<原作オマージュ>10~原作一巻より 

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




注)このお話は原作のあるシーンを高彬目線で書いていますのでネタバレとなっています。
原作未読の方はご注意ください。
          
          




***<原作オマージュ>10~原作一巻より***








大納言さま、融と共に、瑠璃さんのいる東の対屋に向かったのは、もう戌の刻にもなろうかと言う時分だった───

・・・と、こんな風に書くと、まるでぼくが二人を引き連れて瑠璃さんの部屋に意気揚々と乗り込んだように聞こえるけど、実際のところは、どうやって瑠璃さんの部屋まで来たのかよく覚えていない。

『今夜、契るように』と大納言さまから言われ、その衝撃も冷めやらぬうちに、今度はその理由を説明され、気が付いたらここにいた、と言うのが正直なところなのだ。

瑠璃さんと結婚したいのならそれしか方法がないと言われれば、ぼくにそれを断る理由などあるわけもなく・・・

「・・・・このような日は、はかない我が身の行く末がつくづくと思いやられて・・・」

御簾の向こうから瑠璃さんのちょっと気取った声が聞こえ、ぼくはごくり、と唾を飲み込んだ。

こ、こういう時の瑠璃さんは要注意だ・・・

「姉さん、怒ってるよな・・・」

隣で融のバカがぼくの不安を煽るようなことを小声で言い、これから大納言さまが口にする言葉を考えると、嘘ではなく冷汗が流れてくる。

「突然だが、今夜、衛門佐どのと一夜を共にしていただきたい」

「・・・一夜を共にする・・・?」

瑠璃さんの呟くような声と、その後に続く沈黙はぼくを震え上がらせるのに十分すぎる間合いで、もういっそのこと「ごめんなさいっ」と謝って逃げ出したいくらいだった。

「父さま!つまり、初夜を迎えろってことなの?!」

御簾の向こうから、とてものこと、ついさっきまで、はかない我が身の行く末をつくづくと思いやっていた人のものとは思えないような威勢の良い声が聞こえてきた。

ハッと顔を上げると御簾越しに瑠璃さんと目が合い、ものすごい形相でぼくを睨み付けている。

目で人を殺すことが出来たなら、ぼくは今、確実に瑠璃さんに殺されていたことだろう・・・

「うわぁ・・・、こ、怖い・・」

またしても融のバカが効果音のようなことを呟きやがって、いや、実際、ぼくも怖かったのだけど、それでもここで目を逸らしたら瑠璃さんが更に怒り出しそうな気がしてぐっと踏みとどまった。

「あ、あんたは何てことを父さまに持ちかけたのよっ!」

い、いや、誤解なんだ。ぼくが持ちかけたわけじゃなく・・・何だか気が付いたらこういう流れになっていて・・・

───と思い掛けて、ぼくは小さく息を吐き出した。

どう言い繕ったところで、ぼくの不手際でこういうことになったことには違いないんだよな・・・

大納言さまが瑠璃さんを言いくるめる言葉を並べ立て、だけど、瑠璃さんも負けじと言い返している。

「・・・高彬がふたまたかけてたって言うのっ?!」

大納言さまが二の姫の名前を出すと、瑠璃さんはまたしても声を張り上げ、その声の大きさもさることながら、何よりも『ふたまた』と言う物騒な言葉に、ぎょっとしてぼくは身を乗り出した。

