***新婚編***第三十話 吉野の人<Part2> ***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*新婚編』





このお話には「吉野君」が出てきます。
原作とは違う形で登場しますので、原作のイメージを壊したくない方はお読みになるのをお控え下さい。





         ***********************************************





***新婚編***第三十話 吉野の人<Part2> ***








野犬の遠吠えが夜のしじまに吸い込まれていく───

長いこと呆けたように黙りこくっていたあたしは、吉野君が身じろぎをする気配にふと我に返り、自分に喝を入れた。

───しっかりしなさいよ!瑠璃。

吉野君は生きていた。

左大弁として、内裏の官吏になっていた。

ただそれだけのことじゃないの。

童の頃をお互い懐かしがって、思い出話に花を咲かせればいいのよ。

『そう言えば、吉野君、あたしにプロポーズしてくれたわよね。吉野君ってませてたのね』

なんて言って、笑い話にすればいいだけのことじゃない・・・

「あなたが右近少将と結婚すると知った時・・・」

突然に吉野君は話し出した。

「私の胸に去来したものがなんだったか、お分かりですか?瑠璃姫」

「・・・・」

「安堵感でした」

あたしはハッと顔を上げた。

「幼き日、好きだった姫が幸せになる。その事実は思いがけないほどの強さで私を幸せな気持ちにしてくれました。右近少将どのは稀に見る真面目なお方ですからね。必ずやあなたを幸せにしてくれるでしょう」

優しく穏やかな声が続く。

「だから私は、こんな風にあなたの前に姿を現すつもりなどありませんでした」

「でも、文が・・・」

「お伝えしたいことがあったのですよ」

「あたしに?」

密やかな息遣いが聞こえ、どうやら吉野君は笑ったようだった。

「帥の宮と言う宮さまが、あなたへの恋情を露わにしましてね。まぁ、恋情と言っても、彼の場合は心より先に身体の繋がりがくるようではありますが」

「・・・・・」

「右近少将どのは少しばかりそういうことに疎くていらっしゃる。あなたが宮の毒牙にかかることは何としても避けたかった。だから、あなたに伝えたかったのですよ。帥の宮に気を付けなさい、とね」

「だったら・・・。だったら、あんな思わせぶりな文を書かずに、普通に連絡をくれたら良かったのに」

吉野君の独白は、あたしにもまた安堵感をもたらしていた。

全身から緊張が解けていくのが判る。

良かった───

やっぱりあたしたちは、童の頃の吉野の地で「いっとう仲良しだった友だち」なのよ。

高彬にもきちんと事情を説明して、そうしてこれからは三人で仲良く交流を持って───

また雲が流れたのか、部屋に月明かりが満ちていく。

目を閉じ、安堵と満足のため息をついた時

「普通の連絡を、ですか・・・」

あるかなきかの呟き声が聞こえ、次の瞬間、気が付いたら吉野君に腕を掴まれていた。

(あっ)

すぐ目の前に吉野君の顔があり、声にならない言葉が出る。

「あなたのことがずっと好きだった。今も昔も変わらず恋焦がれている。誰にも渡したくない」

「・・・・」

穏やかさをかなぐり捨てた、切羽詰まったような声で一息に言うと、そうしてまた静かな声に戻り

「・・・と言ったら、瑠璃姫はどうされますか?信じて下さいますか?」

「・・・・」

「私に情けを・・・かけて下さいますか?」

月の使者かと見まがうほどの煌めきを放つ吉野君の息遣いが聞こえてきて、あたしの腕を掴む手に更に力が加わった。

瞬きもしない真剣な吉野君の顔を間近に見ながら、ふと女御さまの言葉が甦る。

あたしは目を見張ったまま頭を振った。

「・・・嘘よ。信じないわ。左大弁は恋の噂が絶えない方だと聞いたことがあるもの。そんな、あたしのことをずっと好きだったなんて、そんなこと・・・」

「あなたを探していたと言ったら?」

「・・・・」

「会えば必ず判る。恋の浮名を流しながら、わたしはあなただけを探していたのです」

「・・・・嘘よ・・・そんな・・・」

最後まで言う前に、強い力で吉野君に抱き寄せられてしまう。

「瑠璃姫」

両手で頬を挟まれ、あたしは更に目を見開いた。

もう少しで唇が触れそうになった次の瞬間、すごい勢いで人が部屋に飛び込んできた。

そこには、息を切らし、顔を強ばらせた───

高彬が立っていた。






<第三十一話に続く>


高彬、登場です。
楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
 ↓↓



(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Aさま)

