***新婚編***第三十一話 心惑い ***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*新婚編』





このお話には「吉野君」が出てきます。
原作とは違う形で登場しますので、原作のイメージを壊したくない方はお読みになるのをお控え下さい。





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***新婚編***第三十一話 心惑い ***








息遣いも荒いまま高彬は部屋を横切ると、そのままあたしの腕を掴み、吉野君から引きはがした。

下手したらすっ飛ばされそうなほどの力で、よろけて几帳にぶつかってしまう。

「左大弁どの。ここで私の妻に何をされておられるのですか」

普段の高彬からは想像も付かないような低いドスの聞いた声で、言い方が丁寧なのが、却って怖いほどの迫力だった。

「・・・これは右近少将どの。いや、留守中に失礼を致しました。瑠璃姫にお伝えしたいことがあったのですよ」

吉野君は動じる風もなくどこまでも穏やかな声で言い、敵意をむき出しに睨み付ける高彬に向かい、あろうことか笑って見せた。

「やはり、あなたは瑠璃姫を幸せに出来る方だ。そうとは知らずに姫を守っている」

「妻を守るのは当然のことでしょう、左大弁どの。いや・・・吉野君」

「・・・・・」

あたしは高彬の横顔を凝視した。

左大弁が吉野君であることを、高彬は知っている・・?

どうして・・・

どうして───?!

