***新婚編***第二十三話 後宮にて ***

『なんて素敵にジャパネスク~二次小説*新婚編』





このお話には「吉野君」が出てきます。
原作とは違う形で登場しますので、原作のイメージを壊したくない方はお読みになるのをお控え下さい。





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***新婚編***第二十三話 後宮にて ***








「瑠璃姫の方から、左大弁のお名が聞けるとは思っても見ませんでしたわ」

女御さまは驚かれたように呟かれ、あたしもまた、女御さまのその言い方に驚いてしまった。

「あたしの方から・・と言うことは、あのぅ、ひょっとしたら女御さまも何かございましたの?左大弁のことで」

気持ち、身体を乗り出すと、女御さまはフフ、と小さく笑い

「ご明察ね。さすがは瑠璃姫ですわ」

あたしにもっとそばに来るように扇を振って見せた。

じりっと膝を動かして近づくと、女御さまは扇で口元を隠しながら

「実はね、その話をしたくて、瑠璃姫に来ていただいたのですわ」

「・・・・・」

「あまり大っぴらに話せることではありませんのよ、瑠璃姫。心してお聞きなさいね。誰にも言ってはなりませんよ。もちろん、高彬にも」

「・・・・は、はい」

にわかに緊張感が高まって、ごくりと唾を飲み込んでしまう。

高彬にも言っちゃいけないことなんて、な、何かしら・・・

女御さまは一旦すっと背筋を伸ばした後、あたしに顔を近づけると

「はっきりお聞きしますわ、瑠璃姫。最近、どなたかからお文などを送られたことがございまして?」

「え?!」

思わず頓狂な声が出てしまい、あたしは慌てて口を押えた。

お文って・・・

「実はね、瑠璃姫。妙なことを耳にしたのです」

「妙なこと・・」

少し躊躇したものの、女御さまはまっすぐな目であたしの顔を見た。

その目元がどことなく高彬に似ていて、姉弟だから当然のこととは言え、何だかドキマギしてしまう。

「名のある公達たちが、瑠璃姫に懸想していると」

声を潜め、一息に言う。

「懸想?!」

懸想って、あの懸想よね・・?

「えぇ」

お文と言ったら、例の謎の文しか浮かばないし、それの送り主が左大弁かどうか探りを入れようかと思っていたところだったんだけど・・・

逆に女御さまから聞かれるなんて思ってもみなかったわ。

───と、そこまで考えたあたしは、ふと引っ掛かりを覚えた。

「女御さま。今、公達たち、っておっしゃいましたよね?と言う事は、そのぅ・・・、あたしに懸想していると言うのは一人ではなく他にも・・・?」

随分と自惚れた聞き方で、女御さまに笑われるかと思ったけど、でも、そういうことよね。たち、って言ったら。

だけど女御さまは笑いもせずに頷くと

「わたくしの知る限りでは、左大弁と、もう御一方は宮さまなのですわ」

「宮さま・・・」

「えぇ。帥の宮とおっしゃる方です。瑠璃姫はご存知ないと思いますけど、主上の叔父君にあたられる方なのですわ」

「・・・・・」

女御さまに気付かれないようにあたしは息を吐き出した。

帥の宮と言ったら───

直接<ご存知>じゃないけど、懐妊しないことで妻ひとりを悩ませている甲斐性なしの男じゃないのさ。

確か、お相手の姫さまは絢姫さまとおっしゃるのではなかったかしら?

