***新婚編***第二十八話 再会の刻 ***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*新婚編』





このお話には「吉野君」が出てきます。
原作とは違う形で登場しますので、原作のイメージを壊したくない方はお読みになるのをお控え下さい。





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***新婚編***第二十八話 再会の刻 ***








ゆらゆらと揺れる牛車の中、あたしはぼんやりと座り込んでいた。

普段だったら小窓を開けて、滅多には見られない都大路の様子をたっぷりと見学するんだけど、さすがにそんな気分にはなれない。

今宵───。

こう書かれた料紙は、手の中にある。

今宵、何だと言うの?

会いに───来る?あたしを訪ねてくると言うの・・?

渡殿ですれ違った公達は、吉野君に違いなかった。

左大弁はやっぱり吉野君だった・・・。

それを確かめたくて後宮まで出向いたはずなのに、でも、それが判った今、あたしは一体何がしたいと言うのかしら?

大きなため息がついて出た。



*******



三条邸に付き車を降りると、よっぽどあたしのことが心配だったのか、人待ち顔で小萩が立っていた。

「姫さま、お帰りなさいまし。姫さまのお顔を見るまではもう気が気じゃなくて・・・」

「後宮で高彬に会っちゃった」

渡殿を歩きながら話し掛けてくる小萩の言葉を遮り言うと、小萩は

「ひぃっ」

と変な声を出し、それきり立ち尽くしてしまったみたいで、後ろの方から

「あぁ、せっかくいただいていた少将さまからの信任が・・・」

嘆く声が聞こえてきた。

「大丈夫よ、向こうでたっぷりお説教されてきたから小萩にとばっちりが行くことはないはずよ」

振り返って言うと、パタパタと小萩は近づいてきて、それでも「はぁ」と浮かない顔をしては

「あぁ、やっぱりお止めしておけば・・」

なんてぶつぶつと呟いている。

部屋に入り黙って腰を下ろすと

「姫さま、少しお顔の色が良くないように見えますけど・・・どこかお加減でも?」

小萩があたしの顔を覗き込んできた。

「せんだってもお顔の色がすぐれないこともありましたし・・・」

探るような小萩の視線を避けるように扇を開くと

「少し疲れただけよ」

用心深く答えた。

「何かお薬湯でもお持ちしますか?」

「大丈夫よ。それより、今日は早めに休むから、もうおまえも下がっていいわよ」

「では早めに夕餉のご準備を・・・」

「今日はいらないわ」

「・・・・」

「後宮でご馳走をたくさんいただいてきたのよ。だからお腹一杯なの」

「はぁ・・・」

まだ何か言いたげな小萩を何とか下がらせると、あたしは立ち上がって庭の向こうに広がる景色を眺めた。

まだ夕刻と呼ぶには早い山際には、切れ切れに雲がたなびいている。

幼い頃、あたしは吉野の地で、毎日、山や雲を見て育った。

隣にはいつも男の子がいて、あたしはその男の子が好きだった。

だって、好きの反対は嫌いしかなかったんだもの。

だから、山も雲も、鳥の囀りも野に咲く花も、その男の子のことも、全部まとまてあたしは好きだった。

その気持ちのまま、その男の子は死んでしまったから、あたしは今でもその子が好きで・・・

「──失礼いたします」

気が付くと女房が廂に手を付いていた。

「右近少将さまからのご伝言で、本日は宿直により、こちらには来られないとの由でございます」

するすると下がる女房の衣擦れを聞きながら、あたしは長く細い息を吐き出した。

高彬は今夜は来ない。

──どうして来ないのよ、こんな夜に。

──高彬が今夜、宿直で良かった・・・

相反するふたつの思いが沸き上がり、あたしはイライラと唇を噛んだ。

もしも、吉野君がやってきたら、こう言えばいいだけのことじゃない。

『亡くなったって聞いてたからびっくりしたわ。元気そうで良かったわ』

『あたしの夫は右近少将なの。吉野君も会ってるはずよね』

それ以上の、一体、何を話すことがあると言うの・・・

山際に夕闇が迫り、やがて辺りが暮色に包まれ始めた。

星が瞬き始めた夜空に月が昇り、山際と闇の境が判らなくなっても、誰も訪れる気配はなく、あたしは小さくため息をついた。

安堵なのか失望なのか、自分でも良く判らないため息だった。

中天に差し掛かった月が、やがて軒からその姿を消した頃───

密かな足音が聞こえ、気が付いたら公達が一人、庭に立っていた。






<第二十九話に続く>


毎日の更新で、読むのが大変なんじゃないかと心配しております。
皆さん、大丈夫でしょうか。
出来れば年内に新婚編の決着を付けたいと思い、せっせと書き進めています。
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Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

> ドキドキハラハラがもっと強くなりましたよ!吉野の君、いよいよ登場ですね!

はい、いよいよ瑠璃との対面です!

> 毎日更新ご苦労様です。でも、とても、本当に楽しませて頂いております!

毎日、お付き合いいただきありがとうございます(#^^#)
ほんと、皆さんのおかげで書き進められているんですよ。

> 幼い頃の初恋は永遠ですよねえ ちょっと乙女心思い出しました。涙

私はもう初恋は、遥か彼方過ぎて・・(笑)

ありちゃんさま

ありちゃんさん、こんにちは。

> 毎日 読むのが大変?
> そんなことはないですよ!
> 毎日、嬉しいです!

ありがとうございます(#^.^#)
皆さん、年末でお忙しい時期だし、読むのもたまってくると大変なんじゃないかなぁ・・と思ったんです。
でも、嬉しいと言っていただけたのなら、安心して更新が出来ます!

> いやぁ、どうなっちゃうんでしょう。
> ハラハラ、ドキドキ、です。

このままラストまで突っ走るつもりでいますので、ぜひぜひお付き合いくださいませ!

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

はい、何とか年内には・・と思っています。

>楽しみなような、もっと続いて欲しいような……。
>複雑な気持ちなんです。

うぅぅ、Mさん、嬉しいお言葉をありがとうございます。
ただ、新婚編はもうずっと放置していて、楽しみにしてくださっていた方には申し訳なく思っていたので、やっぱりいったんは決着をつけたいと思っています。
そして、そのあとには「<続>新婚編」を・・・・、って、いえいえ、思い付きで口が滑ってしまいました(^-^;
何の構想も考えてはおりませんよ。
こちらはカラカラに乾いた寒さです。
よく冬が来たことを「冬将軍到来」とか言いますけど、同じには「右近少将到来」がいいですよね!

み、瑞月さん
ドキドキハラハラがもっと強くなりましたよ!吉野の君、いよいよ登場ですね!
相反する二つの思いがある気持ち、わかります!瑠璃、どうすんだろう〜!
私も会って欲しい様な、会って欲しくない様な!きゃー。
毎日更新ご苦労様です。でも、とても、本当に楽しませて頂いております!
幼い頃の初恋は永遠ですよねえ ちょっと乙女心思い出しました。涙

滅相もございません!

瑞月さん こんばんは。

毎日 読むのが大変?
そんなことはないですよ!
毎日、嬉しいです!
むしろ、毎日 書く方が大変なのでは?(笑)
(ノってる時は、書くことが大変どころか楽しいってこともよく分かっています。笑)

いやぁ、どうなっちゃうんでしょう。
ハラハラ、ドキドキ、です。
吉野君に限って無体なことはしないでしょうが、高彬に居て欲しいような、居ない方が穏やかにまとまるのかなと思ったり…
吉野君も幸せであって欲しいわけで…
いや、彼が幸せであってくれないと困ると言うか…

楽しみに待ってます。(^-^)

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