「た・・・」

「その名で呼ぶのはおやめいただきたい。幼き日、好きだった姫に呼ばれていた、大切な名でしてね」

初めて吉野君の声に苛立ちが浮かび、でも、それは一瞬のことで

「私はこれで失礼いたします。何をお伝えしたかったかをお知りになりたければ、瑠璃姫にお聞きください。では、また宮中で」

さやさやと言う衣擦れの音だけを残し吉野君は庭へと下り、やがてその姿が見えなくなった。

部屋にはしばらく沈黙が流れ

「た、高彬・・・、どうして左大弁が吉野君だと・・・」

聞きかけたあたしは、ものすごい形相で睨み付けられ、途中で言葉を飲み込んでしまった。

高彬のこんな怖い顔は見たことがない。

とっさに話しを逸らすつもりで

「今日は宿直だと思ってたから・・」

そう思ってたから、ふいの高彬の登場は驚きだった・・と言う気持ちで言ったのに

「ぼくが宿直だと思って、・・・呼んだのか」

強ばった声で高彬が言い、その言葉にあたしは愕然とした。

高彬は、あたしが吉野君を部屋に呼びこんだと、そう思ってるんだ・・・

「違うわ、高彬。吉野君が・・・、ううん、左大弁が突然、訪ねてきたの。本当よ、信じて」

懸命に言うあたしのことなんか見向きもせず、高彬は部屋の隅の二階厨子に近づくと、荒い仕草で経箱の蓋を取った。

戻ってきた高彬の手に握られていた料紙に、息を飲む。

「これは何だ」

「・・・・・」

「文をもらったことがあるかと言うぼくの問いかけに、瑠璃さんは、ない、と言った」

「・・・・」

「じゃあ、これは何なんだ」

怒りを抑え込んだような、低く強い口調だった。

一歩、踏み出した高彬の足が何かを踏んだのか、カサリと音を立て、拾い上げた高彬は月明かりでそれを確認すると、見る見る顔色を変えた。

「こんな風に二人で連絡を取って、示し合わせていたのか」

『今宵』と書かれた文が、あたしの袖から落ちたのだと気付き

「違うの、高彬・・・」

「何が違うんだ」

抑えきれないほど、怒気を含んだ声だった。

「連絡なんか取ってない。示し合わせてなんかいないわ。お願い、信じて・・・・」

「どこをどう信じろって言うんだ!」

料紙を握り潰し投げ捨てると、その勢いのままに几帳を片腕で払った。

ものすごい音を立てて几帳は倒れ

「隠し事ばかりされて、一体、どこをどう信じたらいいんだ!」

一歩、近寄られ、一歩、後ずさる。

高彬の全身からは怒りの炎が立ち上り、そのあまりの迫力に、あたしは初めて高彬に対して恐怖を感じてしまった。

違う。違うの。

高彬を騙そうと思って、文のこと隠してたわけじゃない・・・

そう言いたいのに、言葉が喉に貼り付いて出てこない。

一歩一歩と近づかれ、後ずさるうち、背中が壁に当たった。

逃げ場がなくなったあたしを血走ったギラギラとした目で射抜いたまま

「・・・接吻をしたのか」

高彬は低い声で言い、恐怖に固まっていると

「左大弁と接吻をしたのかと聞いているんだ!答えろっ!」

大声で怒鳴り、拳を壁に打ち付けた。

「・・してないわ・・・」

小さく頭を振りながら絞り出した声は我ながらか細く、足元から震えが上がってくる。

高彬はあたしの両肩に手を置くと、だんだんとその幅を狭めて行った。

一瞬───

本当に一瞬だけど、このまま首を絞められるじゃないかと息を止め、目を閉じた次の瞬間。

高彬はあたしの単の合わせを両手で掴むと、引き千切らんばかりの乱暴な仕草で、一気に合わせを開いた。






<第三十二話に続く>


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Secre

ぺんぺんさま

ぺんぺんさん、こんばんは。

> まるで私が高彬に怒られてるんじゃないかと思うくらいビクビクしながら読んでいました。

高彬、恐いですよね((+_+))
私も書きながら「うわ~」と・・・。
でも、高彬が怒るのも仕方のないシチュエーションなんですよね。

> 瑠璃さんは無事なのでしょうか。。。

無事を祈ります・・・。

ドキドキ(*_*)

まるで私が高彬に怒られてるんじゃないかと思うくらいビクビクしながら読んでいました。
高彬、すんごい迫力ですね。
瑠璃がどんなに言い訳(でも本当のこと)しても、今の心理状態じゃ何も信じられないですよね。吉野君と二人きりでしたし(>_<)
瑠璃さんは無事なのでしょうか。。。

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> 確かに、嘘はどんなに小さくても嘘といったのは、瑠璃姫でしたね。汗

しかも「文をもらってない」の嘘は、高彬としては一番付いて欲しくない嘘だったんじゃないかと思います。
瑠璃としては、高彬をだます気でついたわけじゃないんですけどね。

> そして、高彬、ブチ切れるの巻。

愛染明王と化した高彬。
瑠璃も震え上がっていますし、さぞ怖かろうと思います・・

> 年末のお忙しい時に、連日の更新お疲れ様です!

こちらこそお付き合いいただきありがとうございます!(*^-^*)

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

以前「新婚編では愛染明王の高彬を書くつもりです」と書いたのですが、今、まさしく書いております(=_=)
シリアスな話を書きながら、(らぶポカが書きたいよー。やっぱり二人はらぶらぶがいいよー)と思ったりしてます(汗)
でも、ここまで書いたら途中で止めるわけにはいかないので、早く話を進めて二人を仲良くさせてあげたいです!

非公開さま(Aさま)

Aさん、こんにちは。

かなり頭に血が上っている高彬ではありますが、高彬目線で考えたらこうなってしまうかな、と思います。
部屋に来て見たら二人が抱き合って(と、高彬には見える)いたわけですから。
しかも接吻疑惑まで!
またお付き合いください(*^-^*)

確かに、嘘はどんなに小さくても嘘といったのは、瑠璃姫でしたね。汗
原作で瑠璃は結構な隠し事を持ってますよね。笑 でもそれが人ってものですよね。全てをぶちまけてうまくいく関係もあれば、多少言わない方がいい事もあると言うその現実。
そして、高彬、ブチ切れるの巻。夫の宿直の間に他の殿方と会って、証拠も握られてしまった瑠璃姫。言い訳、できませんよ!!
これくらい怒っても、おかしくないですね。この後の高彬の言動、楽しみです。(変な意味でなくて)どうするんだろう、頑張れ高彬!
どうなっちゃうんだろう、2人は!
しかし吉野君は謎ですね。このまま高彬が来てなかったら、どうなってたんだ?!
瑞月さん、まだまだドキドキハラハラですよ(継続中)
年末のお忙しい時に、連日の更新お疲れ様です!

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