社会人編<50>

土曜日の11時前、約束の時間には少し早かったけどマンションを出た。

途中下車して、デパ地下の食品売り場に向かう。

お昼は高彬の部屋で食べることになるのだろうし、何か作って行こうかしら?とチラと思ったりもしたけれど、結局、出来合いのものを買うことにしたのだ。

自慢じゃないけど料理なんて全く自信がないし、だったらデパ地下で買うのが一番よ。

和洋中からデザートまで全部揃ってるしね。

あたしはお惣菜コーナーに足を踏み入れた。






─Up to you !─side R <第50話>






あれこれと買い込んでエスカレーターを上っている途中、ふと鏡に映る自分の姿が目に入り、怪しまれない程度に顔を近づけた。

肌の調子も良いし、いつもより丁寧にブロウした髪は毛先まで艶々している、ように見える。

「・・・・・・」

今日のあたしはなかなかイイのではないかしら?

うん、そうよ、そう思ってしまおう。

こう言うのは自己満足も大事なんだしさ。

数駅乗り最寄り駅に降り立つと、駅前のロータリーに高彬が待っていた。

あたしの姿を認めるとすぐにやって来て、両手の荷物を見ると

「だから家まで迎えに行くと言ったのに」

「ううん。途中で買って来たかったから電車の方が都合良かったのよ」

高彬が荷物を持ってくれて、二人並んで歩くのは何だかくすぐったいような気持ちだった。

高彬がチラチラとあたしを見ているような、そんな気がする。

そんなに見ないでよ・・・・

そんなに見られたら───

え?───見る?

