***新婚編***第二十六話 後宮の夜<Part3>***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*新婚編』





このお話には「吉野君」が出てきます。
原作とは違う形で登場しますので、原作のイメージを壊したくない方はお読みになるのをお控え下さい。





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***新婚編***第二十六話 後宮の夜<Part3> ***








「とにかく、ここに座って」

怖い顔の高彬に促され、あたしは言われた通りにその場に座り込んだ。

「改めて聞くけどさ、どうして瑠璃さんがここにいるの」

「・・・・」

あたしは密かに息をついた。

さっき帥の宮に向かって

『女御さまが会いたがったから、私が呼んだんですよ』

なんて言ってくれてたから、てっきりそういう事で丸く収まってくれるかと思ったんだけど、やっぱりそうは行かないのね・・・

扇の忘れ物うんぬんの話も、何だかこういう状況になると、いかにも取って付けた理由みたいだしね。

「女御さまがお文を下さって、それであたしもお会いしたくなったから来ちゃったのよ」

そうはっきり言うと、しばらくあたしの顔を見ていた高彬は

「本当にそれだけ?」

やけに真面目な顔で聞いてきた。

「・・・・」

左大弁のこと、探ろうとしてたことを見透かされたみたいでドキっとしてしまう。

だけど今ここで、そのことを言うわけには行かないから

「そうよ」

頷くと、少しの間の後に

「そうか」

高彬は短く呟いた。

しばらく灯台の火を見ながら何事かを考え込んでいた高彬は、やがて改まった声であたしに向き直った。

「あのさ、瑠璃さん。瑠璃さんはいま、ものすごく危険な目に合っていたんだよ。判る?」

「それは、まぁ」

男に部屋に押し入られそうになっていたわけだし。

「いくら後宮が安全な場所だとは言え、それは外敵に対してだけで、内側は信じられないくらいに脆弱なんだ。殿上人はほぼ自由に出入りが出来る。現にぼくだってこうして部屋に入ってきてるわけだからね」

「・・・うん」

「しかも、ここ後宮で守られるべき人は、今上の妃である皇后、女御、更衣のみだ。いずれは国母となられる可能性のあるお方だからね。こう言っては何だけど女房などものの数には入らないんだ。例え悲鳴を上げたって見過ごされることだって、ままある」

「・・・うん」

「後宮は遊びに来るところじゃないって言うのはそういうことなんだ」

「・・・・・」

「瑠璃さんが後宮に来てることを、ぼくが知っているのといないとじゃ雲泥の差があるんだよ。知っていればさりげなく警護の目を増やせる。だからぼくに黙って来るなんてことは絶対にやめて欲しい」

「・・・・」

あたしは言葉もなく俯いた。

頭ごなしではなく、こうして理路整然と説明されると、いかにあたしが危ないことをしていたかが判るわ・・・

「ごめんね、高彬」

素直に謝ると、ふいに頭に高彬の手が置かれ、ハッと顔を上げると

「・・何もなくて良かったよ。間に合って良かった」

普段と変わらない高彬の顔があった。

「高彬・・・」

「さ、もう瑠璃さんは横になりなさい。この時刻じゃ三条邸に送り届けるのも却って危険だからね。明日、ぼくが送って行ってあげるから」

「高彬は?高彬はどうするの?」

「宿直しててあげるよ。あっちでね」

立ち上がると、さっと衝立の向こうに回り込み、無駄のない所作で座り込んだ。

「一緒には・・・寝ないの?」

おずおずと聞いてみると、一瞬、眉を上げ、そうして

「仕事中だから」

メっと怖い顔を作ってみせた。

「うん・・」

一人、夜具の上に横になり、しばらく目を瞑っていたあたしは、パッと目を開けた。

やっぱり、言おう。高彬に。

あのお文のこと。

吉野君からのものかも知れないこと。

そして吉野君は左大弁かも知れないこと。

いくら高彬を心配させないためとは言え、隠しごとは良くないわ。心がチクチクする。

起き上がったのと、引き戸の向こうからきびきびとした声が聞こえたのが同時だった。

「右近少将どのはこちらですか」

「どうした」

「こちらへ」

戸を引く音と、ぼそぼそとした話し声の後、高彬が部屋に戻ってきた。

「瑠璃さん、ごめん。ちょっと急ぎの仕事が入って行かなくちゃいけなくなった」

「うん、判ったわ」

「ぼくがいない間、腕が立ち信用置ける代わりの護衛を頼んだから」

「大丈夫よ、あたしは。いざとなったら・・・」

「いや、もう呼んだからじきに来るよ」

そうこうしてる間に足音が近づいてきて、高彬はあたしに衝立の後ろに行くように指示した。

言われた通りに回り込むと、ほどなくして誰かが部屋に入ってくる気配があった。

「瑠璃さん。左近少将源重行だ。少々、口は悪いが信用してもらっていい。・・・・じゃあ、頼んだぞ。重行。なるべくすぐに戻る」

「おう、任せてくれ。貸し、いちだな」

衝立の向こうで軽口を叩き合う声が聞こえ、やがて戸の引く音がしたと思ったら、一気に部屋は静まり返った。

「えぇ・・と」

何か言った方がいいかと思うんだけど、すぐには言葉が浮かんで来ない。

『いつも夫がお世話になっております』

じゃあまりに所帯じみてる気がするし、かと言って

『よろしくね』

じゃ軽すぎる。

えぇと、名前は何て言ったかしら。

確か、源・・重行とか何とか・・・

え?源?

そう言えば前に高彬、左大弁の名は源公成とか言ってなかったかしら・・。

「・・・・」

もしかしたら、この人なら何か知ってるかも知れない。

あたしはじり、と衝立ににじり寄った。





<第二十七話に続く>


拍手コメントを下さった皆さん、ありがとうございました(*^-^*)


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