その男が、あたしに懸想してるってどういうことよ。

そういえば、帥の宮の名前を出した時の高彬の反応もおかしかったっけ・・・

「・・・女御さま。その話って・・・、つまりは左大弁と帥の宮があたしに懸想してるって話は、どこからお聞きになりましたの?」

ズバリ聞くと、女御さまはほんの少し顔を赤らめられ

「実は・・・主上なのですわ。内々にお聞きした話なので、本来なら決して口外してはいけないことなのですが、瑠璃姫に懸想してるだなんて聞いたら、やはり気になってしまって。他でもない、高彬の北の方なのですもの」

「えぇ」

頷き返しながら、あたしもまた顔が赤らむ思いだった。

内々にお聞きしたって言ったら、やっぱり、その・・・・<ご夫婦のお語らい>の時ってやつよね。

「・・で、帝は他になんて?」

「左大弁と帥の宮が、どうやら内大臣家の瑠璃姫を巡って恋のさや当てを始めているらしい。これは面白い、などとおっしゃられて・・・」

「・・・・」

「ですので、わたくし、まさかと思いますけど、瑠璃姫がどちらかに靡かれたりでもしたら・・・と心配になってしまって。高彬はあの通り、真面目で融通の利かない性格ですし、もしそんなことになったら・・・」

「・・・・」

「何しろ、左大弁も帥の宮も、それはそれは美々しい公達で、そうして少しばかり恋の噂の絶えない方で・・・」

なるほど。

女御さまにしてみたら、もしそんなことになったら可愛い弟があまりに可哀想で、それであたしに探りを入れてきたってわけね。

もちろん、あたしを恋多き公達たちから守ってあげたいって気持ちもあったとは思うけど。

「大丈夫ですわ、女御さま。あたしが誰かに靡くなんてことはありませんわ」

請け合うと、女御さまはホッとしたようにお笑いになった。



*******



結局、その夜、あたしは後宮に泊まっていくことになった。

女御さまに

「高彬は今夜は宿直だと聞いていますし、三条邸にはわたくしから連絡を入れておきますから、ぜひ」

と強く勧められ、それならと言う事で、お言葉に甘えてしまったのである。

小萩宛てに連絡を入れてもらったから、小萩、女御さまからお文が届いて、きっとびっくりしているに違いないわ。

遅くまで女御さまとお話して、一人、あてがわれたお部屋で横になったあたしは、灯台のチロチロとした明かりに照らされた天井をぼんやりと見上げた。

あの後、左大弁のことを女御さまに聞いてみたんだけど、結局、聞き出せた情報は高彬から聞いていたことと変わらなかった。

賜姓皇族で帝の異母弟だと言う事だけで、吉野の地と結びつくような話もなく、まぁ、新情報としたら、どうやらそれなりに恋の噂の多い人であるってことくらいかしら。

結局、あの文が左大弁からのものなのかも判らずじまいかぁ・・・

せっかくこうして後宮まで来たのに進展はなし。

これはもう一度、作戦を立て直さなくちゃいけないわね、とため息を付きながら寝返りを打った瞬間

──コン、コン

と、戸を叩く音がした。

「・・・・・」

気のせいかと身動きもせずに様子を窺っていると

──コン、コン、コン

またしても音がする。

「・・・・・」

誰かしら?

立ち上がり、そっと戸に近づくと、どうやら向こう側に人の気配がある。

女御さま付きの女官、かしら?

「・・・何」

小声で言うと、返事はなく、ただ

──コン、コン

と叩いてくる。

「・・・・・」

意を決して戸を引くと───

そこには、綺麗な顔をした、見目麗しい公達が立っていた。






<第二十四話に続く>



拍手からコメントを下さった皆さん、ありがとうございます(*^-^*)

また、並行連載やハイペースでの更新に、お気遣いのお言葉もありがとうございます。

書ける時にはどんどん書いて、どんどんアップして行きます。(ストックしておくことが出来ないのです。書きあがったらすぐにアップしたくなってしまうのです(^-^;)

あまりのハイペース更新に読みが追いつかない方もいらっしゃるかと思いますが、ずっとこのペースでは無理だと思いますので、どうぞごゆっくりとお読みいただければと思います。

次回は「~Official<4> ~」の更新を予定しています。

皆さんからの拍手やコメントで元気をいただいています。いつもありがとうございます。


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは~。

はてさて、美々しい公達とは一体誰なのでしょう・・?!
夜、一人のところに来るなんて、瑠璃姫、危うし!ですよねぇ。
Mさんの謎はおいおい判ってきますので、どうぞお付き合いくださいませ~~(^^)/


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