拍手お礼SS<10>

*** 拍手お礼SSの寄せ集めです ***





七夕SS「願い事ひとつ」です。



*******



「まぁまぁ、今日はまた良く晴れたこと。これなら天上の牽牛と織女も逢瀬し放題ですわねぇ」

「・・そうね」

煌姫の言葉にあたしは力なく頷いた。

今日は七夕。

朝から文句なしの晴天で、夕刻になった今、西の空が燃えるような茜色に染まっている。

きっともうじき茜空が藍色に代わっていき、やがて夜がやってくる。

だけど、高彬は来ない───

「少将さまが来られないなんてお寂しゅうございますわね、瑠璃姫も」

煌姫に同情の目を向けられ、あたしはお腹にぐっと力を入れた。

「寂しいなんてことないわよ、仕事なんだし。あたしだって独身気分を満喫できるってもんよ。夫元気で留守がいい、ってね」

威勢よく言うと、煌姫は(おやおや)とでも言うように眉をあげた。

そのまま疑わしそうな目を向けていたけれど、女房から夕餉の時間だと告げられて帰っていった。

煌姫の姿が見えなくなったところで、あたしは脇息にぐったりと寄りかかった。

つまんない・・

高彬はもう五日も来ていないのだ。

最後に来た日

「同僚で最近、結婚をしたやつがいてね。『早く帰らないと妻が泣くものだから仕事を代わってくれないか』なんて頼まれちゃったんだよ。だから、しばらく来れないけど・・・」