Aさん、こんばんは。

吉野君は瑠璃にとっては「初恋の君」ですし、しかも亡くなったと思っていたわけですから、ある意味「綺麗な思い出」として凍結したままなんですよね。(もちろん、吉野君にとっても)
でも、私の個人的な考えとしては、やっぱり大人になった吉野君と瑠璃がうまくいくかと言うと、それはちょっと違うかなぁ・・と思います。
大人になると、子どもみたいに単純に割り切れない思いってありますよね。
自分だって判らないのに、それを人に伝えるなんて至難の業ですし。
新婚編、今しばらくお付き合いください!

ベリーさま

ベリーさん、こんばんは。

> この高彬の原作絵が嫉妬しているように見えるのは、私だけでしょうか?Σ(゚д゚lll)

気難しそうな顔にも見えますし、確かに嫉妬してる顔にも見えますよね。

> そうきましたか、吉野君、ソッチーが手を出そうとしたので、幸せに見守るつもりが便乗?!して会いたくなっちゃったんだー!嫉妬してしまったのね。それともさよならを言いにきたのかな?!心理やいかに?!

この辺りの吉野君の心理は、かな~り複雑な気がします。
瑠璃の幸せを願う気持ちに嘘はないんでしょうしね。

> 勝手に、実は今回は高彬来ないんじゃないかと思ってたんで、

来ちゃったんですよー。
このタイミングでの登場ですもんね。ただですみそうにはありません((+_+))
高彬への応援、お願いいたします!

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは。

すみません~、変なところで終わらせてしまって(^-^;
高彬、ものすごいタイミングでの登場です!
高彬、小太刀を持っているかどうかは不明ではありますが(笑)かなり頭に血は上っている模様です。
今しばらく、お付き合いください!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

週末まで更新していただいて、嬉しいびっくりです!!ありがとうございます😊
この高彬の原作絵が嫉妬しているように見えるのは、私だけでしょうか?Σ(゚д゚lll)

そうきましたか、吉野君、ソッチーが手を出そうとしたので、幸せに見守るつもりが便乗?!して会いたくなっちゃったんだー!嫉妬してしまったのね。それともさよならを言いにきたのかな?!心理やいかに?!
そして、高彬、きましたね!さあどうするんでしょう。
勝手に、実は今回は高彬来ないんじゃないかと思ってたんで、またまたドキドキしています!お話の続き、待ちます。きゃー。頑張れ瑠璃姫!

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
プロフィール

瑞月

Author:瑞月
瑞月(みずき)です。

ランキングバナー

にほんブログ村

ランキングに参加しています。
楽しんでいただけましたら
クリックで応援をお願い致します。
1日1クリック有効です。
初めにお読みください
**当ブログの簡単な説明です**
当ブログは「なんて素敵にジャパネスク」の二次小説を掲載しております。 二次小説と言う言葉を知らない方や苦手な方は閲覧ご注意ください。 また読後のクレームはお受けできません。 「ごあいさつ<最初にお読みください>」も合わせてご一読下さい。
カテゴリ
別館
乳姉妹ブログ
日記ブログ
掲示板
なんて素敵にサイト様 
最新記事
ご訪問ありがとう(H23.11.28-)
**オンラインカウンター**
現在の閲覧者数:
コメントありがとうございます
お礼SSや「他己紹介」があります。
web拍手 by FC2
** あれこれ投票所 **
お好きなジャンルをお選びください。 投票は何度でも可能です。
*** あれこれ投票所2 ***
メールフォーム(ご用の方はこちらから)

名前:
メール:
件名:
本文:

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
月別アーカイブ