社会人・恋人編<3>

「お先に」

「お疲れ~」

回りに声を掛けながら席を立ち、瑠璃さんと連れ立ってエレベーターに乗り込む。

付き合ってることを内緒にしているとはいえ、ぼくたちは仕事のパートナーだから行動を共にすることも多いし、だからこうやって一緒に退社しても疑われたり目だったりすることがないのだ。

途中の階から乗り込んできた他の会社のオトコがチラチラと瑠璃さんを見ている。

顔を見て、視線がどんどん下がって行き、また顔に戻ってくるところも面白くない。

───勝手に見るなよ。

心で悪態をついて、さりげなく動いて瑠璃さんを隠す。

エレベーターが1階に着き、セキュリティゲートを通ろうとした瞬間

「瑠璃ちゃん」

後ろから声がした。






─Up to you !Ⅱ─<第3話>






「・・・・」

振り返らなくたって判る。この声は・・・

「今日はもう帰るのか?」

足を止め振り向くと、案の定、鷹男チーフが立っていた。

「はい」

隣で瑠璃さんが短く答えると

「藤原とか」

と、どこか可笑しそうに言う。

言わずもがな、だ。この状況を見れば、わざわざ聞くまでもないことだろう。

「瑠璃ちゃん、俺とデートする約束、忘れたとは言わせないよ」

「忘れたわけじゃないですけど。今上先輩も色々お忙しいじゃないかと思って」

瑠璃さんの言葉に、鷹男チーフは指を立てると

「敬語はナシって約束だろう。それと、俺のことは『鷹男』と呼んでくれ」

にっこりと言い、そうしてふいに表情を改めてぼくのことを見ると

「ただし、おまえは呼ぶなよ」

ピタリと鼻先に指を突きつけてきた。

「呼びませんよ」

すかさず言い返す。

何が嬉しくて、自分の恋人にちょっかい出してくる奴を「鷹男」なんて親しげに呼ばなくちゃいけないんだ。

頼まれたって呼ぶものか。

ちらりと瑠璃さんの視線が動いた気がしたけど

「瑠璃さん、行こう」

構わず歩き出すと、瑠璃さんも付いてきた。

「また連絡する!」

後ろから呼びかける鷹男チーフの声に、ゲートを通り過ぎた瑠璃さんがため息をついた。

ビルを出てしばらく黙って歩いていた瑠璃さんは、一つ目の角を曲がったところで

「話したいことって、実は今上先輩のことだったのよ」

口を開いた。

「え。・・・何かあった?」

「何かあったってほどじゃないんだけど、昨日、高彬と電話で話した後にね、電話が掛かってきたのよ」

「今上先輩から?」

「うん」

「なんて」

「特に用事はなかったみたい。声が聞きたくなったって」

「・・・・」

「それで、適当に切ったんだけど、朝になったらメールが入ってたの」

「なんて」

「おはようって」

「・・・・」

何なんだよ、それ。

まるで恋人相手にするようなことじゃないか。

いや、待てよ。

「どうして今上先輩が瑠璃さんのメールや電話番号を知ってるんだ。・・・・まさか瑠璃さんが・・・」

ふと疑念を抱き、瑠璃さんを見ると

「教えてない、教えてない」

首と手を同時に振り、そうして

「それがねぇ、どうやら藤宮先輩が教えちゃったみたいなの。ほら、あの二人、遠縁らしいから」

「・・・・」

ぼくは内心、舌打ちをした。

まったく、藤宮先輩も余計なことを・・・・。

遠縁だと、個人情報って教えていいものなのか?!

そんなこと言ったら、日本中、全員が遠縁じゃないか。

「瑠璃さん。今上先輩にはぼくたちのことは・・・」

「言ったわよ。そこはもうはっきりと。高彬と付き合ってるって」

それを言われた上で尚、さっきの振る舞いなのか・・・

そう言えば前に「そういう方が燃える」とか何とか言ってたものな。

いやはや、恋愛観の違いと言われればそれまでだけど、人の恋人にわざわざ手を出すなんて、まったくもってぼくの理解を超えると言うものだ。

理解を超えると言えば、人の動画をアップすると言うのもそうなんだけど・・・

「そう言えばさ、瑠璃さんってネットの動画って観る?」

ふと思い出して聞いてみると

「動画?ううん、滅多に・・と言うか全然見ないかな」

「うん・・」

取りあえず、瑠璃さんにはあの動画のことは言わないで置こう。

誰が何の目的でしたことなのかも判らないし、水無瀬が言っていたみたいに、瑠璃さん自身に何か<マズイこと>が起きてるわけでもなさそうだし・・・

「話そうと思ってたこと話しちゃったし、・・・どうしようかな」

駅の改札の前で瑠璃さんは小首を傾げた。

ぼくの家に寄るか、このまま帰るか、迷ってるようだった。

家に寄れば、どういう流れになるかは、それこそ「言わずもがな」なわけで───

「おいでよ」

改札を入ると、少しの逡巡の後、瑠璃さんは付いてきた。






…To be continued…


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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

鷹男、どうせ瑠璃に振られちゃうのに!(←と言うか、そもそも瑠璃の眼中にないのに。)
次回「どういう流れになるか」・・・、そりゃあ、ねぇ・・(笑)

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