と、そんなことを言っていたっけ。

今にして思えば、その場ですぐに言えば良かったのよ。

そんなのはイヤだって。

なのにあたしと来たら

「わかったわ」

なんて、物分り良さそうなことを言っちゃってさ。

素直じゃないなぁ、と自分でも思う。

だけどね、あたしと高彬って「姉さん女房と年下夫」と言う図式って言うかさ、そういうのが定着しちゃってるのよ。

だから今さら、ヨヨと泣いて見せたところで始まらないって言うか、あたしの柄じゃないって言うか・・・

だけど・・・

七夕の今日くらいは一緒に過ごしたかったなぁ。

陽が落ちたのか、庭から涼しい風が吹いてくる。

もうじき暗くなって星が瞬きだして───

あたしは文机に向かい筆を取りあげると

『高彬が早く帰ってきますように』

さらさらと短冊に書き流した。

立ち上がって笹の葉に結び付ける。

一段と暗くなった夜空には、キラキラと星たちが煌めいていて、きっと今頃は牽牛と織女が会っているに違いない。

「別にやっかんでなんかいないわよ」

空に向かって呟くと、あたしは一人で夜具に潜り込んだ。


***


どれくらい眠ったのか、ふと人の気配で目を覚ました。

几帳の向こうで灯台の火がゆらめいている。

「・・・高彬」

起き出してみると、部屋には高彬がいた。

「ごめん、起こしちゃったね」

「いいけど・・。それより仕事は?」

「何とか早く終わらせてきたよ。そんなことよりさ、瑠璃さん。これ・・」

近づいてきた高彬の手には短冊があった。

「・・・・」

「こういう事は、ぼくに言ってくれると嬉しいんだけどな。星にお願いする前にさ」

「・・・・」

「これくらいならぼくが叶えてあげられるよ」

笑いながら優しい声で言う。

「お願いする順序が逆だろう」

「・・・うん」

頷くと、高彬は手にしていた短冊を文机に置いて、そうしてあたしを抱き上げてきた。

「瑠璃さんにぼくの願い事もひとつ叶えてもらおうかな」

言いながら几帳を回り込んで、夜具の上にあたしをそっと下ろし、そのまま覆いかぶさってくる。

「ずいぶんと俗っぽい願い事なのね」

笑いながら言うと

「そう。だから星には願えない」

笑いを噛み殺した声で高彬は言い、そうして甘い接吻をしてきたのだった。




<Fin>







*** Song for You ***



夜も更けた右近衛府の一室───

一人文机に向かいぼくは思案していた。

もう随分と長い時間がたったような気がするけど、まだ一言目の言葉すら浮かんで来ない。

秋を詠み込むと言ったら「秋の空」「秋風」・・・あとは「秋惜しむ」辺りだろうか。

「十六夜」何て言うのもいいかも知れないな。

「十六夜や・・・」

そこまで書いて手が止まってしまう。

その先がいくら考えても思いつかず、ぼくは諦めて筆を置いた。

実は瑠璃さんから「一日一首」歌を送るように、と言う厳命が下っているのだ。

だからこうして仕事の休憩時間を利用し、なけなしの知識を総動員して歌を考えているのだけど・・・

そもそも歌が苦手なぼくに、一日一首はきつい。

やはりこれは瑠璃さんにもう一度、直談判するしかなさそうだ。

歌を詠むことを諦め、ぼくは仕事に戻った。



*********



「・・と言うわけでね、瑠璃さん。毎日、一首と言うのはぼくにはちょっと荷が重いと言うか厳しいと言うか・・・。せめて一週間に一首くらいで許してもらえないだろうか」

翌日、仕事を終えて向かった三条邸で率直に切り出すと、瑠璃さんは

「うーん、一週間に一首ねぇ・・」

と考え込んだ。

そうしてふと思い出したように

「でも、ほら、前に毎日、送ってきてくれたことがあるじゃない。頑張れば、出来るはずよ」

毎日、歌を送ってた・・・

あぁ、あの頃のことか。

「あれは・・・、必死だったから・・・さ・・」

何となく語尾を濁してしまう。

確かにぼくは瑠璃さんに毎日、歌を送ってたことがある。

求婚してた頃だ。

瑠璃さんにイエスの返事をもらいたかったから、必死になって歌を詠んだ。

何首送ったか判らなくなった頃、何とか瑠璃さんに返歌をもらったのだけど───

「ぼくの歌を詠む力は、どうやらあの時に使い果たしてしまったみたいだよ。何しろ気難しい恋人がなかなか返歌をくれなかったからね」

意味ありげにそう言ってやると、瑠璃さんはちらりとぼくを見て

「毎日、お歌を聞かせてあげたかったんだけど・・・」

呟きながら、少しふっくらとしたお腹に手を当てた。

「前も聞いたと思うけど、ぼくの歌を聞かせることに意味はあるのかい?」

「意味なんてないけど・・・、ただ、話しかける時にお歌があったらいいかなぁ、と思ったのよ」

「でも、ぼくの歌なんて聞かせたら、将来、歌の下手な子になってしまうんじゃないかな。どうせ聞かせるなら、もっと上手な人が作った歌を聞かせた方が・・・」

「上手い人って例えば誰よ」

「代作を生業にしてる人とか」

「そう言う人のは技巧に走っててイヤだって言ってたじゃない」

「う、うん・・・」

確かに昔、そんなことを言った気がする。

「仕方ないわ。前にもらったお歌を一日一首、聞かせることにするわ」

「前のって・・・。瑠璃さん、ぼくがあげた歌、まだ取ってあるの?」

もうとっくに処分したのかと思っていたので、びっくりして聞いてみると

「あるわよ、一通残らず全部、ね」

「・・・・・」

「当たり前じゃない。他の人からの手紙は読んだらポイポイ捨ててるけど、高彬からのは全部取ってあるわよ。頑張って書いてくれてるの判ってたし、それに・・・すごく嬉しかったから・・・」

