***短編***  ~Official<6> ~ ***

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』






注)ミニ連載中のお話です。お仕事モードの高彬。今回で完結です。
               
        






***短編*** ~ Official<6> ~ ***







「気に食わんな」

「あぁ」

取りあえず忠行を帰らせた後、夜更けの左近衛府の一室、ぼくは重行と密談を重ねていた。

「手柄を我が物にしようとした将曹も将曹だが、人の心の隙に付け入るように話を持ちかけた右大将は更に気に食わん」

「うむ」

「忠行とか言う将監が、右大将に仇を打ちたいって気持ちも判るよな。・・・で、どうするんだ、高彬。おまえのことだ、何か考えているんだろう」

重行は脚を崩すと、身を乗り出してきた。

「どうしてそう思う」

「忠行が馬を連れてくると言うのを、断っていたからさ」

「・・・・」

そう。今上の愛馬は、忠行がちゃんと保有していた。

さすがに野に放つ勇気はなかったのだろう。

「馬寮から馬が一頭、しかも今上の愛馬がいなくなったんだ。隠しておくには限界がある」

「隠したりはしないさ。むしろ、明日には大々的に知れ渡らせる」

「太政官たちが大騒ぎするぞ」

「そうだ。いずれ帝の耳にも入るだろう」

「大事件だな。右近衛府が矢面に立たされるぞ」

「だろうな」

「だろうなって、おまえ・・・・・・」

「右近衛府の最高責任者は右大将どのだ。馬寮の馬失踪は、右大将どのの失態としていただく」

「・・・・」

「右大将どのは血眼になって今上の愛馬を探すだろう。何しろ、自分の経歴に傷が付くからな。近衛府、衛門府、兵衛府、総出で捜索を行なっても、なかなか馬は出てこないんだ。だけど、ある一人の将監が見つけ出す」

「・・それが忠行か」

「忠行のお蔭で右大将は面目が保たれ、賞罰を間逃れるんだ。礼の言葉くらいは言わせて見せるさ。忠行も、少しは仇打ちになるだろう」

「だけどなぁ、あの右大将のことだ。実質的な現場責任者は右近少将だ、などと言いだすに決まってるぞ。下手したらおまえの責任問題になって、おまえが詮議に掛けられるぞ」

「そんなヘマするかよ」

不敵に笑ってみせると、重行は目を見開いたあと

「だから、俺はおまえが好きなんだ」

ニヤリと笑った。



*******



馬寮からの馬失踪は翌日には瞬く間に内裏中に知れ渡ることとなった。

重行が睨んだ通り、太政官たちは騒ぎだし、その噂はすぐに帝の耳にも入り、これまた狙い通りに御前会議で右大将が詮議に掛けられた。

上は参議から下は衛士まで、文武百官総出で捜索が繰り広げられたが、今上の愛馬は見つからず、これは沢にでも落ちて命を落としたか、右大将の処分は間逃れない・・・と、皆が思い始めた頃、一人の将監が右京の外れ、桂川のほとりで馬を発見した。

将監には今上からの褒美の録が贈られ、処分を間逃れた右大将は、部下である将監に丁重に礼を述べ───

「右近少将どの」

帰り支度をして右近衛府を出たところで、後ろから声を掛けられ、振り返ると忠行が立っていた。

「この度のことは、本当に何とお礼を申し上げていいやら・・・」

そう言ったきり、目を赤くしている。

「おまえが今上の愛馬を探し出した。それだけのことだ。礼を言われる覚えはないぞ」

「少将どの・・」

「兄上のことは本当に気の毒に思う。何もしてやれないが・・」

「いえ。少将どのは十分過ぎることをして下さいました」

深々と頭を下げる忠行に軽く手を上げ、歩き出そうとしたところで、ふと思い付いて声を掛ける。

「今回のことは他言無用だぞ。左近少将は知っているが、あいつはああ見えて口が堅い」

「・・・ああ見えて、は余計だ」

いつからいたのか重行が後ろに立っていて、背中を小突かれてしまった。

「ありがとうございます。両少将どの」

忠行の声を後ろに聞きながら、ぼくは重行と連れ立って殷富門へと向かったのだった。





~Official<完>~




おまけの話。~そして、Private.



