<原作オマージュ>9~原作一巻より 

『なんて素敵にジャパネスク〜二次小説』




注)このお話は原作のあるシーンを高彬目線で書いていますのでネタバレとなっています。
原作未読の方はご注意ください。
          
          




***<原作オマージュ>9~原作一巻より***








通された母屋で、大納言さまを待ちながら静かに息を整える。

隣では融がぼんやりと首筋なんか掻いている。

思えば三条邸の母屋に入るのは久しぶりだった。

礼儀も何もない童の頃は、融と母屋の中を走り回っていたものだけど、さすがに童殿上を始めた十を過ぎた辺りからそういうことはしなくなっていたし、元服を迎えた後は尚のことである。

「高彬、何だよ、父さまに相談って」

融にひそひそ声で聞かれたのと、足音が聞こえたのが同時だった。

どんどんと足音が大きくなったかと思ったら、大納言さまが勢いよく部屋に入ってきた。

「おぉ、高彬どの。雨の中、よく来てくれた。ささ、もそっと部屋の中に入られよ」

ぼくの手を取り、部屋の中央に座らせると、廂に控えている女房らに向かい

「おまえたちも気が利かない。高彬どのはわが大納言家の婿君同然のお方だ。そんなところでぼぅっと座っておらんで、一献かたむけるための準備をせんか」

「大納言さま」

ぼくは慌てて身体を乗り出した。

「今日は折り入ってお話と言いますか、その・・・ご相談があり、こうして恥を忍んでやって参りました」

「うむうむ。その言葉を待っておりましたぞ。もちろん、わしにも瑠璃にも異存などあろう筈もない」

ぼくの言葉をどう受け取ったものか、大納言さまはウンウンと頷き相好を崩されている。

「実は、あの・・・」

「早く佳き日を決めねばならぬのぅ」

「・・・・」

ここに来て、大納言さまは、ぼくが結婚の申し込みのためにやって来たのだと勘違いされている事に気が付いた。

どうしよう、言いだしづらい・・・

「父さま。まずは高彬の話を聞いてあげてよ。相談があるって言ってるじゃないか」

意外にも助け船を出してくれたのは融だった。

「何?相談とな」

大納言さまは驚かれたような顔でぼくを見た。

「はい」

小さくなって頷くと

「何なりと申されよ。何しろ高彬どのは、わしの息子同然なのだからな」

「良かったね、高彬。何でも言っちゃえよ」

融の後押しを受け、ぼくは順を追って説明を始めた。

お祖母さまの思惑、二の姫への文、母上の企み───

話すほどに大納言さまの眉間の皴は深くなり、最後まで聞き終えた時には苦悶とも呼べるような表情になっていた。

「うーむ」

目を閉じ腕を組み、考え込んでいる。

あまりに長い時間、目を瞑ったままなので、ひょっとしたら寝てしまったのではないだろうか・・・と思い始めた時

「高彬どの」

おもむろに大納言さまが目を開いた。

御前会議でも見ないほどの厳しい顔をされている。

「はい」

「率直に伺おう」

「はい」

「高彬どのは瑠璃と結婚したいのかね」

「も、もちろんです」

意気込んで言う。

「それは・・・・、例えば、実家と折り合いが悪くなっても、かね?」

探るように目で覗き込まれながら聞かれ、ぼくもまた大納言さまの目を見つめ返しながら、ゆっくりと大きく頷いた。

「はい」

「うむ」

大納言さまは大きく息を付きながら頷かれ、そうして、ふと思い出したように扇を鳴らし、人を呼んだ。

やがてやってきた女房に何事かを耳打ちすると、また目を瞑りじっと腕を組んでいる。

融もぼくも口を聞かない。

部屋には沈黙が流れ、屋根を打つ雨音だけが響いており、元々、薄暗かった部屋が更に暗くなった頃、慌ただしく先ほどの女房が部屋に入ってきた。

そっと大納言さまに耳打ちをし、そのまま部屋を下がって行く。

完全に女房の足音が聞こえなくなったところで、大納言さまがすぅーっと大きく息を吸い込んだ。

「高彬どの」

「は、はい」

突然に名前を呼ばれ、背を伸ばし慌てて返事をすると

「突然だが」

「はい」

「今宵、瑠璃と契っていただきたい」

「えぇ!」

「契るだって?!」

「これ、融。大声を出すでない。瑠璃の耳にでも入って、鴨川に飛び込む、尼になる、と騒がれたらどうする」

「ち、ち、契るって・・・、大納言さま・・・」

あまりのことに、何度も唾を飲み込みながら言うと

「突然のことで驚かれたと思うが、これしか道はない。先にやってしまった方が勝ちなのだ」

「で、でも・・・」

「勝手ながら、三条邸お抱えの占い師に、高彬どのの吉凶を占なわせていただいた。それによると、今日はおいてしばらく吉日はなかったのじゃ」

「・・・・・」

「今日から三日間、きっちりと通っていただきたい」

「で、でも、瑠璃さんが何と言うか・・・」

「そうだよ、父さま。あの姉さんが、すんなり『はい、そうですか』なんて言うわけないじゃないか。高彬の身を危険にさらすようなもんだよ」

「確かに、あの瑠璃のことだ。しばらくはムクれるに違いない。だがな、高彬どの。仮にだ。仮に、高彬どのと二の姫が結婚をしたとしたら、あの瑠璃が大人しく第二夫人の座に収まると思うかね?」

「・・・それは・・・思いません」

無理だろうな・・・

大納言さまは満足そうに頷かれ

「今夜契り、一時、瑠璃の機嫌を損ねるか、それとも二の姫と結婚をして、一生、瑠璃の機嫌を損ねるか、ふたつにひとつなのですぞ、高彬どの」

有無を言わせぬ大納言さまの口調に、ぼくは何度も唾を飲み込み、そうしてコクリと頷いたのだった。







<続く>


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんばんは。

瑠璃には「一夜を共にしていただきたい」なんて言ってましたけど、なーんか相手が男だと、ああいうロコツなことを言いそうなイメージがあるんですよ。
あの妻にして、あの夫あり。ストレートな夫婦なんです!(笑)

>いくら切迫した状況だからとはいえ、忌み月に初夜(結婚)は有りなのか、と。

そうなんですよ。そこは私も長いこと謎でした。(今も謎なんですけど)
でも、有りなのかも知れませんよね。
なんか平安時代って色々と風習があるわりには、でも、それは表向きの話で、案外、いろんな抜け道があるような気がするんでうすよ。
解釈によって、とか、あとはお金を積んで(笑)日付を改ざんしてしまうとか。
切迫時なら何でも有り、みたいな大らかさ(緩さ)があったような気がします。

次回は瑠璃登場です!

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