「とんでもないっ」

ぎろり、と、またしても殺されかかったけれど、ぼくはここにきてようやく腹を決めた。

ふたまたかけてたなんて誤解されちゃたまらない。

さっき大納言さまに話したこと、───お祖母さまの思惑、二の姫への文、母上の企みを、また一から話す出す。

「あんたってどこまで間抜けなの?!年のわりに大人びているかと思えば、妙なところでドンくさいのよ、あんたは!」

瑠璃さんの怒声が飛んできたけど、だけど、微妙にトーンダウンしてるのは明らかで、どうやらぼくの説明で、一応は事の次第を納得してくれたらしかった。

「ごめんなさい・・・」

間抜けだの、ドンくさいだの、言われ放題だけど、だけどここは黙って拝聴しているしかなく、ぼくは素直に頭を下げた。

「だけど、その話と、今夜の初・・・、いや、その夜を迎えるのと、どういう関係があるのよ」

コホンと咳払いをしながら瑠璃さんは言い、どうやら瑠璃さんの気持ちの変化に気が付いたのか、大納言さまが畳みかけるようにコトの緊急性───つまりは今夜、初夜を迎えなければならない理由を説明すると、瑠璃さんは(ふーむ)と言う感じで黙り込んでいる。

「高彬どのは、我が大納言家の婿君同様のお方であるのだ。それに異論はなかろう、瑠璃」

言外に『だから今夜、初夜を迎えねばならぬのだ』と匂わせながらの大納言さまの言葉に、御簾越しでも瑠璃さんの顔がパパパっと赤くなるのがわかった。

「異論て、そりゃあ、まぁ・・・」

ないけど・・・、と、赤い顔のまま瑠璃さんはボソボソと言い、そうして恥ずかしいのか扇を開いて顔を隠している。

「・・・よかったね、高彬。OK出たじゃん」

融がにじり寄りながら脇腹を小突いてきたけれど、とりあえず黙って押し返しておいた。

ここで余計なことや態度を取って、また瑠璃さんが怒りだしたら困る。

出来れば一か月、せめて一週間の猶予が欲しいと言う瑠璃さんに、大納言さまは

「そんな悠長なことを言ってる場合ではないのだ」

と重々しく切り返し、それでもごねる瑠璃さんに向かい

「こういうことは、先にやってしまった方が勝ちなのだ!」

と高らかに言い放った。

「・・・・・」

さすがの瑠璃さんも返す言葉がないのか、御簾の中は静まり返っている。

何と言うかぼくは、改めて大納言さまのすごさと言うのか、話術と言うのか、決断力と言うのか、とにもかくにも尊敬の念を抱いてしまった。

瑠璃さんを黙らせるなんて、やっぱりすごいや。

「さぁ瑠璃。今日、結婚して既成事実を作るか、それとも高彬どのが二の姫と結婚なさるのを黙って見ているのか、ふたつにひとつ、選びなさい」

大納言さまはぐいと身を乗り出され、御簾越しに瑠璃さんを凝視した。

「・・・・・・」

四者四様のそれぞれの思惑を秘めた長い沈黙が続き、やがて、御簾の中から息を吸い込む音が聞こえてきた。

「・・・・判ったわ・・・。色々と・・」

「よし、そうと決まれば即、行動開始だ!」

瑠璃さんの続く言葉などには耳を傾ける様子もなく、大納言さまは膝を打ちながらすぐさま立ち上がり、テキパキと指示を出しはじめた。

何と言うか、この瞬間、今夜の結婚が決定したわけで・・・・、そうか、ぼくはこの後、すぐに瑠璃さんと・・・・

いやはや、ほんと、瑠璃さんじゃないけど、少しは心の準備と言うか、いや、準備と言ったって何をするわけじゃないけど、それに、決してこれからのことがイヤなわけじゃないし、いや、むしろ嬉しいのだけど、でも・・・・

混乱するぼくをよそに大納言さまは声を響かせ、融はぼくに何事かを耳打ちし、女房たちは忙しく走り回り───

それらのことがまるで薄衣の向こうで起こっている出来事のようで、御簾の中の瑠璃さんとぼくだけは、何も言わずにただ座り込んでいたのだった・・・・。





<続>


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

ベリーさま

ベリーさん、おはようございます。

あの場に融がいるのって、考えてみたらちょっと不思議ですよね?!
何の役にも立ちそうにもないのに~(笑)

こんなこと、融はちょこちょこ高彬に囁いていたわけですね クフフ 👀にうかぶ
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