社会人編<49>

「つまりね・・・・」

さっきの誘いの言葉に頷かなかった理由を話すべく、あたしは口を開いた。

ちょっと、ううん、かなり恥ずかしいけど言ってしまおう。

誤解されるよりかはずっといいもの。

高彬があたしの横顔を見ているのが判る。

前を向いたまま、あたしは一息に言った。

「・・・下着が気に入らないのよ」






─Up to you !─side R <第49話>






「・・・・・・はぁ?!下着?」

およそ5秒の空白の後、高彬は頓狂な声を上げた。

その声の大きさに隣のカップルが振り返り

「しっ!声が大きいわよ」

高彬の肩を叩く。

「下着って・・・、あの下着、だよね。服の下に着るやつ」

声を潜め、聞いてくる。

「他に何があるのよ」

ムッとして言うと、高彬は理解出来ないと言った顔をしている。

「昨日、会社の後、そのままこっちに来ちゃったから・・・・、実家に置いてあるのを適当に選んで身に着けただけなのよ・・・」

ついつい恥ずかしさで声が小さくなって行くのを奮い立たせ

「だから!そういうわけで、今これからすぐって言うのは困るのよ。嫌なわけじゃないから、そこは判ってちょだい!」

ヤケクソも手伝って大声で言うと、ポカンと口を開けあたしを見ていた高彬は、次の瞬間、吹きだした。

「なんだ、そんなことか。どんな深刻な理由かと思ったよ。下着なんてどうせ脱ぐんだから・・・」

笑いながら言い掛け、あたしに睨まれて慌てて口を塞ぐ。

「そんなことって何よ、そんなことって」

女に取ったら一大事なのに。

これ以上の深刻な理由なんてないわよ。

「ぼくは全然気にしないよ」

何とか今日に繰り上げたい一心なのか、やけに熱心に言う。

「あたしが気になるのよ」

そうよ。

初めて好きな人と結ばれる時、気に入らないどうでもいいような下着なんて着ていたくないもの。

下着だけじゃないわ。

そうなる前の日には、ゆっくりとお風呂に浸かり、髪の一本から指の先までピカピカに磨きたい。

お気に入りのシャンプーで髪を洗って、たっぷりと泡立てたいい匂いのするボディソープで全身を洗うの。

ほんの少し、明日のことを考えながら・・・

昨日は慌ただしくシャワーを浴びただけだし、そんなの全くお話にならないわ。

「いや、でも・・・」

尚も食い下がりかけた高彬は、それでもここであたしを怒らせるのはマズイとでも思ったのか、しばしの沈黙の後

「うん、瑠璃さんの抱えてる事情はよく判ったよ。その件については、瑠璃さんの悔いが残らないよう善処してくれ」

と神妙な顔で言った。




*********************




火曜日から出勤してきた高彬の仕事は多忙を極めた。

一週間、正確には5日間休んだだけで、かなりの案件が山積しており、普段の高彬の仕事量が判ろうってものだった。

もちろんペアを組んでる以上、高彬がいない間、あたしも出来る範囲のことはしていたつもりだけど、だけどやっぱり高彬の穴を埋めることは、今のあたしのキャリアでは無理だったのだ。

取りあえず火曜、水曜と、高彬はほぼ完徹で仕事をし、木曜日も終電近くまで残業をしていた。

そんなこともあって会社では今まで通り、同僚として振る舞ったし、実際問題として、例えばだけどゆっくりと話すような時間は全く取れなかった。

「今日も遅くまでやっていくの?」

金曜の夜、皆がはけた後、ノートパソコンに向かう高彬に隣の席から声を掛ける。

「いや、今日は少しは早くに帰れそうだよ。随分と目処が立った」

画面からちらりとあたしに視線を向けながら高彬が言い

「そう、良かった」

何気ない返事をしながらも、あたしは少しドキドキしてしまった。

火曜からこっち、会社で高彬を見るとこんな感じになるので困ってしまう。

今日のミーティングでも、スクリーンを使って説明する高彬の姿にドキッとしてしまったし、今だって時間外と言う事で、かなりラフに緩めたネクタイの感じとか、Yシャツの袖を捲り上げた腕の感じとかが気になって仕方がない。

高彬ってこんなに男らしい人だったっけ・・・?

「ところでさ、瑠璃さん」

パソコンを閉じると、身体をこちらに向ける。

「土日の予定は何か入ってるかな」

───来た!

ゆっくりと頭を振る。

「じゃあ、どこか行こう。近場になっちゃうけど、一泊でもしてさ」

「・・・・・」

「もしかして、まだ例の件が善処出来てない、とか?」

からかうように顔を覗き込まれ、あたしは小さく笑った。

「ううん。準備万端よ」

声を出さずに高彬も笑う。

「どこか行きたいとこある?一泊だけだから行けるところは限られるけど。軽井沢とか箱根辺りなら、今からでも宿が取れるかも・・・」

あたしはもう一度、頭を振った。

「高彬の部屋がいいわ」

「え」

驚いたように顔を上げ

「ぼくの部屋?そんなところでいいの?」

またしてもあたしの顔を覗き込む。

「でも、瑠璃さん、後になって、海の見える部屋が良かったとか、記念すべき日なのにとか、そういうこと言わない?」

あまりに心配そうに言うので思わず笑ってしまった。

まぁね。下着ひとつで大騒ぎしたわけだから、高彬がそう思うのは無理がないけれど。

気付かれないようにそっとため息をつく。

高彬は女心を本当になーんにも判ってないのね。

関東屈指の観光名所に行った所で一体何になると言うの。

早く2人きりになりたくて、何を見ても何を食べても、きっとそわそわしてしまうに違いないもの。

だったら───

だったら、最初から2人きりの方がいいわ。

「そんなこと言わないわ。誰の目も気にせず2人きりになれるところがいい」

高彬は一瞬、目を見開き、それからゆっくりと頷いた。

「ぼくも同じだ」

誰もいないオフィスで、少し長めのキスを交わす。






…To be continued…


(←お礼画像&SS付きです)

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Secre

非公開さま(Rさま)

Rさん、こんにちは。

おっしゃる通り、高彬にも善処しなければいけないことが目白押し(笑)
瑠璃と高彬、2人で力を合わせて、アノ2人に「ギャフン」と言わせてしまいましょう~!

こももさま

こももさん、こんにちは!

> そうよね、初夜はやっぱりキチンと迎えたいよね。
> ジャパの瑠璃姫もどさくさは嫌がってたし。

そうそう。「どさくさ」は嫌ですよね。
そこが男の人と違うところ?(笑)

> この流れでは、高彬はカワイソウな目に??(笑)

ふふふ。大丈夫ですよ。
今回はバッチリです!

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瑞月さん、おはようございます( ´ ▽ ` )ノ

瑠璃さん、素直だしなんだか積極的(//∇//)
そうよね、初夜はやっぱりキチンと迎えたいよね。
ジャパの瑠璃姫もどさくさは嫌がってたし。

…って、じゃあもしかして?!Σ(゚д゚lll)
この流れでは、高彬はカワイソウな目に??(笑)
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