大きなものが倒れたような地響きがしました。

よもや庭の大木にでも落雷したのでしょうか?

気のせいか東の対屋の方から聞こえたようにも思え、わたくしは耳を澄ませました。

ですが、聞こえて来るのは雨音ばかり──

まさか、と言う思いと、ひょっとして、と言う思いが交差し、わたくしはとりあえず様子を見に行くことに致しました。

叩きつける大粒の雨が渡殿に跳ね返り、わたくしの髪を濡らします。

何とか姫さまの部屋に辿り着き

「姫さま。小萩でございます。大儀ございませんか」

とお声をお掛けしたのですが、この雨音で聞こえないのか、 中からは何の言葉もありません。

中に入って行くのも気が引けて、かと言って姫さまのご様子も気になるしでウロウロしておりますと、またしても閃光が走りました。

閃光は格子越しに室内にも入り込み、 一瞬、昼間のような明るさで部屋を照らし出しました。

「・・・・・」

わたくしの目に飛び込んできたのは、 姫さまを抱きしめる少将さまのお姿でした。

いえ、どちらかと言うと、 姫さまが少将さまにしがみついていた、と言う方が正解かも知れません。

一瞬のこととて詳細は判らなかったのですが、やはりこの雷に姫さまは恐れおののいておられるようでございます。

ありていに申しますと「雷、ヤダ」と言ったところでございましょうか。

閃光がなければ、また真っ暗闇でございます。

まぁ、少将さまがご一緒ならば大丈夫だろう・・・ と戻りかけたところで、ふと姫さまのお声が聞こえた気がして わたくしは足を止めました。

格子に近づき耳を澄ませてみますと・・・

「高彬、歌。歌を歌って」

威張っているようにも、 懇願するようにも取れる姫さまの声が聞こえます。

次いでぼそぼそと少将さまのものらしいお声が聞こえたかと思ったら

「今様なんかじゃなくてもいいの、何でもいいから。 早く歌って。早く」

まるで脅迫しているかのように姫さまが言い、しばらくは雨音だけが響き、 次に聞こえたのはまたしても姫さまの声でした。

「途切れちゃ、だめ。ずっと歌ってて」

お2人のやりとりから察するに、 雨音でわたくしには聞こえないとは言え、どうやら少将さまは歌をお歌いになられているようでございます。

閃光が走り、またしても室内が一瞬だけ見えました。

少将さまの胸に姫さまは顔をうずめ、その姫さまの背中には少将さまの手が優しく置かれ───

「・・・・・」

ほんにまぁ、何てお優しい少将さまなのでございましょうか。

おそらくは請われるがままに歌を歌ってあげているのでございましょう。

わたくしはそっとその場を立ち去りました。

翌朝───

夜半の雨が嘘のように晴れ渡り、 朝から強い日差しが照り付けております。

お部屋に伺いますと、 晴れやかなお顔をされた姫さまが何事かを少将さまに熱心にお話されている最中でした。

ムキになって話される姫さまに、 何事だろう・・・と首を捻っておりますと

「あ、小萩。いいところに来たわ。聞いて」

姫さまはわたくしに向き直りました。

「昨夜、物の怪が出たのよ!」

「物の怪・・?」

「瑠璃さんが見たって言い張るんだよ」

「夜中に雷が鳴ったでしょ?どれ、雷でも見てやろうじゃないの、と思って起き出したらね、ピカッと光った瞬間、そこにぼぉっと突っ立ってる人影があったのよ。あれは絶対に物の怪よ」

「・・・・・」

「慌てて高彬を起こしたんだけど・・」

「ぼくは見てないんだ」

「・・・・」

やれやれ、と、わたくしは肩をすくめました。

お2人して涼しい顔で嘘をお付きになって。

雷が怖いばかりに少将さまに抱き付き、そうして歌を歌って差し上げていたのは、 一体どこのどなたさまでしょう。

「絶対に物の怪よ」

───いいえ、それはわたくしです。

本来なら、正直にそうお伝えするのが女房としての務めなのではございましょうが、 忠義心よりもバカバカしい気持ちが勝ってしまい

「そうだったのかも知れませんね」

と、投げやりにわたくしはお答えしたのではありました。








<意地っ張り>


*******


「行ってきます」

「いってらっしゃい」

目を合わさないままの見送りを受け、玄関を出る。

歩きながら何度もため息が出てしまい、職場に着いた時には、もう何度、ため息をついたかわからないほどだった。

───きっかけは些細なことだったんだ。

それがいつの間にかお互いムキになり、そうして一言も口を利かないまま、広いベッドの端と端、背中を向けて一晩を過ごしてしまった。

朝、いつものようにお弁当が出来ていたのは瑠璃さんの「意地」なのか、はたまた妻の自覚なのか・・・

昼時になり、皆と食べる気にもなれなくて一人で最上階の食堂のカウンターに向かう。

窓ガラス越しに広がるビル群を見ながら何の気なしに弁当の蓋を開けたぼくはぎょっとして、慌てて蓋を閉めてしまった。

何だか今、信じられないものを見たような気がする・・・

見間違いだろうか・・・?

恐る恐る、もう一度、蓋を開けると、やっぱり見間違いなんかじゃなかった。

白いご飯の上に細く切った海苔で「バカ」と書かれている。

しばらく眺めて、ふと、2段目が気になった。

まさかと思うけど・・・

2段目を開けると、そのまさかのまさかでやっぱり海苔で文字が書かれている。

でも、何て書いてあるのか読めなくてしばらく見ているうちに天地が逆になっていることに気が付いた。

逆にしてみると・・・

「ア」・・「タ」・・「シ」・・「ノ」・・

アタシノ・・?

一段目の「バカ」よりは完成度は落ちているけれどそれでも間違いなく「アタシノ」と読める。

バカアタシノ、バカアタシノ・・・

アタシノ、・・・バカ・・・

あたしのバカ・・?

「・・・・・」

とっさに電話をしかけ、やっぱり帰ってからにしようと思い直す。


***


早めに仕事を切り上げて家路を急ぐ。

最寄り駅から最短でのルートを選んで歩いていると、向こうから歩いてくる人影があり良く見るとそれは瑠璃さんだった。

瑠璃さんもぼくに気付いたのか立ち止まった。

「ただいま」

瑠璃さんの前まで行き、そう笑い掛けると瑠璃さんは曖昧に頷いた。

「お弁当、食べたよ」

「・・・・」

「もしかして、ぼくを迎えに来てくれた?」

「べ、別に・・、ちょっと散歩しようかと思って・・」

「こんな陽も暮れてから?」

「・・・・」

「今年一番の冷え込みだって言うのに?」

「・・・・」

「帰ろうか」

手を差し出すと、瑠璃さんは黙って握り返してきた。


「ごめんね」が言えない意地っ張りなぼくの妻はこんな風に不器用な謝り方をする。



~Fin~







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「ときどき」どころか、「いつも」私はそう思ってるんですが…


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昨年中は応援のコメントをありがとうございました。
こちらこそ今年もよろしくお願いいたします!
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明けましておめでとうございます⛩
今年もよろしくお願いします。またちょこちょこ遊びに来ます!

守弥、策士、策に溺れる、お手本男ですよね
大江の何気な酷評、好きです。正直で。笑
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