ふと、何かが引っ掛かった。

見ると言ったら・・・・

あたしはギョッとして思わず足を止めてしまった。

「ねぇ高彬。そういえば前に言ってた刺客ってどうなったの?まさかどこかから見てるんじゃ・・・」

「あぁ、大丈夫だよ。今は実家の方がバタバタしてるだろ。人手がいるからってことで京都に戻ってる」

高彬はゆったりと言い、だけど重ねてあたしが

「今はってことは、じゃあまたこっちに戻って来る可能性もあるってこと?」

慎重に聞くと

「うん・・・」

と、何とも気まずそうに頷いた。

「・・・・・」

「ごめん、そこら辺のこともきっちりさせるからさ。瑠璃さんに迷惑掛けるようなことはさせないから心配しないで」

あたしの無言を何と受け取ったのか、きっぱりと決意表明をする。

その気持ちは嬉しかったけど、あたしは肩をすくめた。

「大丈夫よ。あたしはね、刺客の餌食になるようなヤワな女じゃないもの。刺客とばったり出くわしでもしたら、怒鳴り付けそうでむしろそっちの方が心配よ」

威勢よく言ってガッツポーズを作って見せると、高彬は吹き出し、そうしてまじまじとあたしの顔を見たかと思ったら

「瑠璃さんにそんな風に言ってもらえると、何だか気が楽になるよ」

と呟いた。

「さぁ、上がって」

高彬の部屋は前来た時よりも綺麗になっているように見えた。

あたしのために片付けたのかな、なんて思うと単純だけど嬉しくなってくる。

テーブルには何種類かの料理が並べられていて

「すごい、これ全部、高彬が作ったの?」

「前に言っただろ。多分、瑠璃さんより上手だ、って。・・と言っても簡単なものばかりだけどね」

「だけどすごいわ。あたしからは・・・これ。デパートのお惣菜。心を込めて選んできました」

テーブルに並べながらおどけて言うと、高彬は低い声で笑った。

「飲み物用意するから、瑠璃さんは座ってて」

勧められるまま席に付こうとして、ふと部屋の片隅にあるギターが目に入った。

「高彬、ギターなんて弾けるの?」

「少しだけね。高校の時、友だちに誘われて弾いてたんだ」

「バンドとか?」

「助っ人でたまには、ってくらいかな」

「ビター弾きながら歌ったとか?」

「いや、歌は全然。弾くだけ」

「もしかして・・・・音痴だったりする?」

「うん。実は・・・かなり」

情けなさそうな高彬の顔にちょっと笑ってしまう。

「ギター、触ってもいい?」

「いいよ。弾いてみる?」

並んでソファに腰掛けると、高彬はあたしの膝の上にギターを置いた。

「瑠璃さん、適当にどの指でもいいから弾いてごらんよ。ぼくがコードを押さえてあげるから」

言われた通りにポロンと弦をはじいて見ると、綺麗な和音が出来ていて、思わず歓声をあげてしまう。

弦をはじくたび違った和音が奏でられ、それはそのたびに違うコードを押さえる高彬のお陰なのだけれどあたしはすっかり嬉しくなってしまった。

「ギターって楽しいのねぇ」

「だろ」

目が合って笑い合い、その顔がだんだん近づいてきたと思ったら唇が触れた。

唇が離れ、至近距離で見つめ合い、またキスをする。

キスをしながら、高彬はギターをそっと取り上げると、両手であたしの頬を包んできた。

キスがだんだんと熱が帯びてきて、高彬の舌が───

舌が唇を分け入ってくる。

思わず身体を固くすると唇が離れて行き、そっと目を開けると少し辛そうな高彬の顔があった。

「夜まで・・・・、夜まで待った方が、いいかな?」

「・・・・」

目を伏せながら小さく頭を振ると、一拍の後、強く抱き寄せられ、そうして今までとは比べ物にならないような濃密なキスが始まった。






…To be continued…


瑞月です。

いつもご訪問ありがとうございます。

<社会人編>の連載も残すところあと数話、クライマックスを迎えすっかり盛り上がっている瑠璃と高彬ですが、読者の皆さんの中には

「鷹男とのデートはどうなったの~?守弥の妨害は~?」

とお思いになられてる方もいらっしゃるのではないかと思います。

ここで邪魔を入れ高彬に「お預け」をして、もう一波乱二波乱入れることも考えたのですが、今回はこのまま結ばせてあげたい気持ちでいます。

鷹男、守弥、そして融の恋の行方などは<社会人編第二部・恋人編>として別枠で書くことにしました。

(連載中の今の話は<社会人編第一部・出会い編>としました)

考えてみたら、初夜編では「初夜=結婚」でしたし、現代編に至っては2人が結ばれたのは結婚後でした。

と言う事は、(婚前交渉のあった)恋人期間の2人を書いたことがない・・・・!

と言う事に気がつきました。

恋人だからこその親密さや独占欲、だけど結婚はしていないと言う危うさ(鷹男から見たらチャンス?!)・・・

恋人編ではそんなところで揺れ動く2人を書ければいいな、と思ってます。(あ、もちろん融のことも)

この連載が終わったら続けて「恋人編」を連載するのか、それともずっとそのままになっている「新婚編」を再開するのか考えていて、皆さんにアンケートを取らせていただくことにしました。

アンケートに関しては改めて記事としてアップしますので、その時はよろしくお願いいたします。

明日、6月6日は氷室先生の命日ですね。

何とか明日に合わせて2人を結ばせてあげたかったのですが間に合いませんでした。

でも仲の良い2人を書けたので良かったです。

残り数話の<社会人・出会い編>、よろしかったらお付き合いくださいませ。


(←お礼画像&SS付きです)

コメントの投稿

Secre

非公開さま(Nさま)

Nさん、こんばんは。

はい、。50話を突破してしまいました。
出来ればキリのいい50話で終わりにしたかったのですが、ちょっと間に合いませんでした。
新婚編、恋人編のアンケートの記事は、出会い編が終わったらアップするつもりでいますので、
その時はよろしくお願いします(#^^#)

平安時代、和歌(歌)が苦手な高彬ですので、現代編でも歌は苦手と言う設定です(笑)

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非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。

あー、携帯!切ってないかも知れません・・・
高彬、そこまで気が回ってないような。
切らないまでもせめてマナーモードにしてるといいのですが(笑)

高彬、余裕あるように見えます?
案外、心の中はバタバタかもしれませんよ~。
余裕なさ過ぎて、一回転して逆に余裕あるように見えてるだけだったりして(笑)

恋人編Or新婚編、Rさんのご希望はど如何に?!

非公開さま(Mさま)

Mさん、こんにちは。

はい、「出会い編」いよいよクライマックスです。
高彬のテクが炸裂するかどうかはわかりませんが(笑)2人が結ばれることには間違いありません!
えぇ、そうです。昼にしてはいけない理由などございませんとも。

今日、ゴールを目指して頑張って更新してきたのですが、力及ばず・・(涙)
まぁ、脳内ではすでにゴールしているという事で。

『妄想は永遠に不滅です!!』

↑今年の流行語大賞、狙いましょう。

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