社会人・恋人編<5>

「瑠璃さん・・」

後ろから抱きすくめられた瞬間、石鹸の匂いが鼻先をくすぐった。

高彬はあたしを前に向かせると、両手で頬を挟みキスをしてくる。

それはソファでしてたのより、強めのキスで───






─Up to you !Ⅱ─side R <第5話>






そのままの流れでベッドに連れて行かれそうになった時、あたしはどうしてだか

「ベッド!」

と叫んでいた。

「ベッド?」

高彬は驚いたようにように動きを止めたけど、でも、びっくりしたのは突然に叫んだあたしの方だった。

あー、あたしってほんとバカ。

聞きだす作戦とか手順とか、何にも考えていないのに。

もっと搦め手でいくとか、上手く話を持っていくとかすればいいものを、いきなり「ベッド!」なんて叫んじゃうなんて、核心を突くにも程がある。

自分で言うのもなんだけど、突き過ぎだわよ。

「ベッドがどうしたの?瑠璃さん」

案の定、核心過ぎて、逆にまったく何も伝わらなかったみたいで、怪訝そうに顔を覗き込まれてしまった。

「えーと、その・・」

あたしは話しをどう持って行くか頭をフル回転させた。

「随分と・・・大きいなぁ、なんて思ってさ・・」

「あぁ。ダブルサイズだから大きいよね」

高彬はあっさりと言い

「そ、そうよね」

あたしはコクコクと頷いた。

バカ。

誰もサイズなんか聞いちゃいないわよ。

八つ当たりもいいとこだけど、心の中で高彬に文句を言っていると、もうその話しは済んだとばかりにベッドに連れて行かれてしまった。

ベッドの縁に腰掛けると、高彬はあたしのブラウスのボタンを外し始め、そうして

「瑠璃さんはぼくのを外して」

あたしの手をワイシャツのボタンにあてがった。

人のボタンを外すと言うのは案外と難しくて、2個目の辺りで手間取っている頃には、高彬はすっかりあたしのボタンを外し終えていて、そのままゆっくりと横たえられてしまう。

間接照明だけの部屋は仄暗く、そう言えば、この照明器具はいつだったか「明るすぎる」「暗すぎる」と二人で言い合った後、高彬が買ってきたものだった。

普段から優しいけれど、でも、こういう時、高彬はもっと優しくなる。

「痛くない?」とか「重くない?」とか、いつもあたしの様子を気遣ってくれる。

たっぷりと優しくされながら、だけど、心のどこかがチクチクしてくる。

あたしじゃない、他の誰かにもこんなに優しくしてたのかな、って。

少し掠れた高彬の声や、何かを耐えているようなせつなげな顔・・・

他の誰かも見たのかしら・・・



******



翌朝、いつものカフェは一面の窓ガラスから入り込む朝の光で眩しいほどだった。

高彬とふたつ離れた席でカフェラテを飲みながら、あたしは小さくあくびをした。

昨夜、高彬に送り届けてもらって自宅に着いたのは12時を回っていて、その後、シャワーを浴びたり何だかんだで、ベッドに入ったのは2時近かったから眠くて仕方がない。

カップを両手で持ちながらチラリと高彬を見ると、高彬だって寝不足のはずなのにいつもと変わらないようなすっきり爽やかな顔でコーヒーを飲んでいる。

いつなんどきでも爽やかそうに見える人っているのねぇ・・・、この分だと、案外、三日くらいお風呂に入らなくても、高彬って爽やかに見えるんじゃないかしら。

そんなことを考えながらカフェラテを飲んでいたら、高彬が席を立った。

ちらっとあたしを見て、「先に行くよ」とばかりに小さく頷く。

視線だけで返事をして、さりげなく高彬の後姿を見送り、さてそろそろあたしも行こうかな、と立ち上がろうとしたところで、目の前にぬっと人影が現れた。

見上げると、どこか見覚えのある男で───

「失礼。ちょっと宜しいですか。藤原瑠璃さま」

言葉の丁寧さとは裏腹に口調は押しつけがましく、あたしの断りもなしに前に腰掛けた。

「・・・・・」

京都のホテルでもあたしの前にぬっと現れ、自らを高彬の教育係りと名乗ったこの男。

───家司守弥だった。





…To be continued…




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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

いきなり「ベッド!」じゃ、高彬じゃなくたって判りませんよね。
少し掠れた声、何かを耐えているようなせつなげな顔。
大興奮していただいてありがとうございます(笑)

もちろん「瑠璃>守弥」ですよ!
何なら「瑠璃>>犬>>>>>>>>>>守弥」くらいですのご安心下さい<m(__)m>

ベリーさま

ベリーさん、こんにちは。

はい、私も原作の挿絵が大好きです。
いい味、出てますよねぇ(*^-^*)

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この原作の守弥の絵、久しぶりに見ました。
懐かしいですね、この難しそうな顔。笑っちゃいます
やっぱり原作の挿絵が一番好きですねえ
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