そう言って恥ずかしそうに目を伏せている。

「瑠璃さん・・・」

言葉に詰まり、何だか油断したら涙が溢れそうで慌てて目を瞬かせると、そんなぼくを不思議そうな顔で見ていた瑠璃さんは

「おかしな父上ねぇ」

お腹に向かい、柔らかい顔でそう言ったのだった。



~Fin~








コンコンと言うノックの音に、あたしは声にならない言葉を発した。

「ただいま」

カチャリとドアを開け部屋に入ってきた高彬は、スーツ姿のままベッドに腰掛けるとあたしの顔を覗き込む。

「・・・具合はどう?」

「うん・・・」

ぼんやりと頷くと

「まだ、顔赤いね。熱も・・・あるし」

額に手を当て、困ったような顔をしている。

「ちゃんと薬は飲んだ?」

「うん・・・」

「ちゃんと食べ・・・てないみたいだね」

朝のままになっている、サイドテーブルのプリンを見ると小さくため息をついた。

そうしてあたしに向かいメっと、怖い顔を作って見せた。

「瑠璃さん、食べなきゃ治らないよ」

「だって・・食欲がないんだもん。食べるのも億劫だし」

「億劫って。スプーンで掬うだけじゃないか」

「めんどくさくて・・」

しばらくあたしの顔を見ていた高彬はスーツを脱いで袖を捲ると

「じゃあ、食べさせてあげるから」

プリンを手に取った。

「はい、あーんして」

言われた通りに口を開けると甘いプリンが喉を滑り落ちて行く。

「おいしい・・」

思わず呟くと

「だろ?やっぱりお腹はすいてるんだよ」

「うん・・」

結局、高彬に食べさせてもらって一個、ペロリと平らげてしまう。

「何か飲む?ホットミルクは?」

「うん、飲む」

温めた牛乳を持ってきた高彬は

「熱すぎたかな」

なんて呟きながら、ふぅふぅ、と牛乳に息を吹きかけたりしている。

一口、自分で飲むと

「うん、大丈夫」

頷くと、カップを持ったまま飲ませてくれた。

飲み終わったあたしの顔を見ると

「ヒゲになってる」

喉の奥で笑い、指先で牛乳を拭う。

「汗かいただろうから、シャワー浴びるのが一番なんだけど・・・ちょっと無理そう?」

コクンと頷くと

「じゃあせめて着替えようか。タオルで身体拭いてあげるから」

そう言って熱いタオルを用意してくるとツルンとパジャマを脱がされてしまう。

身体を拭かれながらされるがままに目を瞑っていると

「瑠璃さん。ソノ気になったりしたらダメだよ」

なんて真面目に言うので笑ってしまった。

「身体も熱いね。辛いだろう。可哀想に」

手の平で色んなところを触りながら言い、高彬のひんやりとした手が気持ち良くてあたしは無言で頷いた。

高彬にすっかりパジャマを着せてもらい

「ありがと」

お礼を言うと

「どういたしまして」

最後のボタンを留めながら、高彬は笑った。

「大丈夫?他には何かない?」

「うん・・・」

「少し寝たらいいよ」

「うん・・、高彬は?リビング行っちゃうの?」

「ううん。ここにいてあげるよ」

「うん・・・」

高彬はベッドに座ったまま本を読み始めた。

横になって、じっと高彬を見ていると視線に気が付いたのか、ん?と言う顔で、あたしを見返してきた。

「ううん、何でもない・・」

何度かそれを繰り返し、しまいに高彬は笑いだした。

「どうしたのさ、瑠璃さん」

「手・・・、繋ぎたい」

「いいよ」

手を繋いでくれる。

「もっと、こっちきて」

「うん」

ぐっとあたしに近づく。

「本、読んじゃダメ」

「判った」

ぱたりと本を閉じる。

「他にご要望は?」

面白がるような口調で聞かれあたしは空いてる方の手で高彬を手招きした。

顔を近づけてきた高彬の耳元で呟くと高彬は一瞬、目を見開いた。

「せっかく着せてもらったんだけど・・・」

恥ずかしくて、目元まで毛布を引き上げて言うと

「脱がすのは簡単だから大丈夫」

にっこりと笑うとネクタイを外しそうしてあたしのパジャマのボタンに手を掛けたのだった。



*******


「らぶポカ」第一弾。<看病編>をお届けしました。








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これを読んだ当初、(由良までこんなこと言うんだから、よっぽど守弥の「若君命」は右大臣家では周知の事実なんだろうな)と思ったのを覚えています。
由良が何気に、守弥を高彬を押し付けてる感じが笑えます。
「ちょっ、由良・・・、おまえ、何てことを・・・」(←By高彬)


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんばんは。

この由良の言葉、何気にツボなんですよ。おかしいですよね!
今年もよろしくお願いいたします(*^_^*)

久々に読んだ由良の言葉に笑ってしまいました!まさに守弥って人を実にピタリと表している台詞ですね。守弥から高彬をとったら何も残らない的な。苦笑

SSも楽しく読ませていただきました!また来年も遊びに来ます。良いお年を💐
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瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

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