「遅い!」

部屋に入るなり、瑠璃さんの声が飛んできた。

「もうっ。何日も連絡を寄越さないかと思えば、やっと来たと思ったらこんな時刻で」

「ごめんよ、瑠璃さん。宿直が続いたり、仕事が立て込んでたりで、連絡が出来なかったんだ」

瑠璃さんの前に座り謝ると、瑠璃さんはわざとらしく眉間に皴を寄せて見せた。

「朝、出掛けるときはちゃんと起こしてよって言っといたのに、そのまま行っちゃうし」

「本当にごめん」

あんまり瑠璃さんが気持ちよさそうに寝てたから起こすのが忍びなかったんだけど、でも、起こしてと言われていたのは本当だったので、またしても謝ると

「あのねぇ、高彬」

瑠璃さんは肩をそびやかした。

「ごめん、で済んだら検非違使いらないの。判る?」

「・・・・・」

「まぁ、あたしは心が広いから許してあげるけど。でも、今度からはちゃんと起こしてよね」

「うん」

瑠璃さんの機嫌も直ったところで、ここ数日の瑠璃さんの様子などを聞こうと思い

「そう言えばさ、瑠璃さん。筝の琴を練習しておくって言ってたよね。少しは上達したの?」

そう切り出してみると

「え。えぇーとね・・」

にわかに歯切れが悪くなったかと思うと、身体を揺らして座り直したりして、そうして観念したのか

「えへへ。実は全然やってないの」

気まずそうに舌を出した。

「練習しておくって言ってたじゃないか。瑠璃さんの琴、楽しみにしてたのに」

「う、うん・・・。えーと、・・その・・、ごめんね」

ぺこんと頭を下げる。

「ごめんで済んだら検非違使いらないって言ったの、瑠璃さんだよね」

顔を覗き込んでやると、瑠璃さんはぷぅと頬を膨らませた。

指先でちょんちょんと突いていると、我慢出来なくなったのか瑠璃さんは吹き出し、そうしてぼくたちは声を上げて笑ったのだった。




<終わり>


「~Official ~」完結です。お付き合いいただきありがとうございました。


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Secre

ベリーさま

ベリーさん、こんばんは。

お仕事モードの高彬、お楽しみいただけたようで嬉しいです(*^-^*)

> ありちゃんさんが言ってらっしゃるように、瑠璃の前でとのギャップがいい!

瑠璃の前だと、惚れた弱みなのか昔からの力関係なのか、年下夫の一面が出て、そこがいいんですよね。
この二人にはいつまでも、この関係でいてもらいたいです。

> 守りたい世界なんですねえ、瑠璃さんとの世界は。ふふふ

そうですよねぇ。
家に仕事は持ち込みたくないみたいなことも言ってましたしね。これぞ、出来る男!

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは。

有能な高彬に解決出来ない事件はありません!
高彬って男同士だと案外、言葉遣いもそれなりに悪いんじゃないかと思うんです。
(そういうところも好きなんですけど)
私も指で突つかれたいです!(*^-^*)

ありちゃんさま

ありちゃんさん、こんばんは。

お仕事モードの高彬、楽しんでいただけたようで嬉しいです!
(私も書いてて楽しかったです^^)
仕事ではヘマなんてしないかっこ良さ、そして瑠璃の前では可愛い高彬。
最高ですよね~(*^-^*)

お仕事モードの高彬、いいですねえ!
こんな風に飄々と、しかしきちんと片をつける風で仕事をやってのけるあたり、さすが有能少将ですね。
ありちゃんさんが言ってらっしゃるように、瑠璃の前でとのギャップがいい!
こんな事件を片付けておいて、家に帰ったら瑠璃がお忍びしてたらそら怒りますわ(苦笑)
守りたい世界なんですねえ、瑠璃さんとの世界は。ふふふ

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いやぁ、いい!いい!

瑞月さん こんにちは〜。

高彬 最高です!
「そんなヘマするかよ。」
このセリフにノックアウトです。
そして、おまけの、瑠璃の前での様子…
このギャップにやられまくりです!
右近少将高彬と、瑠璃の夫の高彬、なんとカッコよく、可愛いことか!

素敵な高彬をありがとうございました。m(_ _)m
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瑞月(みずき)です。

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